さて、寝不足で倒れそうな俺たちだが今日は授業の初日であり、午後からは高位魔獣に対しての授業を(主にクリスが)行わなければならないため休むわけにもいかない。
クリスが眠気ですぐにも閉じてしまいそうな目で学院への道を歩いていると、俺の意識に神様が声を響かせてきた。
―――そういえば、お主の原作知識の制限についてなのじゃが。
―――制限…ですか?
―――そうじゃ。お主が原作知識をうっかりクリスに話してしまうとマズイことになる。
たとえば、トマス・ライサンダー。彼は星杯騎士団所属じゃが…。彼が星杯騎士団に所属している情報を知ったうえでクリスが彼と話すと、相手はクリスに違和感を抱くじゃろう。
その結果クリスが星杯騎士団の極秘情報を知っていると思われてしまうと少々面倒なことにつながるじゃろうな。
―――というと?
―――クリスが星杯騎士団に捕まる可能性があるということじゃよ。そうなってしまえば原作を改変するどころかクリスの命が危なくなる可能性がある。
そのような結末を防ぐために原作知識の一部……人物についての情報を封じることにしたんじゃよ。
ストーリーの大まかな流れはわかっていても、誰がここでこう動くという情報はわからないからお主の動きが阻害されることはそうないじゃろう。
それと、原作知識についてはクリスに話す分にはフィルターは掛からんが、人物や組織に関する情報はクリスがその情報を少しでも知っていない限り話してはならん。
無理に話そうとすると、お主の魂は休眠状態に入ってしまうので要注意じゃぞ。
と、神様は言いたいことを伝えると通信は切れてしまった。
【おーい。大丈夫?返事が返ってこないけど。】
(あ、ああ。大丈夫だ。)
気づけば、もう教室の前に立っており、扉の隙間から見える時計は一限の授業開始10分前をさしている。
(ところで飯はどうしたんだ?)
【えーと、キルシェっていう喫茶店があったけどいま持ち合わせがないんだよね…】
(は?)
財布を見せてもらうと、1ミラも入っていなかった。
(な、なんで1ミラも入ってないんだ!?)
【銀行ぐらいあると思ってたんだけど、なくてね。全財産銀行に入れたままなのさ!】
(……トリスタから一番近い銀行のある街ってどこだよ。)
【えーと……バリアハートだね。】
(どうするんだよ。休日まであと5日もあるぞ?)
【給料の前借させてもらおうかな……】
(しょうがないっちゃあ、しょうがないな)
果たして、新任教師に給料の前借ができるのか疑問だが、この一週間で飢えをしのぐにはそれしか方法がなかった――――――――。