人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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今回は割と筆が乗った。


久々の1万字越え!
ごゆっくりお楽しみください!


Episode69 競争-キャノンボール・ファスト-

ついにこの日がやってきた。一夏達が控え室に向かっているのを、一樹は観客席の屋根から見ていた。

「…さて、どうなるやら」

 

 

「あぁ、緊張するぅ…」

先ほどから、痛いほど心臓が鳴っている雪恵。いくら順位を気にしなくて良いとはいえ、出るからにはそれなりに活躍はしたい。

…というか、雪恵の目標はまずコースアウトしないことだが。

「バックパックを【エールストライカー】に変えるぐらいしか、アストレイ・ゼロはいじれないし…ねえ織斑君、麒麟には何か追加装備あるの?」

「…ない」

「…え?」

「だから…ない」

「第三世代機なのに!?」

単純に必要ないからなのだが…それでも、最新鋭機の麒麟に何も無いというのは、一樹たちS.M.Sがとことんキャノンボール・ファストに無頓着なのが現れていた。

 

 

「で?わざわざ正規の方法でここに来た訳を聞こうか?亡国機業(ファントム・タスク)実働部隊のリーダー、『スコール・ミューゼル』さんや」

「あら?気づいた上で私を中に入れたの?あなたってそんな馬鹿だった?」

「…気づいてても、どっかの自信家さんがうるさいんでね。『テロリストが、堂々と学園に来る訳無いでしょ。だからあなたは邪魔』っていうこの学園のNo.2がな」

「ああ、道理で…不甲斐ない上司を持つと苦労するわね。お互い」

「あんたとは()()()()さえなければ、美味い酒が飲めたかもな…」

「ええ、本当に…」

世間話をのんびりとしている2人。とても、敵対してる者同士の会話とは思えない…

「…今回、私が来た理由は、組織の命令から外れた連中の監視よ」

「あん?あんたが指揮すんじゃねえのかよ」

「亡国機業だって一枚岩じゃないのよ。だから今回は、あくまで『スコール』としてこの場にいるの」

「あーあ、どこもかしこも面倒だなおい」

「むしろ、あなたのところがおかしいのよ…社員の満足度が9割越えるなんて…」

「せっかくウチに来てくれたんだ。それ相応の待遇にするのは当たり前だろ?」

「…それに、あなたは入ってるのかしら?」

「……」

一樹がIS学園から受けている待遇も調べたスコールは、吐き気がした。仮にも自分たちを守っている者の扱いでは無いのだから…

「…私達はあなたを招待するわよ?亡国機業に」

「はっ!寝言は寝て言え。俺は亡国機業(お前ら)とは組まない。分かりきったことだろうが」

「……そうね。やっぱり、私達とあなた達は水と油」

一瞬だった、一樹の逆刃刀がスコールのレイピアを弾いたのは。

「…ここなら他の人に被害は来ないわよ。全力で来たらどう?」

「…」

スコールの挑発を受け流す一樹。スコールも、この程度の挑発で一樹が乗るとは思っていない。

スコールは一樹に向かって踏み込むと、レイピアを突き出す。一樹はそれを逆刃刀で軌道をずらして避ける。流れるように放たれたスコールの蹴りも、側転で避ける。そして、スコールの胴に向けて逆刃刀を薙ぐように振るうが、それはISのPICを部分展開した事によって避けられた。

「…やめましょう」

いきなりレイピアをしまうスコール。一樹も逆刃刀を鞘に収めるが、左手は鞘に触れたままだった。

「そんな警戒しなくても、抜刀術を得意とするあなた相手に不意打ちはしないわよ。負けるのが目に見えてるもの。それに…」

素早くサイレンサー付きの拳銃を撃ってくるスコール。一樹は左手の腕時計で弾丸を弾いた。

「拳銃だって通用しない相手に、生身なんてアホらしいし。ならISを展開しろって話だけど、これでも私は民間人を巻き込みたくない派なのよ」

そう言うと、スコールは一樹に背を向けて歩き出す。

「一応忠告しておくわ。あなた達の相手をしてるのは、私達亡国機業()()()()()()わよ」

「…忠告、感謝するよ」

 

 

「ええと…Fの45はと」

その頃、一夏から貰ったチケットで学園に来ていた蘭は、自分の座席を探すのに必死だった。先ほどから人にぶつかりそうになっていてて危ない。

「おい蘭、席を探すのが大変なのは分かるけど、周りにも気をつけろよ」

「うっさいお兄…なんでお兄も来ることになってんだか」

「一樹の彼女さんからチケット貰ったからな」

「お兄はこの間の学園祭行ったでしょ⁉︎別に来なくて良いじゃん!お兄の分のチケットが勿体無いよ‼︎」

「ひでえ言われようだぜ…」

肩をすくめる弾。その左手には、黒塗りの腕時計が巻かれていた。弾は席を探す妹の背中を見ながら思う。

「(お前の恋した相手は、ライバルが着々と増えてるみたいだぜ。頑張れよ…お前の答えが出るまでは、俺が守ってやるからよ)」

家族内ヒエラルキーが一番下の弾。しかし、彼は立派な【兄】なのだ。兄として、妹の恋路を応援していく弾の背中は、一樹達から見てもカッコイイものだった…

 

 

『それでは、全員位置についてください』

とうとう1年生専用機持ちの順番になった。

『マスター!絶対に勝ちましょうね‼︎』

「(気合い入ってるなぁハク。まあ、のんびり飛ぼうぜ)」

『のんびり飛んでいたら1位はとれません!私とマスターなら、楽勝なのですから1位以外認めません!』

「(とはいえ…キャノンボール・ファストまで勝っちゃったら、みんなやる気無くすんじゃないかと思うとな…)」

『その時はその時です。一樹さんに相手してもらいましょう!そろそろ一樹さんに勝ちたいですし』

麒麟はもちろん、他の専用機も一樹のフリーダムに勝てたことは無い。一樹もかなり手加減しているのだが、一夏とラウラ、楯無くらいしかフリーダムのスピードに脳の処理速度がついていかないのだ。

「(確かに、そろそろ一樹に勝ちたいな…よし、まずはこのレースで1位を取るか。ユニコーンモードの状態で)」

『マスターなら楽勝です♪完膚なきまでにぶっちぎってやりましょう‼︎』

「(たまに思うんだけどさ、ハクって結構暴れん坊?)」

ハクと会話しながら、スタートラインに並ぶ一夏。

「みんな…」

「「「「?」」」」

横に並ぶ対戦相手に、一夏は言う。

「…負けないからな!」

「「「「こっちこそ!」」」」

「え、えと?頑張ってね?」

とまどう雪恵を他所に、レースが始まろうとしている。

 

 

「あったあった!Fの45!」

蘭は自分の座席を無事見つけると、一夏のISを探す…

「…あれ?どれが一夏さんのIS?」

「ほら、あの真っ白な奴」

弾の指差す方向に、全員真っ白な相手があった。

全身装甲(フル・スキン)タイプぅ⁉︎それじゃ一夏さんの顔が見れないじゃん‼︎」

「けど、理由を聞いたらお前も納得すると思うぞ」

「理由ぅ?」

胡散臭そうに弾を見る蘭。そんな妹に、弾は苦笑しながら話す。

「なんでも、全身を装甲で覆わないと一夏の動きについていけないらしいぜ」

「えぇ?全身を装甲で覆った方が邪魔だと思うけど?」

「分かりやすく言うならインターネット回線だ。蘭、無線と有線、どっちが電波が早くて安定してる?」

「そんなの有線に決まってるじゃん。無線は電波を飛ばしてる分ラグが起きやすいって…」

「それだよ。普通のISだと、シールドエネルギーで守られてるからあまり装甲はいらない。そして、搭乗者の思考を伝えるのに使ってるのは、インターネットで言う無線回線。まあ無線回線って言っても、パソコンなんか目じゃ無いほど速いんだけどさ。んで、全身装甲(フル・スキン)の利点は何より反応速度が速いこと。普通はあまりの反応速度に人がついていけないけど、一夏はアレじゃないとダメってことなんだよ」

細かく言うと、全身装甲でも遅いためにサイコフレームを使っているのだが、流石にそこまで説明する必要は無いだろう。

「…つまり、装甲が回線で言うケーブルの役目を果たしてるって言いたいの?」

「そういうこった」

「…一夏さんがそれだけ凄いのは分かったけどさ」

「ん?」

「…何でお兄が、そんなにISに詳しいの?」

蘭の目が、今度は何かを探るように細められる。

「ウチにあるだろ?ISのゲーム」

「…うん、あるね。それで?」

「アレで全身装甲が少ない理由を知りたくてさ。ネットで調べたら色々出てきたんだよ」

「…ふうん」

納得してなさそうな蘭だが、レースの始まりを告げるアナウンスが聞こえたため、今は一夏のレースを見ることにした。

 

 

3……2……1……ゴー!!

レースが始まった。当然の様に突出した一夏を、セシリアと鈴が追う。

「悪いが、容赦はしねえぜ!」

ガトリングモードのビームを後ろにばらまく一夏。そのビームを警戒し、セシリアと鈴は下がる。

「甘いな」

「ごめんね」

しかし、ビームの嵐をバレルロールで避けながらラウラとシャルロットが詰めてきた。

「ごめんね一夏!僕負けないから!」

「嫁と言えど、容赦はしないぞ!」

追加スラスターをつけたレーゲンと、I.W.S.Pを搭載したアストレイ・ゴールドフレームがそれぞれ攻撃してくる。

「(一樹の野郎、シャルには新装備渡してたじゃねえか!雪恵が泣くぞ!)」

ちなみに、最初I.W.S.Pは雪恵に渡されたが、雪恵にはまだ早いという事でシャルロットに渡された。なので、一夏の心配は杞憂だ。

「「お先!」」

そうこう考えている内に、レーゲンとゴールドフレームに抜かれてしまった。

「ありゃ?抜かれちった」

『呑気に言ってる場合ですか⁉︎早く抜き返してください‼︎』

「分かって…ッ⁉︎」

殺気を感じた一夏。咄嗟にシールドを構える…

 

ドォォォォォンッ!!!!

 

突如、上空から放たれた攻撃が、トップのラウラとシャルロットを撃ち落とした。

「シャル!ラウラ!」

『マスター!来ます!』

ハクの言葉に、一夏は麒麟を動かす。麒麟が浮上した途端、麒麟がいたところにレーザーが飛んできた。

「あの機体は…」

一夏の後ろでは、襲撃者の機体を見て愕然としているセシリアがいた。一夏も、改めて敵機を見据える。その機体は、蝶の羽を思わせるスラスターが特徴的なBT装備2号機…

()()()()()()()()()()()‼︎」

機体名を呟いたセシリアは、ギリっと歯ぎしりをすると飛び出した。

「ッ⁉︎セシリア!戻れ‼︎」

「すみません一夏さん…この機体の相手は、私が!」

サイレント・ゼフィルスと戦闘を開始するセシリアのブルー・ティアーズ。すぐさま助けに行こうとする一夏だが…

『マスター!箒さん達が⁉︎』

「なっ⁉︎」

 

 

「くっ⁉︎」

「当たって!」

雨月と空裂の二刀流で、なんとか攻撃を捌いていく箒。そして、その後ろから雪恵がI.W.S.Pに搭載されたレールガンで敵を狙うが…

「ギャハハ!遅えぞ嬢ちゃん‼︎」

血の様に赤く塗られた機体、【ソードカラミティ】を駆るアリー・アル・サーシェスにあっさり躱される。両手に持ったビームブレードを振り下ろし、紅椿に斬りかかる。ISのパワーアシストがあるとはいえ、箒は押され気味だ。

「なぜ…貴様がISを扱える⁉︎」

「あぁ?じゃあなんであのクソガキに使えるのか説明出来んのか嬢ちゃん!」

容赦無く紅椿を蹴り飛ばして、胸部ビーム砲を放つサーシェス。

「ぐっ⁉︎」

ビームが箒に迫るが、雪恵が前に出て、なんとかシールドで受け止めた。

「こんのッ!」

更に角度を調整し、サイレント・ゼフィルスに向ける。

 

「チッ…」

サイレント・ゼフィルスはシールドビットを操作し、ビームを受け流した。

「余所見してる暇はないですわ!」

インターセプターを展開し、サイレント・ゼフィルスに斬りかかるセシリア。しかし、あっさりナイフで受け止められ、蹴り飛ばされる。

「邪魔だ」

ゼロ距離で連続射撃を喰らい、みるみるシールドエネルギーが減っていく。

「(まだ、負けられませんわ!)」

高起動パッケージであるストライク・ガンナーをパージし、ビットを射出する。

「たかが4機程度で、私に対抗出来るとでも?」

サイレント・ゼフィルスもビットを射出する。その数、6機。

「なっ⁉︎」

「死ね」

ビットを射出しても、サイレント・ゼフィルスの動きが止まることはなく、セシリアに迫る…

 

 

しかし、そんな時に現れるから、彼はヒーローなのだ。

「セシリアから離れろぉぉぉぉ‼︎」

麒麟の飛び蹴りがサイレント・ゼフィルスに命中、姿勢を崩した。その隙に、セシリアを抱えて一旦箒達と合流。箒達の後ろには、スラスターを破壊されたシャルロットとラウラが援護射撃をしていた。なんとか全員合流した途端、ソードカラミティ、サイレント・ゼフィルスの他にも、大量のビームが放たれた。シールドを展開する余裕もなく、一夏はシールドエネルギーを犠牲にその攻撃から皆を守る。

「くそがァァぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「「「「一夏(さん)!!?」」」」

「織斑君!!?」

いくら麒麟のシールドエネルギーが大量にあっても、限界はある。麒麟のままでは、負ける…

「ギャハハ!どうしたよ織斑一夏!てめえのお友達は来てくれねえみたいだな!とうとう逃げ出したんじゃねえの⁉︎」

サーシェスがその野太い声で叫ぶ。

「ふざけるな…あいつを、お前らと一緒にするな‼︎」

「だが、現にやつはここに来ない。お前らを見捨てたと考えた方が合理的…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰が見捨てたって?寝言は寝て言えよ、馬鹿ども」

一夏達が声の聞こえた元を探していると、超上空からフルバーストが放たれた。それにより、亡国企業量産機部隊の一部のスラスターは破壊され、数がそこそこ減った。

そして、太陽の光を背に、それは急降下してきた。

「ぐっ⁉︎」

「ガッ⁉︎」

そしてすれ違いざまにサイレント・ゼフィルスのナイフを蹴り落とし、ソードカラミティのフラッシュエッジを斬り落とした。

「一樹…」

「かーくん…」

フリーダムはその蒼い翼を広げる…スラスター光が、どこか神々しさを感じさせた。

「さあ…かかってこいよ」

 

 

「一夏さん、大丈夫かな?」

避難誘導に従って、五反田兄妹はシェルターへと移動している。

「大丈夫だろ。一夏なら」

妹に比べて、兄の方は呑気だ。これも、一夏の実力を知ってるからこそなのだが…

「…すみません、このシェルターにはあと1人しか入れないんです」

シェルターの前で止められる2人。申し訳なさそうに言う係員。

「なら、妹をお願いします」

「え、ちょ、お兄は⁉︎」

蘭の抗議をスルーして、蘭の背中を押す弾。

「じゃあお願いします」

「…すみません」

最後まで係員は、頭を下げ続けていた。泣きそうな顔の蘭に手を振って、シェルターに向かうエレベーターを見送ると、アリーナに向かって駆け出した。

「結果オーライって奴だな!」

 

 

フリーダムが空中を舞う様に飛び、攻撃をことごとく回避しているのを、スコールは観客席で見ていた。

「相変わらず凄い動きね。しかもそれを対G性能がない機体でやってるのだから、IS乗りの面目丸つぶれよ。エム、あまり深追いしたら大怪我するわよ」

『いらん心配だ』

サイレント・ゼフィルスの装着者、エムの返答にスコールはため息をつく。

「中間管理職の人って、大変っすね」

「⁉︎」

スコールに気配を感じさせずに近づいてきた青年に、スコールは驚く。

「あなたは…?」

「…この上着で判断をどうぞ」

青年…五反田弾は、サイレンサー付きの拳銃をスコールに向けていた。

「あなた…S.M.Sの人間ね。私に気配を感じさせないってことは、それなりの立ち場なんじゃないかしら?」

「立ち場ねえ…あそこに立ち場なんてあってないようなもんだよ。あんたらには分からないだろうけどな」

蘭や家族の知る、どこか抜けてる顔ではない。その顔は、とても厳しく、勇ましい。スコールですら、その表情に少し見惚れた程だ。

「…羨ましいわ。職員みんなが仲良いなんて。特にこのご時世ではね」

「…世間話をしにきたわけじゃない。あんたら亡国機業の目的を話してもらおうか」

「あら、言うわけないじゃない。あなた程度に言ったところで、世界に効果はなさそうだし。せめて、あなた達のボスを連れてきなさいよ。S.M.S社長の、『ジェフリー・ワイルダー』を」

弾はため息をつきかけた。ワイルダーは確かにS.M.S内では中々の権力があるが、それはN()o().()2()としてだ。情報統制をしてるとはいえ、本当の社長の名が裏の人間にも気づかれていないとは…

「おいおい、ご老人を動かすなんて無茶言うなよ…まあ理屈は分かる。なら()()()()()より、()()()()殿に話してもらうかな。お願いします」

弾はいつの間にか後ろにいた楯無に、顔を向けずに告げる。

「…ええ、任せてちょうだい」

楯無は弾の横に並ぶと、スコールと対峙する。

「IS『モスクワの深い霧(グストーイ・トウマン・モスクヴエ)』だったかしら?あなたの機体は」

「それは昔の名ね。今は『ミステリアス・レイディ』という名よ」

「あら、そう」

小手調べとでも言うのか、スコールはノーモーションで楯無に向けてナイフを投げる。弾がそれを撃ち落そうとするが…

「ありがとう。大丈夫よ」

素早くISを展開した楯無は、その槍『碧流旋』で叩き落とすと、意向返しのガトリングガンを放つ。スコールは自らのISを腕部部分展開して受け止める。

「射線が直線過ぎるわよ。そんなお子様の喧嘩レベルで、『闇』の住人である私を倒せると思わない方がいいわよ」

「…ッ」

楯無が小さく歯ぎしりする。覚悟を決めたとはいえ、長年闇の中にいるスコールの相手は無理なのか。

「なら…」

今まで黙ってた弾が口を開く。

「俺が相手だったら満足か?」

左手をちらつかせ、弾が前に出る。

「うーん、ギリギリ落第かしら?私の相手をしたいなら…」

スコールは、アリーナ上空でおぞましい数の敵と撃ち合う蒼い機体を見て言う。

「フリーダムレベルになってから出直しなさい」

そして部分展開した腕部から、火球を撃ち出す。

「「ッ!!?」」

楯無が機体で、弾が左手の腕時計からバリアを張って火球を受け止めている間にスコールは逃走した。

「くそッ!!」

 

 

「ちょこまかと動きやがって!」

わざわざ自動or脳波コントロールが出来る量産機30機を連れて突入したのに、たった1機のフリーダムすら落とせないことに、サーシェスはイラついていた。

「行けよ!()()()()!!」

量産機、『ファング』でフリーダムを囲って一斉射させる。だが、フリーダムは針を縫うような細かな動きで30機分のビームを避ける。

「やれ」

今度はエムのビットも加わるが、フリーダムはその尋常でない機動性を活かして回避する。

 

「邪魔くせえな!」

ビームライフルでファングの1機を撃破するが、まだまだ数は減らない。一樹はファングの攻撃を回避しながら、少しずつ学園から離れる。たとえそれが、援護を期待出来なくなる状況になろうとも。

 

 

「(ハク!どうにかして動けないか⁉︎)」

『動けなくはないですが、シールドエネルギーを消費し過ぎです!それに、こちらに全く攻撃が来てない訳では無いんですから!』

麒麟は先ほど仲間達を庇った影響で、過去に無いほどシールドエネルギーを消費していた。デストロイモードになろうにも、ここでは箒達の目もある。あまり簡単にデストロイモードになれるところを見せられない。

「(ちくしょう!)」

ファングの相手をしながら、一夏は愚痴った。

 

 

箒は、他の専用機持ちと共にファング数体と戦っていた。そして、そのシールドエネルギーは枯渇寸前だった。

「グゥッ⁉︎」

ファングに押し負け、アリーナに叩きつけられる箒。

「こんなところで…」

箒の目に映るのは、同じくシールドエネルギーが枯渇寸前の状態で、敵機の攻撃を避ける一夏の姿だ。専用機を得てから、箒は一夏に良いところを見せられていない。なにより…

「(一夏の足手まといになっている…)」

そもそも専用機を得たいと思ったのは、一夏の力になりたいという想いからだ。なのに、念願の専用機を得てしたことは、福音戦で力に溺れ、一夏の親友を殺しかけと、碌なことに使っていない。

「(私は、確かに碌なことにお前を使ってなかったな、紅椿。けど…)」

今度こそ、今度こそ間違えない。

「(私に、力を貸してくれ!紅椿‼︎)」

そんな箒の願いが届いたのか、紅椿の空間投影ディスプレイが様々な情報を表示していく。

 

搭乗者の感情エネルギーが一定値に到達、シンクロ制限解除。

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー) 【絢爛舞踏】発動

展開装甲とのエネルギーバイパス構築……完了

 

項目は、紅椿のワンオフ・アビリティーの詳細を表していた。

その名は【絢爛舞踏】

絢爛舞踏が発動し、紅椿のシールドエネルギーがみるみる回復していく。

「私は…まだ、戦える!」

箒は一夏の元へと飛ぶ。

「お、おい箒!ここは危な…」

「一夏!これを受け取れ‼︎」

「…え?」

箒は一夏の手を取ると、絢爛舞踏を再発動。麒麟のシールドエネルギーを回復させた。

「こ、これは…」

『シールドエネルギーが…回復しました!』

一夏、ハクも驚く。だが、シールドエネルギーが回復したのは事実…今はそれだけ分かれば良い。すぐさま雪片弐型を展開、零落白夜を発動し、ファングを切断していく。

「…よし、箒!みんなのシールドエネルギーも回復させてくれ!俺は、行く‼︎」

「ああ!任せろ‼︎」

 

 

「こんの…」

フリーダムはファング、ビットの攻撃を舞うように避け、可能な限りビームライフルで破壊した。だが、あまりに頭数が違いすぎる。

「学園からは…まだ離れきってない…」

フリーダムが全力を出したら、学園に確実に被害が出てしまう。そのために、一樹はひたすら学園から離れようとしていたのだ。

「アハギャハ!逃げてばかりじゃどうにもならねえぞ‼︎」

「(んなことは、分かってんだよ!)」

サーシェスの挑発を聞き流し、ビームはビームサーベルで弾く。

「お前の能力はこの程度なのか?」

「ッ⁉︎」

エムがビームブレードを展開し、フリーダムを両断しようと斬りかかってきた。それを弧を描くように避け、逆に斬りかかる。

「チッ…!」

エムが下がると、再びビームの嵐が襲ってくる。

『かーくん!私達も…』

「絶対来るな!死ぬぞ‼︎」

雪恵が駆け込んで来ようとするのを、強い言葉で制する。

『だけど…!』

「なら聞くが!お前以外に進んで来てくれる奴はいるのか⁉︎」

『……』

ビームの嵐を避け、ファングを撃ち落としながら、一樹は叫ぶように訴える。

「頼むから…お前は()()()()来ないでくれ‼︎」

 

 

「やっぱり…」

楯無が危惧した通り、一樹が亡国機業のターゲットにされてしまった。更に最悪な事に…

「『生徒諸君は、直ちに撤退し、待機せよ IS学園教頭』…本当に、最悪の事態ね」

()()()()()()()()()()()()()()

「…え?」

楯無が後ろを向くと、先ほど共にスコールに挑んだ青年がいた。

「…あなたは?」

青年は姿勢を正して敬礼すると、自己紹介をする。

「S.M.S防衛科所属、五反田弾少尉です。自分はこれから、我が同胞を救出するために出陣します…どうか、お許しください。生徒会長殿」

その強い瞳に、楯無は希望を感じた。そして、敬礼を返す。

「…IS学園生徒会長、更識楯無です。櫻井一樹援護の件、私の名で許可します…どうか、お気をつけて」

「…お気遣い、感謝します」

弾は駆け出し、アリーナの客席から飛び出す。

「…五反田弾、『ストライクノワール』出るぞ‼︎」

 

 

弾が出撃したのを、一夏はハイパーセンサーで視認した。

「(なら…!)」

一夏は、周りのファングを一掃するために、【変身】した。

目の前で変身する麒麟の姿に、箒、セシリア、鈴は軽く震える。だが、なによりも…頼もしさを感じた。

()()()()()()()()()()()()()()()

一夏の叫びに答えるように、サイコフレームが赤く輝く。

「さっさと片付けてやるよ!」

 

 

フルバーストで視界にいるファングを一掃。そしてビームブレードを振り下ろしてくるサーシェスを回し蹴りで迎撃。スラスターを破壊しようとライフルを構えるが、エムのビットに邪魔をされる。

「ッ⁉︎」

再び網を貼るようにファングが、ビットが攻撃してくるのを避けたり、シールドで受け止めるなどをしてやり過ごす。

「もらったァァ!」

「ッ!!?」

背後からビームブレードを展開したエムが襲いかかってくる。フリーダムはスラスターを全開にしてブレードの斬撃から逃れると、両腰のレールガンでエムを攻撃。

「チィ!」

蝶の羽のようなスラスターを巧みに使い、それを避けるエム。今度はサーシェスが胸部からビームを撃ってくる。

「そんなもんに!」

ここで一樹は離れ業をする。ビームサーベルを持った右手を突き出し、ビームに向かってドリル回転しながら突進した。見事サーシェスのビームは霧散し、サーシェスに突っ込む。

「クソガキが!」

サーシェスはファングの1機を盾にし、その場を逃れた。そこに、弾のノワールが到着する。

「一樹!」

「弾⁉︎お前なんでこっちに⁉︎」

「あっちはほぼ片付いた。後はコイツらだけだ‼︎」

「あいよ‼︎」

弾は両手のビームライフルショーティを乱射。次々ファングを撃破していく。

「落ちろ!」

ファングが一気に減り、一樹はサーシェスに集中的に斬りかかる。

「お前が扱ってる機体…ISじゃねえな!何故お前がそれを持っている⁉︎」

「テメエの許可なんざ求めてねえんだよ!!」

一方、エムは弾を相手にビットとレーザーで戦っていた。

「誰だか知らないが、死ね」

「嫌なこった!」

弾はエムの攻撃をクルクル回りながら回避。更に回転しながらエムに向けてビームライフルショーティを連射する。

「回転しながら連射だと⁉︎」

咄嗟にシールドビットで受け止めるエム。その背中に、ビームマグナムの攻撃が命中した。

「ガッ⁉︎」

「ナイスサポートだぜ一夏!」

両肩のビームブレードを抜刀すると、弾はエムに斬りかかる。エムは、羽を使ってなんとか弾の斬撃を避けていた。

『エム、時間切れよ。下がりなさい』

「だが!」

『もうあなたのシールドエネルギーも枯渇寸前でしょ?その人たち相手に長居し過ぎよ。下がりなさい』

確かに、エムのシールドエネルギーは瞬時加速の使い過ぎで枯渇寸前だった。

「…了解」

エムは渋々了承すると、弾に背を向けて撤退していった。

「…ケッ!今日はここまでにしといてやる」

サーシェスも退き時だと悟ったのか、残り僅かなファングと共に撤退していった。

「…助かったよ。弾」

「お役に立てて何よりだ」

2機が完全に見えなくなると、一樹と弾もIS学園へと戻っていった。




次は、我らが唐変木のバースデーパーティー+弾君に春が⁉︎



乞うご期待!









P.S.期待はほどほどにな。
俺との約束だぞby一樹
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