真剣で神槍に恋しなさい!   作:むこうぶち

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第九話:九鬼での日常

「だーかーらァ!まずはその言葉遣いを何とかしろっつってんだろうがァ!!」

「ファック!テメーに言われたかねぇんだよ!××潰すぞ!!」

「竜胆もステイシーも落ち着いて下さい、どっちもどっちです」

「まるで猿の喧嘩みたいでシェイラちゃんマジウケます(笑)」

「・・・・・・・・やれやれ、だ」

 

俺が従者部隊の試験雇用制度で入隊(で良いんだよな?)してから二ヶ月が経過した。心根は優しいであろう上司と厳しくも祖父的な感覚で接してくれる師匠と十割純正スパルタな師匠にありとあらゆる面で教えを受ける毎日。

 

でだ、今日は何をしているかと言えば俺と同じ制度で入隊した同僚たちとの勉強会だ。俺たちはそれぞれに秀でた面を認められ選ばれたわけで、月二でこうやって集まりそれぞれが講師となって色々な事を教えあうわけだ。因みに今日が四回目、入隊者の五人のうち四人が外国人。で九鬼財閥は日系企業と言う事で俺が講師となり正しい日本語の使い方を教えている。元傭兵に元暗殺者、元マフィアと職業柄(?)最低限の日本語は使えるみたいだが丁寧語や謙譲語、敬語などになると言葉遣いに不安が残るわけだ。

 

「取り敢えず李さんは文句無しでOKだ、エルヴィンもまぁ良い」

「ありがとうございます」

「当然だ」

 

李・静初。中国人で元暗殺者。九鬼財閥当主である帝様を暗殺しに来た暗殺者だったがクラウディオさんにより捕縛、その後にスカウトされると言う異色中の異色の経歴を持つ。表情の起伏は少ないが、他者の心の機微を読む事に長けている。担当教官はクラウディオさん。

 

エルヴィン・シュタイナー。ドイツ人で元はアメリカに拠点を置いていたマフィアの一員。元々所属していた組織と九鬼財閥が敵対、全面戦争に入った際に真っ先に遭遇したのがヒュームさんだったらしい(ご愁傷様としか言えない)。僅か数分の交戦の末「気に入った」、の一言で捕縛。組織は壊滅、行く宛も無ければ組織への忠誠心も大して無かったためスカウトに応じたとの事。担当教官は序列六番のリカルド・ランバルディさん。

 

「だがステイシーとシェイラ、てめーらはダメだ」

「ファック!!」

「ステ公と一緒とかありえねーです!」

 

ステイシー・コナー。アメリカ人で元傭兵。『血まみれ』のあだ名を持つ元傭兵で、銃器類を使用した戦闘技術は高い、がそれ以外はアウト。かなり口が悪いので、今日の日本語の勉強会だって七割ぐらいは彼女のために開いているようなものだ。担当教官はヒュームさんで、よく床やら壁、画面端に叩きつけられているようだ。

 

シェイラ・コロンボ。ブラジル人で元傭兵。『毒蜘蛛』の異名を持ち、体内で毒を生成、散布、放出を自由自在にデキる特殊体質だとか。毒物の知識と対処法はピカイチ。担当教官は序列四番のゾズマ・ベルフェゴールさんと九番の鷲見さん。体質故に二人の教官を付けられているわけだが、フランクに接しすぎてちょいちょい某有名コント番組みたいな頭になっている。実はネット界屈指のネットアイドルとしての顔も持ち合わせている。

 

ちなみに俺だが担当教官は序列五番のニコライ・ドラガノフさん。単純な戦闘力だけなら従者部隊中二番目、現在空席の一番、更にはその先のヒュームさんのいる零番に最も近いと言われている人だ。人格的にもかなり常識人だと俺は思う。

 

ちなみに全員の共通の上司は忍足あずみさん。序列十二番で風魔だかの忍里出身との事で、この人と戦うと分身、変わり身、爆弾、ありとあらゆる投擲武器を駆使してくる。うん、投擲技術だけなら川神院の修行僧より強い。従者としての技術も若手ではピカイチ。公私、と言うよりは英雄様や九鬼一族とその他での対応の使い分けが半端ない。

 

「おい」

 

何時の間にか開かれていた扉の隙間、そこから聞こえてきた声に全員が固まる。

 

「赤子どもがピーチクパーチクと」

 

五人がそろって、錆びついたブリキ人形のようにそちらへと視線を向け・・・・

 

「煩いぞ」

 

―――――――――

 

「あー、痛かった」

「ヒュームに蹴られてそう言える若手はお前ぐらいなもんだぜ?」

「だな、普通は半日は起きれねぇぜ?」

 

午後からは書類仕事、で俺は担当教官のニコライさんと上司のあずみさんと三人で書類仕事中。李さんとエルヴィンはリカルドさんと英雄様の姉、揚羽様の護衛。ステイシーとシェイラはヒュームさんとゾズマさん、鷲見さんによる地獄の基礎鍛錬コース中。

 

「まぁ、頑丈さだけは鍛えられましたんで」

 

ハハハハハ、生まれて十三年。そのうち八年を川神院(バケモノの巣窟)で過ごしてきたんだぜ?あのまま川神院でもう十年も修行してたら耐久性能EX(規格外)に到達出来ていた自信がある。

 

「ニコライさん、これ字ぃ間違ってますぜ?」

「何?マジか?」

 

そう言って書類を一枚戻す。とは言え誤字があるとしても下手な日本人が作る書類より余程上出来だと思うんだけどね?よく知らんけど。ちなみに俺の仕事だがニコライさんとあずみさんの書類の誤字修正である。いや、中学生に難しい書類とか作れとか言われても無理だし?

 

「しっかしよくもまぁクセが強いのが五人も同時に集まったもんだ」

 

まぁなぁ。身売りされた俺にあずみさんを笑いに来て強制入隊させられたステイシー、帝様を暗殺しようとしたら捕まってスカウトされた李さん、その能力を危険視され管理するために入隊させられたシェイラ、敵対していたマフィアからスカウトされたエルヴィン。うん、志願入隊がゼロ名ってある意味凄いよね?

 

「その中でも一番異質なのは間違いなくテメーだけどな」

「そうだな、傭兵、暗殺者、マフィアなんて社会の裏で生きてきた連中とああやって仲良くやってる。全く関わりのない、表の世界で生きてきたガキが、だ」

 

そういやぁそうだった、俺の同僚って全員裏稼業なんだよな。

 

「そのくせ戦闘力は随一・・・・いや、それどころか正規の従者部隊の中でも十指には入るだろうよ」

「だな、アタイとしちゃあテメーにとっとと上位にアガってもらえりゃ万々歳なんだがな」

「まだ気が早いでしょうよ、半年で試験は完了。その時点での働きを見て序列も割り振るんでしょ?」

 

『従者部隊試験雇用制度』で入隊するとだ、正式入隊になった時に序列が優遇されるそうなのだ。まぁそもそもこの制度に選ばれる時点で相応に特筆されるべきスキルを備えているのだ。ならば研修さえ終えたならば序列下位から、なんて非効率な事をせずにしかるべき立場で能力を発揮してもらうのが妥当なんだろう。

 

「まぁな。だが俺だけじゃなくヒュームやクラウディオ、ゾズマにリカルドもそうだ。俺たちはそれぞれの『弟子』に期待してんのよ、予感めいた確信ですらある。『二年以内に俺たちの弟子は二桁代にまで昇ってくる』ってな」

「・・・・一桁は譲らないんすね」

「当たり前だ。それにお前は一度辞めるんだろう?」

 

そう、俺に関しては四年。まぁ高校二年に上がる頃合で一度辞める事が決まっている。川神院出身、しかも『あの釈迦堂刑部』の弟子であると言う事もあり引く手数多らしい。でだ、まだまだ若く社会経験の少ない俺の進路をここで決めてしまうのは勿体無い、せめて高校か、その先の大学ぐらいまでを経験してから決めろと。

 

まぁ要約するなら『一度しか無い学生時代、しっかり謳歌して来い』って気遣いなわけだ。ありがたい事にな。

 

「ええ、まぁ。帝様や局様からの気遣いってヤツです」

「破格の待遇だな。まぁ、それに対する応じ方から人となりを見ようとしているのかもしれないがな」

 

強かで中々に意地の悪い試し方だ。義理堅いヤツなら間違いなく九鬼に残る、もしくは時が来れば迷わず九鬼に戻るだろう。そうでなくとも、よほどの恩知らずで無けりゃ他所に行くなんて選択肢は取り辛くなる。それでも広い視野を持つ人間なら多少なりとも迷いはするが他に行く選択肢を取れるだろう。まぁこの場合、他に行くと言う選択肢を選ぶまでの有り様をも見ているのだろうが。

 

「そう言えば英雄様が週末からヨーロッパ方面に飛ぶ、でだ。アタイとニコライ、テメーが護衛に指名された」

「妥当だろうな、あまり多くは連れてあるけん。この三人でならば攻め、遊撃、護りを振り分けられる」

 

そう、つい先日パスポートまで取らされたんだよな。その理由が海外出張。専属従者となればほぼ確実に主と共に世界各地を渡り歩くし、専属でなくとも実力があれば状況次第では世界各地を飛び回るハメになる。ちなみに俺たちの研修期間が終わるとゾズマさんはアフリカ方面、リカルドさんはそれに連携すべく南ヨーロッパへの支部へと異動になるらしい。

 

まぁ今のところは俺は英雄様に気に入られているためか英雄様の外国行きに付いて行く事が多い。それでも中学生、と言う立場から他の九鬼一族から比べれば日本にいる比率は高いわけだが。

 

「ヨーロッパって英語だけでいけましたっけ?」

「いけない事は無いが可能な限りは各国語も覚えとけ」

「了解っす」

 

『生涯に勉強は付き物』なんて言葉を聞いた覚えがあるが正しくその通りだ。特に世界規模で動く九鬼財閥では各国語の読み書きが必須となってくる、従者部隊で専属ともなれば主人に恥をかかせぬように、また場合によっては通訳も兼任する場合もあるわけだ。

 

「あ、あずみさん。これ形式違いますよ」

「は?」

 

俺が渡したとある書類を見てあずみさんが目を丸くしている。俺は棚から前年度の書類を引っ張り出し、あずみさんの前へと並べる。

 

「これが前年度のヤツ、でこっちが今あずみさんが作ったヤツ。んでほら、こことここが違うでしょ?」

「あ・・・・」

「ほぅ・・・・」

 

あずみさんが呆気にとられ、ニコライさんが関心したように声を漏らす。

 

「確かこれミス・マープルへの提出書類ですよね?このままだとかなり突っつかれますよ?」

「ああ・・・・悪い、助かった」

「竜胆、どうして去年の書類と違うと?」

「え?全部見たんですよ、この部屋にある書類を片っ端から」

 

俺の言葉に二人が揃って呆然とした表情をして、周囲を見回す。

 

「「これを全部!!?」」

「はぁ・・・・」

 

俺、何かやったか?

 

 

side ニコライ・ドラガノフ

 

「あ、あずみさん。これ形式違いますよ」

「は?」

 

そう言って竜胆があずみに差し出した書類をチラ見すれば確かにそうだ。

 

「これが前年度のヤツ、でこっちが今あずみさんが作ったヤツ。んでほら、こことここが違うでしょ?」

「あ・・・・」

「ほぅ・・・・」

 

棚からファイルを取りだし提示する、とそれは紛れもなく昨年度のモノ。

 

「確かこれミス・マープルへの提出書類ですよね?このままだとかなり突っつかれますよ?」

「ああ・・・・悪い、助かった」

「竜胆、どうして去年の書類と違うと?」

「え?全部見たんですよ、この部屋にある書類を片っ端から」

 

は?全部?そう聞いて俺は思わず周囲を見回す、あずみも同じ事やってたが・・・・全部!!?

 

「「これを全部!!?」」

「はぁ・・・・」

 

コイツ、まぁ理解してなくて当然か。だがこの部屋、九鬼財閥創設期からのありとあらゆる書類が保管されていて高校とかの図書館ぐらいの広さがある。『パンドラ』やマープルの婆さんの『星の図書館』にも情報は保管済みだが従者たちが閲覧しても問題無いものがここにある。わけなんだが、それでもぶっちゃけ多い。俺みたいな古参やあずみみたいな優秀な若手でも、それこそマープルの婆さん以外は完全に記憶はしていない。だがコイツはさも当たり前のように『それ』をやってのけた。

 

「コイツぁ・・・・」

 

間違いなく逸材だ、『どっちか』はいても『どっちも』はそうそういない。あー、でも確か研修込で四年契約だしなぁ。外堀内堀を今からガチガチに埋め立てするか?そしたら・・・・

 

「悪い、そのまま二人で続けててくれ」

 

何か言おうとしたあずみと唖然としてる竜胆をおいて、俺はケータイを取り出し廊下へと。

 

「おぅ、俺だ俺。ちょっと話があるんだが・・・・」

 

大魚は逃がさない主義なんだよ、俺はよ。




第九話でした。

リアルで忙しかったため投稿が遅れて申し訳ありませんでした。

竜胆は書類仕事もデキるヤツなんです。瞬間記憶とか完全記憶とかまでは行きませんが記憶力は相当良いです。ただし覚えてる内容は割とテキトーなのでどーでも良い事も覚えてたりします。

次回もまだまだ九鬼編だよ!(え~?ホントにござるかぁ?)

そう言えば間も無くお気に入り登録千件。皆さん本当にありがとうございます。
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