けど、デートになってないです。
大変申し訳ない…
週末の未明、一樹は学園の外に出ようとモノレールまで来ていた。が、流石にこの時間は動いていなかった。
「…ついてないな」
フリーダムを展開。できるだけ静かに飛んだ。
「俺、雪、セリーが一緒に行くとなるとバイクじゃ無理だし、車取ってこなきゃ」
PiPiPiPiPi‼︎
「ふぁ…」
いつもより少し早めに目覚ましをセットしていた雪恵。何とか起き上がって身だしなみを整えると、台所へ向かう。
「えーと、私にかーくんにセリーちゃんの朝ごはんと昼ごはんを用意するから…」
花嫁修行として、早くから母親である『田中 夏子』に料理の仕方を、家庭の味として、一樹の
「お、雪恵。今日は早いな」
日課のトレーニングを終えた一夏が部屋に戻ってきた。
「まあね!今日は思いっきり楽しむんだ‼︎」
「そっか。あ、一樹から手紙が来てるぞ」
「え?何々?」
「『車取りに行ってるから、セリーと一緒に対岸の駅まで来てくれ』ってさ」
「あ、そっか。今日はバイクで行くわけにいかないもんね」
「バイクで3人乗りは無理だしな…と、雪恵が台所に立つって珍しいな」
「今日くらいはね〜。舞ちゃん程じゃないけど、少しは作れるし」
「…いや、高橋さんのは作る量が尋常じゃないから」
ちなみに、舞が一食に作る量は単純に40人前程だろうか?
…普通、1人で作る量ではない。
「…ん、コレで良し。じゃあね!織斑君‼︎」
「おう、楽しんでこいよ」
「うん!」
輝くような笑顔で部屋を出て行く雪恵。それを見送った一夏も、出かける準備を始めた。
「おはよう!かーくん!」
「…おはよう。カズキ」
「おう、おはよう」
まだ眠たげなセリーを連れて、駅に着いた雪恵。一樹は車の近くで待っていた。
「じゃ、行こうか。セリーは後ろで」
「ん…」
一樹がドアを開けると、セリーはゆっくりと乗った。シートベルトを締めて、シートを倒すとすぐに寝に落ちた。
「じゃ雪。ナビよろしく」
「了解であります!」
雪恵を助手席に乗せると、一樹は車を発進させる。
「あ、かーくん。朝ごはんにコレ」
「ん?ありがとな」
朝食用に作ったおにぎりを一樹に渡す雪恵。一樹はそれを受け取り、右手でハンドル操作、左手でおにぎりを持ちながらシフトレバーを操作と、器用な事をしていた。
「お、中身鮭じゃん。塩加減も良いし、美味いぞコレ」
「えへへ、やったね。なにせ師匠が凄いからね〜」
「…舞のことか?」
「うん、そうだよ」
「なるほどな。ってことは、もう一個はタレ付き昆布か?」
「正解♪流石だね!」
「舞によく握ってもらったからな…懐かしいぜ」
「ふふ、そっか。舞ちゃんと同じくらいに出来て良かった!」
所変わってシャルロットは、集合時間の1時間前から一夏を待っていた。
「(髪型、大丈夫かな?変じゃないかな?)」
手鏡で自分の髪型を気にするシャルロット。これで12回目のチェックだ。そんな変わらないだろと言いたくなるが、想い人には最高の自分を見せたい…そんな恋する乙女なのだから仕方がない。
「(今日はデートなんだから。頑張らなくっちゃ!)」
誕生日プレゼントを選ぶため、と一夏に説明していたが、シャルロットにとってはデートである。デートと言ったらデートである。いくら一夏にその気がなくても。とにかく気合いを入れているシャルロットは、周りから見て、とても輝いていた。だから…
「ねえ、お姉ちゃん。もしかして暇ー?」
「俺たちと遊ぼうぜ?」
身の程知らずに話しかけられるのも仕方がないのかもしれない。
「…いえ、友人を待っているので」
さっきまでのとろけ顔はどこへやら、鋭い目つきでチンピラ男の2人を睨むシャルロット。
「えー?良いじゃん良いじゃん。どうせ来ないって〜」
「あっちに俺の車あるからさ〜。フランス製の良い車」
フランス、の言葉にシャルロットがピクリと反応する。
「日本の公道で、燃費の悪いフランスの車ですか…」
拒絶度100%の顔に、チンピラ男たちは若干たじろぐ。しかし、彼らにとってシャルロットは滅多に見れない上物。諦める訳にいかない。
「そ、そんなこと言わないでさぁ〜」
さりげなくシャルロットの肩に手を回そうとするが、シャルロットはその手を避ける。そして、そのチンピラ男Aの関節を極める。
「触らないでくれます?その香水のキツイ匂いが移ったら困るんで」
「ッ!テメエ、人が下手に出てたら」
チンピラ男Bがシャルロットに殴りかかる。シャルロットが反応するより前に…
バキッ!!!!
見事なストレートが男の顔面に命中した。
「…俺のツレに、何してんだ?」
ストレートを決めたのは、シャルロットの待ち人である一夏だった。
「一夏!」
シャルロットの目には、一夏が白馬に乗った王子様に見えていた…
いや、それは行き過ぎではないか?そもそも日本人に白馬は似合うのか?なんてのは、無粋なツッコミだろう。
「て、テメエ…いきなり出てきてヒーロー気取りですかぁ?舐めてんじゃねえぞ‼︎」
「「(生憎、本当に命懸けで戦ってるヒーローを知ってます)」」
夏休みに本当に死にかけたとある青年の顔が浮かんだ一夏とシャルロットだった。
「「この野郎ォ!!」」
今度は2人同時に一夏に殴りかかる。一夏が迎撃の体制に入るが…
「「はい上げてー」」
いきなり2人の体が宙に浮かんだ。
「「な、なんだよコレ⁉︎」」
動揺する2人。無論それはスルーして…
「「はい落とす!」」
宙に浮いていたチンピラ2人は、地面に急降下。受け身も取れずに、2人は悶える。
「い、痛い…」
「な、内臓が…」
「「はい上げてー」」
またチンピラ2人の体が浮かび…
「「はい落とす!」」
また叩きつけられる。一夏が周囲を見回すと…
「「はい上げてー」」
両手をチンピラに向けるセリーと、セリーに指示を出す一樹と雪恵の姿があった。セリーの念動力で、チンピラ2人を叩きつけていたのだ。
「「はい落とす!」」
「プギャッ⁉︎」
「もう勘弁…ガッ⁉︎」
容赦無く何度も叩きつけられるチンピラに、流石の一夏も同情するのだった。
チンピラ2人を警官に引き渡し、一樹は車を進めようとする。が____
「お、待ってくれよ一樹」
____空気を読めない唐変木が話しかけてきた。
「…ハァ」
「人の顔見て第一声がため息ってどうなんですかね?」
「…ハァ」
「雪恵さん?あなたも人の顔見てため息つくのはどうかと思いますよ?」
「帰れ」
「セリーさんは随分ストレートですね!!?そろそろ俺泣いちゃうよ!!?」
セリーの冷たい一言に、頭を抱える一夏。頭を抱えたいのは一樹たちの方だ。
「…一夏、お前シャルロットとデートだろ?早く行けよ」
「いやデートじゃねえよ。ただ買い物に行くんだよ」
今度こそ頭を抱える一樹。一夏をスルーしてギアをローに入れて走ろうとするが…
「待って待って!俺たちも乗せて!」
一夏に正面に立たれてしまった。
「…シャルロットちゃん、良いの?」
雪恵がシャルロットの方を向くと、シャルロットは諦めた顔で言う。
「……うん。もう、良いよ……櫻井君、乗せて…?」
「…雪は良いのか?」
「…ダメとは言えないよ」
「…だよな。しゃあない、一夏にデュノアは3列目に乗れ」
「「了解」」
一夏とシャルロットがシートベルトを締めたのを確認すると、一樹は改めて車を走らせた。
「…女子2人がいるからひとつ頼んで良いか?」
「「なに?」」
「セリーの日用品買うの手伝ってあげてくれないか?俺はそういうの分かんないからな。それぞれの目的終えてからで良いから」
「「了解」」
雪恵とシャルロットの了承を得て、ほっとした一樹だった。
「セリーちゃん!次はこれを着て!」
シャルロットに頼んだのは失敗だったかもしれない、一樹がそう思ったのは、セリーに次々と服を試着させるシャルロットの目を見てからだ。
「…かーくん、目がどんどん死んでるよ」
「…正直、人選ミスだったと思ってる」
ウインドウショッピングが嫌いな一樹としては、日用品だけを頼むつもりだった。だが、セリーの服が制服しかないことをシャルロットに気づかれ、今に至る。
「…お前も舞もさっさと買い物終えてくれてたから、買い物に付き合うのも、それほど苦じゃなかったんだけど…これはしんどい」
「私も舞ちゃんも、服を見ると言ってもすぐに終わるからね…」
模様をざっと見て、気に入りそうな服があったら試着、良ければ買う。雪恵も舞も、その判断が早い。しかし、一般的な女子であるシャルロットは…
・服屋に入ったら端から端までじっくり見る。
・似たような(一樹から見て)模様の服を何着もキープ。
・それを全部試着していく。
項目にすると、大したことでは無いが、ひとつひとつにかかる時間が長い。
「…勘弁してくれ」
「…ほい一樹、差し入れ」
近くのカフェで買ったコーヒーを一樹に渡す一夏。一夏も、シャルロットの買い物にかかる時間がしんどいようだ。
「…お前は女子と結構買い物に来てたと思ったけどな」
主に鈴と。
「鈴とは結構来てたけどさ。アイツはそこまで時間かからなかったから…」
「…ああ、なるほど」
さばさばしてる鈴のことだ。服を選ぶのも即断即決なのだろう。
「…カズキ。私、疲れた」
漸くシャルロットから解放されたセリーが、ふらふらと一樹にもたれかかった。
「…頑張れセリー。あと数時間もすれば昼食の時間だ」
午前中、セリーはシャルロットに着せ替え人形にされ続けたのだった。
みなさんどうやってデート書いてるんだろう…
シリアス(笑)の方が書きやすいや…
では、また次回。