人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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長い!
前回が短かった分長いぞ!

内容が濃いかは人それぞれ←オイ


Episode129 京都大火-インフェルノ-

警官が京都の各地に配置され、警官では手の届かない所は【更識】の人間が配置された。

「……」

「よっ!ほっ!」

刻一刻と迫るその時に備え、一樹は精神統一を、一夏は準備運動をしていた。

ちなみに、今の一樹の格好は緋色の衣から、雪の結晶の装飾が施された白い衣となっている。

和服屋の女将に和服を返そうとしたら、

『汚れる事は気にしなくて良いから、コレを着なさい!』

と、渡されたのだ。ちなみに…

『あなたの側にずっといるその子、【雪恵】って名前なんでしょ?だから勝利の女神の代わりに、ね?』

その言葉に、雪恵の顔が真っ赤になったのは言うまでもないだろう。

 

 

そして、こちらも動き始めようとしていた…

「…時間だ。全員配置につけ」

藤原の合図に、正治以外の【幹部】が動き始める。

「宗太」

「はい?」

その中で、宗太を呼び止める藤原。

()()()忘れるなよ?」

「…はい」

藤原の言葉の真意を察した宗太は、笑顔で一礼すると、改めて部屋から出て行く。

「…よし、放て」

「はっ」

藤原の指示を受けた正治が、部屋を出て行く。

「…さァて、お前はどう来る?クズ」

 

 

『…櫻井君』

『おろ?』

新しい和服に着替え、店を出ようとした一樹を呼び止める女将。

『今、京都が大変な事になりつつあって、それを阻止するために櫻井君が動いてる事は知ってるわ。だから、ひとつ私と…いえ、この店の人達と約束して』

『…何でござるか?』

『その服が幾ら汚れようが、ボロボロになろうが構わないわ。あなたが今までこの店にもたらしてくれた利益は、着物の10や20程度じゃ覆らないもの。だから…もし戦う事になったとしても、その口調は続けて』

『…何故でござる?』

いつもカラカラと笑っている女将の真面目な顔に、一樹も真面目な顔で聞く。

『だって…その口調であるうちは、櫻井君は冷静な証でしょう?』

『……』

『ある意味、今の櫻井君は演技をしてるのだからね。しかも、戦ってる相手からしたらふざけてるのか!って怒ると思うし。相手から冷静さを奪えて一石二鳥でしょ?』

『…かもしれないでござるな』

 

 

「(…気遣い、感謝するぜ。女将)」

瞑想をしていた一樹がそう呟く。

逆刃刀を腰にさし直す(ちなみにエボルトラスターとブラストショットは何があっても落ちない様に、厳重に小物袋に入れて腰にぶら下げている)と、一夏と共に前線へと向かう。

 

 

「…来たか」

京都の県境にいる警官の目に、大きな炎が映った。

「警察の威信にかけて…奴らの暴挙を食い止めるぞ…!!!!」

「「「「オウ!!!!」」」」

時刻は午後11時59分。

藤原の【京都大火】作戦が、始まった…!

「「「「ウオォォォォォォォ!!!!」」」」

「「「「だあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」

警官隊と藤原一派が激戦を繰り広げるところに、静かに近付く2人…櫻井一樹と織斑一夏。

 

 

【更識】から借りた、護身用の模造刀で次々と敵を沈めていく一夏。

「(久しく篠ノ之流を振るってないから、多分に我流が目立ってるな)」

我流が目立つと言っても、それはむしろ実戦向きの剣術として昇華している。

流れるように敵を打ち倒していく一夏の姿は、その白い制服も相まって、後に【IS学園の白い悪魔】と呼ばれたとかなかったとか。

 

 

一方の一樹は、いち早く斬り込んで来た1人の斬撃を、刀の柄部分を両手首で受け止め素早く横移動。それによって斬撃を止められた者は前のめりに倒れ、突進してきた1人に足を掛けて転ばせる。

そこで漸く逆刃刀を抜き、同時に斬りかかってきた3人を横薙ぎの一撃で沈める。

「この野郎!!」

「ッ…」

倒れた仲間を踏み台にして一樹に斬りかかる者には、空中にいる間に3連打を喰らわせる。

「ガッ…」

素早く駆け出して、一樹に迫り来る者共を振り切る。

「待てやコラ!」

「逃げるな!」

当然藤原一派は一樹を追うが、それぞれの走力の違いから、陣形が崩れる。

それが一樹の狙いだ_____!!!!

「しっ!!」

滑り込む様にして速さを落とす事なく方向転換し、陣形が崩れた一派の者共を逆刃刀で殴り倒していく。

「グッ!?」

「ガッ!?」

「ゴッ!?」

「ひぃっ!?」

陣形を組んでいた最後の1人は咄嗟に横に移動して一樹の攻撃を避ける。

「(今だ!!!!)」

自分の横を駆け抜けた一樹の背後を狙うが…

「(あれ…?速すぎない…?)」

自分も全力を出して走っているのに、一樹の背中は近付くどころか遠くなっていく。

そして…

「(え?嘘だろ…!?)」

一樹を追うあまりに、自分がどこに向かって走っているのか把握していなかった。

「でえぇぇぇぇい!!!!」

「あがっ!?」

何と一樹は橋の手すりを踏み台とし、飛び上がった。自分の背後を狙う一派の者の頭上をとり、落下+全体重を乗せた一撃を喰らわせた。

「……」

周囲の敵が全員倒れたのを確認すると、その場を警官に任せて次の戦場へと一樹は駆け出した。

 

 

ISが使えなくなった事で戦闘力が極端に落ちた雪恵を含む代表候補生達だが、藤原一派と互角以上に渡り合えていた。

「お前ら、邪魔…!!!!」

理由の一つとして、セリーの存在があるのは間違いないだろう。

殺さない程度に手加減をしているとはいえ、その力は絶大だ。

【更識】から借りた籠手で一派の斬撃を受け止め、腰の入ったパンチで殴り飛ばす。

「オゴッ!?」

殴り飛ばされた先には、別の一派の者がおり…

「あがっ!?」

見事にぶつかり、2人を倒した。

一発の拳で2人を倒すというセリーにしか出来ない荒技だ。

「えい!」

「ガッ!?」

「やぁ!」

「ウグッ!?」

その近くでは、雪恵が棍棒を振り回して近寄る敵をそれはもうバッタバッタと薙ぎ倒していく。

…どこでそんな技術を得たのか深く問いただしたいところだ。

 

 

雪恵とセリーの2人から少し離れたところでは、箒達が藤原一派と戦っていた。

「はっ!」

箒は愛用の日本刀で敵の斬撃を受け流し、前のめりになったところを峰で当て身を入れて気絶させる。

「そこですわ!」

セシリアは後方支援として、箒達では捌ききれない敵の肩などをスナイパーライフルで撃ち抜く。

「アンタらの計画は、分かってるんだから!」

鈴は中国にいた頃習っていた棒術で確実に敵を撃退していく。

「この綺麗な街を、焼かせなんかしない!」

「貴様らには地獄を味わせてやる」

シャルロットとラウラはゴム弾を装填したハンドガンを持って遊撃手として動き回っていた。

「腕を上げたわね、簪ちゃん!」

「私も、【更識】だから…!」

更識姉妹は2人とも槍を持ち、見事な連携で一派を倒していく。

 

 

最前線で戦っている一夏。

その背中を狙って攻撃してくる者が…!

「(なろ…!)」

すぐさま己の得物でその攻撃を受け止め、受け流しの要領で自分の前に来させ…

 

ズドンッッッ!!!!!!!!

 

「ゴホッ!?」

膝蹴りを喰らわせた。1人を片付けたが、まだまだ藤原一派は減る様子を見せない。

「ごちゃごちゃ邪魔だっての!」

左にいる敵の襟元を掴んで振り回す。それだけで敵達の動きが一種止まる。その隙を逃さず、前蹴りで複数をまとめて倒す。

「一夏、待たせたな」

そんな声と共に、黒い影が一夏の前に現れ、大太刀を軽々と振るって目の前の敵を一掃した。

「…本当、遅えよ。千冬姉」

「ふむ、案外私に合う武器が見つからなくてな。手間取ってしまった」

一樹と更識姉妹(あと何故か箒)を除き、IS学園組みは【更識】から武器を借りている。

生身でISブレードをも軽々しく動かす千冬に合う武器が、そう簡単に見つかるとは確かに思えない。

「…なら、遅れた分きっちり動いてくれよ?」

「フッ、誰に対して言っている」

 

 

「ッ!?ユキエ!」

雪恵の頭上に、火を持った敵が1人いるのを見つけたセリー。急ぎテレポートしようとするが、そんなセリーの近くに、蹲っている敵3人が重なる。そう、まるで階段のように…

「行って!櫻井君!」

「ッ!」

楯無の叫びの後、凄まじい勢いで一樹が駆け込んできた。更識姉妹が作った人の階段を登り、雪恵を狙う不届き者に逆刃刀を振るった。

「ッし!!」

「ウガァッ…」

その剣速によって火は消え、不届き者は地に落ちた。

トンッ、と一樹は軟着陸すると、雪恵とセリーの状態を確認する。

「…ケガは無いようでござるな」

「うん!ありがとうかーくん」

「ありがとうカズキ!」

ホッと息をするのもつかの間。

「火が出たぞ!!消火急げ!!!!」

そんな警官の叫びが聞こえた。

「櫻井君!ここは私達に任せて!!」

楯無の言葉を聞いた一樹。雪恵とセリーを見ると、2人とも力強く頷いた。

「頼むでござる…!」

そして、疾風の如く駆け出した。

 

 

「ウギャッ!?」

「アガッ!?」

「オゴッ!?」

駆けながらも、藤原一派を沈めていく一樹。消火活動を行なっている警官隊を見つけ、向かおうとしたその瞬間。

 

_____やるじゃん、クズ。

 

「ッ!?」

粘着質で、ここ数ヶ月よく向けられる種類の殺気を感じた一樹。

辺りを見回したら…

 

不敵に笑いながら、京の街を闊歩する藤原の姿が…

「藤原…!」

すぐさま藤原を追う一樹。だが、京の街は狭く入り組んでいる。いくら一樹と言えど、隠れられたらすぐには見つけられない…

「……」

全神経を気配察知に集中する一樹。

 

ドギャアァァァァン!!!!

 

「うぉらぁ!!!!」

「おらぁ!!!!」

突然、真横の建物二階から飛び出してくる敵。しかし一樹に不意打ちは通用せず、すぐさま迎撃する。

「ガッ!?」

「アグッ!?」

2人迎撃したのを皮切りに、周辺の建物全てから敵が飛び出してくる。

しかも、その者共は全員藤原と似た顔つきだった。

「(影武者か…!)」

自身が罠にかけられた事を察する一樹。だが、影武者達の実力は大した事なく、逆刃刀の一撃で沈んでいく。

「(しかし…数が、多すぎる!!)」

 

 

最初こそ順調に戦っていた雪恵だが、徐々に体力の消耗が目立ってきた。

「はぁ、はぁ、はぁ」

棍棒を振り回して敵を倒していくが、その一撃がどんどん弱くなっていく。

「はぁ…えい!えい!」

それでも雪恵の頭に、撤退の2文字は無かった。

 

 

「ふっ!しっ!」

「ウガッ!?」

「アグッ!?」

逆刃刀を左右に振るい、一樹を挟み込もうとした影武者2人を倒す。

「うおらっ!!」

「ッ!」

一樹の足元を狙って来た横薙ぎの一撃には、逆刃刀を地面に刺して受け止め、前蹴りで迎撃する。

「おおお!」

「くっ…!」

腹部に突撃してきた敵は、自ら転んで拘束を振り解き、巴投げの要領で投げ飛ばす。

 

 

「おいおい、もう夜遅いってのに随分と騒がしいじゃねえか」

京都のとある一角で、1人の青年が藤原一派と対峙していた。

その青年とは…

「この趣ある街も焼こうだなんてさせるかよ!」

赤毛の長髪を振り回して暴れる、五反田弾だ。

両袖に隠しておいた銃を取り出し、撃ちまくる。硬質ゴム弾のため死ぬことはない。だが、某自爆好きパイロット風に言うならば…

()()()()()()()♪」

満面の笑みを浮かべながら、弾は二丁拳銃で暴れ続けた。

 

 

「勝ったぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

そんな警官の叫びが聞こえたのは、一樹が最後の影武者を気絶させた時だった。

「(おかしい…)」

違和感が抜けない一樹に、一夏と弾が近づいてきた。

「なあ一樹、妙だと思わねえか?」

一夏も違和感があるのか、神妙な面持ちで一樹に話しかけてきた。

「ああ」

「肝心の藤原や【幹部】とやらが1人も出てねえぞ」

一樹と一夏の会話についていけない弾。

「え、えと…どういうこと?」

「何もかも簡単過ぎるのでござるよ。情報の入手から、京都大火の阻止まで。それに、京都を焼き尽くす事が目的ならば、藤原は自分の目でソレを見たいはず」

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ…」

肩で息をしている雪恵。近くの井戸から水を汲み、一口飲む。すこし呼吸が落ち着いたその瞬間。

「田中雪恵さん、ですよね?」

背後から、雪恵を呼ぶ声がした。

「ッ!?」

慌てて武器である棍棒を掴んで振り向く雪恵。そこには、刀を手で遊ばせながら自分を見る宗太の姿が…

「あなた、この間の_____」

雪恵の言葉は最後まで続かなかった。一瞬で雪恵の懐に踏み込んだ宗太に特殊なライトを当てられ、意識を失う。

「ユキエ?」

少し離れた所で戦っていたセリーが、中々合流しない雪恵を心配して近づいてくる。

「ッ!?お前!!」

宗太に気づいたセリーが殴りかかるより先に、宗太は袖から()()()()()をセリーに向かって放った。それは意思を持っているかの様に動き、セリーの両腕を拘束する。

「(ッ!?力が…)」

自身の体に起こった異変に硬直するセリー。宗太はその隙を逃さず、セリーに肉薄。峰打ちでセリーも気絶させた。

 

 

「じゃあ、藤原?はまだ何か企んでるって事かよ」

「……」

逆刃刀を1回転させ納刀すると、一樹は語り出した。

「幕末、天下分け目の戦となった【戊辰 鳥羽・伏見】」

 

 

「将軍徳川慶喜は味方を欺き、船で大阪湾から江戸へ逃げ帰った」

時を同じくして、藤原もまた、誰にでもなく語り出していた。

 

 

近くにいた警官から地図を受け取る一樹。

「それによって維新側の優勢、勝利となり、今の礎となる新時代【明治】となった…藤原がもし、その歴史を利用しているのだとしたら…」

「…まさか!」

一樹と一夏、同時にある考えに至った。

その目が見つめるは、地図のある一点、【東京】。

 

 

「東京を砲撃し…まずはこの国をぶっ壊す」

愛刀である新井赤空最終型殺人奇剣【無限刃】の特徴的なノコギリ状の刃を見る藤原の目は、冷酷に見開かれていた。

 

 

「次の狙いは東京か…!!!!」

地図を放り出し、葵屋に向かって走る一樹。今気づいたこの事を、楯無に伝えなければならないからだ。

そんな一樹を気にせずに、一頭の馬が駆けてきた。

「ッ!!?」

咄嗟に横転して避ける一樹。顔を上げた時に見えたのは…

「(雪にセリー!!?)」

宗太に連れ去られようとしている2人の姿だった。

「くっ!!!!」

行かせる訳にはいかない。一樹は進路上の瓦屋根の上を爆走する。かなりの距離をショートカットしたが、それでも宗太の乗る馬に追いつけない。すぐさま近くの馬に飛び乗り、後を追う一樹。

「はっ!」

 

 

宗太達を追っていると、いつの間にか大阪湾に着いていた。

そして、暗雲立ち込め、嵐となった港から、強引に出航しようとする軍艦が一艦…

あまりに強引に出航したからか、近くの物見櫓(ものみやぐら)が倒れ、道になった。

「ッ!!?」

馬から飛び降り、物見櫓の道を駆ける一樹。道が崩れる寸前で何とか軍艦に乗り込んだ。

「お前は!?」

「侵入者だ!殺せ!!」

一樹を見つけた船員が一斉に襲いかかる。起き上がりと同時に逆刃刀を抜き、迎撃する。

「会いたかったぜクズ野郎!」

「ッ…!」

騒ぎを聞きつけ、【鉄壁】の村田が飛び出してきた。

左手に亀甲状の盾を持ち、右手には()の短い槍。

村田は逆刃刀の攻撃を盾で受け止め、槍で突き殺そうとする。それを逆刃刀をすぐさま逆手に持ち替える事で受け流す一樹だが、そこに【豪傑】の内山の突進が来る。

「うおらぁっ!!!!」

「がっ!!?!!?」

あまりの巨体に、流石の一樹も踏ん張れず後方に吹っ飛ぶ。

「ヒャッハー!!」

何とか起き上がった瞬間、【俊敏】の綾野が右手にドスを持って飛びかかってきた。

「ッ!!」

縦横無尽に襲い来る斬撃を、何とか避ける一樹。綾野の隙をつき、逆刃刀の柄頭で腹部を殴る。

「あがっ!?」

カウンター気味に決まったその攻撃に、綾野が怯む。再度村田が突進してこようとするのが視界の隅に入り、身構える一樹。

 

「やめろ」

 

そこに響く制止の声。

声の主である藤原は、宗太を傍につけて出てきた。

「流石じゃんクズ。京都大火で終わりじゃないって気付いたのか」

「……雪とセリーはどこだ」

単刀直入に聞く一樹に、藤原は苛立たしげに舌打ちする。

「なんだよ。折角僕が褒めてやったってのに」

「罪のない人を巻き込む事は許さん」

藤原の言葉など、一樹の眼中に無い。

「…まあ良いだろ。出番だよ雪恵さん!!!!」

藤原の声によって、【変幻】の花澤に連れて来られる雪恵。

「離して!離してよ!!」

「ちょっと雪恵ちゃん、久しぶりに会ったのにちょっと冷たすぎない?」

それと…

「さっさと歩け!!!!」

「んんっ!!!!」

口に猿轡を噛まされ、両手首をロープで固定された状態で正治に引っ張られるセリーの姿が…

「雪!セリー!」

叫ぶ一樹を他所に、嗤いながら藤原が言う。

「おいおい正治。可哀想だから外してやりな」

「はい。おいじっとしてろ!」

正治に猿轡を外され、漸く声が出せるようになったセリー。

「カズキ!私よりユキエを先に助けて!!」

「かーくん!セリーちゃんをはやく!!」

互いが互いを先に助けろという。その優しさが2人の美点だが、一樹は選ぶ必要など無い。何故なら、当然2人とも助けるから。

「安心するでござる今拙者が「何が【ござる】だその下らねえ物言いはやめろ!!!!」…」

一樹のござる口調に我慢が出来なくなった藤原が叫ぶ。

「僕が殺したいのはな。全力を出した状態のお前なんだよ。不殺だとか甘っちょろい事言ってる今のお前じゃないんだよ!!!!!!!!」

「…お主が命を狙っているのは拙者でござろう2人を離せ…!」

徐々に一樹の眼が鋭くなっていくのを見て、藤原は愉しそうに嗤う。

「…丁度良いし、そろそろ決着をつけようじゃないか」

鞘から無限刃を抜く藤原。

「不思議に思わないかクズ。何故普通の人間である正治がゼットンを抑えられているのか」

「……」

逆刃刀を強く握りしめ、藤原を見据える一樹。

「…お前の()()も昔世話になったロープの発展型でな。アレでゼットンの力を封じてるんだよ。だから今、ゼットンはただのガキと同じという事だ…」

「…仕入れ先は【ブラックスター】か」

「良く知ってるじゃないか。そこの奴を脅して手に入れたロープを僕の力で改良したのが、今ゼットンの手首に巻きついてるアレだ…正治!」

藤原の命令に、正治は手に持っていた松明の火をセリーに近付ける…!

「ほら熱いよ燃えちゃうよ!!!!!!!!」

「ッ!!?!!?!!?」

「やめろ!!!!!!!!!!!!!!!!」

「やめて!!!!!!!!!!!!!!!!」

近くにいる雪恵が突進しようとするが、それは花澤に止められる。

そして、かつてない形相で叫ぶ一樹。そんな一樹を、藤原は更に挑発する。

「熱いぜ…痛いぜ…いっそ殺してほしいと願う程に!」

「藤原やめろ……」

一樹の顔が変わっていくのを、やはり嗤いながら見る藤原。

「それだよクズ…それなんだよ僕が待っていたのは!僕を殺したいかい?殺してみろよ」

「黙れ……」

一樹の雰囲気が変わっていくのを察した雪恵とセリーが叫ぶ。

「かーくん!!挑発に乗っちゃダメ!!!!」

「カズキ!!私は大丈夫だから!!!!」

2人の叫びは一樹の耳に入るが、それが余計に一樹の表情を鋭くさせる。

2人にそんな事を言わせてしまっている不甲斐なさが、一樹の表情を鋭くさせている…

それを知ってか知らずか、藤原は続ける。

「自分を呪い、神を呪い、仏を呪い、時代を呪い全てを憎む」

「黙れ…」

「良い顔だぞクズ…アハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!」

 

_____ブチッ

 

…一樹の中の、()()が切れた。

「…藤原ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」

忿怒の形相で叫び、藤原に向かって駆け出す一樹。しかし藤原の前に村田が立ち塞がり、その盾で一樹の攻撃を受け止めようとする。

だが…

「どけ!!!!」

「がっ!?」

一樹は回し蹴りで村田を横に蹴り飛ばす。再度藤原に向かって走るが、藤原は驚異の跳躍力で2階に上がる。

「この艦、【煉獄(れんごく)】の船員は全員あの頃からの付き合いだ。ちょっとした同窓会と洒落込もうじゃないか!」

藤原が話してる間も、一樹は【破壊】の沢山と対峙していた。沢山の剛腕から放たれる斬撃を紙一重で避け、鳩尾を逆刃刀で殴る。

「ウゴッ!?」

一瞬怯む沢山だが、その顔を怒りに歪ませ、全力で一樹を蹴り飛ばした。

「死ねやぁ!!!!」

「かはっ…」

「かーくん!!?」

「カズキ!!?」

意識が持っていかれそうになる一樹だが、雪恵とセリーの声で奮い立つ。

「ッ!!」

壁を走って向かうために、壁に近づくが…

「行かせるわきゃあねえだろ!!?」

【策謀】の坂崎に阻止される。何とか坂崎の斬撃を受け止めるが、坂崎はそこで前のめりに全体重をかけてきた。

逆刃刀の逆刃が、一樹の首元に迫る…

「カズキ!!?」

自分に炎が向けられていることも忘れて叫ぶセリー。

そんなセリーに、正治がキレた。

「ああうるさい!お前はこっちだ!!」

「きゃっ!!?」

ほぼ意味をなさない手すり間際に投げられるセリー。姿勢を崩し、今にも落ちそうだ…

「セリーちゃん!!?!!?」

それに気付いた雪恵が駆け寄ろうとするが、やはり花澤に止められる。

「ダメでしょ雪恵ちゃん。あなたは藤原君の1番大切な人なんだから」

「離してよ!私はあんな人好きじゃない!!」

雪恵と花澤が戦っているうちにと、正治は叫んだ。

「おおおおおい!人殺し!!!!」

この場で【人殺し】と呼ばれる人物は1人しかいない。

「ッ!?」

坂崎と鍔迫り合いをしながら、正治の方へと向く一樹。そこで正治は、とんでもない行動に出る。

「うぉらぁ!!」

_____姿勢が崩れ、未だ両手を縛られているセリーを、荒れ狂う海へと蹴り落としたのだ。

「イヤぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!!?!!?」

「_____!!?!!!!!!?!!?」

声にならない声をあげ、一樹は坂崎を受け流してその背中を逆刃刀で殴って脱出。邪魔する【幹部】の足元をスライディングで潜り抜けるが、そこでは藤原が待ち構えていた。

「オラァッ!死ねやぁッ!!」

「ッ!!?!!?」

【幹部】の者達とは比べ物にならない速さと重さに、一樹は防御に回る事しか出来ない。何とか無限刃の斬撃を逆刃刀で受け止めるが、その状態で足で壁に押し付けられる。

「ガハッ!?」

「どうしたクズ!そんなもんか!!?人殺し様の実力はその程度かぁ!!?!!?」

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!!!!」

左手で鞘を抜き、藤原の腰を殴る。

「ガッ!?」

拘束から抜けると、蹲っている藤原の背中を踏み台に、雪恵を拘束している花澤のところまで跳ぶ。

「ひっ!!?」

一樹の形相に、花澤は雪恵から離れる。雪恵はその隙を逃さず、自らセリーが落とされた海に飛び降りた。

「セリーちゃん!!!!!!!!」

一樹もまた、【幹部】達が来る前に海へと飛び込んだ。

 

 

飛び込んですぐ、一樹は必死に岩に掴まるセリーと、セリーの縄を解こうとする雪恵の姿を発見。荒れ狂う海面を走って2人に近づく。

「2人とも動くな!!!!」

逆刃刀の逆刃で、セリーの両手を縛るロープを切断した瞬間だった。

 

ズガンッッッッ!!!!!!!!

 

一樹を、銃弾が襲ったのは…

「かーくん!!?」

「カズキ!!?」

「ゴフッ…」

血を吐きながら、雪恵とセリーを突き飛ばす一樹。

 

逃げろ…

 

その言葉を最後に、一樹は波に飲まれた…

 

 

とある海岸に流れ着いた一樹。

大波に飲まれたというのに、右手の逆刃刀と左手の鞘は、その手から離れていなかった。

倒れている一樹に近づく影。その人物は逆刃刀を拾って眺めた後、濡れた髪に隠れていた一樹の顔を見る。

「………」

そしてその人物は_____




最後の人物は誰なんでしょう?
ゼンゼンソウゾウガツカナイナァ…

次回から伝説の最後編です!
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