人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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本編とは全く関係ないですが言わせてください。





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ではどうぞ!


Episode133 処刑-パニッシュメント-

警官に連行された一樹。着いたのは、警視庁だった。

「……」

マスコミも入れない警視庁の奥部に連行され、抑えられているところに、警視総監の川司が来た。

「「……」」

無言の会話の後、川司は側にいた警官にアイコンタクト。その意を理解した警官によって、一樹の拘束は外された。

「……付いて来てくれ」

 

 

「失礼します」

警視庁内の応接室に一樹を案内した川司。ノックをした後に一樹を入れると、そこにいたのは…

「伊藤さんに、宗介…」

内務卿伊藤博昭と、現S.M.Sリーダー櫻井宗介だ…

「もう少し、時間を稼いでくれると思ったんだがな」

「……」

無言の一樹を見据えながら、伊藤が続けた言葉とは…

「悪いが一樹君。君には()()になってもらうぞ」

「…最初からそのつもりでござろう。何を今更」

ため息を吐きながら呆れる一樹に、伊藤は強い口調で反論する。

「藤原はハナから交渉に応じる気など無い!力で、この国を、世界を乗っ取るつもりだ」

「人心を味方につけ、一気に東京へ攻め込んでくるだろう」

川司の言葉に伊藤が頷くと、窓の外を眺めながら続ける。

「もはや全面戦争しか無い。だが今事を起こせば…首都東京に、大きな被害が出る…」

「…伊藤さん」

ずっと黙って話を聞く宗介を横目に、一樹は伊藤に淡々と問う。

「拙者が黙って殺されると思うか…?」

「……」

「…奴に近づけさえすれば、勝機はある」

伊藤はしばらくの思考の後…

「なるほど…面白い。やれるもんならやってみろ」

不敵に笑いながら一樹に言う伊藤に、一樹も自然と眼が鋭くなった。

「…餞別代わりだ。()()の名に相応しい花道を用意してやる」

そう言うと、応接室を出て行く伊藤。

伊藤を見送った後、一樹が宗介の方を見ると、宗介は力強く頷いたのだった。

 

 

IS学園に無事着き、ひと段落ついていた一夏と名目上護衛役の弾。

「あ”〜づがれだ〜」

「俺達でこれだから、他のみんなはもっと辛かったろうな…」

S.M.Sで鍛え抜かれている2人ですらそうなのだ。他の者の苦労は計り知れない。

 

ドンドンドンドンッ!!!!!!!!

 

『織斑君いる!!?!!?』

扉を荒々しく叩く音と共に、一夏を呼ぶ声が聞こえた。

「この声…黛先輩かな?」

「知り合いか?」

「むしろ一樹の理解者なまである」

「丁重におもてなしするぞ」

素早く動く弾。S.M.S隊員らしい動きに、一夏は苦笑する。

「はーい、今開けます」

扉を開けた瞬間、黛は一夏の眼前に先程届いた号外新聞を突き出した。

「コレ見て!!!!」

「ん?…!!?」

記事の一面を見た一夏の顔が鋭くなる。

「…弾」

「あん?」

「ほれ」

「ん?」

お茶を淹れる道具を持ってきた弾に新聞を渡す一夏。受け取った弾の目に映ったのは…

 

【左頬に十字傷を持つ伝説の殺し屋の公開斬首】

 

と書かれた一面だった。

「なんじゃこりゃ!!?」

「…奴らの言いなりになってるんだろうよ。しっかし、こんな早く一樹が捕まるなんて…楯無さんか簪を人質に取られたのか?」

「もしそうだとしたら、警察も落ちるところまで落ちたわね」

一夏の予測に、黛は表情を険しくさせて言う。普段おちゃらけている彼女でも、今回の事は相当頭に来ている様だ。

「…一夏」

「分かってる。処刑場に乗り込んで一樹を連れ戻すぞ!俺は千冬姉に話つけてくる!」

「私も行く!!」

「え、あ、ちょっ…」

弾が止める間もなく、一夏と黛は部屋を出て行ってしまった。ため息をついて後を追おうとする弾の耳に…

 

コンコン

 

窓を軽く叩く音が聞こえた。慌てて振り向くと、そこには…

「り、理香子さッんぐ!」

窓から潜入してきたのは、宗介の恋人である瀬川理香子だ。思わず叫びかける弾の口を手で抑えると、小声で話し出す。

「(ちょっと!バレたらどうするのよ!)」

「(す、すんません…けど、どうして理香子さんがここに?)」

「(最初は宗介や智希君達の誰かがやる予定だったんだけど、私を筆頭に女の子達が反対したのよ)」

「(あ〜…なるほど)」

その光景が頭に浮かぶ弾。一樹以外のTOP7の少年達には、ひとつだけ共通している弱点がある。

_____恋人のお願いには弱いという弱点が。

「(潜入する場所が場所だしね。だから代表して私が来たの。あ、潜入方法は聞かないでね。あなたじゃ絶対出来ない方法だから)」

「(何それめっちゃ気になる!!!!)」

「(教えない。それより、宗介からの伝言なんだけど…)」

「(あ、はい)」

「(一樹君の処刑に関してね。こっからは誰にも話しちゃダメよ。一夏君や雪恵ちゃんにも)」

「(…了解)」

「(_______________)」

「(…マジっすか。アイツも攻めるなあ…)」

「(一夏君に話さないでって言う意味、分かったかしら?)」

「(ええもちろん…アイツは知らない方が都合が良いですね。アイツの性格的に)」

「(そういう事だから、一夏君はほっといても動いてくれるから良いわ。あなたは万が一に備えて()()の事を話したけど、あまりコレの件は広めたく無いの。あなた以外だと本部勤めのS.M.S団員の極一部しか知らないからそのつもりで。あの2人に話してあげたいのは分かるけど…今は、堪える時よ。あなたもあの子達も)」

「(了解。何とかやりますよ)」

「(お願いね)」

伝える事を伝えると、理香子は忍者の様に一瞬で消えた。

「…ほんっと、S.M.Sの人達は人間離れしてるぜ」

ボソッと呟かれたその言葉は、どこか諦めを含んでいた。

…既に一夏や弾も充分人間離れしているのだが、知らぬは本人達ばかり、だ。

 

 

「いよいよ、だな」

無限刃の手入れをしながら、満面の笑みを浮かべる藤原。そんな藤原に酒を差し出す花澤。

「藤原君、すごく嬉しそう」

「そりゃ嬉しいさ。あのクズにこれ以上無い程の屈辱を与えて殺せるんだからな」

「…自分で殺る訳じゃ無いのに?」

「ん?……あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

夏休みの宿題を最終日に取り掛かる小学生の様なリアクションを取る藤原。

そんな藤原に声をかけるのは、ようやく包帯が外れた正治だ。

「藤原様、あの者がただ黙って処刑されるとは思いません。きっと、何か仕掛けてくる筈です」

「…それもそうだな」

あっさり落ち着いた藤原に、微笑む花澤。

「(かぁわいい…)」

藤原の愛人…つまり、第2夫人の座を狙う花澤は、藤原の表情全てが愛おしく思える。恐らく、藤原一派の中でも()()()()は上位に入るだろう…

「(藤原君がこぉんなに殺したい櫻井一樹って人、早く死んでくれないかなぁ…でないと、藤原君の心に、私が入れないからさぁ…)」

ドス暗い…深い闇を含んだ微笑みで藤原を見つめる花澤は、今この場で最も狂っていた。

 

 

ついにこの時が来た。

拘束された一樹は馬に乗せられ、顔を隠す麻袋を被った状態で民衆の前に晒された。

「この人殺し!」

「罪を償うんだな!」

民衆の声を聞き、一樹は顔を隠してて良かったと切に思う。この状態なら、まだ自分に言われてるのでは無いと思える。

「(まあ…強引にだけどな)」

 

 

藤原が指定した処刑場は、IS学園にほど近い海岸だった。処刑場に着き、警官に連れられる一樹。

「…袋を取れ」

目の前で誰かが命令した。警官が麻袋を取り、一樹の視界が開ける。

「…お前か」

一樹の正面にいたのは、【百識】の正治だった。

「藤原の野郎はどこだ」

「お前の最後は藤原様に変わって俺が見届けてやる」

「…下っ端に確認させるなんて、藤原も不確実な方法を取ったな」

飄々と言う一樹の頬に、正治の拳が決まる。

 

バキッ!!!!

 

「ッ…」

「無様な貴様が、藤原様を愚弄するな」

「…ペッ」

今の一撃で口の中が切れたのだろう。砂浜に溜まった血を吐き捨てる一樹。

「…なら奴に伝えておけ。『先に地獄で待ってる』ってな」

「その虚勢がいつまで続く、かな?」

 

 

「おい一樹!」

「かーくん!」

「カズキ!」

「「「「櫻井君!」」」」

処刑場に駆け込んで来た一夏たちIS学園組。竹で出来た柵をぶっ壊そうとする一夏を、やけに深く帽子を被った2人の警官が地面に抑え込んだ。

「ガッ!?」

「大人しくしてて下さい」

「この処刑に、この国の未来が掛かってるんです」

「ふざけんな!冤罪で人を処刑しなきゃいけない未来って何だよ!」

警官に怒鳴る一夏。その光景を見て、雪恵とセリーは妙な感覚を覚えるも、それどころでは無いと竹柵の間から覗き込んだ。

 

 

砂場に敷かれた藁の敷物に座らされる一樹。それと同時に、じっと座って待っていた川司が立ち上がる。伊藤から渡された、罪状の書かれた紙を広げ読み出す。

「この者!地球外生命体出没に紛れ!重き人命を絶つ事数多に及び!その非道かつ!残忍な、振る舞い…」

読み進んでいくほど、川司の声の力が無くなっていく。

「(川司さん…)」

仕事とはいえ、冤罪だと分かっている罪を読まなければならないのが川司には辛いのだろう。そんな川司を無言で見上げる一樹。

「どぉした!?早く続きを読め!」

そして少し離れたところで偉そうに座っていた正治が野次を飛ばす。

それでも読まない川司。痺れを切らした正治が川司から紙を奪い取ると大声で話し出した。

「櫻井一樹!その非道かつ!残忍な振る舞いは決して許されるものではない!!」

「……」

長くなってきた髪に顔を隠す一樹。それを見てほくそ笑みながら、正治は紙を高く掲げた。

「これより、櫻井一樹に殺された…いや、日本政府に見殺しにされた!罪のない人々の名を読み上げる!!」

そして読み上げられる名の数々。ほぼ一樹の知らない名が続いたが、正治が_____おそらくワザとだろう_____最後に読んだその名は、一樹の痛い記憶を蘇られた。

「都内美術高校1年、斎藤沙織!!!!」

「……」

 

『櫻井君、織斑君の攻略方法を教えて下さい!』

 

『この度、織斑一夏君とお付き合いさせていただく事になりました!』

 

『織斑君と櫻井君って、本当に仲良いよね!ちょっと妬けちゃうかも…』

 

一夏と付き合ってからも、一樹とは友人として親しくしていた少女。しかし彼女は藤原に殺され、操り人形となってしまっていた…そして、恋人である一夏の目の前で…

 

『織…斑…君?』

 

『もっと………色んな事…………話し……たかった……な……』

 

『ごめん…………………………ね…………』

 

『人として生きるのって……難しいね……』

 

沙織の残した言葉が、一樹の脳裏に蘇る。その時の、心の痛みも…

_____俺は…

 

『…欠けているものが見出せぬ中途半端なままでは奥義の会得はもちろん、藤原一派に勝つこともまず無理だろう。仮に勝てたとしても、お前の中に確実に存在する【狂気】には、打ち勝つ事など出来ぬ』

 

『人を生かす前に、自分を生かす事を忘れないで』

 

師である比古の、自分を心配してくれた簪の言葉も蘇る。

それは、一樹にある決意を固めさせた。

_____俺はもう…人にあんな死に方はさせない!

 

「犠牲者の中には、まだ未来のある若者も含まれており、その所業は残忍極まりない!!!!よってこの者を、斬首刑に処するものとする!!!!」

正治が読み上げると同時に、一樹の両サイドを抑えていたやはり目深に帽子を被った警官が、一樹を前のめりに倒す。そう、首を斬り落としやすいように。

 

_____もう二度と…

 

「やめて!!!!!!!!」

「やめろ!!!!!!!!」

「やめなさい!!!!!!!!」

様々な制止の声の中、執行人が刃を酒で洗った…

 

_____決して

 

執行人が刀を構える…

そして、振り下ろされた!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何!!?!!?!!?」

目を強く瞑っていた雪恵の耳に、正治が驚愕する声が聞こえた。

恐る恐る目を開けると…

一樹の首は斬り落とされておらず、代わりに拘束していた縄が斬られていた。

「…え?」

呆然としている雪恵。

すると、執行人と一樹を抑えていた警官2人が立ち上がり、目深に被っていた笠と帽子を投げ捨てた。

「「「お芝居はここまでだ!!!!」」」

そこにいたのは、S.M.SのTOP7の少年が3人。執行人は櫻井宗介、抑えていた警官2人は、長峰智希と倉野和哉だった。

「宗介君に智希君に和哉君!?という事は!」

急ぎ後ろを向くと、一夏を抑えていた警官2人が帽子を投げ捨て、六連佑人と星野一馬の姿になった。

「へ!?佑人に一馬!!?」

「「そーういうこと♪」」

驚く一夏に、いたずらっぽく笑う佑人と一馬。

「しっかし、雪恵さんがうっすら感づいてたのに、お前は全く気付かないなんてな…一樹に報告して今度ねっちょり修行だな」

「ね、ねっちょり嫌だぁぁぁぁ!!!!」

ふざけながらも邪魔な警官服を脱ぎ捨て、いつものS.M.Sスタイルになる佑人と一馬。

更に一馬は警官に預けていたとある刀を受け取って、宗介達と合流する。

今、ここに最強の少年達が集結した。

「ほれ、一樹」

刀身を確認した後、一樹に刀を投げ渡す一馬。

受け取った一樹はその刀を腰に挿し、狼狽える正治達と対峙する。

「そ、そんな子供騙しに負ける我々ではないぞ!!!!」

「子供騙しではござらんよ…」

精一杯の虚勢をはる正治達の前で、ゆっくりと刀を抜き、刀身を見せる。

「人を不殺(ころさず)の誓い…逆刃刀だ」

その言葉を合図に、警官隊+S.M.S部隊が各々の得物を取り出し、戦闘態勢に入る。

藤原一派も、正治を除いて全員戦闘態勢に入った。

「…行こうぜ、大将」

「ああ」

宗介の言葉を合図に、一樹は駆け出した。




伝説の最後編も佳境です!

皆さん、どうかお付き合いください!

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