それに死んでまで無いものすがりをしたくない
黒鳥 竹
あらゆる環境、いかなる状況でも生命活動を維持し、行動する事を可能にするものはないのだろうか
それを元に、これまでの時代から長くに渡って研究され続けた技術の発達により、開発された複数在る内の一つ、装着装甲外骨格機
通称:
土地開発、考古学調査、旅行、医療、災害時の救助活動、様々な用途を目的とした
そして、当時同時開発された搭乗装甲操縦機
通称:
装着機と同様にあらゆる場面で活躍した
中でも、軍事においては運用される機会が多く、軍事産業の市場では需要の約1/4を装着機が占めた
装着機の装着には、身体と装着機を接続させる部分を手術で取り付ける必要がある
それに、この手術は接続部分と神経を無理矢理繋げるという事が前提で危険が伴った
だが、手術を受ければ誰でも装着が可能であった
そして企業の元、更なる革新を遂げ、開発された新型装着装甲外骨格機
通称:
その登場により、旧型である装着機は
旧型では実現しなかった理想的な動きを可能とする
だがその反面、神経超過負荷による細胞の激しい消耗が増大、時には筋肉繊維や骨の組織の平均耐久を越える動きまでも可能にしてしまうなど、使用に際して問題点が多く、人格や精神、寿命を以前よりもすり削るものとなった
結果、廃人と若年での寿命死の急増
社会問題となったが、以前あった戦争により、国という国は殆どが機能を停止し、人民達を守る機関は一つもなかった
その当時から、人民達は各企業の管理下に置かれ、各企業は
何も起こらないわけがなかった
抑えきれず大規模と化した経済戦争と、記録上、ありえない総動員数と勃発回数を更新した紛争の数々
第零次元世界の限られた空間でしか行われていなかった闘争は、それでも多大な被害は避けられず、企業らは失意の中、崩壊した
場所-幻魂御社-西側
その海辺には砂などなく、透き通って見える水底からびっしりと死骸の骨が広がっている
多くの生物が最後に訪れたこの場所は、皮肉にも、かつて「母」と呼ばれていたに相応しい姿をしていた
戻ってきた子を迎え、抱き上げる、母の様
そして水面を揺らし、空中を走る影が一つ
背部のメインブースターで推進しつつ、その両脇にあるサイドブースターを吹かせ、機体を自由に揺らしながら、相手の攻撃をやり過ごす
クイックブーストでタイミングよく方向転換しざまに、かすりつつ攻撃を避ける
一瞬の溜め
そして、そのまま前進して相手の方へ振り向き、再びライフルを連射。距離を空けた
?
(通常武装だけで来たのは明らかに判断ミスだ。今ある武装では近接格闘武器しか、あいつには通用しない)
かつて装着機を装着し、傭兵として戦場を駆けた人間、今は人間ではなくなった
エコックという整備士の専属として傭兵稼業を開始し、幻闢らとは、傭兵になった頃からの仲である。特に幻闢と自称上級騎士は、作戦を共に行動していた
その距離を回り込みながら維持する幻怨に対し、相手である幻は、そこに在る水を使い、進行方向を塞ぎながら距離を詰めようとしている
それに対し、幻怨は風で流される羽の様に軌道変更を繰り返しながら、幻の隙を狙う
幻は、ただ複数の水流を自分の周りに漂わせている
ライフルで幻の周りの水流を弾き飛ばす等、挑発程度の動きを見せる幻怨
素早い動作で的確に撃ち抜き、反撃する間も与えないようにクイックブーストで移動し、また次の水流を狙い撃つ
だが、幻に反応はそれほどなく、それどころか蹴りを食らわしてから攻撃を急にしてこなくなった
ただ距離をじりじりと詰めようとしかしてこなくなったために、幻怨は離脱を考えた
幻怨
(こちらがまともな装備でない事を知った上で敢えて後ろにまわった立ち回りをしている、無理にでも撤退しなければ、タイミングを逃したこちらがただじり貧になるのみ。幻が今、意図不明にも消極的であるならここで離脱するしかない)
幻怨は進路を阻む水流を構うことなく無理やり強行突破していく
それを待っていたと言わんばかりに幻が先ほど以上の量の水流を放ってきた
幻怨
(…それ自体読めている)
肩部の横辺りに取り付けていた装備から複数本、ミサイルが放たれ、水流群の2、300メートル前方で放たれたミサイルの装甲が左右複数に割れ、中から複数の小型追尾ミサイルが水流めがけて順番に飛び出した
約8割がたの水流を相殺し、残りの2割をライフルで離脱姿勢になりながら撃ち抜いていく
回り込もうとする幻よりの動きよりも先に、攻撃を受けながらも離脱しようとした時、ようやく幻が仕掛けてきた
その幻は溜め込んでいた幻気を一気に凝縮させ、幻力を一点に集中させた
?
「…」
幻力とは、幻気によってできる力の総称である
この力は存在するもの全てに対して影響を及ぼす場合がある
幻力は不特定であり、在り方は
そして自分を爆心とする巨大な爆発を起こした
下の水面は爆発した跡を残す様に抉れている
幻怨
「やってくれたな、幻溢」
幻怨は幻気で壁を構成し、爆風を相殺させる
離脱タイミングを失った上、予想以上に幻気を消耗した
逃げるより闘う方が、無事に切り抜け得る状況になりつつある
幻の水域という名を別に有しており、名前の通り幻の空域と並ぶ幻
大きな口と鋭い頭部に胴より長い腕のようなものを持つ
大抵の場合、腕はあまり使わず、幻気を用いた「水」を操り、自身の周りを中心とした広範囲に展開して腕代わりで多目的に使用する
幻溢
「……」
その間に幻溢は水を可能な限り薄く形作り、大体幻怨の体が余裕で縦に収まる大きさの水の帯を自分の周りに一回りさせた後、幻怨に向かって何の前触れもなく空中に滑らせる
幻怨はクイックブーストで右斜め横に前進したが、水が予想よりも速かったらしく、左腕武装の近遠両用銃 通称:突撃用スナイパーライフルが水の走った向きに切られてしまった
綺麗な断面図が見える、素晴らしい切れ味だ
幻怨
(だが感心はしていられない)
幻溢がその気になった為、完全に離脱が困難となった
装備も不十分、それどころか今しがた一つ減らされた
幻怨
(…それにしても昔みたいな状況になってきてるな)
人の身でただ装甲を装着した、戦場を知らない駆け始めの傭兵だった12の頃
視界はチカチカし、息は絶え絶えになりながらも鮮明に見えた眼前の光景
そして砂と灰が混じった塵埃と血鉄がこびり付いた火薬の匂い
後ろから来る水を更に右へとかわしながら接近する
すると突如水の壁が姿を現す
幻怨
(先程から右に躱している事を見越して用意したか)
水壁に当たる数メートル手前で幻怨は全てのブースターを強制停止して、左側のブースターをフルスロットルし、水壁ぎりぎりの所で方向を変えつつ下の海面の方へ進んで行く
その後、上下左右のブースターで体勢を整え、幻溢の方を振り向きながら、片足を浮かせて斜め前左方向に海面を滑る
幻怨が少しづつ押されているものの、いまだに拮抗状態が続く中、闘いの場に近づいている者がいた
遠い海辺から水面を裂くかの如く、空中を猛烈な速度で走っている
自称上級騎士
「随分と見ごたえのある勝負をするじゃないか、乱入させてもらうぜ」
自分の身長を遥かに越えた剣を片手ずつに持ち、自称上級騎士は突っ込んでいった
-闘いの続きは、波紋のように広がって行く
最後まで読んで頂きありがとうございます