ファントムオールスターズ   作:牙虎

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正義も悪もあるか…この世界にあるのは、生き残った奴らと先の闘いの残滓だけだ

幻狩


第一話 闘いの続き 再始 肆

 おそらく、誰ももう知る事もなくなったであろう

 古き獣と古き人々の争いの故

 かつて同じ存在であった両者は、片方の裏切りにより争い始めた

 争う姿には、獣も人もなく、どれも同じ様にしか映らなかったと言われた

 知れず、獣も人も現れては殺し合い、その血肉を貪り、今日の糧として生きてきた

 

 無法の世界、あるいは原始の世界

 争いがあった彼の地には、狩るか狩られるか、死ぬか殺すしかなかったという

 


 

 

 場所-幻魂御社ー北側 幻緑の森

 

 幻達が住みかとしていた森

 その面影か随分も前から居なくなったにもかかわらず、その姿を見るという

 また幻気が濃く、目の前に在るものは歪んで見え、五メートル先は全く見えない

 

 

 だがそんな事はお構いなしに足を進める者が一名

 特殊な松明を左に持ち、前を探るように照らす

 

 

 森と言うだけあって、木々や植物は在る

 だが生気がなく、ただそこに森が在った事を残しているようだ

 見通しは普通に良くない

 

 

 ?

「…ここは本当に幻緑か?」

 

 

 歩いて一応の全体を視たのだろうか、それともかつて訪れた時、目印でも残していたのだろうか

 その者にとっては記憶の中に在る「幻緑の森」とは違うらしい

 

 だと言うのに足取りは軽い

 いや、追跡者の足取りに近い

 

 

 ?

「…!……」

 

 

 途端に忍び足になり、体勢を低くした

 さながら狩職を生業とする者達の様だ

 酷い視界に乱れ狂う幻気、入ってくる情報はまともではない

 だから、そこに在る()と解るのだろう

 

 

 その者は狩道具を取り出し、急接近

 そして-

 

 

 ?

「幻狩り、始まり(再始)だ」

 

 

 -飛び掛かった

 

 

 

 

 幻闢

「これは…かなり荒れている、争ったか」

 

 

 だいぶ経ってから幻闢がやって来た

 辺りは元々荒れていたよりも悲惨な状態になっていた

 あちらこちらの存在が消し飛んでいた

 存在しない者(幻、幻影、幻想等)同士が争えばこうなるのは、前々から分かっている事である

 

 欲しい情報は何者達が争っているか、だ

 

 

 幻闢

「…ん?これは-」

 

 

 地面、そして木の抉れ方に既視感を覚える

 

 

 幻闢

(これは…虎牙(たいが)か?)

 

 

 幻狩(げんがり) 虎牙(たいが)

 仕事仲間であり、気の置けない(?)仲である、狩を生業とし、判断力や戦闘的技能(ファイティングレベル)は目を張るものだが、大抵の事を力任せで済ませる、事を成せればそれでよいらしい

 

 その力任せらしさが、存分に発揮され、辺りが悲惨な事となったみたいだ

 

 

 幻闢

(だが…手こずっているな、らしき残骸も見えない…相手はどいつだ)

 

 

 抉れた跡の割には相手の残骸がほとんど無く、抉れた跡は色々な方向に散らばっている

 相手の動きが良かったのか

 攻撃が弾かれていたのか

 

 -少し前

 

 

 幻狩

(硬…い!)

 

 

 狩道具を通して伝わる硬度に気を取られ、相手に受け流され、狩道具は地面にめり込んだ

 相手の反撃が横から来るのを確認するやいな、体をよじり、空気の壁に足を引っかけ狩道具を引き抜くと上に跳んだ

 

 

 幻狩

(やっぱ、硬ぇな)

 

 

 そのまま落下し、隙を狙う

 そこを合わせるように、相手も仕掛けてきた

 だがそれをお構い無しに狩道具を振り下ろす幻狩

 それが功をなしたか、相手の反撃を狩道具でいなす事ができ、相手にカウンターを与える

 

 

 幻狩

「……またか」

 

 

 その攻撃は当たり前のように逸らされる

 相手は後ろに飛んで、幻狩との距離を取ったと思ったら、攻撃を催促する様に手招きをする

 

 

 ?

「屠った時はこんなもの(鈍った攻め)じゃなかっただろう、衰えたな」

 

 幻狩

「言ってくれんじゃねぇか装甲の忍者」

 

 

 装甲の忍者

 装甲を纏った忍者であったが、肉体や骨、臓器は消え去り、血と動力脳部だけが残った存在しない者(幻、幻影、幻想等)

 何故活動出来ているのか、その原理、動機が共に不明であるが、幾度となく姿を現し、戦闘を仕掛けてくる

 

 

 幻狩

(そういえばこいつ、機械生物か兵器生物かどっちだったんだ?)

 

 

 体の中にある生命動力源のみで動く、大半を貴金属や鉄、鋼やら、取り敢えず機械にあっておかしくない物で体を構成した生物

 機械か兵器かの違いは、当者の主張にのみ判別が可能な為、実際よく解っていない生物種

 その為、大抵の場合、機兵生物と称される事が多い

 

 

 装甲の忍者

「さて、ではこちらからも参ろう」

 

 

 装甲の忍者は体の一部を無理矢理変形させ伸ばし、斧を横に振るように思い切り振り回した

 幻狩は軽く飛んで避ける

 装甲の忍者はさかさず反対側から別の一部を振り回す

 それを身を翻し、幻狩はその一部を切り落とす為狩り道具を振りかざす

 装甲の忍者は体の一部を素早く引き戻し、またも幻狩は地面を抉る

 

 

 幻狩

(接近しても埒があかない、相手の隙も簡単に付けるものでもない。だが、だらだらと長引かせるつもりは毛頭無い)

 

 

 幻狩は更に動きを速め、猛攻。それに合わせ、装甲の忍者もコンパクトな攻撃が出来るよう、体を畳み込み、応酬

 

 どちらも引かぬ闘い

 そして、両者はここ一番の力で相手を殴った

 その衝撃は、そこら一帯を吹き飛ばし、大きな音と共に幻気を爆発させた

 

 

 -

 

 

 木々は根から掘り起こされ無惨な姿で横たわり、地面に突き刺さった鋭い金属片に幻狩の狩り道具がめり込んでいた

 

 

 幻闢

「…」

 

 

 幻闢は抉れた跡をたどり、着いたこの場所をただ見ていた

 戸惑う様子もなく、幻気でみえない向こう側をじっと視ていた

 そしてふり返る事なく、後ろで木にもたれ座り込んでいる幻狩に声をかけた

 

 

 幻闢

「お疲れ、独りで動けるか?」

 

 幻狩

「…もうちょっとだけ、待て」

 

 幻闢

「…わかった」

 

 

 幻闢は狩り道具を引っこ抜き、金属片を持ち上げる

 持ち上げた金属片をじっくりと観察し、相手を特定する

 

 

 幻闢

「…去ったか、装甲の忍者」

 

 幻狩

「前の闘いから、また幾分か積んでいるようだ」

 

 幻狩は立ち上がり、狩り道具を受け取る

 そして軽く埃払いをしてから、羽織の中に仕舞い込む

 

 幻狩

「…さて、俺ら以外にも争ってる奴等がいたな」

 

 幻闢

「ああ、行こう」

 

 

 幻闢らは、海の方を向き、森を後にした

 

 

 -ただ飢えるように、闘いを貪るように




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