「行くよ櫻井君!」
自分が女と公表したシャルロットは、約束通りにS.M.S専属となり、専用機として“ゴールドフレーム”を与えられた。普段は開発コードである“アストレイ”で呼んでいる。そして今は手に入れた新しい機体で一樹、一夏と模擬戦をしていた。しかし、2人の表情は暗い。
「(ストライクの関節が重い…)」
元々一樹の反応速度にストライクの関節はついてこれていない。それを今まで強引に動かしていたが、そのツケが回ってきていた。それは一夏も同じで
「(クソッ!白式の関節が重い‼︎)」
一樹と同じく、腕力で強引に動かさざるを得なくなっていた。当然、脳波リンクがあるためストライクよりかは動きは早い。そして一夏の反応速度は一樹より遅い。だが、それでも白式が一夏の動きについていけなくなっているのだ。
「貰ったよ‼︎」
一樹が苦労している内にシャルロットがビームサーベルを構え、接近してくる。一樹は腕力に物を言わせ、強引にストライクを動かし、シャルロットの攻撃をシールドで受け止めると、そのままシャルロットの右腕を掴み、一本背負いの容量で投げ飛ばす。姿勢が崩れているシャルロットに威力を抑えたビームライフルを2発撃ち、シールドエネルギーをゼロにした。
「うーん…やっぱりまだ慣れないなぁ…」
「じゃあちょっとごめんよ」
アストレイの空中投影キーボードを表示させ、OSを書き換える。
「リヴァイブ時のデータから反応速度を読み取り、分子イオンポンプ及び関節部の電圧変更。そのためにマグネットコーティングの設定パターンを初期設定の170から685へ変更へCPGを再設定…よし、終わり。試しに飛んでみてくれ」
「う、うん」
一樹のOS書き換えを初めて見たシャルロットはその速さに驚いていた。一樹に言われた通り、飛んでみると…
「す、凄い!僕の思い通りに動くよ‼︎何これ本当にさっきと同じ機体なの⁉︎」
感動のあまり、宙返りなど、普段のシャルロットではあり得ない程はしゃいでいる。それを見て、一樹と一夏は微笑ましく見ていた。
「…流石にこれ以上は
シャルロットのアストレイの試験起動を終えた後、一樹と一夏は整備室で白式のOSをいじくっていた。
「やっぱりこれ以上は無理か…束さんにやってもらうしか無いか?」
「いや、束さんも俺とOS操作技術はほぼ同じだからあまり効果は無いと思う。一応コアの技術は聞いてるからそれに合わせていつもいじくってるし」
「ちょっと待て今凄い事聞いた気がするんだけど⁉︎」
コアの技術は束の完全独占だと言われていたのだが…
「アストレイのコアは俺達が作った奴だぜ?面倒なことにならない様に束さんにハッキングでIS委員会のデータに登録して貰ってるし」
なので今、世界には実質的に468個のコアが存在している事になるのだ。
「俺の予想だけど、今度の臨海学校は日付的に束さんが来ると思うんだ」
「ああ、俺も同感だ」
一樹の予想に一夏も同意する。恐らく臨海学校で何かが起こる。
「〜♪〜♪〜♪」
「ご機嫌だなシャルロット」
「まあね〜♪」
自分の新しい機体がよっぽど気に入ったのか、シャルロットはずっと鼻歌を歌っている。
「リヴァイブもかなり僕向けに設定を調整してたけど、流石は第三世代だね。追従性が段違いだよ♪」
それは一樹のOS設定もあるだろうと一夏は思う。実際、ラウラはレーゲンの追従性は
「(俺の時、元々あの速度だったのは最初っからある程度データを入れてたってところかな。でなきゃ
それなのにもう白式は一夏についてこれてない訳だが…まあ、今それを考えてもしょうがない。
「ところで、これからシャルロットの事は何て呼べば良いんだ?」
岸本さんのフル置き勉机(本人は『フルアーマー机』と呼んでいる。フルアーマーの言葉を使うなと個人的には言いたい)を運びながらシャルロットと会話する。
「ど、どういう意味かな?」
一瞬で恋する乙女の顔になったシャルロット。一夏が気づいてないのが残念でならない…
「いやさ、前に『ふたりきりの時は名前で』って言ってたからまだしばらく男装のままでいるのかなと思ったら翌日には女の子に戻ってたからな。どうしよっかなーって」
この『ふたりきり』の意味を理解しないのが一夏クオリティ。
「そ、それはその…い、一夏には『女の子』として普段から見て欲しかったから、ふたりきりの時だけっていうのは…その…」
ライバルとの差を作るためと思ったが、その律儀な性格からそれは卑怯だと思い、自分の本当の性別を明かしたのだが、それを言える訳がないシャルロット。恋する乙女は大変だ。
「まあ、言いたくないなら良いんだ。ちょっと気になっただけだし。それに俺はシャルロットの事はちゃんと女の子だと思ってるぞ」
「ほ、本当⁉︎」
一夏の言葉に一気に顔が赤くなるシャルロットだが、ここでそれを壊すのが織斑一夏という男なのだ。
「だって、男じゃないしな」
アホー、アホーとシャルロットの中でカラスが鳴いた気がした。
「(うん、一夏はそういう人だよね…)」
しかもワザとでないからタチが悪い。昔から女の子に囲まれる事が多いからなのか、『可愛い』と言うのも抵抗がない。その度に乙女たちは心が高揚するが、すぐに急降下するのがオチなのだ。
「(本当、一夏は乙女心を勉強するべきだよ…)」
クラスの他の子にもそんななので、一夏へ好意を持つ被害者は日に日に増えている。増えすぎて一樹に『織斑一夏攻略法』を聞く者が出る始末…よって、最近の一樹は教室にいる=戦闘より疲れる状況だ。
「しっかしアレだな。せっかくの呼び名が普通になっちゃったから何か別の呼び名でも考えるか?」
「え?い、良いの?」
「シャルロットが良ければな」
「うん!お願い‼︎(や、やった!これって少なからず僕の事をす、好きってことだよね⁉︎だ、ダメだよシャルロット。にやけちゃ…えへへ〜♪)」
甘い、空間がとてつもなく甘い。
「そうだな…『シャル』なんてどうだ?呼びやすいし」
「シャル…うん、良いね‼︎」
シャルロットの周りに花が舞っている。ご機嫌のシャルロットの肩を一夏は掴んだ。
「シャル…」
「え、え⁉︎な、何?」
一夏の真剣な目にシャルロットは少し驚きながら次の言葉を待つ。
「付き合ってくれ」
「___________え?」
シャルロットの時が止まった。
「で、その後何故かシャルが急速に不機嫌になったんだ」
「お前、そろそろ本気でしばくぞ?」
「何ゆえ⁉︎」
放課後、整備室で話す一夏と一樹。一夏の話に一樹が本気でキレる。その背中から見えるオーラに、一夏はタジタジになる。
「そろそろお前の唐変木の後始末が面倒だ。いっそお前を消せば楽になるかな…」
「仮にも護衛役の言うセリフじゃねえ‼︎ちょ、ま、それはマジなISブレード!やめて、死んじゃう‼︎」
しばらく一夏は切っ先からの風切り音を聞くことになった。
「し、死ぬかと思った…」
「お前はいい加減唐変木を直せ。あんなに分かりやすいオーラ出てんだからさ」
「な、何の話だ?」
「……」
呆れるしか出来ない一樹だった。
「……」
週末のレゾナント。一夏とシャルロットの姿があった。シャルロットは不機嫌顔だが。
「お、おいシャル。可愛い顔が台無しだぞ?」
世の一般男性では到底言えないようなセリフを平然と言う一夏。その言葉にいつもなら照れるシャルロットだが、今日は違った。
「一夏」
「お、おう」
「乙女の純情を踏みにじる人は馬に蹴られて地獄に堕ちるべきだと思うんだ」
「そうだな。そういう奴は最低だよな」
「鏡見なよ」
シャルロットにそう言われると一夏は髪型を気にする。寝癖が治ってないのか?と思ったに違いない。その後ろを追う鈴とセシリア。
「ねえ…アレってデートよね…」
「そうですわね…デートですわね」
「へえ…アタシの見間違いでも、白昼夢でも、幻覚でも無く、現実か…よし、殺そう」
素早く甲龍の右肩を部分展開し、衝撃砲で一夏達を撃とうとする鈴。恋する乙女は本当に怖い…
「何をしているのだ?」
「「⁉︎」」
背後から声をかけられ驚く2人。振り返ると以前ボコボコにやられたラウラがいた。
「い、いつの間に⁉︎」
「ついさっきだ。それにそう警戒するな。お前たちに危害を加える気はない」
「し、信じられるとお思いですか⁉︎私たちは以前あなたに…!」
思い出して怒りが再燃したのか、セシリアの顔が真っ赤になる。
「まあ、あの時はすまなかったな」
あっさりそう言うラウラ。2人がポカンとしてると、スタスタと一夏とシャルロットの方へ向かおうとする。
「「ちょ、ちょっと待った‼︎」」
2人でラウラの肩を掴んで止める。
「何だ?」
「な、何しようとしてんのよ?」
「あの2人に混ざる」
当然とばかりに言うラウラを慌てて止めるセシリア。
「お、お待ちになって!未知の敵と戦うにはまず情報収集が必須ですわ!」
「ふむ、一理ある。それで?」
「ここはこっそり着いて行って2人の関係を探るのよ!」
つい先ほど容赦無く衝撃砲を撃とうとした者のセリフではないが、そこは気にしてはいけないだろう。
「あ、そういえば一夏。櫻井君は?」
一応一夏の護衛役である一樹がいないことを不思議に思ったシャルロットが聞く。
「昨日の放課後に誘ったんだけど『お前はそんなに俺が嫌いか?』ってよく分からんこと言って来なかった」
「あ、あはは…(ごめんね、櫻井君)」
一樹が来なかった理由を理解したシャルロットは心の中で謝罪する。
「おっと、水着売り場に着いたな。お互い、自分のを選んでここに集合な」
「う、うん。分かった」
本当は一夏に選んでほしいシャルロットだが、ひしひしと背中に感じる視線のせいでそれは言い出せなかった。
『つまり、あの2人はデートをしてる訳ではないんだな』
『半分当たり半分ハズレ。理由は察せれるだろ?』
尾行組の3人は、尾行しながら一樹と通信していた。
『要するに、シャルロットはデートしてるつもりだけど一夏は全くそうとは思ってないって事ね』
『さっすがセカンド幼なじみ。よくご存知で』
『でも、なぜあなたはいないんですの?外の方が護衛役が必要でしょうに』
セシリアの疑問も当たり前なのだが、一樹の立場ははっきり表記するのが難しい。超絶簡単にすれば『ただの付き添い』とも言えてしまうのだ。
『言いたいことは分かるよ…けどさ、想像してみてくれ。お前たちが今のデュノアの立場になったとしよう』
『『『ふむふむ』』』
『デートだと思ってたら、一夏は特に話さず俺を呼んでたら?』
『『『とりあえず消し炭』』』
即答だった。
『…だろ?かといって遠くから見るのは俺は吐き気がするからヤダ。というか今日くらい休ましてくれません?オルコットにラウラは知ってると思うけど最近1組では『一夏を攻略するための勉強会』とやらが出来たせいでこちとらストレスが溜まってんだ』
一樹が教室に入った瞬間「ご教授願います」なんて言う始末。下手したら女子陣の集中力は千冬の受け持つ授業並みだ。
『なるほど、理解した』
『どうやってお前らが今日一夏が出かけるという情報を得たのか知らないが、プライバシーを侵害するようなことしたら国に強制送還させるからそのつもりでいろ。今の一夏の立場は世界的にデリケートだってこと忘れんなよ』
『アンタに言われなくても分かってるわよ‼︎』
『…この間、生身の一夏に龍砲ぶっ放そうとした奴に言われてもなあ』
呆れながら一樹は通信を切った。とにかく、彼女たちは一夏自身にデートのつもりがないなら乗り込むだけだ。シャルロットに抜け駆けされないためにも。
「そこの小娘3人、さっさと出てこい」
それが鬼教官のお呼び出しでなかったなら、の話だが。
翌日のSHRは臨海学校のバス席を決める時間となった。一夏の隣に座るために、クラス全体(唐変木の一夏を除いて)殺気立っていた。
「一樹、バス一緒に座ろうぜ」
そんな空気を察せれずに今隣に座っている一樹に言う一夏。
「…俺は生徒じゃないから席決めは最後なんだ。とりあえずお前が座りたい場所に名前を書け」
「了解。でも、わざわざ俺の隣に座りたいなんて子はいないと思うけどな」
「(んな訳あるか!!!!)」
全力でツッコミを入れたい一樹だが、何とか抑える。一夏はバスの窓側、中央の席を選ぶ。その瞬間_____
「「「「はぁぁぁぁぁい!!!!」」」」
希望の席に座るために、女子全員が立ち上がった。凄まじいジャンケン対決になったのは言うまでもない。
文字数が安定しねえ…