「リン、少し相談があるんだ」
大概、皆で集まる原っぱに最初に来るのは俺だ。その後がまばら、最後に来るのは忠勝、一子ペアか岳人、卓也ペアのどちらか。なわけなんだが、今日は珍しい事に俺より先に大和が来ていた。しかも相談、と来たもんだ。
「まぁ、俺で良けりゃ聞いてやるよ」
「ありがとう、実は・・・・」
相談、と言うのは一人の女子の事だった。
そう、ついこの間一緒に竜舌蘭の保護を手伝ってくれた椎名の事だ。彼女はいじめられっ子だ、今までクラスが一緒になる事は無く、接点もほとんど無かったため正確な現状を理解しているわけでは無いがかなり陰湿なモノが多いと聞く。直接的な接点が出来た先日以降、それとなく気にするようにしてあまりエスカレートするようなら助け舟を必要最低限は出しているが俺はそこまでだ。ぶっちゃけ、直接助けを求められていないから、俺はお節介にならない範囲で手を出すだけだ。
大和は今年は同じクラスになった、ついでに翔一と岳人も。実際、目の当たりにしたのは大和も今年が初めてだったらしい。少し前までは、関わらないようにしていたらしい。ファミリーの仲間の事もある、下手に動けば特に気の弱い一子や卓也を巻き込むと思ったらしい。だがつい先日、関わりを持ってしまった。時折、他に人気が無いところで二人で本の話をしているのを俺と百代が見ている。・・・・別に?面白そうだと思ったりしてないよ?弟分に春が来た!とかそんな事は言ってないからね?
でだ、大和は見過ごす事ができなくなってきたらしい。子供の目線で見ても、自殺しかねない状況に椎名は追い込まれているらしい。だが、それでもチラつくのは俺らの事だった。椎名を助けようとする事で迷惑をかけるんじゃないか、と思っているようだ。
「ったく・・・・テメーはどうしたい?椎名を助けたいんだろ?」
「そうだよ、だがそれで・・・・」
「俺たちはそこまで頼りねーか?」
「!?」
「降りかかる火の粉は
遠くから駆けてくる翔一や一子、その後ろを着いてくる忠勝に手を振りながら言葉を続ける。
「だから仲間を信じて思うがままに動け」
―――――――――
その翌日、大和と翔一が体中に青あざ作りながら椎名を連れて来た。
「俺は椎名を助けたい!」
結局、我慢できずに助けに入ったらしい。と言うのも椎名が世話をしていたクラス飼育の金魚をヒーターを弄って死なせたのだそうだ、そしてそれを複数人で囲み椎名のせいだと言う。誰が最初に椎名を泣かせるかを競おう、大和を誘ったヤツがそういったんだそうだ。
「俺は予め言ってた通りだ、お前がやる気なら俺はやってやる」
「弟が人助けをしようとしているんだ、手伝わない姉はいない!」
俺と百代はもちろん、椎名を助ける要になるので参加する。
「イジメとか良くないわよね、なんで皆そんな事するのかしら」
「まぁ・・・・良いんじゃねぇか?」
一子と忠勝も賛成する。
「うん、僕も賛成」
卓也も賛成する、が。たった一人、反対の意を示した。
「俺は嫌だぜ!コイツを助ける理由がねーよ!!」
岳人は・・・・多分、一子や卓也の事を心配したんだろう。大和や翔一、忠勝は以外と喧嘩慣れしている、岳人自身は小学生離れしたパワーを持っている、だが戦う力が無いのが一子と卓也だ。だから・・・・
「ここでコイツを庇ったらますます女子との距離が開いちまう!」
仲間思いなんだと、これは照れ隠しなんだと、俺は思いたい。
「なんとも、思わないのかよ」
「そうとは言ってねぇだろ?でもそれはそれ、そいつを助けてやる理由がねぇよ」
正論だ、確かに正論なんだが・・・・
「なんかさぁ・・・・小せぇな、ガクト」
珍しく大和が喧嘩腰だ。普段ならガクト抜きで動く、とか言いだすんだろうが・・・・。元々、色々と言いたい事はあったのかも知れん。仲間内の喧嘩なんてのは止めてしかるべきなんだが、今回は翔一も百代も俺と同じ考えのようだ。二人も止める気が無いなら俺もとめずに見守る方向で行こうか。
「はぁ?俺が小せぇだぁ?ならお前はどうなんだよ大和!生意気言ってっと軽く捻るぞ!?」
あ・・・・
「おい」
「がっ!!?」
先に殴ったのは大和だった、ガクトが信じられないモノを見る眼で大和を見る。
「今なんつった?『軽く捻る』って言ったよな?そっか、お前は俺を
比較的短い付き合いだが分かった事がある。普段は知性派気取って厨二臭いセリフも吐く大和だがその実、かなり熱い性格をしている。んでもって一方的に、上から目線で舐めた態度を取られるのが一番嫌いだ。だからこそ、岳人のセリフが逆鱗に触れてしまったのだろう。
そして岳人はこれを機に口の利き方と言うのを学んだ方が良いな。例え本当に相手が格下だとしても、それを怒らせたりすれば『こうなる』事がままあるもんだ。まぁ、岳人は痛い目みないと覚えないことの方が多いしな。
―――――――――
数分後には大和も岳人も地面に倒れ伏していた。痛み分け、とは行かないが岳人が根負けしたようなものだ。
「ぜー・・・・ぜー・・・・」
「お前、思ってた以上に根性あんのな・・・・悪かった」
「分かれ・・・・ば、良い、ん・・・・だよ。分かれ・・・・ば」
息も絶え絶え、と言う言葉がよく似合う状況ながらも二人は笑みを浮かべていた。
「ったく、ほれ。治療してやるから起きろ」
「ああ、ありがとう」
「えー、俺様は女子に治療して欲しいぜ」
素直に礼を言う大和と文句を言い始める岳人。
「そうか、『女子』が希望か。なら頼むぜ、百代」
「ああ、任せろ」
にっこりと微笑む、何も知らぬ者が見るならば歳相応、いやそれ以上に綺麗な美少女の笑みに見えるのだろう。だが実際を知る者は十中八九、『何かがある』と予感、否、確信している。
「川神院に伝わる秘孔を突いて一発快癒させてやろう」
「百代、お前それ・・・・この間失敗して人体模型を破裂させたアレだよな?」
「―――!!?」
岳人が声にならない悲鳴を上げている。
「まぁいいさ、差し当たっての問題は椎名の事だろ?とは言っても対策は簡潔、椎名が俺らの仲間に入った事を喧伝してまわれば良い」
「「けんでん?」」
「要するに声高々と言って歩く、ってぇ事さ」
川神小では百代と、不本意ながら俺は『手を出してはいけないバケモノ』扱いになっている。俺とか川神一族に比べたら可愛いもんだって、川神一族がライオンなら俺は柴犬だぜ?まぁそこはともかくだ、その百代と俺がいると言う事で風間ファミリーに喧嘩を売ってくるヤツは少ない(いないわけでは無い、県外遠征してくる不良とかいるしな)。庇護するには最も適している、ので俺らの身内になったって事をおおっぴらに広げるわけだ。それでもまぁ、信じない奴らがいればちょっくらお話(物理)をするだけだしな。
「んでもう一つ、椎名自体の意識改革だ」
イジメはイジメる方の性根にも問題はあるが、イジメられる方の意識にも問題はある。椎名の場合は諦観していた、自分が我慢をすれば良いだけなのだと。やり返せるだけの『力』は持っていたのにやり返さず、また状況を改善しようともしていなかった。
「ってわけで大和、任せた」
「あぁ!」
イジメる方の性根は治しようが無いから捻じれ曲がったアホどもは俺らが物理で処理するとして、椎名の意識を変えるには誰かが付きっきりで世話を焼いてやるのが一番だ。この場合、最初に椎名を助けようと手を伸ばした大和が適任と言えるだろう。まぁ、若干の懸念が無いわけでも無いが心配しないでも良いだろう。
「教室にいる時ゃ大和と翔一、下校時は必ず百代を連れてけ。世界最高水準の防犯ブザーだぜ?」
「ああ任せろ、撃退から病院送りにするまでキッチリこなしてやる」
「やりすぎたら前髪ストレートにすんぞ」
前髪を抑えながらガクブルしてる将来の武神(笑)。まぁともかくだ、流石の百代も同世代相手なら手加減するだろう。だから百代が手加減と言う枷を外し始める歳上、例えば「俺の兄貴は有名なワルなんだぜ!」とかで呼ばれるレベルを相手にするのが俺だ。ああ言う歳上である事とか、あとは人数を頼みにして来る奴らとか百代は超が付く程嫌いだからな。
「椎名、何かあったら俺とか大和とか・・・・そうだな、卓也に相談してみると良い」
「え?僕?」
卓也は特別頭が良いわけじゃない、成績も中、頭の回転もまずまずと言ったレベルだ。だが思慮深く、知識は浅く広く、卓越した回答は返ってこないが万人が納得する回答を返してくれる。
「なぁなぁ、俺様は?」
「椎名が手を出されそうになったら身を呈してガード、要するに肉壁だな」
「そんな役目ばっかりかよ!?」
空気を読めない時は読めないが変なところで読める岳人は自然と空気を和ませる事がある・・・・癒し効果のある筋肉とか誰得って話だが。まぁ、気は紛れるよな。
「その他もろもろ足りんところは忠勝と一子に任せるぜ」
「あぁ、分かった」
「任せてよ!」
そして達人の域で空気が読める忠勝と、忠勝に十割手綱を握られているムードメーカー一子にカバーをさせる。うん、俺が思っている以上の布陣だなコレ。
「さーてと、んじゃまぁいっちょやりますか」
ここから約三ヶ月の月日を重ね、俺たちは椎名が風間ファミリーに加わったと言う話を信じないバカに説得(物理)を続け、それでも信じず歳上を呼び出すアホを制裁し障害を排除。それと同時に椎名に対し意識改革を施し、結果として椎名に対してのイジメを無くす事に成功する。だが・・・・
「大和、大好き(ぽっ)」
「なんでだァああああ!!?」
まぁ、ちょっとした人間関係の変化もあったが誤差の範囲内としておこう。
第五話でした。
お気に入りがあっという間に三百を突破しました、マジでありがとうございます。
で、前作からの変更として竜胆と小雪との絡みが無くなりました。でも安心して下さい、小雪のファミリー入りは前作と同じで確定してますんで。ただ時系列はズラしますが。
いよいよ次回、第六話:竜胆、身売りされる(仮)です!