一樹との関係やいかに!!?
敵なのか、味方なのか…!!?
午後12時、一樹は灼熱の部屋のヒーターを切り、窓を全開にした。
「ひゃー!涼しいなオイ!」
「カズキ、これ使って」
「お、ありがとうな」
普通なら、あまりの温度変化に体がついていけない。一樹の体が、いかに異端かがよく分かる。セリーからタオルを受け取り、急噴き出していた汗を拭く。
「スポーツドリンクもある」
更に受け取ったドリンクを飲み、水分を補給する。一気に飲まずに、ゆっくりと。
「…随分ゆっくり飲むね」
「一夏の健康志向が移った訳じゃねえけど、一気に飲んだら危ないしな」
しばらく開けれる窓全てを開けて熱を逃がしていると、一馬が制服を腰に巻いてやって来た。
「おーいかず…って暑うぅ!!?」
「あ、一馬じゃねえか。今この部屋70度くらいあるから、上着ちゃんと着た方が良いぞ」
「言われなくてもそうするわ!」
腰で結んでいたS.M.S制服を慌てて着る一馬。
「ったく、今度は何をしようとしてんだ?」
「久々に時間が取れたから、ちょっと新技を作ろうかと…」
「それがどうしてこんな高温で修行になるんだ!」
最もなツッコミだが、一樹はそれをスルーする。
「で、そっちは何の用だ?」
「ああ、IS学園からの依頼が来てるってのは宗介から聞いてるな?」
一樹とセリーが頷くのを見て、一馬は続ける。
「その件に、ワイルダーのおやっさんが
「…いつ?」
「なんて言ったかな?確か…」
「『全学年専用機持ちタッグマッチ』…ですか?」
IS学園では、一夏達が千冬から話を聞いていた。
「ああ。専用機を持った者同士でペアを組み、トーナメント形式で戦うものだ」
「その名のまんまですね…」
「当日は様々な企業が見に来る。将来にも関わるので、専用機を持つ者は全員参加だ」
「「えぇ…」」
別に企業にアピールする必要の無い一夏と雪恵の嫌そうな声が、妙に響く。
「田中はともかく、織斑、お前はまだ卒業後の進路が決まってないだろうが」
「(え?そうなの織斑君?)」
「まあ、そうですけど…(いや、一応卒業後もS.M.Sにいるつもりだぜ?)」
「というか、何故雪恵ちゃんはともかくなんですかぁ?」
相川が我慢出来ずに聞くが、その顔はニヤニヤしている。それを理解した千冬は、呆れながら答える。
「…昨日までの田中と櫻井の会話を見て、察せないのか?」
「「「「あー…」」」」
「あ、あはは…一応、卒業後はかーくんのところ、S.M.Sに行くつもりです」
はにかみながら答える雪恵。クラスメイトはそれより、雪恵の言った企業に注目した。
「S.M.Sって、今時珍しい超ホワイト企業だよね⁉︎基本残業はなしで、あっても残業代はちゃんと出るし、休日もしっかりしてるっていう!」
「しかもイケメン揃いって噂だよ!」
「な、なんですと⁉︎」
「宇宙開発から引っ越しまで、なんでもござれのチート企業!」
「良いなぁ…私も行きたいなぁ」
「でも、S.M.Sは美人しかとらないとか…」
「「「「嘘だドンドコドーン⁉︎」」」」
クラスメイト達が勝手に話を進めているが、中身を知っている雪恵は苦笑いを浮かべる。
「(かーくんが見た目で決める訳無いんだけど…確かにS.M.Sはイケメンと美人だらけなんだよね…不思議な事に)」
S.M.Sトップである一樹の性格的に、そんな下らない理由で決めてる筈がない。勿論、一見するとあまり顔が整っていないものもいる。ただ、内から溢れるオーラがカッコいいために、イケメンに見えているのだ。
「(基本彼氏彼女持ちだから、やっぱり一樹は中身で見てるんだよなぁ…でも、何故にあそこまで顔面偏差値が高くなるのやら)」
自分たちもその顔面偏差値が高い人なのだが、それを思わないのが2人の美点だろう。
「あれ?でも櫻井君って顔は普通だよね?やってる事はイケメンだから分かりにくいけど」
「つまり、中身美人になれば私も入社出来る⁉︎」
どんどん話が広がっていくが、千冬の一喝で静かになる。
「静かにしろ馬鹿ども!S.M.SはISを専門としていない。貴様らなんのためにここに来たのか、考えてから物を言え‼︎」
大変ご最もな話である。
「全学年専用機持ちタッグマッチの時に、ワイルダーのおやっさんと宗介が学園に行って
スポーツドリンクを飲みながら、一馬の話を聞いた一樹。その顔は、なんとも言えない表情をしていた。
「あと、今さっき入った情報なんだが、IS学園の教頭が消えたそうだ。戸籍も何もかもな」
「…多分原因はあの人だな」
「しか居ないだろ?こんな荒技が出来るのなんて」
IS学園のある部屋では、束が10枚以上の空間投影ディスプレイを表示させていた。
「さて、これであのゴミの情報は消えたし、かずくんが戻ってこれる理由は何か無いかな?ついでに誰か補佐をつけさせれば、バッチリでしょ♪」
普通、護衛役とは複数人いるものだ。今まで一樹1人でこなして来たのは、正気の沙汰ではない。
「んー、TOP7の誰かを呼ぶにしても…誰にしようかな〜」
まるで少女のような笑みを浮かべながら、束はキーボードを叩くのだった。
「ハア、ハア、ハア!」
昼食後、再び灼熱の部屋で修行している一樹。今、一樹が身につけているのは半袖短パン、そして雪恵のデザインした剣の首飾りだ。
「まだ、まだ…!」
セリーは今、S.M.S女性陣と共に買い物に出ている。午前中の様に炎を纏う事は出来ない分、部屋の温度を3000度まで上げている。その中で基本的な筋トレをしているのだが、当然体が悲鳴を上げている。元々、一樹の体は火傷が全身を覆ってる様なものだ。そんな状態で灼熱地獄にいればどうなるか、考えるまでもない…
「ハア、ハア、ハア…」
意識が薄れていく中、なんとかヒーターを切り、窓を開ける。特別性のこの部屋は、すぐに平常温度まで下がっていく様に先ほど一馬に設定された。
「くっそ…まだ、足りない…こんなんじゃ、
床に転がり、悔しがる一樹。日頃の疲労も相まって、意識はゆっくりと落ちていった…
ザザーン…ザザーン…
「……ん?ここは…?」
一樹が目を覚ますと、そこはエメラルドグリーンの海と、青空。南国に行ってもそうそう縁のない、美しい世界だった…
「……人気が無い。けど、
知識ではなく、体がその場の空気を知っていた。仕事柄、南国にも行ったことはあるが、綺麗な海などを満喫したことはない一樹。しかし、今いる砂浜は、なぜか心が落ち着く気がした…
「…歩いてみるか」
ここでボーッとしていても仕方がないと、一樹は歩き出す。奇しくも、それは以前の一夏が体験したのと同じだった。
………す……た……
「…声?」
空耳かと思ったが、どこか懐かしく感じる声、しかも一樹はこれと似た様な声を、
「…って事は」
そして、一樹は周りを見回してその名を呼ぶ。
「いるんだろ…?
名を呼んだ瞬間、一樹の正面に光が集まる。その光は、人の形、少女の形へと変わっていき…
『…やっと呼んでくれたね、マスター』
人懐っこい笑みを浮かべる少女へとなった。
「ああ…6年ぶりかな?」
『丁度それくらいだね。マスターが小学4年性の秋以来だから』
髪は焦げ茶色のセミロング。整った顔立ちで、女性らしい体つきに白いワンピースが、絹のような肌によく似合っている。少女の名は『ミオ』。かつて一樹と束の手によって作られた、最初にして最強の第零世代型ISコアに宿る意識だ…
「…久しぶりに
『…やっぱり似てる』
「ん?」
『今年の夏に、白式の意識空間に来た男の子もそう言ってたんだ。マスターが小さい頃に褒めてくれたここをね…』
「そっか…アイツも、ここまで来たんだな」
『うん。白式を第二次移行させたのも私なんだ』
「…だからか。俺たちが作った第二形態より高性能だったのは」
『うん』
本来、一樹たちが制作した白式の第二形態は、フリーダムと似ていた。その姿は、別世界で『Hi-ν』と呼ばれていると言えばイメージがつくだろうか。
「…で、俺をここに呼んだ理由は何だ?確かにミオと再会出来て嬉しいけど、何か理由があるんだろ?」
ミオは、束と一樹が全能力を使って開発しただけあって、とても優秀だ。会いたいから、確かにそれもあるだろう。しかし、何かしら他の理由があるのだと一樹は判断した。
『マスターに会いたかったから、っていうのが1番の理由。2番目は…マスターの体が危なくなったから』
「…あの修業でか?」
灼熱地獄の中のトレーニングが真っ先に思い浮かんだ一樹に、ミオは小さく頷く。
『そう。後は…マスターの機体が、マスターの反応速度に着いてこれないことだね。マスターの記憶を通して【ストライク】に【フリーダム】のスペックを見たんだけど、マスターの反応速度に追従出来てないんだよね』
「……関節はすんなり動いてるぞ?」
『うん、ストライクの時よりはね。フリーダムの性能も全然低くないし、凄く改造してるのも分かる。けど、マスターは本気を出せてない…でしょ?』
「……」
ミオの言葉に、一樹は何も返せない。実際、一樹はフリーダムを装着してる時は意識して動きを鈍くしている。でなければ、キャノンボール・ファスト時にあそこまで良いように遊ばれない筈なのだ。
『6年前のマスターに、確かに私は強すぎる力だったのかもしれない。けど、今は私じゃないと…ううん、私たち【IS】とマスター達が作った【Ex-アーマー】、両方の利点が合わさった機体じゃないと、マスターの体に合わないんじゃないかな?』
「けど、俺にIS適正は無いぞ?実際、一夏が動かしてすぐに検査を受けたけど、反応しなかったしな」
S.M.Sとて例外なくIS適正を測られた。しかし、一夏以外は誰もISを動かす事が出来なかったのだ。それを聞いたミオは、途端に拗ねた様な表情を見せる。
『当たり前じゃん。だって…』
「だって?」
一樹が問うと、今度は指をツンツンして、頰を赤らめながらミオは答える。
『私以外の
「…そっか」
一樹はミオに微笑みかけると、優しくその頭を撫でる。6年ぶりのその手に、ミオは安らぎを感じた。
『マスターの手、やっぱり優しくて、暖かい。
「はは、物好きな奴だな。一夏の方が撫でるテクニックは上だぞ」
『私たちには、これが良いの。マスターの手が良いの。分からない人に、わざわざ教えなくて良いの』
「…ありがとう、ミオ。戻ったら、
『…うん!』
6年間、一樹を想い続けたミオは、満面の笑みを浮かべた。想い人の、力になれることを喜んで…
「けど、あの修業は続けるぞ」
『…え?』
「セリーに話した通り、変身した俺には切り札が無い。だから…」
『…分かったよ。私も協力する』
「…ありがとな。ミオがいてくれたら、百人力だ」
『おだてても、何も出ませんよーだ』
「あはは…口説かんぞ」
『そこは口説いてよ⁉︎プリーズ口説き!』
「口説きを要求する女子は初めて見たぜ…」
一樹には、一夏の様に自然と口説くのは無理だと言うのが改めて分かった瞬間だった。
実はミオさん、前にも出たことあるんですけど、覚えてますかね?
一樹の機体が変わるフラグ!
何の機体でしょうね?(すっとぼけ)