真剣で神槍に恋しなさい!   作:むこうぶち

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第十七話:竜胆、考察する

東西交流戦は全三日間、各学年対抗で行われる。川神学園学園長である総代と天神館学園学長である鍋島さんの二人で話し合った結果、一日目は一年、二日目は三年、最終日に二年、と言う形で落ち着いたらしい。何でも双方自信満々だったのが二年で、ならそこまで言うなら最終日に、となったらしい。

 

さて、今日はその三日目。初日、二日目は両方共に色々な意味で悲喜交々な結果となっている。

 

初日一年生の部。全体的な戦術レベルは五分、双方の練度もほぼほぼ互角、由紀江ちゃんがいる分で総合力的には川神学園側が有利かと思われた。だが由紀江ちゃんを別働隊として敵本陣を奇襲させる、それは良い、戦術的にも悪くは無い手だ。相手側に突出した戦力がいないんだから由紀江ちゃんが迂回している間に敵本陣周囲の戦力を釣りだし、手薄にすれば効果は相乗されるだろう。・・・・だが、何故か由紀江ちゃんの迂回中に一年の総大将が手勢を引き連れて突出。どんな狙いがあったか定かでは無いが袋叩きにあって敢え無く壊滅。

 

二日目の三年生の部。百代と言う超級戦力を抱える川神学園側が圧倒的に有利であり、他にも一芸特化な人材が豊富なため川神学園の有利は崩れず。それに対抗するために天神館が取った手段は通常とは違う意味での集団戦術、『天神合体』。百五十人、いやもしかしたら実はそれ以上の人数が合体し一体の巨人の姿を成す妙技、画面越しに見学していた男子生徒の過半数がテンションアゲアゲになり、気が付けば川神学園、天神館の両男子生徒が肩を組み天神館側の応援をするという異常事態が発生していた。だがそれでも一人一人は中堅クラス、それが合体したところでバケモノに敵う訳は無く『星殺し』の一撃で瓦解。その光景に肩を組み合っていた男子のほぼほぼ全員が涙し、膝を付いた。あとは辛うじて直撃を免れただけの天神館生徒を川神学園側が一方的に掃討するだけだった。

 

ここまで一対一、勝敗は奇しくも両校自信満々で最終日に回した二年生対決に委ねられる事になったわけだ。

 

 

 

「ったく、三年は予想通りだが一年は何やってんだよ」

 

一年総大将のバカな判断により一昨日の夜は俺と大和とゲン、京、クリスら島津寮メンバーで由紀江ちゃんを慰めるために色々とやったもんだ。翔一は寝させといた、アイツたまに素で他人の心をグッサリ刺すような言葉のチョイスをするからな。

 

「フハハハハハハッ!!そう言ってやるな、そのおかげで我らにまで出番が回ってきたのだ!」

 

本来、俺の配置は遊撃兵だったのだがあずみさんが別件で今日は不参加。なので九鬼寄りで、このイベントに公然と参加出来る人選、と言う事で昨晩俺に連絡が来たので本陣詰めで英雄の護衛と言う事になっている。英雄は総大将であり、その防備に俺が付けば攻めに兵数を回せると言う事で大和ともう一人、2-S所属の軍師葵も同意してくれてこの配置が成立している。

 

「まァな。だが一番の激戦になるのは俺らだ、お前がそうやってふんぞり返ってるからには・・・・」

 

戦場となるであろう方向を一度見てから、俺は再び英雄へと視線を戻す。

 

「信頼出来る連中がそれなりにいる、って事なんだろうがよ」

「うむ、紋がいれば勧誘するであろう人材が数多いる!」

 

成程ね、局様の影響を受けて人材マニアになっている紋様が勧誘するレベルが揃ってるとなれば、まぁ本陣奇襲とかされなきゃ出番はほぼほぼ無いってわけか。

 

「フッ、出番が無いのではないか、と思っている顔だな?」

「・・・・そこまで顔に出てたか?」

「いや、カマをかけただけだ」

 

なんてこったい。

 

「出番は直ぐにあるだろう、我が保障してやる」

「・・・・だろうな」

 

良く考えりゃ鍋島さんの教え子で、しかも西方十勇士なんて肩書きまでつけた連中が相手なんだ。奇襲、伏兵、暗殺、狙撃と何でもやってくる可能性は大だ。さっきから数回、爆発が起きてるみたいだが・・・・

 

「早速お出ましかい。お前ら!ここは任せたぜ!!」

 

本陣警護の連中の返事を待たず、俺は近くの配管を足場にして高所へと駆け上がっていく。登り切ると同時に飛んできたのは手裏剣、空いた手に握っていた槍でそれを叩き落とし、直ぐに体勢を整える。うん、なんつぅか見た目からして「忍者です」って感じだった。もうちょっと世を忍べよ、あずみさんみたいに別人格並に忍べとは言わんからよ。

 

「初っ端から奇襲たぁ、随分と余裕の無ぇ戦い方をするじゃねぇの?」

「・・・・鍋島館長から同学年に壁越えがいる、と言う情報を得ていた。最大戦力と見て間違いない、だから攻め手に回るだろうと軍師が読み我らも同意しての奇襲だったが」

「読み違えたなァ?御宅の軍師。俺は入学して一週間、実力を知るのも一部の連中。攻め手に加えるにゃ不確定要素だし拠点防衛でも同じ、なら総大将護衛の一人として置いとくのが無難。使えるヤツならしっかり護るし、使えなかったとしても多くの兵が詰めてる本陣ならば何ら問題は無い、ってぇワケさ」

 

槍の持ち手を短めにする、忍者相手には距離を取るのが一番。変わり身、分身、投擲武器と何でもアリなのはあずみさんで経験済みだ。

 

「名乗り合いでもするかィ?」

「西方十勇士が一人、鉢屋壱助」

「・・・・本当に名乗るとは思わなかったよ」

「我ら忍もこのままでは廃れて行く、故に名を売り、有用性を世に伝えねばならんのだ」

「世知辛いんだなァ・・・・川神学園、結城竜胆だ。まァ、ちょっくら俺の手柄になってくれよ」

 

俺の言葉に、鉢屋は無言で忍者刀を構える。二刀流のあずみさんと違って一本だけを逆手で持つ、ある意味正統派とも言えるか。

 

「だがよ、忍者が正面切って戦うとか舐めてんのか?」

 

あずみさんだって奇襲が失敗すれば退く、まぁあの人退きながら爆弾やら閃光弾やら煙幕やら投げたうえでさらにクナイや手裏剣で弾幕張ってくるもんな。よしんば接近戦をするとしても煙幕や閃光弾で視界を奪ってから、コイツみたいに無策で正面からやり合うマネはしない。

 

「無論、無謀は承知。だが俺が一分一秒を稼げば・・・・」

『おっしゃぁ!!敵本陣に一番乗り!報奨金アップやぁあああああ!!!』

「と言う訳だ」

 

成程ね、奇襲が成功するなら良し。それが成らないならば、鉢屋を抑るために手薄になった総大将を突貫してきた部隊が叩くと。

 

「んじゃ言い直すぜ、初っ端から本陣狙いの策ばかり。テメーらの軍師は俺らを舐めてんのか?」

 

視界の端で本陣護衛兵の中からSクラスの柔術使い、不死川が悠々と敵将に向かって進み出てるのが見えた。まぁ、勝てるだろ。相性も悪くねぇし、実力も五分五分。実力が互角なら相性が場を左右する、なら不死川が上手くやるだろ。

 

しかし本当にやる気あんのか、って話だ。本陣狙いの奇襲や突貫、なんてのは本来なら終盤に、しかも劣勢な場合に盤面を覆す手段として用いるモノだ。通常、こう言う部隊を運用しての戦いは局地戦を積み重ね、徐々に優位性を確保し、補給を切る事と連携を断つ事こそが肝要だ、と梁山泊の呉用には教わった。その方が損害を抑えやすいのだ。それに前線での有利を取れば俺や百代、由紀江ちゃんみたいな特記戦力は前に出ざるを得ない、そんな時こそ本陣攻めが効果を発揮する。だと言うのに・・・・

 

「分からん、あの女の考える事は御大将を含め誰一人として理解出来ん。だがその判断が大きく間違っていた事は無かった、だから皆従うのだ」

 

人格や考えを理解、評価されるのではなく実績だけを見て是とするか。

 

「そうか、なら直接当人に聞く事としよう。向こうも・・・・ケリはついたみたいだしな」

「!」

 

チラッと俺が下へと視線を移し、下では不死川が両手を挙げて勝利の喜びを全身で表している。アレもクリスと別方向のアホっ子だからなぁ・・・・

 

「っまだ勝機はあるっ!!」

 

そう言って、飛び上がる鉢屋。俺を躱して英雄を討ち取ろうって算段か。まぁ、それしかないわな。彼我の力量差を見て、俺と戦ったら万に一つすら無いと判断、そうなれば隙を突いて突破、イチかバチかで予定通り総大将の首を取りに行く。それが今の状況ならベストだろう、『実行出来るんなら』だけどな。

 

「『飛鷹』」

 

だが前だけ見すぎだ。『壁越え』じゃなけりゃ、お前ぐらいの実力があれば反応出来るんだろうが・・・・

 

「『穿爪撃』っ!!!」

 

俺は『壁越え』なんだよ。

 

「!?ぐぁあああああああっ!!?」

 

なんの事はねぇ、飛び蹴りさ。ただ・・・・百代の使う『無双正拳突き』と同じで『奥義』にまで昇華した飛び蹴りだがな。反応出来ずにモロに喰らい、地面へと叩きつけられた鉢屋。・・・・やり過ぎたな、白目剥いてんじゃねぇかよ。

 

「英雄!前線の戦況はどうなってる!!」

 

さて、どう出るかね。

 

「こちらが有利だな!今し方、西方十勇士のうち五人を討ち取ったと言う報告が入ってきた!だが向こうの総大将の行方が知れんようだ!!」

「分かった、俺も前に出るが構わんか!?」

「うむ!前線に出ていた一子殿とマルギッテの隊が負傷者多数により下がってくるとの事だ!それで本陣の備えは十分であろう!!」

 

成程ね、なら俺も気兼ねなく行けらァ。

 

「なら遠慮なく前に出る!!」

 

狙うは最初っから一つ。

 

『大将首』さァ。

 




第十七話でした。

うーん、戦闘描写が如何にも短いような・・・・難しいなァ。

次回はVS石田!どうなるんですかねぇ、作者ぶっちゃけまだ何も考えておりません。なので今からノリと勢いで書きます(真顔)。
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