人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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京都大火編、スタートです!


Episode126 鍛冶屋-ブラックスミス-

「おーい一樹!大丈夫かー!?」

気絶している楯無を小脇に抱えているため、ゆっくりとしか飛べないフリーダムに近づく麒麟とバンシィ。

「俺は全然大丈夫。そっちは?」

「弾がバンシィに気に入られた。それで怒ったエムが殴りかかってきたんだけど、ダリルが連れて行った」

「『は?』」

最強タッグが呆然としていると、頭部のみ解除するバンシィ。

「まあ、そんな訳です」

苦笑を浮かべる弾の顔を見て、とりあえず理解した一樹とミオ。

「…世界で3人目の男子がお前か」

『マスターの身内ばっかりだねぇ…』

「…何でだ?お前が何かしてるのか?」

『してる訳無いでしょ!!?』

ミオ渾身のツッコミを流すと、楯無を一夏に預ける一樹。

「…とりあえず帰ろうぜ。疲れたし、腹減った」

「だな…って俺に預ける意味は?」

「お前が1番運ぶのが上手いから」

「(絶対その方がこの子喜ぶからとか思ってるよね?)」

再び装甲を纏った弾は苦笑を浮かべていた。

 

 

「お疲れ様。かーくん」

「あぁ〜…」

旅館に戻り、食事に温泉を済ませた一樹は雪恵の膝枕を堪能していた。

 

ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?

 

「…何か悲鳴が聞こえた気が…」

「「大丈夫雪(ユキエ)。ただの幻聴だから」」

「これほど説得力の無い【大丈夫】は中々無いと思うんだ」

一樹とセリーの息の合った言葉に苦笑する雪恵。

「…なあ雪」

「ん?どうしたの?」

「…明日、東京に帰るんだよな?」

「うん。明日の朝の新幹線で。それがどうかしたの?」

「実は…」

 

 

「…あれ?一樹はどうしたんだ?」

翌朝の京都駅。集合場所に来ない一樹を不思議に思った一夏。

同じ部屋だった雪恵に聞いてみると、少し落ち込んだ声で教えてくれた。

「…かーくんは来ないよ」

「来ない?どういう事だ?」

「…京都でやり残した事があるんだって」

「はぁ?」

 

 

「(この店か…さて、言われた品を注文しないとな)」

とある茶屋に来ていた一樹(和装ver)。

それは、昨晩意識を取り戻した楯無からの指示だった。

 

『そう…またあなたが助けてくれたのね』

『俺だけの力じゃねえよ。お前を機体から引っ張り出したのは俺だけど。それより、お前に言っておく事がある』

『…何かしら?』

『明日、東京に戻る予定になってるだろ?』

『ええ…』

『悪いが、俺は京都に残る』

そう言うと、小脇に抱えていた鞘から折れた逆刃刀を見せる一樹。

『…折れてる?』

『ああ…コレを作れるのは世界で1人しかいないんでな』

『…場所は分かってるの?』

『んにゃ。その人は結構引越し好きでな。ちょっと探さなきゃいけないんだ』

『なら…私達【更識】にも協力させてくれないかしら?あまりおおっぴらにS.M.Sに行けないんでしょ?今は』

『……』

『葵屋』

『ん?』

『そこが京都での更識家の拠点よ。そこに初めて更識家の人間として入るにはある条件があるの』

 

「いらっしゃい!ご注文は?」

()()()()()()()()()()()()()()をお願いするでござるよ」

「え?」

「みたらしだんごの餡子マシマシをお願いするでござるよ」

「あの…」

「みたらしだんごの餡子マシマシをお願いするでござるよ」

「……」

「……」

 

『葵屋の真北にある茶屋で【みたらしだんごの餡子マシマシ】を3回頼むの。店員がどんなに冷たい態度をとっても、毅然としてね。それが、更識の関係者としての合言葉なの』

 

「……少々お待ちください」

しばらく待つと、2()()()のみたらしだんごと茶が出てきた。

「(醤油ダレが絶妙な甘さで茶が進むな。美味い美味い)」

だんごの美味さを素直に賞賛していると、背後に気配を感じた。

「お気に召された様ですな。櫻井様」

あまりに自然に話しかけてきたその人物だが、一樹は特に驚く事なく応える。

「拙者、正直あまり関西(こちら)の味付けは得意では無いのでござるが…このだんごは素直に美味しいでござる」

「それは良かった。では…食べ終わり次第、移動をお願いできますかな?」

「了解でござるよ」

 

 

「楯無様から聞いた話では、我々に何か頼みがあるとの事ですが…」

一樹を葵屋に案内してくれたその老人【柏崎念至】の役職名は【翁】。

京都内の情報を一身に集めるのが役目だ。

「翁殿、それに更識の情報網を使って人探しをして欲しいでござるよ」

「人探し?」

「ええ」

腰にさしていた鞘から、折れた逆刃刀を取り出し翁に見せる。

「この逆刃刀の生みの親…【新井赤空(あらいしゃっくう)】殿の居場所を出来るだけ、早く…」

「了解した…すぐに手配しよう」

 

 

「○○様、アイツは京都に残りました」

「そうか…折れた刀の代わりを探してるってとこか。ふんっ、あのクズも間抜けだな。()()に刀を打ってもらおうだなんてな」

 

 

「……」

一樹が無言で見つめるのは、新井赤空と彫られた墓石。

「(赤空さん…)」

 

 

『お前か。オレに変な刀を作れとかほざいた馬鹿は』

まだ(見た目は)幼い一樹に向かって、不敵に笑いながら近づく赤空。

『…護身用なら、殺傷力を追求する必要はありませんから…』

『だったらそこらの鉄棒でも振り回していたらどうだ?わざわざ自分に刃を向ける必要はねえだろう?』

『……』

『俺はこのご時世にもかかわらず、殺傷力を高める刀だけを打ってきた。そんな俺に何故?』

『だからですよ…殺傷力を高める刀を打ってきたからこそ、こんな辺鄙(へんぴ)な刀を打つ事が出来ると思ったんです』

『褒めてんだか貶してんだか分かんねえ言葉だな。だが』

そう言って小脇に抱えていた刀を一樹に向かって投げる。

受け取り、鞘から抜いたそこには…逆刃刀があった。

『そんなふざけた注文をする奴だ。出来損ないで充分だろ。それが折れた時、まだそんなふざけた注文が出来るのなら…俺を訪ねに、京都まで来な』

 

 

赤空の墓参りを終えた一樹が翁と向かったのは、ある鍛冶屋だった。

「赤空には全ての技術を伝授した息子が1人いるとのこと。その名も【新井青空(せいくう)】彼なら、新しい逆刃刀を造る事が出来るかもしれぬ」

「…そうだと良いでござるが」

鍛冶屋に着き、最初に目に入ったのは、包丁や鍬などの日常品。その次が…

「ふぁい?」

「おろ!?」

「ひょ!?」

また歯も生え揃っていない赤子だった。

「…青空?」

「いや、まさか…」

一樹と翁が呆然としていると、目の前の赤子がその小さな両手を上げて…

「あくす、あくす」

と笑顔で一樹に向かって言う。

「あくす?」

「握手の事ではないかな?」

首を傾げる一樹に、翁が助言する。

「おぉ!握手でござるか!よしよし」

朗らかに笑いながら赤子と握手する一樹。

それにカラカラと笑う赤子。

「こら伊織、おイタしちゃダメよ。すいません、何かご入り用ですか?」

「おっかあ」

奥から出てきた女性が伊織を抱えて、一樹達に注文を聞く。

「包丁を見せていただきたいでござるが…?」

「…櫻井様?」

刀ではなく、包丁を頼む一樹を疑問に思う翁。そんな翁の視線を他所に、女性からオススメの包丁を受け取る一樹。

「…試し斬りしてもよろしいでござるか?」

「どうぞ♪」

「では…」

何の前触れも無く、懐から大根を取り出す一樹。

「ひょ!!?」

「え!!?」

翁と女性が驚くのを横目に、勢いよく包丁を大根に振り下ろした。

「(うむ、良い斬れ味じゃ)」

スパッ、と気持ちよく斬れた事を評価する翁。

しかし、続く一樹の行動に驚く事になる。

「……」

斬った大根の断面同士を近づけ…

「なっ!!?」

ピタッ、と斬る前に戻った。

「【戻し斬り】か!初めて見ましたぞ!?」

斬り口の組織を全く潰す事なく斬る事で、再び元通りに出来てしまうという…名刀と達人の腕があって初めて行なえるソレに、翁も興奮気味だ。

「…あの、ウチの商品に何か不手際でも?」

少し騒ぎすぎたのか、奥から作業衣姿の男性が出てきた。

「いや、違うでござるよ。拙者達はこの包丁の出来の良さに驚いていただけでござる」

「そうですか。それは良かった」

ホッとした様子の男性。一樹は本題に入るために、男性の名を聞く。

「…あなたが、新井青空殿でござるか?」

「はい、そうですけど…」

青空が頷くと、一樹は表情を引き締めて本題に入る。

「拙者は、お父上にお世話になった者でござる」

「……」

「お父上がお亡くなりになったと聞き、折り入って頼みがあるでござる」

「……」

「刀を一振り、打って頂けぬか?」

 

 

「…なるほど」

折れた逆刃刀を見せ、事情を粗方説明した一樹。

「…父はよう言うとりました。『俺の造った刀がいずれ時代を動かす』と。僕はそれが理解出来なかった…この平和な世に、殺傷力の高い刀を造ってどうすると」

「……」

「ISが出来て、刀は更に用無しになった。だから僕も刀匠ではなく、単なる鍛冶屋として日常品を打っとります。申し訳ないが、刀は二度と造りません」

青空の瞳の奥に、確かな信念を見た一樹。

断られたというのに、自然と穏やかな笑みが浮かんだ。

「…なるほど。失礼いたした」

青空夫妻に一礼すると、ずっと黙って話を聞いていた翁と共に、街に戻った。

 

 

「あの人…お困りだったんじゃないの?あなたが打たなくとも、お義父さまの最後の一振りを渡せば…」

「…いや、良いんだ。この平和な世に、刀はいらないんだから」

一樹達が去った後、青空夫妻がそんな会話をしていた。

…盗み聞きされているとも知らないで。

 

 

「○○様、涼が到着しました」

「入れてやりな」

扉を開けて入ってきたのは、刀を4本持った男。背中に2本交差するように背負い、残り2本は両腰だ。

「お早いお着きだね」

「ワイは大阪住まいやさかい。メールから2時間程度で着くのは簡単や」

「…他の連中は1週間は待ってくれって言ってたけどね」

「まあ急に連絡来たからそれもしゃあないわな」

「…ま、ゆっくりしていてよ」

「そうさせてもらうわ」

近くにあったワインを飲みながらくつろぐ涼。そこに報告係であり、○○の補佐役でもある【百識】の正治が入ってきた。

「○○様、ヤツが逆刃刀の依頼をある鍛冶屋にしていたそうです。断られたそうですが…」

「誰に?」

「新井赤空の息子、青空です」

赤空の名を聞いた涼の表情が変わったのを気にせず、正治は続ける。

「赤空の造った最後の一振りとやらがあるそうですが、それも渡していません」

「ほお…あの名刀匠、新井赤空の、最後の一振りねえ…」

たった今着いたばかりだというのに、部屋を出ようとする涼。

「大事の前だから、そんなに面倒事おこさないでくれよ」

「ほいな」

 

 

「しかし残念でしたな…青空さんに打ってもらえないとなると、逆刃刀探しはまた1から出直しになりまする」

「何、焦る必要は無いでござる。他の刀匠にも当たってみるだけでござるよ」

「…そうですな」

街に戻ってきた2人がそんな会話をしていると…

「買うてってや〜!可愛い可愛い風車(かざぐるま)やで〜!買うてってや〜!」

色とりどりの風車が売られているのが目に入った。

「…翁殿、先に戻っていて欲しいでござる。拙者はあの風車を伊織に買ってくるでござるよ」

穏やかな笑みの一樹に、翁も笑顔で返した。

「分かりました」

 

 

涼は青空夫妻の家に着くと、伊織に近付いた。

「ふぁ?」

「おい坊、おとんはどこや?」

そんな声が聞こえたのか、青空が奥から出てきた。

「あ、いらっしゃい。何かお探しですか?」

その瞬間、涼の顔が歪んだ。

「アンさんが新井赤空の息子、青空か。赤空の最後の一振り、あるって話みたいやないか?売ってくれへんか?」

「(この人…何処でそれを)さ、さあ。父の刀は手元には一振りも残ってませんが…」

「…ほお」

途端に目を鋭くした涼は近くの伊織を鞘で持ち上げると、空中に放り投げた。

「伊織ッ!!?」

受け止めようと駆け出した青空だが、涼の振るった鞘が腹部に直撃し、後方に吹っ飛ばされる。

「ガッ!?」

落ちてきた伊織は涼が左手で受け止めた。

「ふ、ふえぇぇぇぇぇん!!!!」

「…しらばっくれんなや。アンさんとそこに隠れてる女の会話を聞いた奴がおるんや。あることは分かってるんやで」

右手に抜いた刀を持ち、青空夫妻に突きつける涼。

「…赤空最後の一振りを持ってくるまで、このガキは預かっておくで」

 

 

風車を息を吹きかけて回しながら、一樹は青空夫妻の家に向かっていた。

「櫻井さん!!!!」

「おろ?どうしたでござるか?」

青ざめた顔で一樹に縋る青空夫妻。

「け、警察を!警察を呼んでください!!」

「うちの子が!うちの子が!」

「!?」




主に実写版の京都大火編、伝説の最後編に原作るろ剣をミックスする感じで進めていきます。

では、また次回。
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