人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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半年以上空いてしまい、すいませんでした!!!!

その代わり、普段よりとても長い文字数となっています。

どうぞ!!!!


Episode136 最終局面−ラスト・フェイズ−

所変わって海岸。

煉獄から砲撃が来なくなった事で、一樹陣営の者は戦いやすくなった。

 

ドゴンッッッッ!!!!

 

「ガァッ!!?」

体のあちこちに痣や切り傷が出来ている【破壊】の沢山(さわやま)が、砂浜に転がる。

「おいおい、お前は一樹を雑魚のクズ呼ばわりしてたんだろ?何で一樹より弱い俺に太刀打ち出来ねえんだよ」

一方、沢山と対峙している宗介はと言うと、先の言葉から察せれる通り無傷だ。刀を肩で遊ばせながら、沢山の実力の低さに呆れている。

「まだまだァ!!」

己を奮い立たせ、沢山は大剣を構える。だが、それすら宗介は攻撃に利用する。

「胴がガラ空きだ」

 

ズドンッッッッ!!!!

 

「ゴハッ!!?」

宗介の重い拳がまともに入り、沢山が吐血する。

「まだ終わる訳無いだろ」

トンッ、と軽く跳躍すると、空中で体を半回転させる宗介。そこから繰り出される強烈な蹴りが、沢山の喉元を捉える。

「オゴッ…」

「お前本当に【幹部】なの?レベル低すぎるんだけど?」

普段は一樹や仲間達とふざけるのが大好きな宗介が、今は一流の殺し屋に見える。

「はぁ…ここまで弱いと痛めつけるのも飽きてくるわ。どうする?大人しくお縄につくならここまでにしてやるけど?」

冷めた目で砂地に転がる沢山を見下ろす宗介。先程まで抜き身だった刀は、既に鞘に納められていた。

「舐めるなァァ!!!!!!!!」

渾身の力で、砂浜を叩きつける。

砂煙が舞い、宗介の視界を奪った沢山。チャンスとばかりに大剣を振るう。しかし、手応えが無い。

「なっ…!!?」

驚く沢山を、人型の影が覆う…

「…ほんと、つまんねえ奴だ」

そんな呟きが聞こえた後、頭部に凄まじい衝撃が走り、沢山の意識は刈り取られた。

「息は…あるな。良かった。弱すぎると、殺さないようにするの大変なんだよな」

 

 

「あれれ?一樹に対して放ってた殺気は何処(いずこ)へ?」

【俊敏】の綾野に、両手に持つハンドガンを撃ちまくる一馬。

もはやどっちが悪役か分からない程だ。

「ふざ、けんな!」

右手にナイフを握り直し、一馬に肉薄する綾野。一馬にそのナイフが突き刺さるその瞬間、グリップ部によって後頭部を殴られる綾野。

「ガッ!?」

「俺が近接戦出来ないと思ってるなら大間違いだぜ」

殴られた影響で姿勢が崩れた綾野に、容赦なく回し蹴りを叩き込む一馬。

「そらっ!」

「オゴッ!?」

再び距離が開き、一馬の正確無比な射撃が綾野を襲う。

「ガッ!?ゴッ!?アガッ!?」

「ほーら、【俊敏】の名の通り動いてみなよ。ま、動き次第そのスカスカの脳天にゴム弾ぶち込むけど」

もう一度言おう。

どっちが悪役だ。

「周りの雑魚達はみぃんなおネンネしてるし、お前以外の【幹部】も1人を除いて全員俺らが相手してるからな…助けが来ると思ってるなら無駄だぜ」

絶対零度の視線で綾野を睨む一馬。一旦銃撃を止めると、綾野に降伏を促す。

「もう俺とお前の実力差は身に染みて分かったろ。さっさと投降しろ」

「誰がするか!!」

一馬の目に向かって砂を蹴り上げる綾野。

それを予測していた一馬にあっさり避けられるが、そもそも当たるとも思っていない。綾野の狙いは、一瞬でも一馬の意識を自分から離す事だ。

「(貰った!)」

一瞬でも意識から離れれば、綾野にとって背後に回る事など容易い事だ。一馬の背中にナイフを突き刺そうとした綾野の眼前には、右手を左脇から…つまり、背後にいる己に銃口を向けている一馬の姿が。

「(しまっ…)」

綾野の眉間に、ゴム弾が直撃。

綾野の意識は刈り取られた。

「はい、お終い。後片付けでもしますか。はぁメンド」

 

 

【策謀】の坂崎の横一文字の斬撃を、佑人は屈む事で避ける。

「まだだよ」

佑人が屈む事を予測していた坂崎は、その佑人の頭目掛け蹴りを放つ。

「何が?」

対する佑人は冷静に、迫り来る坂崎の膝頭を殴った。

 

バキッッ!!

 

「ギャアァァァァ!?」

関節部を殴られ、悲鳴を上げる坂崎。それを冷たい目で見下ろす佑人。

「まだなんだろ?早く来いよ」

坂崎の胸ぐらを掴み上げ、渾身の右ストレートを決める。

「グハッ!?」

「さて、ここで問題です。一樹が昔、テメエらにやられた傷は、どんなのがあるでしょうかぁ」

砂地に転がる坂崎に、ゆっくりと近づく佑人。

「し、知るか…」

膝の痛みを堪えながら、なんとか立ち上がる坂崎。その答えに佑人の瞳が鋭くなる。

「あ、そう。知らないならその身を持って教えてやる」

佑人がそう言った途端、坂崎はプライドを捨てて逃げ出す。それもそうだろう。坂崎が記憶にある事をされるだけでも…坂崎の命は、無くなるのだから。

「その1、石を頭部に投げられた」

石の代わりに、佑人は煉獄から飛んできた砲弾のカケラを拾う。そして、逃げる坂崎の後頭部へ投げた。

 

ゴンッッ!!

 

「グッ!?」

手加減しているとは言え、砲弾のカケラだ。

その威力によって、砂浜に転がる坂崎。

「その2…」

袖からナイフを取り出すと、クルクル回しながら坂崎に近づく。

「手の甲に、長ナイフを突き刺された」

「ッ!?」

それを聞いた坂崎が起き上がるより速く、左手の甲にナイフが突き刺さった。

 

ドスッッ!!!!

 

「ギャアァァァァァァァァ!!?」

その痛みに絶叫する坂崎。佑人は坂崎のナイフが刺さった方の腕を踏みつけて固定すると、更に続ける。

「その3、リアクションが薄くてつまんないとか言う坂崎(クソ野朗)に、ナイフを踏みつけられた」

躊躇なくナイフを踏みつけ、更に深く食い込ませる。

「ッッ!!?!!?」

もはや声を上げる事すら出来ない坂崎。しかし、佑人はまだ止まらない。

「その4、一樹が無抵抗なのをいいことに、全員に灯油をかけた」

いつのまにか一斗缶を持っていた佑人に、坂崎の顔が青ざめる。

「や、やめろ…!」

しかし佑人は坂崎の言葉に耳を貸さず、坂崎の体に灯油をかけまくる。

「やめてくれ!」

「うるせえよ。お前が提案して、実際に一樹にやったことだろうが。責任持ってお前も味わえ」

「嫌だ!俺はまだ死にたくない!!」

必死に逃げようとする坂崎だが、佑人がしっかり踏みつけている以上、ただ砂が舞うだけだ。

「…その5だ」

懐からマッチ箱を取り出す佑人。

「ヤダヤダヤダヤダヤダ!!!!僕は死にたくない!!!!あんな()()()()と僕をいっしょに…」

 

ボギャアァァァァッッ!!!!

 

全力で坂崎を蹴り上げた佑人。

坂崎の体が高く舞い上がる。それを追って、佑人も跳び上がると、容赦なく坂崎の腹部にかかと落としを決めた。

「オゴッ!!?!!?」

ボキボキッ、と骨が軋む嫌な音が聞こえる。砂浜に再び叩きつけられた坂崎の呼吸は荒く、それを見下ろす佑人は、今度こそマッチに火をつける。

「やだ…いやだ…やだよ…」

ガクガク震えながら泣く坂崎。

そんな坂崎に、佑人は無表情で火をつけたマッチを近づけ…

「…そんな嫌なら、ハナからやるんじゃねえよ」

泡を吹いて気絶した坂崎を見下ろしながら、佑人はマッチの火を消した。

 

 

「そーれ♪」

薄刃ノ太刀を自在に操って暴れるは【変幻】の花澤。

8人を同時に相手取るその技量に、千冬たちは圧倒されていた。

「くっ…」

何とか薄刃ノ太刀を捌く千冬。彼女を持ってしても、花澤の攻撃を捌くのが精一杯…それだけ花澤の技量が凄まじいのだ。

そんな攻撃が、箒達に捌ける筈が無い。身体中に切り傷ができ、立っているのがやっとの様だ。

「あれ?もう終わり?もうブリュンヒルデしか残ってないの?」

首を傾げて言う花澤に箒達は反論したいが、呼吸を整えるのに必死で話せない。

「んー、じゃあもう終わらせようかな。ブリュンヒルデ1人しかいないんじゃつまんないし、かと言って他の【幹部】のとこにいるS.M.S(バケモノ)と戦いたくないし。さっさと終わらせて藤原君と合りゅ「そうはさせない」ッ!?」

花澤の背後から声が聞こえた。そのあまりの冷たさに、花澤は前に飛び込んだ。刹那、花澤の上を火球が通り過ぎ…

「おわっ!?危ねえ!!?」

沢山を片付けた宗介に当たりかけたが、咄嗟に引き抜いた刀で両断して難を逃れた。

「ごめんソースケ」

謝りながらも素早く動いて花澤に殴りかかる声の主、セリー。

「(この子…雪恵ちゃんと一緒にいた…!)」

セリーの風のうなりを感じる拳を避けると、花澤は距離を取るために後方へ跳ぶ。

「いや、俺は別に大丈夫…でもないか。まあ気にすんな。けどよセリー」

セリーの背後を狙って薄刃ノ太刀を振るう花澤。その切っ先が、セリーの後頭部に迫る…

()()()()

「分かってる」

切っ先がセリーに触れるその瞬間、セリーは素早くテレポートを発動。

「ッ!?」

己の攻撃が迫って来るのを、華麗さを捨てて転ぶ事で避ける花澤。

そんな花澤を、セリーは全体重を乗せて踏みつけようとする。

「当たるもんですか!」

薄刃ノ太刀を振るって、セリーを横から攻撃する花澤。

「チッ…」

踏みつけを諦め、後方へ飛ぶセリー。セリーが離れた隙に起き上がる花澤。

「(この子に、薄刃ノ太刀の攻撃は通用しなそうね…当たったところで、かすり傷くらいで済みそうだわ)」

「考えてる暇あるの?」

ドンッ!とセリーが踏み込んで来た。当たれば一撃で花澤を沈めれるであろう拳を、必死で避ける。

「(何なのこの子!?この間よりめちゃくちゃ強いじゃない!?)」

「お前、この間は私が変なロープに縛られてたの忘れてる?」

ブラックスター製の宇宙ロープが無い今、花澤など本来セリーの敵では無い。逆に弱過ぎて手加減が必要な程だ。

…セリー自体は殺す事に全く躊躇いが無いが、一樹の直属の部下である宗介に止められたのなら従うしかない。何より、()()()()を殺した事で一樹に罪悪感を感じさせるのも嫌なセリーである。

そのおかげで未だ生きている花澤は、本来なら一樹に感謝しなければならないだろう。しかし、手加減されていても、花澤ではセリーに太刀打ち出来ないのもまた事実。

「(このままじゃ、やられる!)」

そう判断してからの花澤は早かった。セリーの背後を薄刃ノ太刀で狙い、セリーがそれの対応をした瞬間、煙玉を砂浜に叩きつけた。

 

ボフンッッ!!!!

 

「ッ!!?」

セリーが怯んだ隙に、花澤は極限まで気配を消してその場から逃走した。

「クッ…ソースケ!」

「悪い!弱過ぎて気配が感じられねえ!!」

周りに兵隊が多い事もあってか、宗介ですら花澤を見つける事は出来ない。これで花澤が功を焦って不意打ちでもしようものなら即座に反応しただろうが…花澤は藤原との合流を選んだのだった。

「ごめん、カズキ…」

 

 

「コイツ…」

「攻撃してこないけど…」

「「硬えぇぇ!!」」

浜辺に残った最後の【幹部】である【豪傑】の内山と対峙する智希と和哉。

S.M.Sトップクラスの2人の攻撃を、内山はかなりの数受けている。しかし、その2本の足でしっかりと立っている。

「こちらの攻撃が通用しないと分かっているのなら、俺が持つ全ての能力を防御に回すまで」

武器であろう刀を出そうとする素振りも無く、ひたすら2人の攻撃を耐え続けている。

「鍛え抜かれた肉体を持ち、その全てで防御する事によって俺たち2人の攻撃を耐えてる訳か…」

「鎧を着てるだけが理由じゃないとは思ってたけど…なら!」

智希と和哉は一瞬頷き合う。

まずは智希が先行、走った勢いを乗せた飛び蹴りを内山に放つ。

「これならまだ耐えられる!」

「知ってるよ」

智希の蹴りを耐えた内山に、今度は和哉が肉薄。手に持ったそのスタンロッド_____何故か帯電していない_____で殴りつける。

「効かぬ!」

「あっそ」

素早く後退する和哉。その絶妙なタイミングで、智希が投げたスタンロッドが内山に命中する。

「くっ…(何だ…今までの攻撃より重く感じる)」

内山が僅かに違和感を感じている間にも、智希と和哉の連携攻撃は続く。その後、数撃喰らってから、ようやく内山は2人の狙いに気付いた。

「まさか…同じところだけを狙って…!?」

「「もう遅い!」」

同時に銃を撃つ2人。それは、今まで攻撃を続けていた内山の鳩尾の中心に命中。ようやく内山を倒せた。

「「フィ〜」」

 

 

一樹目掛け、宗太は刀を構えながら突進。対する一樹は、ギリギリまで引きつけてから横に避ける。

「甘いですよ!」

それを予測していた宗太は、その速度を落とさぬ為に柱を蹴って反転すると、一樹に更に攻撃を続ける。

怒涛の連撃を、一樹は何とか捌き続けて隙を伺う。だが、【読み】が使えない宗太の攻撃は動体視力のみに頼らざるを得ないため、一樹はどうしても後手に回ってしまう。

「(どうにか隙を作るか、コイツが隙を出すのを待つか…)」

そんなの、考えるまでもない。今動力部では、藤原というバケモノを一夏と弾が必死で相手しているのだ。少しでも早く、宗太を片付けなければならない。

ならば!

「(ここで…崩す!)」

宗太が上段から刀を振り下ろしてきた。それを逆刃刀の柄頭で弾く一樹。

「(その程度、僕にだって対処出来ますよ)」

笑顔のまま、弾かれた刀を背後で持ち帰る宗太。【背車刀(はいしゃとう)】という高度な技をあっさり使うのは、流石と言える。その技によって、弾いた筈の刀が一樹に迫る…

「お主の実力なら、それは予想出来るでござるよ」

背車刀を予測していた一樹は、その刀身を踏み台に跳び上がった。

天井付近で体を半回転、天井を蹴って急降下する一樹。飛天御剣流の名の通り、空中から宗太に攻撃を仕掛ける。

その神速の一撃を、宗太は咄嗟に後退する事で避ける。

「あーあ、本当に強いんだなぁ」

「…?」

宗太の雰囲気が、若干変わった。

それを訝しむ一樹を他所に、宗太が呟いた言葉は…

「なんか…()()()()()()なぁ」

「!?」

その言葉に、一樹は驚く。

なにせ、彼は喜怒哀楽の内の【楽】しか無い筈なのだ。

そんな彼が、『イライラする』と言った。

「(コイツはもしかして…感情が()()んじゃなくて、感情を()()()()()()()だけなんじゃ!)」

「そろそろ…終わらせたいな!」

顔はやはり笑顔のまま、一樹にトドメを刺そうと駆け出す。

「!」

 

バキッ!

 

「ガハッ!?」

吹き飛ばされたのは、宗太の方だった。突進の速さを利用され、突き出された脚に自分からぶつかりに行った様に当たってしまった。

「……」

蹴りを当てた一樹はと言うと、まだ訝しげな表情だ。

「イタタ…ちょっと油断し過ぎたのかな?でも、次は!」

今度は閉鎖空間である事を利用して、一樹の四方を跳び回る宗太。対する一樹は、眼を閉じて気配察知に集中した。

「(さっきはちょっと遊び過ぎたんだ。藤原さんならともかく、僕がこんな【他人のため】に戦う人なんかに負ける筈が!)」

一樹の頭上から、必殺の刃を突き刺そうとする宗太。しかし…

 

カッ!!!!

 

「ッ!!?」

目を見開いた一樹の鋭い視線に気圧され、宗太の動きが一瞬止まる。その隙を逃さず、一樹は逆刃刀を振るった。

 

ドゴッ!!!!

 

「ガッ!!?」

宗太の腹部にクリーンヒット。空中に浮いていた事もあり、床に背中から落ちるという追加ダメージも与える事に成功した。

「…あれ?」

何とか起き上がった宗太は、ダメージを受けた事に首を傾げる。己の調子を確かめるために数回軽く跳ねると、再度一樹に向かって駆ける。

「っし!」

「ガハッ!?」

しかし、宗太の斬撃は完全に見切られ、逆に一樹の攻撃は面白い程当たる様になった。

「あれ?おかしいなぁ」

「お主…今自分がどうなってるのか、気付いておらぬのか?」

「何のことです?」

一樹の問いに首を傾げると、三度斬りかかってくる。

しかし、もう一樹に宗太の斬撃は当たらない。何故なら、宗太は今…【読み】が使える程に感情が蘇ってきていた。

今まで動体視力のみで戦っていた相手に【読み】が使えるようになった事で、一樹からしたら非常に戦いやすくなった。

「何で!何で僕が手も足も出ないんだ!?」

「……」

「この世は所詮【弱肉強食】!強ければ生き、弱ければ死ぬ!ただそれだけのことなのに!」

「確かにそれは一理ある…しかし、実際は強さだけでは生きてはいけぬ」

「…何だ。何だ何だ何だ何だ何だなんだなんだなんだなんだなんだナンダナンダナンダナンダナンダ!!?!!?」

突如激昂し始めた宗太。急速に蘇っていく感情により、パニック状態になっていた。

パニック状態のまま、がむしゃらに一樹に斬りかかる。

「強ければ生きガッ!?強ければゴッ!?強けガハッ!?」

当然そんな攻撃が一樹に通る筈も無く、全て受け流され、逆に攻撃を受ける事になった。

「ああァァァァぁぁぁぁァァァァぁぁぁぁァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァ!!?!!?」

とうとう頭を抱えて、狂ったように叫び出す宗太。体をあちこちにぶつけて暴れる宗太を、距離を取って見守る一樹。

「この世は…弱肉強食…強ければ生き、弱ければ死ぬ…僕には、これしか無い…これしか無いんだ!」

「……」

「僕がここまで上がってこれたのは…藤原さんから教わった、この自然の摂理があったから!」

「……」

「僕を…あの暗闇から救ってくれたのは藤原さんだ…あの時!あなたは僕を救ってくれなかった!」

「……今からでも、間に合わぬか?」

「…え?」

静かに語り出した一樹に、宗太の動きが止まった。

「拙者には、お主の言う【あの時】が分からぬ。しかし、今からでも遅いとは思わぬ。何故なら…お主はまだ生きている。生きている限り、何を始めるにも、決して遅いことなんて無いでござるよ」

「……」

一樹の言葉に、今度は宗太が黙る番だった。しかし…彼はもう、それでは止まらない。

「僕はもう…戻れない所まで来てるんだ!今更他の生き方なんて出来る訳が無い!」

その脚力で一樹から距離を取ると、先程捨てた鞘を拾い、刀を納めた。

「…僕の技は、ほとんどが藤原さんに教わったものです。けど…これから見せる技は、唯一の僕オリジナルの技」

腰帯に鞘を挿して左手で鍔を軽く弾く。そして、右腕は力を抜いてだらりと落とす。

「この技の名は、【瞬天殺】」

「…お主の神速を超えた超神速…縮地に加え、【幹部】随一の、天性の剣椀から放たられる抜刀術。成る程…確かに決まれば瞬天殺だ。しかし打てるのか?その乱れに乱れた心で」

「余裕ですか?その余裕もすぐにこの世から無くなりますよ」

「……」

 

チンッ…

 

一樹もまた、静かに逆刃刀を鞘に納めた。

宗太という強敵を相手に、そしてその強敵の最大の技を迎え撃つというこの状況で放つ技は、ひとつしか無い。

飛天御剣流奥義、【天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)】しか…

「行きます…」

「…来い」

両者同時に駆け出す。

果たして、奥義同士の戦いを制するのは…

 

 

時は、少し遡る。

一樹が宗太を追って、動力部から離れた頃だ。

「お前ら程度で僕を止められると思ってんのか!?」

「くっ…」

藤原はまず、近くにいた弾の襟元を掴む。そして、挟み撃ちを仕掛けてきていた一夏に向けて投げた。

「ッ!」

何とか弾を受け止めた一夏。

「弾ごめん!」

藤原の追撃を避けるため、やむを得ず弾を投げる一夏。その直後、一夏に無限刃が迫ってくる。

「ッ!?」

何とか刀で捌く一夏。

その重さに、腕が若干痺れた。それを見逃す藤原ではない。渾身の前蹴りを一夏に決める。

「オラァッ!!」

「ガッ!?」

その威力は、一夏の体が数回跳ねる程だ。

「…お前も昔っから気に食わなかったんだ」

無限刃を握り直し、一夏に近付く藤原。

「いつもへらへらしてる癖に、妙に人が集まりやがってさ。お前程女癖が悪い奴を僕は知らないね」

「…何のことだ?」

「今、凄い腹立つけどあのクズと同じ気持ちになったよ。コイツ殴りてえ…いや、殴るどころか殺すか」

ポンっ、と手を叩く藤原。

しかし対する一夏も、藤原には山ほど言いたい事がある。

何よりも…

「お前には、文句が山ほどあるけどよ…」

「あん?」

「…これだけ聞いとく。どうして沙織を殺した」

「さおり?んー…あ、あーあ!あの人形ね!そういえばそんな名前だったわ。ったく、人に物聞くならその人に分かりやすい名前で教えろよな。あの人形なら…ファウストってな」

「……」

ギチギチと刀を握る一夏。その手から血が出ているのも構わず、藤原を睨む。

「まあその質問に答えるのは簡単だ」

そして、藤原が答える…

「誰でも良かったんだよ。お前の近くにいる女ならな」

その言葉を聞いた瞬間、一夏は藤原に踏み込んでいた。

藤原を本気で殺すつもりで振り上げた刀を、藤原は腕に付けていた金属製の籠手で受け止める。

「話は途中だっての」

続けて放たられる斬撃全てを、藤原は籠手と無限刃で受け流す。

「まあ、お前の近くにいる女の中で選んでた時だよ。お前自身が始めて意識した女を見つけた。それがあの女だった。()()()()()()()()()()

ひたすら突進してくる一夏を蹴飛ばす藤原。自ら転がる事でその衝撃を殺す一夏。

「人の命を、何だと思ってやがる!!?」

「人?人ってのは僕と雪恵さん以外いないよ?」

「ふざけんな!!」

一夏の斬撃を全て流す藤原。感情に任せて振るう剣は、軌道が単調になってしまっているのだ。そんな剣が、剣術を会得している者に当たる筈が無い。

「しつこいんだよ!」

「ガァッ!?」

一夏の攻撃を無限刃で受け止めると、そのまま刃を走らせる藤原。摩擦熱によって黒炎が発生、小爆発を起こして一夏を襲う。

「死ねやぁッ!」

小爆発によって体制が崩れた一夏に、トドメの一撃を放とうとする藤原。間一髪、弾が全力でタックルを決めた事で一夏は助かった。

「させねえよ…!」

「何なんだお前は!?」

藤原の問いに答える余裕は今の弾には無い。

少しでも藤原にダメージを与えようと、必死で藤原の腹部を殴り続ける。

「ラァッ!オリャァッ!」

「効かねえ、よ!」

藤原の重い拳が、弾の腹部に突き刺さる。

「ゴッ…!?」

「お前じゃ相手にならねえな」

無限刃に黒炎を纏わせると、その必殺の刃を弾に振り下ろす。

咄嗟に両手に持つマグナムの銃身で受け止め、更にその衝撃を利用して後ろに下がる弾。

 

グキッ

 

「(ッ…左腕を捻ったか…)」

しかし想定内だったのか、弾はそこまで動揺していない。

すぐさま2丁のマグナムを藤原に向け、引き金を引いた。

 

ダダンッッ!!!!

 

一馬に鍛え上げられた弾。事生身での銃撃戦では一夏よりも実力は上だ。

「ッ!?」

そんな弾の放った攻撃は、狙い通り藤原の右手の甲と鳩尾に命中。戦闘不能にこそ出来なかったが、藤原を怯ませる事には成功した。

「一夏!」

「任せろ!」

そして、一夏は生身では近接戦を好む。全力で振るわれた刀が、藤原に迫る。

「チィッ!」

流石の藤原も避けるには間に合わないと判断、無限刃で一夏の斬撃を受け流す。

「邪魔なんだよ雑魚共が!!!!」

近くにいた一夏に前蹴りを喰らわせる。蹴りを受けて蹲る一夏を踏み台に跳び上ると、弾に無限刃を渾身の力で振り下ろす。

「ウオラァァァァァッ!!!!」

「くっ…!」

何とか斬撃を受け流した弾。しかし、その攻撃の重さにより、両腕が痺れてしまう。

その隙を見逃す藤原ではない。

弾にトドメを刺そうと、無限刃に黒炎を纏わせ斬り込む。一夏がそれに気付くが、間に合わない_____!

 

ドンッ!!!!

 

「ガァッ!!?!!?」

「ゴッ!!?」

 

突如煉獄の壁が破壊され、そこから宗太が飛んできた。完全に想定外の事だったので藤原も対応出来ず、宗太と共に床を転がる。

「「ッ!?」」

慌てて一夏と弾が壊された壁を見ると、そこから一樹が出てきた。ゆっくりと、しかし確実に藤原に近づくその姿に、味方でありながら2人は軽く恐怖した。

「…待たせたな」

それが2人に向けられたのか、対する藤原に向けられたのかはわからないが、ひとつ確実なことがある。

 

一樹が、宗太を倒したということが。

 

「…コレ、使うでござるよ」

懐から医療ナノマシン入りのシリンダー2つを取り出すと、倒れている一夏と弾に投げ渡す一樹。

「悪い…」

「助かる…」

それぞれ怪我した箇所にシリンダーを当ててナノマシンを送り込む。ナノマシンが急速治療を始め、傷がみるみる塞がっていく。

それを確認すると、藤原の方へと歩を進める一樹。

「…随分、ウチの宗太を可愛がってくれたみたいだな」

「そっちこそ」

同じ刀匠の作刀を持った2人が、再度ぶつかろうとしていたその時。

 

ヒュッ!

 

「…ッ」

一樹が後頭部あたりに殺気を感じた。逆刃刀をその殺気に向けて振るうと…

 

キンッ!

 

「…赤空さんの作品か」

蛇のように動く刀があった。

「流石は藤原君の宿敵ね。この薄刃ノ太刀の攻撃を初見で防ぐなんて」

蛇のように動く刀…薄刃ノ太刀で一樹を攻撃した女、花澤が一樹に冷たい目を向けながら評価する。

「…そんなの」

一樹が花澤と対峙したその瞬間、ダンッ!と藤原が踏み込んできた。

背中を狙って突き出された無限刃を側転で避けると、起き上がりと同時に一回転。今度は一樹が藤原の背中を狙う。

「…チッ」

藤原にはその攻撃を捌く技量は無い。避けざるを得ず、花澤の元へと跳躍した。

 

 

「…花、お前は後ろの2人を相手どれるか?」

「やってみるわ。砂浜にいるTOP7(バケモノ)に比べたら弱いでしょ。あの8人よりは強いだろうけど」

花澤に一樹の相手をする事は出来ないのは分かりきっている。けれども、鬱陶しい雑魚2人の相手が出来れば藤原には充分だ。

「じゃあ任せた」

 

 

「…一夏、やれるか?」

視線で花澤を指す一樹に、一夏は肩をすくめる。

「正直分かんねえ…けど、お前がくれたナノマシンのおかげで傷は癒えた。やれるだけやるさ」

「俺もいる。何とかするさ」

弾も回復したのか、一夏の隣に移動してくる。

「…頼むでござる」

そう呟くと、先手必勝と藤原に向かって駆け出した。

 

 

突っ込む一樹目掛け、薄刃ノ太刀が飛ばされる。

「…邪魔だ」

呟くと同時、一樹は薄刃ノ太刀の()()を潜る。

「(甘いわ!薄刃ノ太刀の切っ先は変幻自在!背後から串刺しに…)」

「邪魔だと言っている」

既に最高速に達している一樹からすれば、花澤の反応速度など恐るるに足らない。

あっという間に花澤の横を駆け抜けて藤原に迫る。

「(牽制のつもりだったとはいえ、ここまで効かないなんて!しかも…)」

一樹を狙って反転させた薄刃ノ太刀が、持ち主である花澤に迫っている。

「私を狙うよう誘導させるなんてね!」

切っ先を掴む事で対処した花澤。一歩間違えれば己に襲いくる行動を躊躇いなく行う度胸に、花澤は心の中で拍手を送った。

「じゃ、私は雑魚2人を片付けるとしますか!」

すぐに意識を切り替えると、己に迫ってくる一夏と弾と対峙した。

 

 

一樹の突進に合わせて無限刃を横薙ぎに振るう藤原。

その斬撃を、速度を落とさずスライディングする事で避ける一樹。

斬撃を避けてすぐ、素早く足を振り上げて藤原の腰を蹴飛ばして追撃を抑えながら起き上がる。

「このっ!」

無限刃に黒炎を纏わせて斬りかかる藤原。

「(炎自体の殺傷性は低い…!その奥の、斬撃を見極めろ!)」

黒炎に惑わされず、刃を避ける事に全神経を注いだ一樹。

最小限の動きで藤原の攻撃を避け続け、見つけた隙に小さくとも確実に攻撃を当てていく。

それはじわじわと、藤原にダメージを与えていく。

しかしそれは、一樹自信にも言える事だ。砂浜から始まった戦いは、想像以上に一樹の体力を奪っていた。この動きが出来るのも、あと少しだ。

「(コイツのタフさを考慮すると、このままじゃジリ貧。だけど、全力を出しても倒せるか分からない。くそッ、どうすればいい…)」

そんな事を考えていらなくなるのも、一瞬だった。

「ウザってぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

突如藤原が吠えた。

その瞬間、藤原の体に闇が集まり始めた。

「ッ…」

一樹はその光景に、シャドウがシャドウ・デビルに進化した時を思い出す。

「…ヤバイな」

小さく呟いた言葉を合図にしたかの様に、黒いオーラを纏った藤原が突撃してきた。

「ゴッ!!?!!?」

一瞬、一樹の目からも藤原の姿が消えた。その一瞬で藤原は一樹に肉薄すると、一樹の胸ぐらを掴み、煉獄の壁へと突進する。壁を数枚、突き破ってようやく止まると、不敵な笑みで一樹に話しかけてきた。

「…どうだい?これでも宗太より戦いやすそうか?」

「…今までは手加減していたでござるか?」

吐血しながら問う一樹に、藤原は余裕の表情を崩さず答える。

「ちょっと違うね。()()()での全力は出してたさ。今の状態は、分かりやすく言うならパワーアップアイテム・時間制限無しを使用してるってとこかな」

「…反則技でござるな」

「出来ないからって僻むな、よ!!!!」

言葉の終わりと同時に、前蹴りで更に吹き飛ばされる一樹。

壁を更に数枚ぶち破ってから止まるが、ダメージの大きさに動けそうに無い。

「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ…」

「おいおい、それでも伝説の人殺しかよ。もっと楽しませろよ」

咳き込む一樹に近付く藤原。

次の攻撃に対応するために立ち上がろうとする一樹。トドメを刺そうと藤原が突進した瞬間…

 

ドォォォォォンッ!!!!

 

「「ッ!!?」」

凄まじい衝撃により、煉獄が揺れた。

 

 

一方、海岸では…

「コレで最後!!」

宗介が兵隊最後の1人を気絶させていた。例のごとく結束バンドで拘束すると、控えていた警官に預ける。

その時だった。

「あん?」

煉獄に闇が集まると同時に、今まで機能を完全に停止されていたISを始めとする近代兵器が稼働し始めた。

それが意味するのは、藤原が作り上げ、世界中を覆っていた特殊フィールドが消滅した事だ。しかし、依然煉獄周辺はフィールドが残っている。

 

「通信機能復活を確認。IS部隊、出撃!」

 

「ッ!!?」

出撃命令を受け、日本のIS部隊が出撃していく。レーザーなどの近代兵器が通用しないと気付くと、一旦海岸に戻り、大砲の弾を次々と落とし始めた。

「おい!何してやがる!?」

「一樹や一夏たちがまだアレにいるんだぞ!?」

指示を出した軍人に掴みかかる宗介と智希。軍人は2人を一瞥するも…

「攻撃を、続行せよ!!!!」

攻撃を、止めさせはしなかった。

「…誰の命令なの?」

新たに軍人に詰め寄るのは楯無だ。楯無の言葉への返事も無く、軍人はただ煉獄に攻撃を集中するIS部隊に視線を向けていた。

「…おい、五体満足でいたかったら今すぐ攻撃をやめさせろ」

暗く冷たい宗介の言葉に、軍人は冷や汗を流すも、口を開こうとはしない…いや。

「…ご安心を。()()()()()必ず救出しますので」

千冬に向けて、淡々と語った途端。

 

ドギャァァァァ!!!!!!!!

 

宗介の拳を喰らい、数メートル吹っ飛んだ。

「貴様!!!!」

周りの軍人達が各々武器を取り出すが…

 

ズガンッ!!

 

宗介以外のTOP7全員が同時に放った弾丸により、武器を落とされた。

「文句があるなら、この戦いが終わった後いつでもかかってこい…けどな」

宗介を中心に5人がとんでもない殺気を放つ。

「まともに生きて帰れると思うなよ?」

その中心にいる宗介の言葉に、政府直属の隊員たちの呼吸が止まる。

そんな恐怖の対象である宗介に近付くのは、大泣きしている雪恵とセリーだ。

「そう、ずげぐん''」

「ガ、ガズギが」

2人の声に、一旦怒りのオーラを消すTOP7。

「…分かってる。コイツらにSEKYOUすんのは全部終わってからだ」

そこで区切ると、宗介は鋭い目で川司を見る。

「川司のオッサン、警官達の避難はどれくらい進んでる?」

「…一樹君の指示のおかげで、警官と捕虜は全員煉獄から脱出している」

「オーケー。それならそんなに気にする必要は無えな。お前ら、ありったけの人員を用意しろ。ボスとアホ2人を迎えに行くぞ」

「「「「了解!!!!」」」」

「川司のオッサン!船借りてくぞ!!」

「ああ!使ってくれ!!」

 

 

花澤の人間離れした薄刃ノ太刀(リボン)の攻撃を何とか捌いていたら、IS部隊による爆撃の影響で煉獄が揺れた。

「キャッ!?」

その揺れに、踊る様に薄刃ノ太刀(リボン)を振るっていた花澤の動きが止まる。

「「ッ!!」」

その隙を逃す一夏では無い。素早く弾が落としていたスタンロッドを拾って花澤に向かって投げた。

 

ガッ!

 

「痛ッ…!」

薄刃ノ太刀を落とした花澤。慌てて拾おうとするが、それより早く弾が転がりながら薄刃ノ太刀を掴んだ。

「コイツは貰ったぜ…!」

数度振るってコツを掴むと、花澤を完全に拘束する。

「しまっ…!」

「じゃあな」

身動きが取れなくなった花澤に、再度拾ったスタンロッドのスイッチを入れてから当て、気絶させた。

 

 

一方の一樹と藤原の戦いは、未だ決着が着く兆しが見えない。爆撃の影響による煉獄の揺れによって距離が出来た2人。鋭くお互いを睨みつつ、揺れが収まるのを待っている現状だ。

「…政府にとっちゃ、お前も僕も同じらしいぜ?」

「…今に始まった事では無いでござるよ」

急速に闇の力を取り入れた反動が来たのか、藤原の息は荒い。一方の一樹も、ここまでの激闘によって体力を消耗しており、やはり息が荒い。

「そろそろ…決着着けようよ」

「ああ…」

揺れに慣れてきた2人、姿勢を低くして走り出す。

力量で戦う藤原と、技量で戦う一樹。

それぞれが刀を振るうが、受け止められるか流され、有効な一撃になり得ない…筈だった。

「うっ…ラァッ!!」

 

ドンッ!!

 

「カ…ハッ…」

無限刃による零距離爆破をまともに喰らってしまった。それによって体制が崩れる一樹。

その隙を逃す藤原では無い。黒炎を纏わせた無限刃で袈裟斬りを放つ。

「オラァァァァ!!」

「グッ!?」

致命傷は避けたものの、ザックリと斬られてしまった上に、火傷も負った。ただでさえ大きいダメージが、更に大きくなってしまった。

「コレでトドメぇぇぇぇ!!」

心臓を突き刺そうと無限刃を突き出す。

「ッ!」

勝利を確信したからか、単調な攻撃を出してきた藤原。そんな攻撃を見逃す一樹では無い。

「なっ!?」

突き出された無限刃を、体をコマの様に回転しながら避けると、その勢いを利用して藤原の背中に逆刃刀を叩き込んだ。

「ガッ!!?」

大きなダメージを負っているとは思えない一樹の動きに、藤原は対応出来なかった。

「藤原…」

荒い呼吸のまま、一樹は話し出した。

「もうお前や拙者のような、【力】を持つ者が支配する時は終わったんだ…」

「終わってなんかいないさ…【力】はずっと通用する。そしてこれからは僕の時代だ。僕の()を使ってね…!」

グォンッ!と、無限刃を振るって力を誇示する藤原。闇を脚に集中させて踏み込んでくる。だが、既に一樹はその速さに慣れていた。振り下ろされた無限刃を横に弾くと、逆刃刀を構えて飛び上がった。

「ゴガッ!?」

逆刃刀が顎に直撃、大きく後退する藤原。

「終わったんだ…拙者が、雪恵()と出会った時に…」

「……」

呼吸を落ち着かせた藤原は、無限刃を力強く握る。

「さぁ…最終局面だ…」

「……」

対する一樹は、逆刃刀を鞘に納めた。

 

飛天御剣流奥義、【天翔龍閃】を放つために。

 

藤原は自身に纏える闇の量を最大にした。目に見えてオーラが禍々しくなり、それはもはや人が出せる領域ではない。

「(こんな状況だ。おそらく宗太を倒した技を出してくる…そしてそれは抜刀術なんだろう。宗太を倒せるって事は、他の抜刀術とは何かが違う筈…それに対応するために目と反射力に闇を集中させる。抜刀術さえ凌ぐ事が出来れば僕の勝ちだ!)」

「…勝負」

 

轟ッッッッ!!!!!!!!

 

「(来る!!)」

相変わらずダメージを感じさせない速さで踏み込んでくる一樹。もはやそれに驚く事は無いが、威圧感は拭えない。

「(怯えるな!確実に攻撃を裁かないと僕に勝ち目は無いんだ!)」

藤原は全神経を集中させて一樹の攻撃に備える。

「ッ!!!!!!!!」

そして、一樹は藤原の予想より1()()()()踏み込み、逆刃刀を抜刀。

「くっ!!?!!?」

予想が外れたとは言え、全身を闇で強化している藤原。無限刃で逆刃刀を受け止める事に成功。

「(なんつう力だよ!!?)」

「グッ…!」

闇で強化されている藤原と、己で鍛えた力のみで互角の力を発揮する一樹。

数秒間、刀と刀がせめぎ合っていたが…

「うっ…らぁっ!!!!」

「ッ!!?」

無限刃を半回転させることで、逆刃刀を捌いた藤原。

【天翔龍閃】が、破られた!?

「コレで僕の勝ちだァァァァ!!」

無限刃の全発火能力を解放し、塵すら残させないとばかりに振りかぶる。狙うは、弾かれた影響で体が回転している一樹の背中だ。

だが…

「ッ!!?」

突如、藤原の足が風に引っ張られた。

「(これは…コイツに引き寄せられてる?いや違う!引き寄せられているのは、その目の前の空間か!)」

超神速の抜刀術によって弾かれた空気が、急速に元に戻ろうとしている。

その影響で、藤原の体は一樹の前へと引き寄せられていく。

つまり_____

「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

_____一樹にとって、絶好のチャンスなのだ。

弾かれた勢いを逆に利用、一回転+更に踏み込んで放つ、最強の二撃目!

 

ドギャァァァァンッ!!!!!!!!

 

「が……はっ!!?!!?」

防御も出来ず、真の天翔龍閃を喰らった藤原。全力で振り上げられた逆刃刀の威力に、吐血しながら高く吹き飛ぶ。そんな状態で着地の体制を整える事が出来る筈も無く、背中を強打しながら着地した。

「ハア、ハア、ハア!」

持てる力全てを振り絞った一樹も、呼吸がかなり荒い。

しかし数秒で何とか立ち上がると、決着をつけるために、藤原に近付いていく。

「コレで…最後…」

「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

藤原が怨念の籠った唸り声をあげるが、体を動かす事は出来ない。1歩、また1歩と一樹が近付く…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いが、今ソイツを倒されたら困る」

 

 

ドドドドッ!!

 

 

「がはっ…!?」

あと1歩というところで、何かが一樹の体を貫いた。前のめりに倒れる一樹。

「(何…が…?)」

藤原の方へ視線を向けると、黒い縦穴が現れた。そこから、スーツを着こなす若い青年が出てきた。

「…お前が、今地球にいるウルトラマンか」

青年の言葉は淡々としていて冷たい。そして、一樹がウルトラマンであることを一目で見抜いたという事は…

「ああ、俺だけお前の事を知ってるのはあまり公平じゃないな。俺は…この姿では前原を名乗ってる。そして、お前たちが【メフィラス星人】と呼んでいる宇宙人だ」

「めふぃ、らす…」

倒れている藤原を抱えると、再度黒い縦穴を呼び出す前原。

「ま……て……」

何とか立ち上がり、前原を止めようとする一樹。前原は藤原を抱えたまま振り返ると、余裕の笑みを浮かべる。

「そう焦るな。近いうちにお前とは闘り合う事になる。今のお前じゃ1()()で終わっちまってつまらないからな。その命、預けといてやる」

前原はそう言うと、縦穴の中へ消えて行った。

「前…原…ゴフッ」

気配が完全に消えたと同時に、気力が抜けた一樹は吐血しながら倒れた。

「一樹!!!!」

「おいしっかりしろ!!!!」

ぶち抜かれた壁を越えてきた一夏と弾に抱えられ、今にも沈みそうな煉獄から脱出を図る。

藤原がいなくなったため、闇のフィールドが消滅し始めた。IS部隊の攻撃が激しくなる中、意識が朦朧としている一樹を必死に運ぶ一夏と弾。

『マ……が……』

『ノ………ちゃ……』

『も……が………わ……』

ノイズ混じりながらも、各々相棒の声が聞こえている。

「しっかりしろ一樹!」

「もう少しだからさ!」

何とか船首にたどり着いた3人。

そこに_____

「絶対受け止める!!だから…」

 

「「「「飛び降りろ!!!!!!!!」」」」

 

_____仲間たちの、声が聞こえた。

「「ッ!!」」

その声に従い、3人とも船首から飛び降りた。

下で信じて待っていたS.M.S団員達が張っていたネットに着地すると、すぐ小舟にそれぞれ引き上げられた。

「離脱するぞ!!!!!!!!」

「「「「応ッ!!!!」」」」

宗介の指示により、小舟は急ぎ陸へ向かう。

『マスター!しっかりして!』

フィールドが完全に消滅したのか、一樹の脳にミオの声が響く。

「(随分…久々だな…)」

 

 

無事陸にたどり着いたS.M.S団員達。

「かーくん!!!!」

「カズキ!!!!」

「五反田君!!!!」

「「「「一夏!!!!」」」」

砂浜で待っていた女性陣が、己の服が海水に濡れる事も構わず船に近付く。

「一樹、肩貸すぜ」

「ほら、掴まれよ」

「……ん」

宗介と智希に支えられて立つ一樹に、雪恵とセリーが駆け寄る。

「大丈夫!?」

「カズキ凄い怪我…」

その声に、一樹が顔を向ける。

「………ただいまでござる」

弱弱しく、小さな声だが、笑顔で2人に言う一樹。

「うん!おかえりなさい!!」

「おかえりカズキ!!」

満面の笑みを浮かべる2人。

そんな2人に宗介が申し訳なさそうに話す。

「あ〜、感動の再会の途中で悪いが、一樹たちを病院に連れてってやりたいんだけど…」

「あ、ごめんね!」

「私が運ぼうか?」

「あの2人も行けるか?」

後ろの一夏と弾を指す宗介。セリーは一瞬真顔になったが、仕方ないとため息をついてから頷いた。

そこに、空気の読めない者が近付いてくる。

「ご苦労だったな。無事で何よりだ」

伊藤博昭が川司たちを引き連れて近付いてきた。

「どの口がほざいてんだ!!」

「てめえのためにボスは戦った訳じゃねえ!!」

血の気の多い団員達が、伊藤に詰め寄る。警官達がその間に入ろうとしたその時。

 

()()()

 

「「「「ッ!!?!!?」」」」

重く低い声が砂浜に響いた。

声の元である一樹は、未だ宗介と智希の肩を借りて何とか立っている状態だ。

それでも、その身から発せられるオーラはやはりこの集団のトップなんだと思わせる。

「…アンタの命令のおかげで、藤原に逃げられた。この責任はどうとるんだ?」

「なっ…藤原に逃げられたのか!?」

「…まあ、それ以外の幹部はほぼ全て倒したんだ。アイツがまた集団を組むとは考えにくいけどな」

6年前の面々など、今回の大捕獲劇でほぼ捕らえられてしまったのだ。

()()藤原が、新しい人物を信用出来るとは考えにくい。

前原が連れて行った花澤と宗太しか残っていない以上、これだけの大事を起こせるとは思えない。

「…自分の失敗に怯えながら、過ごしていけば良いさ」

そう伊藤に言うとセリーに目配せをし、病院へとテレポートした。




るろ剣要素はコレで終わりになります!
1年以上、作者の趣味にご付き合いいただきありがとうございます!

次回はIS学園です!!!!!!!!
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