今回は少し長めだ!
それと後書きにお知らせがあるのでよろしくです。
久しぶりにこの作品のゲスキャラ代表、藤原君は出ないっす。
「ふっ!」
「しゅっ!」
IS学園の修学旅行が近付いてきた今日この頃、剣道場では一樹と一夏が模擬戦をしていた。
2人とも防具は付けておらず、身軽な状態だ。
一樹は愛刀の逆刃刀、一夏はわざわざ作った模擬刀だ。
一樹は飛天御剣流、一夏はかつて習っていた篠ノ之流の剣術を駆使して戦っている。
先程から剣道場には、金属と金属がぶつかり合う音が響いている。
すると…
「こらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
道場の扉をバァンッと開けて怒鳴る女子が…
「かーくんも織斑君もやめなさぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!!」
雪恵の声が、剣道場に響いた。
『はぁい皆さん♪生徒会からのお知らせでーす。みんなも知ってると思うけど、そろそろ修学旅行の季節よね?でも最近物騒…クスン。ま、そういう訳で!今度全専用機持ちで視察に行ってきまーす!』
「いい加減にしろこのクソアマぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
あまりに急に言い出したので、一樹の叫びが上がったのはいつもの事…
ともかく、急にそんな事を言い出され、しかも
何せ…向かう場所は古都、京都なのだから。
「かーくん!防具も着けないで模擬戦なんてしないで!織斑君もだよ!かーくん相手に防具着けないでやるなんて自殺行為だよ!?」
うんうん頷きながら雪恵が言っていると…
キィンキィンッ!
まだ男子2人は打ち合っていた。
「だからやめなさぁぁぁぁぁぁぁい!!!!」
清々しい汗をかいた一樹が、シャワーを浴びて戻ると…
「私がここで寝るのー!!!!」
「いくらユキエでも、これは譲れない…!」
『私も、譲らないよ!』
雪恵にセリー、ミオが寝る場所(ちなみにそこは一樹が今使っている)で言い争っていた。
「……」
深い深いため息をつくと、全員に軽くデコピン。
「「『痛いっ!?』」」
「…冷静になったか?説明よろしく」
「えっと…私もこの部屋に引っ越しになりましたー♪」
満面の笑みで話す雪恵。
一樹は2度目のため息をつくと、少ない荷物をエナメルバッグに纏めて出ようとする。
慌てて止める雪恵とセリー。
「ちょちょ、かーくんが出たら私引っ越した意味無いから!」
「カズキ!
家族、その言葉を使われると弱い一樹。
「かーくん…私と同じ部屋は嫌?」
今にも泣きそうな顔で聞いてくる雪恵。
「いや、そうじゃなくて…この部屋2人用だぞ?そもそも」
「でも今までも3人で住めたよ?」
セリーが首を傾げながら言う。
「いやそれは…基本3人だけど寝る時は2人だったからだぞ?」
「「え?」」
「…ミオ、良かったな。雪とセリーにも、お前は1人として数えられてるぞ」
『うん!』
絆の深さが再認識したところで、本題へ…
「…よし、順番に整理していこう」
「「『うん』」」
「まず、雪がこの部屋に引っ越してきた」
「千冬さんとO☆HA☆NA☆SHIを頑張ったな〜」
「お前とうとう千冬すら脅す様になったか…」
恋人の謎の進化に、頭を抱える一樹。
「頭痛い問題が増えたがそれは置いといて…雪の荷物は?」
「この通りだよ!」
ボストンバック2つを指す雪恵。
女子にしてはかなり少ないのでは無いかと一樹は思うが、他の例えが義妹しかいないのでどうしようもない。
「とりあえず荷物は良しと…で、雪が空いてるクローゼット使ってくれ。今んとこ、セリーがひとつ使ってるだけだからな」
「え?かーくんはどうしてるの?」
「バックに入れっぱなし。それでどうにか出来るからな」
少し大きめのエナメルバッグひとつが一樹の荷物だ。
「…納得いかないけど、荷物に関しては理解したよ」
「おし。じゃあ寝る場所だけど…」
「「『……』」」
黙る3人に、一樹は…
「俺は寝袋使うから、雪とセリーでベッドを分けてくれ」
「彼女パーンチ!!!!」
「妹パーンチ!!!!」
雪恵とセリーがそれぞれパンチを放ってくるが、当然一樹に受け止められる。
「当たる訳ねえだろ?」
「それは…」
「どうだろうね」
雪恵とセリーがニヤリと笑う。
そして_____
『相棒パーンチ!!!!』
背後からミオが殴りかかる。
「…実体化許可、取り消し」
『あ、ずる…』
ミオを首元に戻して、セリーを左の、雪恵を右のベッドへ放り投げた。
「「きゃっ!?」」
「お前らがそれで納得しないのなら、俺はまた整備室で寝泊まりするぞ?」
「「『これで良いです!!!!』」」
「よし」
そして、部屋のルールを確認していると、楯無からの招集がかかった。
会議室に集まる全専用機持ち。ちなみに一樹とセリーはいない。
「さて…全員集まったわね。これより、修学旅行前視察の目的を説明するわ」
「「「「え?」」」」
何も聞かされていない1年専用機持ち(一夏と雪恵を除く)がキョトンとするが、構わず楯無は話し始める。
「今回の視察、それの本当の目的は亡国企業の殲滅よ」
「「「「!!!?」」」」
1年専用機持ちが驚愕していると…
「いよいよか、生徒会長」
「あー、やっぱりやるんスか。亡国機業の殲滅作戦」
3年生唯一の専用機持ち、ダリル・ケイシーとその相棒である2年専用機持ちのフォルテ・サファイアがそれぞれコメントする。
「あら?どこでその情報を?」
「
「オレも本国で、な。まあ、オレの相棒のヘルハウンドがVer2.8になった時点で予想はついてたけど」
さりげなく自慢を入れるあたり、流石は3年唯一の代表候補生だ。
「……」
そんなダリルにフォルテを、雪恵は無表情で見ていた。
理由は、招集された時に一樹に言われた言葉だ。
_____あまり、楯無以外の上級生専用機持ちを信用するな。
「(かーくんがこう言うなんて、よっぽどのこと…気をつけておかなきゃ)」
『ねえマスター』
「おろ?」
自室でのんびりと逆刃刀の手入れをしていた一樹の左肩に寄りかかりながら、雑誌を読んでいたミオが話しかけてきた。
『さっき、何で雪恵さんに“気をつけろ”なんて言ったの?』
「何でも良いじゃんミオ。この学園にいるほとんどの奴が信用出来ないんだから」
一樹の右肩に寄りかかって雑誌を眺めていたセリーが、どうでも良いとばかりに言う。
そんなセリーに苦笑しながら、一樹は逆刃刀を鞘に納める。
「ミオにセリー…それに、雪。お前ら3人がこの学園の来る前にも、俺は何度かISを相手に戦ったんだけど…」
その度に思った。
1年の専用機持ちたちは、当時専用機が完成していなかった簪を除いて
楯無は直接戦闘に参加はしていなかったが、生徒の避難誘導をしていた。
だが、他の2人…資料によると、3年の方がダリル・ケイシーで、2年の方がフォルテ・サファイアだったか。
雪恵には言わなかったが、一樹はフォルテをそこまで警戒していない。
アレはただの面倒くさがりなだけだろう。
だが、ダリルは別だ。
長年戦いの中で生きていた勘が告げている_____
_____奴は、自分と同類だと。
「…カズキ?」
『マスター?』
急に顔が険しくなった一樹を心配するセリーとミオ。
「…ああ、悪い。とにかく、俺がこの学園に来てから今までを振り返って、その2人は警戒しとくべきだと思ったから」
「『ふうん』」
「何普通に旅行グッズ買ってるんだよ…」
視察の目的を聞かされたと言うのに、代表候補生’sはワイワイ楽しそうに買い物をしている。
呆れ顔の一夏に、一樹が苦笑を浮かべながら話しかける。
「まあ、京都に行くのは事実だし。少しくらい良いんじゃないか?特に凰を除いた海外組は今回が初めてだろうし」
「それもそっか…」
保護者の様に立つ2人に、シャルロットが声をかけた。
「ねえ!2人は何か買わないの〜?」
「「いや、特にない」」
異口同音に言う2人。
しかし、一夏を代表候補生’sが、一樹を雪恵とセリーが店内に引っ張った。
「かーくん、かーくんのシャンプー切れかかってたよね?」
「あ、そういやそうだ。詰め替え用の買わなきゃ」
「一夏、浴衣を色違いのお揃いにしないか?」
「いや待て箒。京都の旅館で浴衣が無い方が考えにくいだろ…」
「カズキ、このお菓子美味しそう」
「お、なら試しで一個買ってみようぜ」
「一夏さん!香水お揃いにしませんこと?」
「悪いセシリア、俺制汗剤だけで充分なんだ」
「かーくん、歯磨き粉ってまだあった?」
「一応ストックがまだあるから、今日は大丈夫だ」
「一夏ぁ!パフェ奢りなさいよ」
「鈴、お前は中学時代貸した金をいい加減返せ」
『マスター見て!洗濯用洗剤が5割引だって!』
「よく見つけたぞミオ!買い占め…何?【お一人様1箱限り】だと!?くっ…4箱しか手に入らないのか…」
「一夏、酔い止め薬必要かな?」
「夏のシャルを見る限り大丈夫だと思うけど、一応持っていった方が良いな」
「かーくん、今夜何食べたい?私作るよ?」
「お前らが食いたいもので良いぞ。食えるだけで俺はありがたいから」
「一夏、京都に行くには茶碗を買っておくのが常識だそうだ。お揃いにするぞ」
「…ラウラ、お前にその微妙な日本知識を教えてるのは誰だ?」
「かーくん、それが一番困るよぉ…」
「…強いて言うなら蕎麦?」
「ほぼ茹でるだけじゃん…」
一夏を中心した面々はそれぞれ一夏にアプローチを、一樹を中心とした面々はやたら所帯染みた会話を交わしていた。
買い物を楽しんで?いる面々の後ろに、簪はいた。
「(聞くなら…今しか無いかな?)」
現在、雪恵とセリーは夕食の材料を買うために食品売り場に行っている。更に一夏が代表候補生’sに囲まれている以上、一樹は今1人だった。
話しかけるなら、今しか無い。
「ねえ…櫻井君」
「おろ?」
相変わらず自分に話しかけるのが雪恵達と一夏しかいないと思ってる一樹。
今も簪に話しかけられ、軽く戸惑っている。
「…どうした?更識さん」
「あのね…櫻井君に聞きたい事があるの」
「一夏の事か?」
「ううん…違う」
「おろろ!?」
雪恵達以外の女子が自分に質問=一夏関係の事という式が成り立っている一樹は本気で驚いている。
「…私って後から1組に入ったでしょ?」
「まあ、そうだな」
「だから…ある程度は元々1組だった人と距離を感じるのはしょうがないことだと思う。けど…」
「けど?」
「…元々2組だった鈴まで知ってる櫻井君の秘密を、私だけ知らないのは嫌」
「……」
一瞬で、一樹の纏う空気が変わった。
一樹は基本的に、簪と会話する時は一夏とはまた別種の優しい顔で話す。しかし今は、まるで品定めをされている様に簪は感じた。
「…お願い、教えて。もし櫻井君が悩んでいるのなら、その解決を私は手伝いたい。打鉄弐式の製作に戸惑っていた時や、お姉ちゃんとの仲直りを助けてくれた櫻井君を、私も助けたい」
「…その気持ちはありがたいけど、更識さんだけ知らない事なんて、無いよ」
小さな笑みを浮かべる一樹。
さっきまでの鋭い顔では無く、いつものあの顔だ…
ダンにも言われた一樹の返しに、簪は顔を俯かせる。
「そりゃあ、悩みは当然あるぜ?1番頭が痛いのはアレだし」
後ろでワイワイ騒ぐ一夏達を指す一樹。
確かに、長年の悩みのひとつではあるのだろう。しかし、簪が知りたいのはそれでは無い。
…この際、自分もその悩みの一因である事はスルーする。
「ごまか…さないで…」
一樹の怒りに触れるかもしれない恐怖が、人に必要以上に踏み込む恐怖が簪を襲う。
それでも、彼女は知りたいのだ。
何度も自分を助けてくれた一樹が抱える問題を。そして、それを解決する方法を。
「……」
じっと簪を見る一樹と、そんな一樹と必死に目を合わせ続ける簪…
一樹の目が見開かれた。
怒鳴られると思った簪は目をキュッと閉じた…
「逃げろ!!!!更識さん!!!!!!!!」
一樹の叫びに、簪の体が一瞬固まる。それがいけなかった。
「ウグッ!?」
背後から口元を押さえつけられ、打鉄弐式の待機アクセサリーである指輪を奪われた。
『ようやく見つけたぞ…』
周りにいた人々が、悲鳴を上げて一斉に逃げ出す。簪もまた、酷く動揺していた。
「(私に…どうやって近付いてきたの⁉︎)」
更識の家で育った簪は、武道の心得も当然ある。そんな簪や、戦いに身を置く一樹ですら気配に気づけなかった。
簪が何とか視線を上に向けると、帽子が良く似合う見た目紳士的な老人が簪を押さえつけていた。
『同族の仇、討たせてもらうぞ』
一樹に強い憎悪の視線を向ける老人の言葉に、簪は戸惑う。
「(櫻井君が…仇?)」
「(くそ…気配を感じれなかった…)」
恐らく
それに、目の前の老人は一樹を仇と呼んだ。つまりは…
「(俺が一度戦った事のある宇宙人か…!)」
しかし今は戦えない。正体云々ではなく、簪の命が最優先だ。そして恐らく、目の前の宇宙人は一樹を消すまで決して簪を離そうとしないだろう。
一樹が下手に動く訳にはいかない。ならば…
「(ミオ、雪にセリーと一緒に上の階に移動して待機する様連絡してくれ。更識さんの救出には、2人の協力が不可欠だからな)」
『了解だよ!マスター!』
一樹がミオに連絡を頼んでいると、騒ぎを聞きつけて一夏達が駆け寄ってきた。
「ッ!?テメエ!簪を離せ!!!!」
『その言葉で離すくらいなら最初から捕らえてなどいない』
一夏の怒気などそよ風の様に受け流す老人。
今にも動きそうな一夏達に警告する。
『それ以上近付くな。近付くとこの女の命は無い』
「「「「ッ…」」」」
歯ぎしりする一夏達。
「…用があるのは俺だろ?相手してやるからその人を離せ」
淡々と告げる一樹。懐に手を入れ、いつでもエボルトラスターを抜ける体制だ。そして、老人はそれを見逃さなかった。
『今すぐ
「……」
無言で老人を睨むと、エボルトラスターを取り出し、床に置く。
『武器もだ』
「……」
ギリッ
と音がする程強く歯ぎしりすると、ブラストショットも床に置く。
『賢明だな。そして死ね』
老人の両サイドから、ある異星人が現れる。
それは_____
『『『『フォッフォッフォッフォッ……』』』』
_____以前雪恵の入院していた病院を襲ったバルタン星人の同族だった。
一樹を囲む様に、4体が現れ…
《フォッ!》
「くっ…!」
その巨大なハサミで殴りかかってきた。
何とかガードするが、その威力に吹き飛ばされる。その先には、別のバルタン星人が…
《フォッ!》
「ガッ!?」
後頭部を殴られ、一瞬意識が飛ぶ一樹。
その隙を逃さず、右のバルタン星人の前蹴りが腹部に入る。
《フォッ!》
「カハッ…」
更に、左のバルタン星人の殴り上げ。
《フォッ!》
「グッ…」
前後左右のバルタン星人に攻撃され続け、ようやく治った一樹の体に傷が増えていく。
「やめやがれ!!!!」
麒麟をその身に纏う一夏に、簪を押さえている老人の手から放たれた破壊光線が命中する。
バァァンッ!!!!!!!!
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?!!!?」
「「「「一夏!!!?!!!?」」」」
麒麟のシールドエネルギーのおかげで、何とか致命傷は避けれた。だが、大きなダメージを受けた事には変わりない。
吹き飛ぶ一夏に駆け寄る専用機持ち達。
『次はその程度では済まさんぞ』
老人がその手を、一夏達に向ける…
「やめ…ろ…」
そんな老人を、血だらけになりながら制止する一樹。
「一夏や皆に…手を出すな!」
『貴様は黙ってろ!!!!』
老人は念動力で、一樹を吹き飛ばす。
「グッ!?」
そして、柱に背中を強打した。
「ガッ!?」
『貴様は同族の仇だからな…楽には殺さん』
「ハァ、ハァ、ハァ…」
頭から、口から血を流しながら立つ一樹を見ていられず、簪が叫ぶ。
「もう良い!もう良いから櫻井君!!私の事を気にしなければ、この怪物達を倒せるんでしょ!!!?」
『黙っていろ。死にたいのか?』
「ウググッ!!!?」
老人は不快なモノを見る様な目を簪に向け、呼吸が出来なくなる程強く口元を押さえる。
「やめろ!!!!その手を離せ!!!!」
今度は一樹が叫ぶが、やはり周りのバルタン星人の攻撃で床に叩きつけられる。
「ガッ…」
倒れる一樹の背中を、4体のバルタン星人が踏みつけ固定する。
『フンッ…いつまでヒーローを気取っている?調べたぞ。貴様がどれほど嫌われているのかをな』
「…あん?」
『あれだけ身を削って戦っているのに、誰からも認められない…そんな戦いを続けて何の得があるのだ?』
「…またそれか。もう聞き飽きたぜ」
『何?』
「確かに、俺はヒーローらしく無いだろうな。ヒーローらしい奴ってのは、そこに転がってる男の様な、がむしゃらなタイプなのかもしれない。皆に好かれる奴が、ヒーローと扱われるのも知ってる。けどな、俺はヒーローとして褒め称えられたいから戦ってるんじゃない。損得感情で戦ってる訳でもない」
『ほう…なら、何だと言うのかね?』
「ただ、体が動くんだよ。それに…」
『それに?』
「今の俺には、俺を認めてくれる人がいる!それだけで、俺が戦う理由としては充分だ!」
そんな一樹の叫びが気に障ったのか、老人は一樹の頭をその革靴で踏みつける。
『フンッ!』
「ガッ…」
『良い姿だな。実に惨めで、情け無い、貴様にピッタシの姿だ』
動きを封じられた一樹にトドメを刺そうとする老人。その目は、既に勝利を確信した目だ。
だが、それは一樹の狙い通りだ。
「今だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
一樹の叫びを合図に、ビームサーベルを部分展開した雪恵とセリーが老人とバルタン星人の目の前にテレポートしてきた。
『何!?グハッ!!!?』
突然現れた2人に動揺する老人とバルタン星人。その隙を逃さず、老人の喉元に強烈なストレートパンチを放つセリー。
「カズキを傷つけた罪、その身で償え…!」
雪恵も、一樹を踏みつけているバルタン星人達にビームサーベルを横薙ぎに振るった。
「ハァァッ!!!!」
『『『『フォッ!!!?』』』』
当然倒せはしないが、一樹の上からバルタン星人達を退かす事は出来た。
「「ッ!」」
老人とバルタン星人が怯んだタイミングで起き上がる一樹と一夏。一樹は雪恵を抱えて跳び、転がる様にブラストショットを拾う。一夏もまた、セリーから簪を預かると抱えて仲間の元まで跳んだ。
簪を無事避難させると、セリーは一樹の隣に移動した。
「しゅっ‼︎」
拾ったブラストショットを4体のバルタン星人に向けて撃つ一樹。
『『『『フォッ!!!?』』』』
その波動弾は、バルタン達を消滅させた。
どうやら、一樹を囲っていたバルタン星人達は分身体らしい。つまり、本体は…
「簪!しっかりしろ簪!」
救出した簪を揺する一夏。
「ケホッケホッ!いち…か…?」
「そうだ一夏だ!しっかりしろ!」
ようやく酸素を取り込める様になった簪が、朦朧とした意識で見たのは想い人の凛々しい顔だった。
「(こんな状況で、櫻井君には悪いけど…役得、かな?)」
そして脳が情報処理仕切れなくなったのか、簪は想い人の腕の中で気絶した。
『おのれ…おのれぇ!何なんだその女共は!』
自分の復讐を邪魔された老人は、憎悪の篭った目で雪恵とセリーを睨む。
「…俺の仲間だ」
雪恵とセリーをその背中に庇いながら、強い目で老人を見据える一樹。
『貴様の仲間だと?ならば…ここいらの人間と一緒に潰してくれるわ!!!!』
老人の姿が消えた瞬間、ショッピングモールが激しく震えた。
《フォッフォッフォッフォッ…!》
老人はバルタン星人としての正体を現し、巨大化。町を破壊しようと、そのハサミからミサイルを連発する。
「「「「キャアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」
悲鳴を上げて逃げ回る人々…
「カズキ!これを!!」
床に転がっていたエボルトラスターを拾い上げ、一樹に投げ渡すセリー。
「サンキューセリー!じゃあ、ちょいと遊んでくるわ!!雪、一夏!後は頼んだ!!」
「うん!任せて!!」
「おう!任せろ!!」
2人の頼もしい言葉を聞くと、一樹はエボルトラスターを引き抜いた。
「シェアッ‼︎」
バルタン星人の正面に現れるウルトラマン。
《フォッフォッフォッ…!》
ウルトラマンの姿を認めると、バルタン星人は駆け寄って来た。
その巨大な右ハサミでウルトラマンに殴りかかるが、ウルトラマンは右腕でその攻撃を受け止める。
「シュッ!」
続けて放たれた左ハサミの下段攻撃は、右脚を上げて受け止める。
「ハッ!」
《フォッ!?》
その上げた右脚でストレートキックを放つウルトラマン。それを胸部に受け、数歩下がるバルタン星人。
バルタン星人は体制を立て直すと、両ハサミを突き出しながら突進して来た。
「シェアッ!!」
そんなバルタン星人の突進を、ウルトラマンは高くジャンプすることで回避。着地と同時にマッハムーブを併用したバック転でバルタン星人に近付くと、投げ飛ばした。
「シュアッ!」
《フォッ!?》
着地に失敗したバルタン星人は、背中を強打する。その隙に、ウルトラマンはジュネッスにチェンジした。
「フッ!シェアッ!!」
バルタン星人の動きが鈍いうちに、メタ・フィールドを展開する。
「シュッ!フアァァァァァァァァ…フンッ!ヘェアァァ!!」
『なあ雪恵、悪いんだけど宗介達に連絡してくれないか?幾ら一樹の怪我が治ったと言っても、用心に越した事は無いからさ』
他の専用機持ちに聞かれ無い様、個人回線で雪恵に頼む一夏。
S.M.Sは今依頼が無いと動けない。そのために、雪恵が形式上依頼を入れる形にするのだ。
『うん!分かったよ!』
箒達に気付かれない様、ゆっくりと離れると最近登録された番号にかける雪恵。
数コールで相手は出た。
『ほいほーい、櫻井宗介の携帯ですぜ。ご用件はなんでっしゃろ〜?』
相手が雪恵だと分かっているからか、飄々と通話に出る宗介。その近くには他のTOP7もいるのか、吹き出す声まで聞こえる。
「宗介君!かーくんの援護を御願い!」
雪恵が叫ぶ様に言うと、通話先の宗介の声が野太くなった。
『野郎ども!ボスが暴れる手助けに行くぞ!』
『『『『よっしゃオーイ!!』』』』
駆けながら通話を続けているのだろう。そんな雰囲気が電話越しに伝わってくる。
『依頼サンキュー雪恵さん!場所は!?』
そんな宗介達を心強く感じながら、雪恵は場所を告げた。
メタ・フィールドで睨み合うウルトラマンとバルタン星人。
「……」
《……》
先程から、睨み合いながら円を描く様に動いている。
そして_____
「シュッ!」
《フォッ!》
_____両者同時に駆け出した。
バルタン星人の突進を、ウルトラマンはバルタン星人の頭上スレスレの低空前転で避けると、振り向きざまにエルボーカッターで斬りつけた。
「シェアッ!」
《フォッ!?》
バルタン星人の体から火花が散り、怯む。そんなバルタン星人に…
ドドドドドドドドド!!!!!!!
《フォッ!!!?》
宗介と一馬の駆るVF-25Fに、和哉と智希の駆るVF-25Aから放たれたガトリングガンがバルタン星人に命中する。
「どんなもんだい!」
「【フェニックス】じゃあジェネレーター出力の都合上来れなかったけど!」
「この【メサイア】なら!」
「簡単に来れるんだぜ!」
「シェアッ!」
バルキリー2機の援護を受け、力強く構えるウルトラマン。
《やはりこの空間では不利か…ならば!》
そう言ったバルタン星人が取った行動は、なんと…
《フォッ!》
その両腕のハサミを、メタ・フィールドの大地に突き刺した。
すると_____
「フッ!!!?」
「なっ!!!?」
「これが…」
「一夏や雪恵さんが言っていた…」
「ダーク・フィールド、なのか…?」
_____メタ・フィールドが闇に侵食され、ダーク・フィールドが形成されていく。
《ハハ…ハッハッハッハッ!力が、力がみなぎってくる!》
高笑いを上げるバルタン星人。
その体が、禍々しく変わっていく…
「……」
警戒しながら、その様子を見るウルトラマン。
《ふっふっふ…何故私がこんな事を出来るのか知りたいかね?》
体を変化させながら、バルタン星人が語りかけてきた。
「……」
_____別に。興味ないね。
《ふっ…そう言われると逆に言いたくなるものだな。勝手に話させてもらう。先程、お前の事を調べたと言ったな?それと同時に、この空間の事も調べたのだよ。この空間ではお前の能力が上がり、お前の敵の能力が下がる事もな。しかも!この空間と対になる空間…つまり、今の空間が存在する事もな!私はこの空間のデータを集め、己自身で展開する事に成功したのだ!》
「……」
高笑いを上げながら話すバルタン星人。
そして、その身の変化も終わった。
右手はロングブレード、左手はガトリングガンの様になり、特徴的だったハサミは両肩のプロテクターとなった。
変化したその姿の名は【ネオバルタン】…
《貴様に不利なこの空間で、強化された私と戦えるかな?》
「…シュッ!」
ウルトラマンとネオバルタンが、同時に駆け出した。
PiPi PiPi PiPi PiPi!
「「ッ!?」」
簪をおぶって移動していた一夏と、雪恵のレーダーがダーク・フィールドを感知した。
「どうしたの?一夏に雪恵」
2人の表情が硬くなったのを見たシャルロットの問いに、一夏が答える。
「…今、ダーク・フィールドが形成されてる」
「えっ!?じゃあ闇の巨人が近くにいるってこと?僕のレーダーには反応無いけど…」
「多分、私と織斑君のレーダーはかーくんがこまめにアップデートしてるからだね。帰ってきたら、全員分やってもらわないと」
「だな…それより、俺たちも行こう」
「…どうやって?ISではフィールドに入れないよ?」
シャルロットの疑問ももっともだ。
だが、一夏は妙に自信ありげに携帯を取り出す。相手はワンコールで出た。
『もすもすひねもす〜天災の束さんだよ〜』
「束さん、チェスターを自動操縦で送って下さい」
すらすら言う一夏に、箒達は驚きを隠せない。
『ん?何で自動操縦が出来ると思うのかなかな?束さんは出来るって言ってないのに』
「…この間、一樹と機体をメンテナンスしてるのを見てたので」
暗にS.M.Sのシステムだろ?と問う一夏。束の答えは…
『流石だね〜いっくん。その通りだよ。じゃあ、
「…ええ、知ってます」
『りょ〜かい、じゃあ合体した状態でそっちに送るよ〜』
《フッ!》
「シェアッ!」
ネオバルタンが振り下ろして来たロングブレードを避けるウルトラマン。
だが、ネオバルタンはそんなウルトラマンに零距離でガトリングを放った。
ドドドドドドドドドッ!!!!!!!
「グアァァァァッ!!!?」
怯んだウルトラマンに、更にロングブレードで追い討ちをかけるネオバルタン。
《フゥッ!》
「グオッ!?」
そんなウルトラマンをバルキリー2機が援護に入ろうとするが、ネオバルタンはガトリングをばら撒く様に撃ってそれを妨害する。
「「「「チッ!」」」」
「シュアッ!」
バルキリーを狙うネオバルタンに突進するウルトラマン。
何とかネオバルタンの注意を自らに向けるが…
《フンッ!!》
何と、ネオバルタンはロングブレードを連続射出してきた。
ウルトラマンは一瞬驚くも、すぐにロングブレードを破壊していく。
ネオバルタンはウルトラマンに効果が無いと分かると、今度はバルキリーに向けてロングブレードを射出する。
「シュッ!」
だが、それはマッハムーブを使ったウルトラマンに破壊されていく。
《フッ!》
ならばと、ロングブレードをウルトラマンの背後に仕掛けるネオバルタン。
「シュッ!ヘェアッ!!」
それも難なく破壊していくウルトラマン。
更にバルキリー2機もロングブレード破壊に参加する。
《フォッ!》
ロングブレードを撃ちまくったせいか、ロングブレードだった右手は鉤爪状に変化した。
だがそんな事は気にせず、ネオバルタンは左手から光の鞭を出現させ、ウルトラマンに向かって振り下ろした。
「シュッ!グアッ!?」
最後のロングブレードを破壊したウルトラマンに、ネオバルタンの鞭が巻きつけられる。
《フンッ!》
「グアァァァァ!!!?」
ピコン、ピコン、ピコン…
鞭から走る稲妻状のエネルギーに苦しむウルトラマン。
すぐさま援護に向かおうとする宗介達。
だが、それより早く攻撃する機体…ハイパーストライクチェスター。
「待たせたな!」
搭乗しているのは一夏のみだ。そのため、少々乱暴な操縦も出来る。
「宗介、みんな!今乗ってるのは俺だけだぜ!」
『おし!なら存分に暴れられるな!』
「ハアァァァァァァァァ!!!!」
チェスターの攻撃で、ネオバルタンが怯んだ。
その隙に鞭を引きちぎるウルトラマン。
《グッ!?》
「シェアッ!」
力強くネオバルタンに向かって構え、駆け出す。
大きく左手を振るってくるネオバルタンに、マッハムーブを使った手刀を放った。
ドォンッ!
手刀の威力に、ネオバルタンの左手にあるガトリングが破壊された。その左手も鉤爪に変え、ウルトラマンに挑むネオバルタン。
《フッ!》
しかし、鉤爪程度に怯むウルトラマンではない。
「シェアッ!」
《グッ!?》
ネオバルタンの腕を掴んで、一本背負いを連続で決める。
《フッフッフッ…》
起き上がったネオバルタンは分身し、ウルトラマンを囲む。そして、無言で飛びかかってくるが…
「ハッ!」
それを読んでいたウルトラマンは飛び上がって避ける。
ウルトラマンを一瞬見失ったネオバルタン達の動きが止まる。そこに、バルキリーとチェスターのミサイル攻撃が決まる。
ドォォォォォォォォォンッ!!!!
爆発が収まったそこには、ネオバルタンは一体しかいなかった。
「デェアァァァァァァァァ!!!!」
《フォッ!?》
それを見逃すウルトラマンではない。
右足に金色の光を纏わせ、ネオバルタンにシュトローム・ストライクを喰らわす。
《何故だ…何故この空間で私が押されている!?》
_____お前は、この空間に頼りすぎた。
フラつくネオバルタンにそう言い放つと、エナジーコアに光を集中させる。
「シュッ!フアァァァァァァァァ…テェアッ!!!!」
《グオアァァァァァァァァ!!!?!!!?》
コアインパルスの直撃を受け、ネオバルタンは爆散。
それと同時に、ダーク・フィールドも消滅した。
「流石にコレはやりすぎだろ…」
翌日の昼休み。額に包帯を巻かれ、口元には絆創膏を貼られた一樹の姿があった。
「かーくんは小さい傷の内に治さないからいつも大変な事になるんでしょ?」
腰に手を当て、頬を膨らませながら言う雪恵。
その隣でうんうん頷くセリー。
「あの…櫻井君」
「おろ?」
包帯が勿体ないと考えていた一樹に、オドオドと話しかける簪。
「守ってくれて…ありがとう」
深く深く頭を下げる簪。
一樹は頬を掻きながら苦笑する。
「いや、むしろ俺が謝らなきゃいけないよ…巻き込んで、すまなかった」
「ううん、大丈夫」
「…そう言ってすぐで悪いんだけど、これからも、俺と友人でいてくれるか?」
「…こちらこそ、お願いします」
一夏達の所に戻る簪。
その背中を見て、ほっとひと息つく一樹。
「貴重な友人を失わずに済んで良かったよ…」
「私としては複雑なんだけど…」
一夏が同じような事をすれば、その女子は9割方落ちる。それなのに、一樹の場合は…
まあ、落ちられても雪恵としては困るのだが。
そんな雪恵の頭を、一樹は優しく撫でる。
「俺は一夏と違うから…俺のことを理解してくれる人が1人いれば、俺は充分だよ」
「…うん!」
一樹の言葉に、満面の笑みを浮かべる雪恵。
すると、一樹の左手が誰かに引かれる。
視線をそこに向けると、少し拗ねた表情のセリーの姿が。
「…ユキエだけいれば、カズキの【世界】は充分なの?」
「馬鹿言うな。お前もミオも、今の俺には必要な存在だよ」
「ん、なら良い…」
表情を綻ばせ、甘えてくるセリー。
その頭を撫でていると、一樹にも眠気が…
「かーくん」
それを察した雪恵が、自分の膝をポンポンと叩く。
「悪い…膝、借りるわ…セリー、後よろしく…」
「ん、任せて」
珍しく雪恵の膝枕で寝に入る一樹。雪恵もセリーもミオも、そんな一樹を微笑ましく見ていた…
10巻は古都、京都が舞台との事で、今まであまり効果を発揮していなかったあるタグを活用します!
よろしくです!