「(だ、大丈夫かな?今日は家にいるって聞いてるけど…)」
織斑家の前で金髪ショートの女の子がインターホンを押すか押すまいかと悩んでいた。
「あれ?シャル?」
「ヒギャァァ⁉︎」
いきなり後ろから声を掛けられ、乙女らしからぬ声を出すシャルロット。
「い、一夏」
「なんだよヒギャァァって…」
「そ、そこは気にしないで‼︎って一夏、その格好は何?」
一夏の今の格好は季節外れの黒い長袖の上着に、ネクタイもきちんと閉めた状態だ。それでいて汗ひとつかいてない。
「ん?ああちょっとな…」
言葉を濁す一夏。シャルロットもそれ以上は聞かなかった。
「ちょっと待っててくれ」
一夏はそう言うと、超高速で部屋を片付ける。
「ねえ一夏…なんで拳銃が「シャル‼︎」あ…」
「片付けるから…待っててくれ」
「…うん…」
普段見ない一夏の厳しい表情に、シャルロットは言葉を失くした…
「そう言えば、何の用なんだ?今日来るって言ってなかったから夕方にバイトがあるんだけど…」
「う、うーんと、近くを通りかかったから…(来ちゃった♪がやりたかったなんて言えないよお…)」
「だよな〜。いくら何でも喪中の俺に来ちゃった♪なんて来る人がいる訳無いもんなあ…」
「ウグッ!」
シャルロット、痛恨の一撃!HP残り10%。
ピーンポーン
「ん?誰だ?」
「(ハッ!まさか⁉︎)」
インターホンが鳴ったので一夏は部屋を出て行った。シャルロットは嫌な予感しかしない…
「…なんで誰一人連絡寄越さずに来たんだよ…」
「仕方あるまい。
箒の言葉に続き、シャルロット以外の全員が同じような事をそれぞれ言っていく。
「…だよなぁ。喪中の俺に来ちゃった♪なんてやる無神経な人がいるはず無いもんなあ…」
「「「「ガハッ⁉︎」」」」
どうやら全員無神経な様です。
「遅えな…」
S.M.Sに一樹はいた。久々に本社に来て溜まっていた仕事を片付け、一夏、弾と訓練…の筈がいつまで経っても一夏が来ない。
「…アイツが連絡無しに2時間もいるかあ?まさかな…」
一瞬、嫌な予感がしたが、エボルトラスターの反応が無い為、溝呂木が関わっている事は無い筈だ。
「…となると…宗介、一夏の携帯に電話入れてくれ。遅れてる理由は多分アレだから」
「また?なら確認取るわ」
一夏の携帯が鳴ると、一夏の顔は途端に青ざめる。その様子を見た専用機持ちは…
「一夏、どうした?」
「まさか脅されてますの?」
「どうしたのよ一夏」
「一夏、悩んでるなら話してね」
「一夏、隠し事とは頂けないな。話してみろ」
それぞれ心配そうな声を出す。
「い、いや。これは明らかに俺が悪いんだ。脅されてる訳でもないし」
無理に作った笑みで通話に応じる一夏。
「も、もしもし」
『連絡し無いとは随分偉くなったなあ一夏』
「そ、宗介。いやその、これには、深い深い訳が…」
『宗介貸せ。一夏、どうせ専用機持ちが家に来てて連絡しようにも出来なかったんだろ?』
「そ、そういう事です」
一樹からの助け舟を受け、直ぐに現状を説明する一夏。
『全員が
何故かは分からないが、電話越しに一樹達の呆れた雰囲気が伝わってくる。
「ど、どうすれば良いかな?」
『少しだけ待ってやる。どうにかして来い。学園の目を気にしないで訓練出来る機会は少ないからな』
「…だな。了解、なるべく早く行く」
「…面倒になる事をしてくれたな一夏」
「…本当に申し訳ない」
S.M.Sに来た一夏。来たは良いが、面倒なのも付いてきた。つまり専用機持ちだ。
「シャルロットはまだ良いとしよう。一応S.M.Sの候補生だからな。他は完全に部外者だ。今は理香子(宗介の彼女)が案内してるけどいずれお前のとこに行きたいとか言って面倒なことになるだろうが」
「…はい」
「後でEX-ギアのパワーアシストを切って格納庫を30週な」
「死んでしまう‼︎」
「あ?文句あんのか?」
「ナンデモアリマセン」
「…以上がここ、S.M.Sの主な仕事です。何かご質問はありますか?」
理香子が呼びかけると、シャルロットが手を挙げた。
「どうぞ」
「えと、なんで皆さんこの季節にその黒の長袖の上着を着てるんですか?」
半袖のシャルロットに丁度良い空調だが、それだと職員は暑すぎるのでは無いかと思ったのだ。
「あ、コレですか?詳しい材質は言えませんが、着てる人に常に適切な温度にしてくれているので…極論を言えば、北極や南極でも、燃え滾るマグマの上でも理論上は活動出来る様にしてくれる上着ですね」
「「「「ええ⁉︎」」」」
理香子の説明を聞いて空いた口が塞がらない一同。直ぐに立ち直ったのはセシリアだった。
「あ、あの!おいくらで売ってくれますか⁉︎」
「売りません」
「そこを何とか!言い値で買いますので‼︎」
「ですから…はあ分かりました。担当者に聞いてくるので少しお待ち下さい」
一樹はS.M.Sの自室で書類の作成、整理をパソコンでしていた。宗介も手伝い、各国の防衛府から寄せられたメールに返信していく。そんなとこに、理香子が入って来た。
「ごめん、今少し話出来る?」
「宗介、行っていいぞ」
「悪いな」
「いや今回は一樹なんだけど…」
「「え?」」
「オルコットさんがコレ売って欲しいって…」
コレ、の部分で自らの上着を指す理香子。
「無理」
「「ですよね」」
「…と言っても、納得しないだろうから…在庫も無く、作るのが無理って事にしといてくれ」
「「了解」」
S.M.S見学会が終わった為、専用機持ちはとりあえず一夏のとこに向かおうとする。が…
「すいません、ここから先は関係者以外立ち入り禁止なんです」
警備員が専用機持ちを止めた。
「私達は一夏の関係者なのですが…」
「S.M.Sの関係者では無いでしょ?彼は今面接中です」
もちろん嘘だが、ここから先には格納庫があるので通す訳には行かなかった。流石S.M.S。状況判断力がずば抜けている。
「お疲れ様っす」
「あ、しゃフガガガモガッ⁉︎」
一樹が通ろうとするので、警備員も挨拶をしようとするのを一樹が止めた。
「(今の俺はただのバイトだ。分かったか?)」
「(りょ、了解しました‼︎)」
S.M.S独自のアイコンタクトで会話を終えると、そのまま通り過ぎようとする一樹。が、殺気を感じて振り向くと、そこには各々の射撃武装を部分展開している専用機持ち(シャルロット除く)がいた。
「…何のつもりだ?」
代表してラウラが答える。
「ここ、通させろ」
顔は笑ってるが、目が笑ってない…
「無理。俺ただのバイトだからそんな権限無いし」
しかし一樹はまったく動じずに返した。
「ってか、ここはIS展開禁止だぞ?これがお前らの国にバレたら直ぐにブタ箱入りだ」
「「「「ウグッ⁉︎」」」」
「それに…」
一樹はおもむろに腕を上げると、指をひと鳴らし。壁から強烈な電撃が放たれ、ISは解除された。
「強制解除されるだけだしな」
一方、格納庫では
「ひい、ひい、こんのッ!」
一夏が宗介監視のもと、EX-ギアのパワーアシストを切ってランニングをしていたそうな。
では、また次回