ある鎮守府のエンゲル係数   作:ねこまんま提督

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現在(2017.08)進行中のイベントのE-7攻略中のお話です。
ネタバレや攻略法を見たくない方は回避して下さい。


鳳翔さんのネバトロ丼

よく晴れた、さわやかな朝。

スズメがチュンチュン鳴いている。

 

「ゆうべは おたのしみでしたね」

 

埠頭にフラフラと姿を表わした提督に、物資の荷揚げ作業を行っていた漣がニヤニヤ顔で挨拶(?)する。

 

再攻略に必要な資源を集めるため、24時間耐久で遠征に挑み続け、わずか1日で大規模作戦開始前の30%ラインまで資源量を回復させた。

 

「こりゃぁ~マジパナイ」

「ありがたいですねっ、ねっ?」

「大潮、アゲアゲで鼠輸送に活躍しましたっ! はいっ!」

 

「提督、如月ちゃん、目標達成おめでとうにゃしぃ!」

「ホント、司令官にはかなわないや! えへへっ♪」

「え? 私の輸送量が、la meilleureなのですか? 嬉しいです。Merci beaucoup.」

 

「ま、世界水準軽く超えてる俺様にかかりゃ、これぐらい朝飯前だけど……次から、もっと余裕もって資源貯めるようにしろよな」

「あ~あ~、すっごく疲れちゃった……後でイロイロと埋め合わせしてもらわないと。うふふっ」

 

キラキラ、大発マシマシでの海上護衛任務、北方鼠輸送、東京急行(弐)のガン回し。

直接遠征に行かない子たちも炊き出しやマッサージ、遠征組の休憩時間やキラ付け中に長距離練習航海や防空射撃演習を行ったりと、鎮守府一丸となって取り組んだ。

 

「みんなで何かを成し遂げるっていいよね! 青春だよね! 遠い夢~……」

 

長良が、某24時間放送するテレビ番組の感動テーマソングを歌い始める。

 

提督の瞳がうるむが、別に長良の歌声に感極まったわけではない。

キラ付け(意味深)のしすぎで、太陽が黄色く眩しいだけ。

 

 

今回、姫だらけの道中をいかに突破するかが作戦の焦点になる。

鎮守府一の頭脳、霧島が立てた作戦は明解だった。

 

「姫の攻撃も、当たらなければどうということはありません。気合いで避けましょう」

 

そして、欧州棲姫の本陣までたどり着けば、後は支援攻撃と基地航空隊で取り巻きを薙ぎ払い、囲んで殴って夜戦で沈めるだけの簡単なお仕事だ。

 

第一艦隊に、加賀、アイオワ、翔鶴、瑞鶴、大鳳、秋月。

第二艦隊に、阿武隈、ビスマルク、朝潮、大井、北上、雪風。

前衛支援に、金剛、ウォースパイト、サラトガ、グラーフ・ツェッペリン、吹雪、霞。

決戦支援に、長門、大和、赤城、飛龍、綾波、叢雲。

 

全員、三重キラキラのケッコン艦。

航路にかけられた呪いを解除して最短ルートを固定したし、集積地夏姫たちの手引きで欧州棲姫を護っていた強力な防御結界も逆転作動させ、下準備は万全。

 

おまけに先駆けは他の鎮守府に任せ、撃沈から復活した直後の弱体化した敵を襲う丙作戦で行くつもりなので、霧島の主張も慢心ではない。

 

「手を焼かせてくれたけど、これで決着だ」

 

24時間耐久キラ付けで赤疲労の提督は、出撃していく艦隊に弱々しく手を振って見送ると、いそいそと正妻の待つ鎮守府庁舎の台所に向かった。

 

「お疲れ様です。夕べはお楽しみでしたね……ふふっ、冗談ですよ」

 

漣に入れ知恵されたのか、ドキリとすることを言ってくる鳳翔さん。

提督の驚き顔に満足そうに微笑み、遅い朝食を出してくれる。

 

納豆、山芋とろろ、オクラの三大ネバネバ食材をご飯にかけ、卵黄を落としたネバトロ丼。

疲れた胃にもスルスル入っていく格好のスタミナ補給食。

 

ズルズルとネバトロをかっ込みながら、大規模作戦中ずっと陰ながら鎮守府を支えてくれた鳳翔さんに、何かお礼をと考え……。

 

「来週、一緒に欧州旅行に行こうか」

「えっ、欧州にですか?」

「港湾夏姫と地中海で遊ぶ約束してるんで、リベッチオとローちゃんも連れて行くんだけど……」

「もう……愛人との浮気旅行に妻と子供を連れてくなんて、何を考えてるんですかっ」

 

プウと頬をふくらませながらも、内心ウキウキしているのか、そわそわと浮き足立っている鳳翔さん。

しきりに、洋服じゃないといけませんよね、とか、新しい水着も買った方がいいでしょうか、とか聞いてくる。

 

もう大規模作戦を終えたつもりで、ゆったり鳳翔さんとの夫婦の会話を楽しんでいた提督だが、イタリア艦娘と潜水艦娘たちがドタバタと大挙乱入してきた。

 

「提督、すぐに来て!」

「地中海で新しいイタリアの潜水艦娘が発見されたわ」

「連合艦隊掘りよ、また資源を貯めないと」

「提督さん、急いで遠征部隊のキラ付けお願いしますね」

 

キラ付けは間宮スイーツでするようにお小遣いを渡して逃れようとするが、すでに財布が軽くなっていて……呆気なくドナドナされていく提督。

 

提督の夏は、まだもうちょっとだけ続くのじゃ。


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