ファントムオールスターズ   作:牙虎

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幻人は更新させるだけだ
更新内容は君達次第
そう、この次元世界に存在するもの全て、存在の一欠片からこの次元世界までが決定する事だ
幻人が肩入れする事もあるだろう
だが、幻人がもたらす結果は全てに例外なく、平等だ

探求者 幻人


第一話 闘いの続き 再始 漆

 場所-幻魂御社-西側 死屍の海-死屍の浜辺

 

 死屍の海を眼前に展望できる浜辺は、やはり水底同様に生物の骨でできていた

 その浜に立ち、水平線の向こうを見て幻闢と幻狩は言葉を口にした

 

 

 幻闢

「…あ、終わったか」

 

 幻狩

「みたいだな、…で、合流するか?」

 

 

 先程まで、加勢するつもりでここまで来た二名は闘いが予想していたよりも早く終わってしまった為、ここで立ち止まった

 

 

 幻闢

「いや、お前と会う前に自称上級騎士と話した事なんだが、あの仕事を再開しようと思ってね」

 

 幻狩

「ほう、…ん?お前、前に『この仕事は現時点を以て仕舞いだ、俺はやらん。二度とな』なんて言ってたじゃないか」

 

 

 その言葉に動きが止まる幻闢

 幻闢は幻狩の方をゆったりと振り向いた

 なにやら返答に困り、ちょっと言葉が詰まっているのを誤魔化しているようだ

 

 

 幻闢

「…おいおい、ちょっと待て、俺そんな事言った憶え無いぞ」

 

 幻狩

「ではこの約束状は?」

 

 

 流石、幻狩

 狩者(かりうど)は確実に相手を追い詰め逃さない

 羽織の懐から書類を取り出し、書類の端を持って文面が分かるように幻闢に見せる

 深くかぶった 狩帽子(かりぼうし)と、着ている服の装飾で顔や頭部、首周りを覆う 狩の顔首隠し(かりのがんしゅかくし)の隙間から狩者らしい眼で幻闢を捕らえる

 

 

 

 狩帽子(かりぼうし)

 頭を守る為の狩者の纏う一般的な帽子

 深くかぶる事が出来るよう、大きめに作られており、丈夫に出来ている

 形状はシンプルな為、狩者達は自分に合うよう好きなように改造している

 

 狩の顔首隠し(かりのがんしゅかくし)

 顔や首、頭部を守る為の狩者の纏う顔首隠し

 顔首隠しは帽子で補えない部分を守る為に開発され、ほぼ全ての狩者が身に付けたという

 顔首隠しは製品ではなく、ある狩者が自分の服に装飾として付け加えたのが始まりとされている

 以降、個狩者によって顔首隠しは異なる

 

 

 

 幻闢は沈黙を通す

 さながら説教中に、言葉に詰まってしまった子供の様だ

 だが内心は、憶えがなく困惑している

 

 

 幻闢

「…」

(えっなにあれ)

 

 幻狩

「それについて詳しく聞こうじゃないか」

 

 

 幻狩は約束状を羽織の中に仕舞った

 

 約束事を破ること

 それは幻闢らの所属する企業、仕事屋 幻人(まれびと)事務所 の規律に反し、同職の者に制裁を下される対象となるという事

 

 

 

 仕事屋 幻人(まれびと)事務所

 通称、ファントムオールスターズ

 各世界区域に存在する存在しない者(幻、幻影、幻想等)らによって構成された幻人機関で、主には依頼により、事柄や物事を"更新する"といった仕事内容で活動している

 この仕事内容は解釈の幅が広い為、基本的にある程度の仕事は引き受ける、ただし内容に釣り合う報酬次第となる事が多い

 

 

 

 上文の通り、幻闢は今、幻狩の粛正対象にある

 幻闢はただ距離をゆっくりと取っていく

 それに合わせ足を運ぶ幻狩

 

 

 幻闢

「…待てやめろ、抵抗するぞ」

 

 幻狩

「構わん、元より抵抗して免れる事は了承されてるじゃないか」

 

 

 幻狩の言う通り、抵抗は勿論、事務所員全員を巻き込んでの乱闘や、粛正前に仕掛ける等、"押し退けるならやってみろ”と自分の不始末を突き通す事は一応認められている

 なお、誰も納得などしないので員内で共同での潰し合いをしており、不始末は通ってない模様

 

 

 幻狩

「良くないな、虎牙(こうが)。お前はもう今回の仕事を下りる意思を見せ、俺達に約束状まで用いて交わした。それを反古するとは」

 

 

 幻狩は羽織の左内側から右手で、その後、羽織の右内側から左手で殆ど同じ形をした狩道具を取り出した

 それは先程、装甲の忍者との闘いに使用した狩道具とは異なる物

 双剣 狩道具 狩の剣弓(かりのけんゆみ)

 幻狩は足を進めながら、左手の方の剣先を上に、右手の方の剣先を下にして、同直線上で柄の端の部分を向かい合わせて、剣刃の向きを同じにした

 そして思いっきり力任せに柄の先端の接続部をカチリと押しはめ込んだ

 そのあと両方の剣先にある引っ掛かりを作る刃の出っ張り同士に、幻気で糸を形成し、弦として繋ぎ合わせる

 

 狩者の剣弓の弓を左手に構え、弦に右手を添え幻気で矢を形成

 矢の端を弦に引っ掛け、服や服の装飾、装備が引っ掛かり、巻き込まれないように思いっきり引いた

 

 

 

 狩の剣弓(かりのけんゆみ)

 

 双剣に類する狩道具

 剣先の少し横の部分に、斬りつけた相手を逃がさない、または深手を負わせる為に、斜め下に出ている刃の引っ掛かりがある

 柄の端には互いを取り付ける接続部の金具があり、ある程度の力がないと取り外しが出来ない

 弓の飛距離は近距離から中距離と想定されているが、個狩者によって飛距離は異なる

 

 

 

 幻狩

「だがまあ、狩りの準備はなくとも、お前らとの死闘なら喜んで仕合おう」

 

 

 幻狩は幻闢に標準を合わせる

 

 幻狩は幻闢たちとの凌ぎ合いが好きである

 駆け引きが、一瞬の隙が、見せ掛けのフェイントが、全てを好んでいる

 今幻狩はとてもワクワクしている

 その為、本来獲物を狩る為の下準備を欠かさない狩者である幻狩が何もせずに仕掛けたのだ

 

 

 幻闢

(やっべぇ、まだ本調子戻ってねぇよ…)

 

 

 一方、幻闢はそれどころではなかった

 というより自分が今鈍っているのにこんな事になるとは思ってもいなかった

 それを言えばいいものを、幻闢はあろうことか、今までの癖で言葉を伝うより先に行動を開始してしまった

 

 幻闢は標準を合わせられたとほぼ同時に、右足で浜を蹴り、距離を置いた

 闘いの始まりである

 

 

 幻闢

「…あ」

 

 

 距離を置いた直後に気付く幻闢

 時既に遅し、間を置く事なく幻狩の放った矢がほぼ同時に3本程飛んできた

 

 

 幻闢

「…ッ……」

 

 

 今度は左足で浜を蹴り、右斜め前に跳び、顔や肩、左の脇腹の横すれすれに避ける

 それを確認した幻狩は左手に力を入れ狩の剣弓をしっかりと握り直し、右腕は体の後ろに回し見えないようにした

 上半身の動きと同時に、左足を前に出して肩幅より少し足を開いて幻闢に対して半身の体勢で向く

 

 

 幻闢

(まだ来るかッ)

 

 

 幻闢は回り込んで回避しようと走り出す

 幻狩は両足に力を入れ、浜を足で掴む様に踏ん張る

 そして幻闢の動きを追うように照準し、幻闢の動きが変化した一瞬

 幻狩は後ろに少し重心を置き、右腕を素早く動かして矢を幾発放つ

 

 

 幻闢

「ッッ!」

 

 幻狩

「まだまだ」

 

 

 幻闢は体勢を低くして体を捻り、足の爪先で浜を何度も蹴り掠り掠りに回避する

 幻狩は手を止めることなく射ち続ける

 

 これには危機感を感じた幻闢は前進しながら回避していく

 距離を詰めれば幻狩の得意たる接近戦だが、今の自分ではこちらの方がマシだと考えたのだろう

 

 

 幻狩

「ハハ、これは嬉しい展開だ」

 

 

 幻狩は弓状態となっていた狩の剣弓を自分の胸元前まで持ってくると横に向け、剣の柄を左右で手に持ち、力ずくで引き離すと、そのまま素早く両腕を少し横に広げ、剣先を斜め下に向ける

 

 

 幻狩

「……!」

 

 

 幻狩は体勢を低くして、右足を後ろにして、前にある左足で浜を蹴り幻闢に接近する

 

 幻闢は弓状態から剣状態になった時点で右を天一、左を剣斧の槍、どこからとなく取り出し持って構えた

 

 

 

 剣斧の槍

 斧槍剣の種類に位置する特殊剣の一つ

 名の通り斧と槍、そして剣を一つにした物で、加え剣の要素が斧と槍より強く出ている

 だが名前では"剣斧の槍"と名付けられている

 柄の部分が小槍ぐらいの長さなので、そう名付けられたとされている

 

 

 

 幻闢は幻狩に向かって踏み出し、剣斧の槍を振りかぶって投擲した

 その後、幻闢は投擲した剣斧の槍の後ろに続く様に素早く動く

 

 

 幻狩

(そう来るか、なら…、!?)

 

 幻闢

(一か八かだ、この一発でなんとかするしかねぇな!)

 

 

 幻狩は剣斧の槍を陽動に、幻闢が本命の攻撃を仕掛けるものだと踏んだ

 しかし、実際起こっている現状は幻闢が投擲した剣斧の槍を自身で追い越して、幻闢の後ろから剣斧の槍が続いて幻狩に向かってきている

 

 

 幻狩

「おいおい、随分な発想だな?もしかしなくても余裕が無さそうだな!」

 

 幻闢

「うるせぇ、楽しそうに言ってんじゃねぇぞ!」

 

 

 相変わらずワクワクしている幻狩を他所に、幻闢は集中している

 基本hit&awayスタイルである幻闢に対し、接近戦大好きな近接格闘能筋野郎(力ずくで全てをこなす奴)

 この攻撃をしくじれば見事な致命傷を負う一撃(カウンター)を確実に貰い兼ねない

 

 幻闢は更に浜を蹴り、速度を上げる

 

 

 幻闢

(これはもう為るようにするしかねぇな。後はまあ、どうにかなるだろ)

 

 幻狩

(特攻での一撃を狙う仕掛け方、こいつがよく使う手だが…さて、今回はどう来る)

 

 

 幻闢は天一を右手主軸に両手で持ち、右側の下段に構え、幻狩の懐に入った

 そして右下段から斜め上へ一気に切り上げる

 幻狩は天一が届かないギリギリの間合いまで素早くステップして回避

 幻闢はそのステップに付いて行く様に右足を踏み込み、そのままの勢いで左から右へと斬り払う

 幻狩はそれに反応して後ろに素早く下がる

 幻闢は続けて右から左へと斬り払うが、幻狩は既に届かない範囲にいた

 幻狩は距離を取りつつ、右後ろに体を捻って手の甲を地面に向け、右手に持つ狩の剣弓を真横後ろに振り構え、左は逆に手の甲を上に向け、右に捻る動作に続く感じで横に振り構えた

 

 -少し前

 

 場所-幻魂御社-西側 死屍の海-死屍の浜辺付近

 

 ?

「…何をやっているんだあいつ等は」

 

 

 死屍の浜辺を一望出来る高台から、右膝を地面に付け体を支える様に左膝を立て、高台の端から少し前のめりになって下を覗く者はそう呟く

 

 もう少し早くに来ていれば会話が聞けたかもしれないが、この者は先程ここに着いた

 

 

 ?

(まあいいや、どうせいつもの事だろう)

「…さて、と」

 

 

 立ち上がり、左腕を幻気で形成し、左足外側に取り付けていた剣止めから剣を左手で抜き出す

 そして何処からとなく取り出した刀を右手で抜き下ろし、両膝を曲げ高く跳躍した

 

 

 

 幻狩は幻闢の方へ飛び、距離を詰めた

 空気の壁を足場として、狩の剣弓を振り抜く体勢をつくる

 そして足場を蹴り、幻狩は狩の剣弓を振る

 

 その時、幻闢は天一を振り切った反動で、そのまま左半身を横に開き、幻狩に向かって半身となった

 そして、後ろから飛んで付いて来ている剣斧の槍を左手に取り、剣斧の槍の速度を更に加速させる

 

 タイミングが同じの場合、力負けして弾かれた方がその分ダメージを受け、隙を相手に晒してしまうが、どちらか一方が速ければ、速い方に分がある

 だが、分があるだけで、そこから繋げなければ意味は無い

 

 

 幻闢

(速さは取った、ここから一気に繋げる)

 

 幻狩

(取ろうが取られようが同じ事だ。叩き潰してやる、虎牙(こうが))

 

 

 剣斧の槍が幻狩に届く二歩前

 突然、幻闢と幻狩の視界に暗い影が入り、剣斧の槍は明後日の方向へ弾かれ、狩の剣弓は地面へと弾き落とされた

 

 

 ?

「毎度の事だが、仕事中に闘うな、とは言わん。ある程度終わらせてからにしろよ」

 

 

 その暗い影は弾いた衝撃を利用して体を捻らせ、宙を回転した後、幻闢と幻狩の少し離れた所で右足から静かに着地した

 その後、左手に持っていた剣を剣止めに仕舞い左腕を消した

 

 

 幻狩

「…そうだったな、だが」

 

 

 幻狩は下に弾かれ、勢い余って浜に突き刺さった狩の剣弓を引き抜き、返事をして言葉を続ける

 

 

 幻狩

「だがこれは闘いとは少し違う、粛正もかねている」

 

 ?

「…どういう事だ、虎牙(こうが)

 

 

 幻狩は引き抜いた狩の剣弓を幻闢に向け、話の流れを幻闢の方へ誘導させた

 

 

 幻闢

「あー、いやえっと、そのだな…」

 

 

 少し崩れた体勢を立て直した幻闢は剣斧の槍を左腕に沿うように携え、眼を逸らす

 だが鋭い視線に耐えきれず、結局話した

 

 -事情説明中-

 

 ?

「そんな事だろうと…仕事が片付き次第だ、覚えておけ」

 

 幻闢

「…弁解の余地は」

 

 ?

「それも終わり次第、聞くだけ聞く」

 

 幻狩

(聞くだけ聞いて終わりそうだな)

 

 

 その後、特に何事もなく三者はそのまま武器を仕舞い、幻闢は自称上級騎士と連絡を図る

 

 仕事屋 幻人事務所ではあらかじめ、幻気で幻気の波数を設定し、その波数で幻気を飛ばし合い通信するという事務所所属の者であるなら誰しもが使用出来る為の連絡手段を設けている

 その波数が分からない限り、幻気による盗聴は不可能だが、どの波数であろうと幻気による通信妨害は一応可能らしい

 

 場所-死屍の海-海上

 

 自称上級騎士と幻怨は周囲を確認し終え、幻気の点在する場所へどの順で移動するか検討していた

 幻の追跡・捜索もかねての事だ

 

 その時、幻闢から送られてきた幻気を察知する

 

 

 自称上級騎士

『どうした、貴公』

 

 幻闢

『一応確認の為に連絡を入れた方が良いと思ってな』

 

 自称上級騎士

『ほう、で、そちらは誰かと合流出来たか?此方は虎牙(たけが)と合流した』

 

 幻闢

虎牙(たけが)とか、こっちは虎牙(たいが)と探求者だ』

 

 

 

 探求者 幻人(たんきゅうしゃ まれびと)

 先程、幻闢と幻狩の攻撃を弾き、闘いを止めた者

 仕事屋 幻人事務所が設立した当初からいたメンバーの一名で、活動メンバーの中枢でもある

 

 

 

 自称上級騎士

『これは随分と集まりが良い。で、先程話した通りか?』

 

 幻闢

『ああ、その手筈で』

 

 自称上級騎士

『了解した、通信を切る』

 

 

 通信が切れた後、幻怨は仕事内容の通信かどうか確認した

 どうやら仕事内容の急な変更を通信越しにされ続けた事で、随時、情報の確認・共有が癖付いたらしい

 

 

 幻怨

「今のは虎牙(こうが)か、変更内容は?」

 

 自称上級騎士

「いや、特にないとね。検討した通りに行くか」

 

 幻怨

「ではそうしよう」

 

 

 通信内容に追加の指示はなく、やる事が決まっていた二名は、そのまま行動を開始した

 

 場所-死屍の海-死屍の浜辺

 

 探求者

「自称上級騎士と虎牙(たけが)か、問題なく良い組み合わせだな」

 

 幻狩

「ああ、向こうも特に心配あるまい。なら俺達も移動するとしよう」

 

 

 通信した内容を聞き、特に異論のなかった二名はそう言うと、幻闢の方を向いた

 幻闢は幻気が濃い位置を検索し、どのルートで行くか模索している

 幻狩と探求者に後ろを向けて検索している状態で幻闢は二名に問う

 

 

 幻闢

「ところで両名、森へ行くルート、そのまま浜辺に沿うルート。どっちがいい?」

 

 探求者

(…)

「森を進行するルートだ」

 

 幻狩

(……)

「俺もそちらで」

 

 

 少し考える間を置いて、そう答える幻狩と探求者

 幻闢はそれに頷いて応答すると検索を切り上げ、共に幻緑の森へと再び足を踏み入れた

 

 

 

 -幻人は集い、闘いは再び勢いを増す

 

 

 

 

 




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