どうしてこうなった…
「ねえ、織斑君の唐変木エピソードってどれくらいあるの?」
ある日の放課後、いつも通り一夏達専用機持ちのじゃれ合いを見ていた相川がふと気になった事を一樹と雪恵に聞いてくる…一夏の唐変木エピソードを。
「…なあ相川。『恋』が何か分かったのはいくつだ?」
「え?えーと…小学校3年生くらい?」
「まあ妥当だろう。小学校3年生ぐらいになるとそれぞれ『あの子可愛い』とか『あの人カッコいい』ってのがあるだろ?」
「「「「うんうん」」」」
どこからかプロジェクターを取り出した一樹。そして雪恵がSDカードをセット。専用機持ち以外の生徒の連携は素晴らしく、いつの間にか教室の机が全て下げられ、イスだけが前に出された。
「…プロジェクター出した俺も俺だけど、何その連携?」
「「「「櫻井君と雪恵ちゃん見て覚えた」」」」
「うんうん、着々とレベルが上がってるね。でも、修行を怠らないこと!」
「「「「はい!師匠!!」」」」
「原因お前だったのか雪!?」
「このIS学園…かーくんと連携を取れるようになれば、下手な候補生なんて相手にならないようになるから頑張ること!」
「「「「はい!!」」」」
「ねえそれIS操縦の事だよね?実生活で俺と連携して何の意味があるんだよ⁉︎」
「「「「苦労男子の気持ちが分かります!!」」」」
「誰得だよ!?」
「私得!!」
「雪だけじゃねえか!!!」
一樹のツッコミ役が定着してきたところで、話は戻る。
「コホン、とにかく小学校3年生くらいになれば『恋愛』ってのが出てくる」
プロジェクターに接続しているパソコンを操作。小学校3年生時代の一夏と箒、雪恵を写した。
「「「「おおー!」」」」
「ちょ、やめろ一樹!」
「わ、私も写ってるのか!?」
「あはは!箒ちゃんが髪短くしてた時だね」
写っている3人がそれぞれ反応する。いつの間にか伊達メガネと指揮棒を持った一樹は授業風に話し始める。
「ここに写ってるのはみんな予想している通り、小学校3年生時代の一夏だ。そんな彼の普段の生活を写した映像がコレだ」
パソコンを操作し、一樹が映すのは…
『死ねやゴラァ!』
『当たんないね!!』
阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
「「「「何これぇぇぇぇ!?」」」」
「しまった!これ上の学年に絡まれた時の動画だ!!ってか誰だよこれ撮ったのは!?」
「あ、私。警察に渡せば証拠になるかなって」
一樹の言葉に胸を張る雪恵。得意げな顔が憎たらしい。
「お前かぁぁぁぁ!!?」
急いで画面を切り替える一樹。
『あーテステス。よし、撮れてる。一夏、本番行くぞー』
『本番って言うけど全く練習してないよな?』
『気にするな』
『ったく…あー織斑一夏です。なんの需要があるのか知らないですけど、俺の生活を記録します』
気だるげに画面に向かって言う幼い一夏がいた。
「「いつ撮ったの!?」」
箒、雪恵もびっくりしてるが…
「ヒント、3学期。以上」
一樹はそれしか言わなかった。
事の発端…ある日の放課後の光景。
「はい織斑君!」
「織斑君…これ、貰って」
「別にあなたのために作った訳じゃないんだからね!!」
典型的なツンデレも混じっているこの状況。何が起きてるかと説明するならば…黒板に書かれている日付を見ていただければ、皆さん方には分かっていただけるだろう…
2月14日
そう、この日付なのだ。朝から一夏の周りに女子生徒が群がり、チョコを渡している。
「ちぇ、また一夏かよ…」
「やっぱり顔面偏差値か…」
「逆に考えようぜ?来月は全く出費を気にしなくていいんだから」
「「悲しい事言うのやめろよお前」」
一夏以外の男子はどこか悲壮感を感じられた。
「なあみんな。ここにいても居心地悪いからサッカーやりに行かね?」
『何度』小学生をやったか分からない一樹は、言葉程気にしてないようだ。
「…サッカーか…よし、みんなやろうか」
「「「「賛成!!」」」」
一樹の提案に、一夏以外の男子が教室を出ようとする。
「あ、俺も行く!」
一夏も席を立とうとするが…
「あー、一夏。お前は当分来れないと思うぜ」
「は?なんでだよ」
一樹の言葉に疑問を持つ一夏。
「なんでって…」
一樹が廊下を見ると…
「はいはい!織斑君にチョコあげる人は並んで!押さないで!みんなちゃんと順番は回るから!!」
雪恵が3、4、5、6年の女子生徒達を整列させていた。
「あと4学年分あるからな」
「「「「いつの間に堕としたんだあの女たらしは!?」」」」
「…織斑君、小学生からアレだったんだ」
動画を撮る理由を語っている一樹。まだ話の途中だが、その頃から一樹達が苦労してるのが分かる話だ。
「その時はまだISが出てないからな。純粋にアイツが堕とした訳だ」
「「「「恐ろしい…」」」」
「さて、話の続きだ。確かに、俺らが通ってた小学校はあまり児童数はない。けど、4学年分ものお返しとなると尋常じゃない量になる訳だ。結果、当時の女子生徒は何故か俺にこう言ってきた」
「ねえ櫻井」
「んぁ?」
3月の頭、女子達の代表が一樹に話しかけてきた。
「そろそろホワイトデーよね」
「らしいな。で、それが?」
「織斑君、アレだけ貰ってたでしょ?それ全部にお返しさせるのは無理だと思うの」
「ひとクラス分でも小学校3年生が出せる金額じゃ足りねえけどな」
「…櫻井、写真得意だよね?」
「…おい、まさか…」
「そのまさか。織斑君の爽やか写真+織斑君の生活を写したビデオ作って下さい!!」
「…俺に何の得が?俺出費しかないんだけど?」
「流石に写真代とビデオ代は出すよ…」
「ならまだ良いか。なら数を1枚の書類に纏めてくれ。写真は1人あたり種類×3で充分だろ」
「「「「ありがとうございます!」」」」
「それで、撮ったのがこのビデオと…」
「写真も残ってるぞ」
一樹が出すのは、バスケをしていて汗を拭う一夏、サッカーのドリフトで次々と相手選手を抜く一夏、爽やかな笑顔を見せる一夏…etc
「「「「櫻井君!3枚ずつ買います!!」」」」
財布を取り出す1組生徒達。その中にはいつの間にか専用機持ちもいた。
「櫻井!私もだ!!」
「櫻井さん!私は各10枚欲しいですわ!!」
「櫻井!アタシは各5枚!!」
「櫻井君!僕にも売って!!」
「櫻井!私は各10枚だ!!」
「櫻井君!お姉さんにも各10枚!!」
いつの間に楯無がいたのかは突っ込まない一樹。疲れるのはいやだから。
「まあ落ち着け。まだ続きがあるから。ってか篠ノ之は当時買っただろうが!!」
「買える時に買っておかなければ死ぬ程後悔する!」
「死なねえよ!!とにかく話の続きだ!!」
時は流れ、中学2年生となった一夏と一樹。弾という友人もでき、楽しく学校生活を送っていた…のだが。
「なあ一樹、アイツしばいてきて良い?」
「諦めろ。あそこまでいくともう笑うしかない」
やはり2月14日、一夏のバックはチョコでパンパンになっていた。
「3学年全女子から渡されるって何者なのアイツ?」
「今朝は近くの高校生3学年にも貰ってたぞ」
「…マジ?」
「ああ。ただ悲しいことに、その意味を理解してないんだよアイツ」
「なあ一夏。お前、何でバレンタインでみんなチョコ渡したんだと思う?」
「あん?ウチの家庭事情を知ってたから気を使ってくれたんだろ?」
一瞬だった。鈴が一夏の胸倉を掴んだのは。
「一夏ァ!チョコに頭ぶつけて死ね!!施しな訳あるかい!!」
「り、鈴さん?」
そんな2人の会話を聞きながら、一樹はパソコンを操作。画面に映った写真は…
野球でバッターボックスに立つ一夏、家庭科室で菓子をつくる一夏…etc。
「まあとにかくあんなだった訳だが、ホワイトデーの時期に凰が言ってきた。『一夏のカッコいい写真を撮って寄越しなさい!』ってな」
態々録音した音声を流す一樹。
「ぎゃーぎゃー!やめて櫻井!何!?イジメ!?」
「…この間の仕返しだ」
「待ってそれ言われたら何もできな「ねえ鈴ちゃん。かーくんに何したの?」本当にすみませんでしたぁぁぁぁぁ!!」
雪恵のハイライトオフな目で見られた鈴は秒の速さで土下座した。ちなみに、その後ろには箒とセシリアもいたのだが、それはどうでもいいだろう。
「…話は戻って、中学の時のホワイトデーは俺の技術も上がってもうワンランク上のも作れたんだ。それが…」
一樹が取り出したのは、『織斑一夏と添い寝CD〜お前は俺の女〜』と書かれたCDケースだ。取り出した瞬間…
「「「「3ダース買います!!!!」」」」
1組全員立ち上がった。
「…相変わらずなんでこんな人気なのか分かんねえや。なんだかんだ楽しかったから録音したけど」
普通なら黒歴史になるようなモノなのに、一夏は特に気にしていない。
「声だけは自信があるからな。後はお察しだ」
「おい専用機持ちたち、生身ならコイツボコるの許可するぞ」
「「「「ラジャー!」」」」
「何でだ!?」
とは言うものの、ゲンに鍛えられた一夏が生身の人間にやられるはずがない。その程度にやられたら、とっくにジープに轢かれていたことだろう。
「希望者はプラス500円で名前を呼んでもらえるぞ」
「「「「お願いします!!」」」」
いつの間にか1学年のほぼ全員から注文が来てたらしく、雪恵が注文書をまとめていた…
「思った以上に一夏の添い寝CDが売れてる件」
『アレ、そんなに人気なのか?』
夜、一樹は弾と電話で話していた。添い寝CDのアイデアを出したのは弾なのだ。
「ちなみに凰が写真を3ダース買ってた」
『買いすぎだろ!?』
「一夏が勢いよく3パターン録音したおかげで俺の収益も中々だ。久々に財布に英世さんを見た」
『…ちなみに一夏は?』
「諭吉さんが溜まってた」
『…まあ出演者の方が多いのは当然だけどさ、一樹はもう少しもらってもいいと思うぞ?』
「おこぼれに預かれるだけ上々だよ」
弾と話しながら、一樹はパソコンにデータを入力していった。
数日後…
「…櫻井君。生徒達が乙女がしてはいけない程にやけてる理由、知ってます?」
「…これかな?」
件のCDを見せる一樹。
「それが理由か…休み時間はにやけてるが授業の時の集中力は増してる。あまりうるさく言えないのが面倒だ…」
意外なところで問題点が発覚した『織斑一夏と添い寝CD〜お前は俺の女〜』だった。
俺、声だけは自信あるんだby一夏
こんなふざけたこという幼馴染ですみませんでしたby一樹