「おーい一樹!大丈夫かー!?」
気絶している楯無を小脇に抱えているため、ゆっくりとしか飛べないフリーダムに近づく麒麟とバンシィ。
「俺は全然大丈夫。そっちは?」
「弾がバンシィに気に入られた。それで怒ったエムが殴りかかってきたんだけど、ダリルが連れて行った」
「『は?』」
最強タッグが呆然としていると、頭部のみ解除するバンシィ。
「まあ、そんな訳です」
苦笑を浮かべる弾の顔を見て、とりあえず理解した一樹とミオ。
「…世界で3人目の男子がお前か」
『マスターの身内ばっかりだねぇ…』
「…何でだ?お前が何かしてるのか?」
『してる訳無いでしょ!!?』
ミオ渾身のツッコミを流すと、楯無を一夏に預ける一樹。
「…とりあえず帰ろうぜ。疲れたし、腹減った」
「だな…って俺に預ける意味は?」
「お前が1番運ぶのが上手いから」
「(絶対その方がこの子喜ぶからとか思ってるよね?)」
再び装甲を纏った弾は苦笑を浮かべていた。
「お疲れ様。かーくん」
「あぁ〜…」
旅館に戻り、食事に温泉を済ませた一樹は雪恵の膝枕を堪能していた。
ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?
「…何か悲鳴が聞こえた気が…」
「「大丈夫雪(ユキエ)。ただの幻聴だから」」
「これほど説得力の無い【大丈夫】は中々無いと思うんだ」
一樹とセリーの息の合った言葉に苦笑する雪恵。
「…なあ雪」
「ん?どうしたの?」
「…明日、東京に帰るんだよな?」
「うん。明日の朝の新幹線で。それがどうかしたの?」
「実は…」
「…あれ?一樹はどうしたんだ?」
翌朝の京都駅。集合場所に来ない一樹を不思議に思った一夏。
同じ部屋だった雪恵に聞いてみると、少し落ち込んだ声で教えてくれた。
「…かーくんは来ないよ」
「来ない?どういう事だ?」
「…京都でやり残した事があるんだって」
「はぁ?」
「(この店か…さて、言われた品を注文しないとな)」
とある茶屋に来ていた一樹(和装ver)。
それは、昨晩意識を取り戻した楯無からの指示だった。
『そう…またあなたが助けてくれたのね』
『俺だけの力じゃねえよ。お前を機体から引っ張り出したのは俺だけど。それより、お前に言っておく事がある』
『…何かしら?』
『明日、東京に戻る予定になってるだろ?』
『ええ…』
『悪いが、俺は京都に残る』
そう言うと、小脇に抱えていた鞘から折れた逆刃刀を見せる一樹。
『…折れてる?』
『ああ…コレを作れるのは世界で1人しかいないんでな』
『…場所は分かってるの?』
『んにゃ。その人は結構引越し好きでな。ちょっと探さなきゃいけないんだ』
『なら…私達【更識】にも協力させてくれないかしら?あまりおおっぴらにS.M.Sに行けないんでしょ?今は』
『……』
『葵屋』
『ん?』
『そこが京都での更識家の拠点よ。そこに初めて更識家の人間として入るにはある条件があるの』
「いらっしゃい!ご注文は?」
「
「え?」
「みたらしだんごの餡子マシマシをお願いするでござるよ」
「あの…」
「みたらしだんごの餡子マシマシをお願いするでござるよ」
「……」
「……」
『葵屋の真北にある茶屋で【みたらしだんごの餡子マシマシ】を3回頼むの。店員がどんなに冷たい態度をとっても、毅然としてね。それが、更識の関係者としての合言葉なの』
「……少々お待ちください」
しばらく待つと、
「(醤油ダレが絶妙な甘さで茶が進むな。美味い美味い)」
だんごの美味さを素直に賞賛していると、背後に気配を感じた。
「お気に召された様ですな。櫻井様」
あまりに自然に話しかけてきたその人物だが、一樹は特に驚く事なく応える。
「拙者、正直あまり
「それは良かった。では…食べ終わり次第、移動をお願いできますかな?」
「了解でござるよ」
「楯無様から聞いた話では、我々に何か頼みがあるとの事ですが…」
一樹を葵屋に案内してくれたその老人【柏崎念至】の役職名は【翁】。
京都内の情報を一身に集めるのが役目だ。
「翁殿、それに更識の情報網を使って人探しをして欲しいでござるよ」
「人探し?」
「ええ」
腰にさしていた鞘から、折れた逆刃刀を取り出し翁に見せる。
「この逆刃刀の生みの親…【
「了解した…すぐに手配しよう」
「○○様、アイツは京都に残りました」
「そうか…折れた刀の代わりを探してるってとこか。ふんっ、あのクズも間抜けだな。
「……」
一樹が無言で見つめるのは、新井赤空と彫られた墓石。
「(赤空さん…)」
『お前か。オレに変な刀を作れとかほざいた馬鹿は』
まだ(見た目は)幼い一樹に向かって、不敵に笑いながら近づく赤空。
『…護身用なら、殺傷力を追求する必要はありませんから…』
『だったらそこらの鉄棒でも振り回していたらどうだ?わざわざ自分に刃を向ける必要はねえだろう?』
『……』
『俺はこのご時世にもかかわらず、殺傷力を高める刀だけを打ってきた。そんな俺に何故?』
『だからですよ…殺傷力を高める刀を打ってきたからこそ、こんな
『褒めてんだか貶してんだか分かんねえ言葉だな。だが』
そう言って小脇に抱えていた刀を一樹に向かって投げる。
受け取り、鞘から抜いたそこには…逆刃刀があった。
『そんなふざけた注文をする奴だ。出来損ないで充分だろ。それが折れた時、まだそんなふざけた注文が出来るのなら…俺を訪ねに、京都まで来な』
赤空の墓参りを終えた一樹が翁と向かったのは、ある鍛冶屋だった。
「赤空には全ての技術を伝授した息子が1人いるとのこと。その名も【新井
「…そうだと良いでござるが」
鍛冶屋に着き、最初に目に入ったのは、包丁や鍬などの日常品。その次が…
「ふぁい?」
「おろ!?」
「ひょ!?」
また歯も生え揃っていない赤子だった。
「…青空?」
「いや、まさか…」
一樹と翁が呆然としていると、目の前の赤子がその小さな両手を上げて…
「あくす、あくす」
と笑顔で一樹に向かって言う。
「あくす?」
「握手の事ではないかな?」
首を傾げる一樹に、翁が助言する。
「おぉ!握手でござるか!よしよし」
朗らかに笑いながら赤子と握手する一樹。
それにカラカラと笑う赤子。
「こら伊織、おイタしちゃダメよ。すいません、何かご入り用ですか?」
「おっかあ」
奥から出てきた女性が伊織を抱えて、一樹達に注文を聞く。
「包丁を見せていただきたいでござるが…?」
「…櫻井様?」
刀ではなく、包丁を頼む一樹を疑問に思う翁。そんな翁の視線を他所に、女性からオススメの包丁を受け取る一樹。
「…試し斬りしてもよろしいでござるか?」
「どうぞ♪」
「では…」
何の前触れも無く、懐から大根を取り出す一樹。
「ひょ!!?」
「え!!?」
翁と女性が驚くのを横目に、勢いよく包丁を大根に振り下ろした。
「(うむ、良い斬れ味じゃ)」
スパッ、と気持ちよく斬れた事を評価する翁。
しかし、続く一樹の行動に驚く事になる。
「……」
斬った大根の断面同士を近づけ…
「なっ!!?」
ピタッ、と斬る前に戻った。
「【戻し斬り】か!初めて見ましたぞ!?」
斬り口の組織を全く潰す事なく斬る事で、再び元通りに出来てしまうという…名刀と達人の腕があって初めて行なえるソレに、翁も興奮気味だ。
「…あの、ウチの商品に何か不手際でも?」
少し騒ぎすぎたのか、奥から作業衣姿の男性が出てきた。
「いや、違うでござるよ。拙者達はこの包丁の出来の良さに驚いていただけでござる」
「そうですか。それは良かった」
ホッとした様子の男性。一樹は本題に入るために、男性の名を聞く。
「…あなたが、新井青空殿でござるか?」
「はい、そうですけど…」
青空が頷くと、一樹は表情を引き締めて本題に入る。
「拙者は、お父上にお世話になった者でござる」
「……」
「お父上がお亡くなりになったと聞き、折り入って頼みがあるでござる」
「……」
「刀を一振り、打って頂けぬか?」
「…なるほど」
折れた逆刃刀を見せ、事情を粗方説明した一樹。
「…父はよう言うとりました。『俺の造った刀がいずれ時代を動かす』と。僕はそれが理解出来なかった…この平和な世に、殺傷力の高い刀を造ってどうすると」
「……」
「ISが出来て、刀は更に用無しになった。だから僕も刀匠ではなく、単なる鍛冶屋として日常品を打っとります。申し訳ないが、刀は二度と造りません」
青空の瞳の奥に、確かな信念を見た一樹。
断られたというのに、自然と穏やかな笑みが浮かんだ。
「…なるほど。失礼いたした」
青空夫妻に一礼すると、ずっと黙って話を聞いていた翁と共に、街に戻った。
「あの人…お困りだったんじゃないの?あなたが打たなくとも、お義父さまの最後の一振りを渡せば…」
「…いや、良いんだ。この平和な世に、刀はいらないんだから」
一樹達が去った後、青空夫妻がそんな会話をしていた。
…盗み聞きされているとも知らないで。
「○○様、涼が到着しました」
「入れてやりな」
扉を開けて入ってきたのは、刀を4本持った男。背中に2本交差するように背負い、残り2本は両腰だ。
「お早いお着きだね」
「ワイは大阪住まいやさかい。メールから2時間程度で着くのは簡単や」
「…他の連中は1週間は待ってくれって言ってたけどね」
「まあ急に連絡来たからそれもしゃあないわな」
「…ま、ゆっくりしていてよ」
「そうさせてもらうわ」
近くにあったワインを飲みながらくつろぐ涼。そこに報告係であり、○○の補佐役でもある【百識】の正治が入ってきた。
「○○様、ヤツが逆刃刀の依頼をある鍛冶屋にしていたそうです。断られたそうですが…」
「誰に?」
「新井赤空の息子、青空です」
赤空の名を聞いた涼の表情が変わったのを気にせず、正治は続ける。
「赤空の造った最後の一振りとやらがあるそうですが、それも渡していません」
「ほお…あの名刀匠、新井赤空の、最後の一振りねえ…」
たった今着いたばかりだというのに、部屋を出ようとする涼。
「大事の前だから、そんなに面倒事おこさないでくれよ」
「ほいな」
「しかし残念でしたな…青空さんに打ってもらえないとなると、逆刃刀探しはまた1から出直しになりまする」
「何、焦る必要は無いでござる。他の刀匠にも当たってみるだけでござるよ」
「…そうですな」
街に戻ってきた2人がそんな会話をしていると…
「買うてってや〜!可愛い可愛い
色とりどりの風車が売られているのが目に入った。
「…翁殿、先に戻っていて欲しいでござる。拙者はあの風車を伊織に買ってくるでござるよ」
穏やかな笑みの一樹に、翁も笑顔で返した。
「分かりました」
涼は青空夫妻の家に着くと、伊織に近付いた。
「ふぁ?」
「おい坊、おとんはどこや?」
そんな声が聞こえたのか、青空が奥から出てきた。
「あ、いらっしゃい。何かお探しですか?」
その瞬間、涼の顔が歪んだ。
「アンさんが新井赤空の息子、青空か。赤空の最後の一振り、あるって話みたいやないか?売ってくれへんか?」
「(この人…何処でそれを)さ、さあ。父の刀は手元には一振りも残ってませんが…」
「…ほお」
途端に目を鋭くした涼は近くの伊織を鞘で持ち上げると、空中に放り投げた。
「伊織ッ!!?」
受け止めようと駆け出した青空だが、涼の振るった鞘が腹部に直撃し、後方に吹っ飛ばされる。
「ガッ!?」
落ちてきた伊織は涼が左手で受け止めた。
「ふ、ふえぇぇぇぇぇん!!!!」
「…しらばっくれんなや。アンさんとそこに隠れてる女の会話を聞いた奴がおるんや。あることは分かってるんやで」
右手に抜いた刀を持ち、青空夫妻に突きつける涼。
「…赤空最後の一振りを持ってくるまで、このガキは預かっておくで」
風車を息を吹きかけて回しながら、一樹は青空夫妻の家に向かっていた。
「櫻井さん!!!!」
「おろ?どうしたでござるか?」
青ざめた顔で一樹に縋る青空夫妻。
「け、警察を!警察を呼んでください!!」
「うちの子が!うちの子が!」
「!?」
主に実写版の京都大火編、伝説の最後編に原作るろ剣をミックスする感じで進めていきます。
では、また次回。