人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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忘れた頃に登場するのがフルセイバークオリティ。



いやほんとすんません。


Episode135 第二局面−セカンド・フェイズ−

「あの2人に…何をした!!?!!?!!?」

正面の藤原目掛けて駆け出す一樹。

藤原もまた、抜き身の無限刃を手に駆け出す。

 

ギャリィィィィィィィィンッッッ!!!!

 

一樹の逆刃刀・真打と藤原の無限刃がぶつかったその瞬間、空気の波が見える程の衝撃が広がる。

「クッ…」

「このッ…!」

数秒の鍔迫り合いの後、同時に後方へ跳ぶと、再度駆け出す。

振り下ろされた無限刃を一歩右に踏み込む事で避ける一樹。藤原の肩、腕、膝を逆刃刀で殴るが、【闇】で体中を強化している藤原には大して効果が無い。

「そんな逆刃刀(オモチャ)で、僕に勝てる訳無いだろ!!」

「ッ!?」

一樹の襟元を掴み、何度も何度も壁に叩きつける藤原。

しばらくそれに耐え、藤原が隙を出すのを待つ一樹。一瞬出来た隙を見逃さず、前蹴りで藤原の拘束から逃れると、一旦右前に踏み込んでから、素早く左前に踏み込んで逆刃刀を振るう。

「チッ!」

無限刃でその攻撃を受け流す藤原の、ガラ空きの後頭部に蹴りを入れる一樹。

 

バキッッッ!!!!

 

綺麗に決まり、藤原は壁まで飛ばされた。

壁に人型の穴が出来る程の威力で蹴られたというのに、藤原の部下である村田と丸山に動じる様子は無い。村田に至ってはうすら笑いを浮かべている。

「…何がおかしい」

鋭い目で村田達を睨む一樹。

薄気味悪い笑みを浮かべながら、村田が一樹の後ろを指差す。

「…ああ、分かっている」

その意を察した一樹はため息をつく。

「この程度でヤツが倒れるのなら、拙者は苦労せぬよ」

 

轟ッッッ!!!!!!!!

 

凄まじい音が背後から聞こえ、一樹は側転する。その瞬間、一樹立っていた場所を、黒炎を纏った無限刃が振り下ろされていた。

「フッシャアッッ!」

「威嚇してるつもりか?」

あくまで淡々と、藤原の炎を纏った斬撃を避ける一樹。

以前の彼ならばその斬撃を受け止めて、カウンターの一撃を放っていただろう。

まさに【肉を切らせて骨を断つ】の戦法を中心としていた彼が、今は己の体にかかるダメージを最小限にしようと戦っている。

「神の裁きから逃げるな!」

「なら、当ててみるでござるよ」

いつもと違う一樹の動きについて行けない藤原。パワーとスピードのバランスで見れば、宗太より上の藤原だが、単純なスピードなら宗太より圧倒的に遅い。故に、一樹は遊ぶように避けれてしまう。

「こんのッ!調子に…グハッ!?」

頭に血が上り、隙だらけの藤原の喉元に、一樹の蹴りが決まる。

「ああ、すまぬ。あまりに隙だらけだった故、蹴りを入れてしまったでござるよ」

そこで一呼吸置くと、ござる口調のまま、藤原を挑発する。

「来い。御主の戯言は既に聞き飽きているでござる」

「ほざけぇぇぇぇ!!!!」

【幹部】の目の前で、屈辱を与えながら一樹を殺すつもりだった藤原。

それがどうだ。屈辱を与えられているのは藤原自身だ。

「(戦い方を変えられただけで、ここまで僕が圧倒されるなんて!)」

前回の戦闘までは、力技が通じていた。藤原自身、()()()()でひと通りの武術の心得はある。それに元々の残虐性が相まってかなりのレベルとなっているが、それも所詮は十数年しか生きていない者のレベルだ。生まれた頃から()()で生き、物心ついた頃には常に死の危機に襲われ続け、それを()()()()()()()()()()()()()()()()()続けていた一樹とは、そもそもの()が違うのだ。

今までは精神を揺さぶり、更には捨て駒を用いて心身ともに一樹をボロボロにしていた為に優位に立てていただけなのだ。

「喰らえよッッ!!!!」

力任せに振り下ろされた無限刃。しかしそれに手応えは無かった。

「ガッ!!?!!?」

一瞬で藤原を床に押さえつけた一樹。

「…おい、その程度か?」

ここまで藤原を圧倒している一樹。

そんな一樹が、突如表情を引き締めて藤原から飛び退いた。

刹那_____

 

ガガガガガガガガガガガッ!!!!!!!!

 

_____ガトリングガンの掃射が、一樹を襲う。

「死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

ずっと機を伺っていたのだろう。狂ったように叫びながらガトリングガンを乱射する正治。

正治の腕力では、一樹に当てる程早く振り回せないが、藤原から遠ざけるには充分だ。

「よくやった正治」

立ち上がって埃をはたく藤原。無限刃を肩に軽く置くと、不敵な笑みを浮かべた。

「さァて、たっぷりと礼をしなきゃな!」

ダンッ!!!!

と、一樹に向かって踏み出す藤原。一樹はガトリングガンの攻撃と、藤原の突進を避けるために跳び上がった。ガトリングガンの銃口を正治では上に上げられず、藤原のみに集中出来る…筈だった。

「ッ!?」

どこからか、円盤状の物が飛んできた。止むを得ず逆刃刀で受け流す一樹だが、その威力に体制を崩される。

「(しまった!)」

当然それを見逃す藤原では無い。

「フッシャアッ!!」

黒炎を纏った無限刃が、振り上げられる。

「ッ!!?」

致命傷は避けたが、黒炎を右腕に喰らってしまった。

「(女将が折角直してくれた衣が…!)」

その緋色の衣にも火が付き、慌てて消火する一樹。

「戦闘中に着物の心配だなんて、余裕だな!」

今度は藤原が上となり、無限刃を振り下ろす。当然逆刃刀で受け流そうとする一樹だが…

「…ッ!」

別方向から殺気を感じた。無限刃を振り下ろしてきた藤原の右手首を掴んで、殺気との間に引き込む。

「おのれクズが!」

殺気の正体は正治だった。ようやく角度を上げれたガトリングガンを撃とうとしていたが、一樹が藤原を盾にした事で止まらざるを得なかったようだ。

「テメ…!」

藤原も己が盾にされた事に気付いたのだろう。背後の一樹を睨みつけるが、一樹はそれを鼻で笑う。

「…オラ、着地の手伝いをしてやるよ」

「何言って…ガッ!?」

空中で体を捻り、ガトリングガンを構える正治目掛けて蹴り飛ばした。

「ふ、藤原さ…ガハッ!?」

何とかして飛んできた藤原を受け止めようとした正治だが、非力なその身では叶わなかったようだ。藤原諸共、煉獄の鉄製の壁に叩きつけられ、吐血していた。

「…その物騒なモノは」

それを見ていた一樹は空気の壁を蹴り、ガトリングガン向けて急降下。

逆刃刀の逆刃で…

 

ズダァァァァン!!!!!!!!

 

「永久退場願うでござるよ」

ガトリングガンを切断した。

「なっ!?鋼鉄製のガトリングガンが!」

「やってくれたな…クズがぁ!」

頭に血が上った藤原は無限刃を手に、一樹に向かって駆け出す。一樹も逆刃刀を持ち直して藤原と対峙する。

無限刃の斬撃を受け流し続けていると、背後に気配を感じた。

「…随分と落ちぶれたな、藤原」

気配の元に蹴りを入れると、それを亀甲状の盾で受け止める村田の姿が。

「へ、テメエの方こそ分かってねえだろ」

「……」

「テメエはな…()()にボコられてるのがお似合いなんだよ!!」

村田の背後から、拳を硬く握り締めた丸山が飛びかかってきた。

「ッ!?(コイツは…初めて見る!)」

丸山の身体能力が読めない為、一樹は鍔迫り合いを続けていた藤原の肩に手を着くと、腕力のみで藤原を乗り越えた。

着地してすぐ、宗太が横から攻撃してきたのをギリギリのところで捌き、何とか距離を取る。

「…初めて見る顔が混ざっているでござるが?」

「お初にお目にかかる。私は【幹部】の中の1人。【天誅】の丸山と言う者だ」

「……御主、他の者とは()()な」

一目見ただけで、一樹は丸山が他の【幹部】とは異色な事に気が付いた。

他の【幹部】が一樹への殺意や破壊衝動、藤原への忠誠心で集まっているのに対し、丸山からはその手の黒い感情は感じられない…

「あなたの思っている事と合っているのかどうかは分かりませんが…私には、あなたを憎む理由が無い」

「…なら、何故?」

一樹の問いに、丸山は静かに答えた。

「…私は元々、とある村で僧をしていた。ある時_____」

 

 

とある山奥に、丸山が住職をしていた寺があった。

その寺で、丸山は親を亡くした子供達と共に生活していた。

檀家が無いその寺で生きるために、農作物を育てて自給自足の生活を送っていた。丸山も子供達も、笑顔が絶えない暖かい生活を送っていた。丸山の願いはただひとつ、いつか必ず、子供達がその小さな手足で歩める日が来る事…

 

しかしそれも、一晩で消滅した。

 

突如その寺を、怪物が襲ったのだ。

子供達を守ろうと、丸山は懸命に戦ったが、人外の怪物達には手も足も出ず、丸山の目の前で子供達は…喰われた。

残るは丸山ただ1人。

丸山自身、死を覚悟した。

しかし、一瞬大地が大きく揺れて丸山の判断能力が落ちている間に、怪物達は跡形も消し去った。丸山は助かったのだ。丸山を救ったのは…

『他の人達は間に合わなかったか…ごめん』

()()だった。

 

 

「_____その恩を返すために、私は【幹部】に入った…あなたに私怨は無いが、藤原殿への恩の為、死んでいただく」

その鍛え抜かれた肉体で、一樹に迫る丸山。

「…そうか」

哀しげに、一樹は呟く。そして_____

 

ドンッ!!!!

 

「ゴハッ!?」

硬く握った左の拳を、丸山の水月に叩き込んだ。

その威力に、丸山は動揺する。

「(な、何だこの威力は…?同時に突入して来たあの青年とは、比べ物にならんぞ…)」

「その顔をするという事は、弾と戦ったのは御主のようでござるな」

「…何故分かる?」

「仲間だからでござるよ」

近接戦闘では刀を使って戦うのを得意とする一夏に対し、弾は肉弾戦を得意としている。理由は『刀の間合いを理解するより、自分の拳で殴った方が速い』という脳筋モノだが。

「オイオイ、お前の相手は丸山だけじゃねえんだぞ」

一樹の背後に迫る村田が右手に持つ槍を突き出してくる。

すぐに逆刃刀を背中に回して、槍の穂先を受け止めた。

「…邪魔だ」

「ガッ!?」

村田を蹴飛ばし、再度藤原と対峙するが、その間に宗太が割り込んだ。

「ハッ!」

「ッ!?」

【読み】の使えない宗太は、この場で最も厄介な敵だ。その上【神速】を超える速さで向かってくるので余計に苦しい。

宗太の攻撃をバックステップで避ける一樹。しかしそこは、既に丸山が待ち構えていた。

「ヌンッ!」

拳を振り下ろしてくる丸山。一樹は咄嗟にその腕に捕まると、空いた両足で宗太を蹴飛ばす。素早く着地し、逆刃刀の腹で丸山の顎を打ち上げた。

「グゥッ!?」

「悪いが、この状況では手加減が出来ぬ。医者通いが嫌な者は、今のうちに退くでござるよ」

「舐めるな!」

威勢()()()良い正治が、両手に持った拳銃を構えた瞬間。

「き、貴様は…ガッ!?」

白い影が片手にショットガンを持った状態で、2階から飛び掛ってくると、正治をクッションにして着地。

「村田ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

白い影…一夏は一樹の背後を狙う村田に向かってショットガンを構える。

素早く一樹が飛び上がった瞬間に引き金を引くが、村田は近くに転がっていた小麦粉の袋を蹴り上げ盾を構える。

ショットガンから放たれた散弾は全てその袋に命中し、中の小麦粉に引火。小爆発を起こす。

 

ドンッ!

 

「チッ」

危うく一樹がその爆発に巻き込まれる所だった。空気の壁を蹴る事でそれを避ける一樹を見ながら、村田は一夏を挑発する。

「オイ…撃つならちゃんと撃てよバカ織斑。お仲間に迷惑かけてんなよぉ!」

片手槍を構え、一夏に向かって駆け出す。

「お主も油断しすぎでござるよ」

着地と同時に、爆発の影響で出来た破片を村田に向かって蹴り飛ばす一樹。

音速級のソレにより、村田の盾が破壊される。

「なっ!?」

「(サンキュー、一樹!)うおりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

盾が破壊されて動揺する村田に、一夏渾身の飛び蹴りが決まる。

「ゴッ!?」

その蹴りの威力に、村田が東側の連絡通路に弾き飛ばされた。

「あの野郎は任せろ!」

「…勝手にくたばんなよ」

「上等!」

腰の刀を抜くと、村田の後を追う一夏。

「(これで1対3…大分楽になったが…)」

「何考えてんだよ!!」

無限刃に黒炎を纏わせ、藤原が突出してくる。

その斬撃を逆刃刀で受け流そうと構えた途端、宗太が横から突進してくる。

「…ッ!」

宗太の攻撃を捌いたら、後から来る藤原の攻撃に対応しきれない。止むを得ず後方に跳ぶと、そこは丸山が待ち構えていた。

その鍛え上げられた拳を握りしめて、一樹に振り下ろす。

だが…

 

ドゴッ!!

 

「ガハッ!?」

横から黒い影が飛び出し、一樹に集中しきっていた丸山にぶつかる。その衝撃で、丸山は横に倒れた。

「俺を忘れてもらっちゃ困るね」

丸山を転ばしたのは、ガトリングガンで撃たれて戦闘不能になったはずの弾だった。

丸山との激闘の影響か、S.M.Sのジャケットが壊れかけており、前が開きっぱなしだ。

「…君は倒したと思っていたが」

「ああ、正直死ぬかと思ったよ。けどな、ギリギリコイツが間に合った」

懐から取り出したのは、空になったシリンダー。

「S.M.S特性の医療ナノマシンだ。コレのおかげで、今俺はここにいる」

シリンダーを投げ捨てると、両手にマグナム型拳銃を構える。

「さっきのは小回りを重視してハンドガンタイプだったからな…兵隊にはそれで充分だったけど、アンタを相手するには役不足だった。俺や一夏の様なただの人間が、アンタみたいな怪物を倒すには…殺すぐらいのつもりじゃないとダメみたいだな!」

両手のマグナムを同時に発砲する弾。

「ヌッ!」

丸山は両手を組んでそれを受ける。

先の戦闘時とは比べ物にならない威力に、流石の丸山も怯む。

それこそ、弾の狙いだ…!

「コイツもおまけだ!」

ここに来るまでに拾った手榴弾の安全ピンを口で外すと、丸山に向かって投げる。

 

ドォンッッ!!!!

 

「グッ…」

手榴弾の爆風によって、丸山が西側の連絡通路に吹き飛ぶ。それを追おうとする弾。途中で立ち止まり、宗太や藤原と激闘を繰り広げている一樹に宣言する。

「一樹!必ず戻ってくるから!それまで耐えててくれよ!」

「ああ…気をつけろよ」

一樹の言葉に頷くと、弾は丸山を追った。

 

 

「盾が無くなった程度で、お前に負けるかよ!」

「ゴッ!?」

村田の攻撃により、一夏は煉獄に積まれていた資材に突き飛ばされた。崩れる資材により更にダメージを負うが、それでも立ち上がる。

村田が振り下ろした槍を己の獲物で受け流し、がら空きの顔を掴むと床に叩きつける。

「らぁっ!」

「ガッ!?」

一夏らしからぬラフファイトに、村田は驚く。

「(【ヒーロー】を地で行くコイツが、こんな戦い方をするなんて!)」

だがラフファイトは村田に一日の長がある。

馬乗りしてこようとする一夏の背中を蹴り、すぐさま体制を立て直す村田。一夏も蹴られた衝撃を利用して前転、村田と距離を取る。

「ッシ!」

先に動いたのは村田だ。足元に転がってきた角材を一夏に向かって蹴飛ばす。

「ッ!」

それを一夏は刀で払う。だが、一夏が角材に気を取られた一瞬で村田は急接近。飛び膝蹴りを一夏に喰らわせる。

「オラァッ!」

「グッ!?」

衝撃を殺しきれず、数回バウンドしてようやく止まる一夏。

「死ねぇぇぇぇ!!!!」

槍の穂先を一夏に向かって突き出す村田。しかし一夏が咄嗟に投げた木箱が顔を直撃。

「グアッ!?」

流石の村田も、これには怯む。その隙に一夏は立ち上がり、がら空きの腹部に全力の前蹴りを放った。

 

ドゴンッッッッ!!!!!!!!

 

「カハッ…」

その衝撃に、村田が止まる。しかし一夏はこれで終わらせない。刀の切っ先を、出せる全力で村田の喉に叩き込んだ。

「ラァァァァァッッ!!!!!!!!」

「ゴッ…ハ…」

模造刀であったのと、藤原の力で強化されていたおかげで村田は死にはしなかった。が、当然普通なら死ぬレベルの攻撃である。それを喰らった村田は、膝から崩れ落ちた。

「ハァ、ハァ、ハァ…!」

何とか勝利した一夏は、気絶してる村田の両手の親指を結束バンドで固定すると、船外で待機している警官目掛けて投げ落とす。

「ハァ…早く一樹のとこへ行かないと…!」

 

 

西側連絡通路では、丸山と弾が取っ組みあった状態で転がっていた。

「ウオラァッッ!!!!」

弾がマグナムのグリップ部で丸山の側頭部を殴って離れる弾。

「ガッ!!?」

肩で息をしながら、弾は己を鼓舞するために吠える。

「ウオォォォォォォォォ!!!!」

その気迫に、丸山は正面からぶつかる。

「オォォォォォォォォ!!!!」

両者同時に動き出し、攻撃を仕掛ける。

丸山の重く腰の入った拳を紙一重で避ける弾。そして左のマグナムを、超至近距離で丸山の眉間に撃つ。

「グアッ!?」

衝撃により後退する丸山。

「(ここだッ!)」

後退して隙が出来た丸山に、二丁拳銃で腹部を狙う。

しかし、丸山は闇の障壁でそれを受け止める。

「(ダメか!)」

動揺している弾に、丸山の重く腰の入った拳がまともに入る。

「フッ!」

「ガァッ!?」

脳が揺れ、弾の意識が一瞬刈り取られる。

「…悪く思うな」

そんな弾の胸ぐらを掴み、トドメの一撃を放とうとする…が。

「…あはは」

弾は、嬉しそうに笑うのみ。気でも狂ったか?と疑う丸山だが、突然弾が力強く丸山の右腕を掴んだ。

「この距離なら…障壁は張れねえだろ?」

丸山の腹部近くに、マグナムが。

「ッッ!!?!!?!!?」

急ぎ離れようとする丸山だが、もう遅い。

 

ガガガガガガガガガガガッッ!!!!!!!!

 

「ガァァァァァァァァァッッ!!!!!!?」

一馬に早撃ちの能力を鍛え上げられた弾の速射攻撃に、丸山の内臓に大きなダメージが入る。

思わず弾を解放する丸山。

「まだまだァ!!!!」

今度の狙いは、その喉元。マグナムから放たれるゴム弾が、丸山の喉元を襲う。

「コイツもおまけだ」

倒れかける丸山。それを見た弾は手榴弾の安全ピンを外し、天井に向かって投げた。

 

ガラガラガラガラッッッッ!!!!

 

手榴弾の爆発で、丸山は瓦礫に埋もれて動けなくなった。

「…私の負けだ」

潔く負けを認めた丸山。

「…カハッ」

気が抜けたのか、吐血して膝をつく弾。

「…アンタ、めちゃくちゃ強かったよ。出来ればアンタみたいなのとは二度と戦いたくねえ」

「そうか…だが、そうも言ってられないだろう?」

「まあな…ここのボスを倒さなきゃいけないし、それに…」

「それに?」

「…俺には、守りたい人が出来たから」

穏やかな顔で告げる弾に、丸山はかつて自分を慕ってくれていた子供達が見えた。

和尚さん、もう良いよ

と言うように…

「…少年、名は?」

「ん?S.M.S防衛科所属の五反田弾だ」

「五反田弾…ひとつだけ、この破戒僧と約束してくれ」

「…なんだ?」

「絶対に死ぬな。その守りたい人のためにも、何より、君自身のために」

「……」

自分が成せなかった事を、目の前の少年に託す事にした丸山。

もう、自分が体験した悲劇が起こらないために。

「…言われなくてもそのつもりだ」

立ち上がった弾の顔は、誰もが認める【漢】だった。

 

 

宗太の斬撃を、一樹は敢えて一歩踏み込んでから逆刃刀で受け止める。

その影響で、一樹の背中を狙っていた藤原に宗太の刀の切っ先が突き出される形になり、藤原の動きが止まる。

「ッし!」

宗太の腕を掴んで続く斬撃を封じると、後ろにいる藤原に回し蹴りを決める。

「くっ…」

それを右腕で受ける藤原。

回し蹴りをした反動で、腕を掴まれていた宗太が前のめりになる。

「うわわっ!?」

「ハッ!」

その背中に掌底を叩き込んで藤原にぶつける一樹。

「ガッ!?」

「痛い!?」

ここまで何とかこの2人の猛攻を抑えてきた一樹だが、そろそろ限界が近付きつつある。

「(そこらの兵隊ならともかく…ラスボスクラスが2人同時にはキツイ…)」

しかし元々は4人だったのだ。一夏や弾のおかげで2人減っているという事を考慮して戦っていたが、キツイものはキツイ。

「死ねよクズ!!!!」

黒炎を纏った無限刃が、一樹に迫る。疲労が溜まってきている一樹は、反応が遅れてしまった。

「(しまっ…!?)」

絶対絶命の、その時だった。

 

「待たせたな、親友」

「まだくたばってねえよな」

 

ガギンッッッッ!!!!!!!!

 

藤原の斬撃は、一樹の左右から飛び出してきた刀とブレードに抑えられた。

「あ?お前ら村田と丸山に勝ったの?」

無限刃を握る手に力を込めながら、藤原が聞いてくる。

「ああ、そうだよ」

「でなきゃここにいねえよ」

「ふうん…殺せ、宗太」

藤原の合図に、宗太が藤原の背後から跳び上がる。

笑顔のままその凶刃を振るおうとするが、一樹が横から飛び蹴りを決めた事により失敗に終わる。

「先にコイツを片付けてくる!」

「「了解!」」

宗太に集中するために、一樹は宗太を2階へと投げ飛ばした。

「うわ!?凄いなあその力」

子供の様に驚く宗太を追って、一樹も壁を蹴って2階に向かう。

 

 

「つまり?僕の相手は雑魚二匹で充分だと…?舐めてんじゃねえぞクズ!!!!!!!!」

「「ガッ!!?!!?」」

その腕力で一夏と弾を突き飛ばすと、宗太を追った一樹を追おうとする。

「させるか!」

一夏渾身のタックルによって、流石の藤原も姿勢が崩れた。

「そこっ!」

そんな藤原の眉間目掛け、マグナムを撃つ弾。

「遅えぞ雑魚がァ!」

しかし藤原は、無限刃を振るってその攻撃を弾く。

邪魔な弾を始末しようと無限刃を振るうが、弾はスタンブレードでそれを受け止める。

 

バリバリッッ!!!!

 

「チッ!?」

無限刃を伝って、藤原に電撃が走る。動きの止まった藤原に、一夏は飛び蹴りを喰らわす。

「ウラァッッ!!!!」

「ガッ…!?」

数メートル飛ばされた藤原。

ゆらりと起き上がり…

「アハ、アハハハハハハハハハハ!!!!」

狂った様に笑い出した。

「そうかよ!そんなに死にたいのかよ!それならそうと早く言えよな…あのクズより先に、お前達を焼却処分してやるからさぁ!!!!」

「俺たちも、もちろん一樹も!」

「お前なんかに殺される訳には行かねえんだよ!!!!」




戦闘描写が、うまく行かない…
本当アクション系の小説を書いてる方々、本当に尊敬します。

次回もよろしくお願いします!!

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