ネタバレや攻略法を見たくない方は回避して下さい。
「い~やぁ~だぁ~」
寝間着代わりのスウェット姿のまま、休憩室の畳に寝転んで駄々をこねる提督。
「やだって言ってもしょうがないじゃない」
「ほら、早く着替えて執務室に行きなさい」
満潮と叢雲が仕事をうながしても、提督は子供のように手足をジタバタさせるばかり。
その姿にイラッときた満潮が提督を蹴るが、蹴られた提督はわざとらしく畳の上をごろごろと転がっていく。
「まったく、いつまでもウジウジしてんじゃないわよクソ提督!」
「早く命令してくださぁいー!」
「我が志摩艦隊、すでに出撃準備は出来ているぞ!」
痺れを切らした曙と阿武隈、那智が提督に詰め寄るが、提督は駄々っ子のように首を振るばかり。
いよいよ発動された秋季作戦『捷号決戦!邀撃、レイテ沖海戦』だが……。
ここの鎮守府では初日の朝から提督の心が折れ、まだ一回の出撃さえしていなかった。
「しばらく仕事で留守にする」
そう書き置きを残し、鎮守府の居候が姿を消したのだ。
彼女の名は防空棲姫。
甦る2015年夏『FS作戦』のトラウマ。
しかも台湾沖に戦艦棲姫が出張ってきているという情報まで入ってきた。
今さら『決戦』という言葉の重みに怖気づいた提督が出撃を渋っているのだ。
もっとも、確固たる信念や不屈の闘志など、ここの鎮守府の提督にあるはずもないし、艦娘たちも期待していない。
「怖くない怖くない、さあ行くぞ!」
那智が笑顔で提督の襟首をふん掴み、執務室に引きずっていくのだった。
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翌日の提督執務室。
「また敵主力艦隊を発見できなかったか……敵の艦載機が飛んで来る方向からして絶対、ここら辺にいるはずなんだけどなぁ」
そこには一転してやる気に満ちた表情になり、作戦地図と対峙する提督の姿があった。
「よし、もう一回出撃しよう。那智と潮は入渠、代わりに足柄と曙が入ってくれ。近海で空襲してくるこの艦載機群、こいつらを枯らせばこっちの出撃を通報されることもなく、敵主力に肉薄できると思うんだ」
一晩にして、提督の態度がここまで変わった理由。
それは昨夜、作戦を先行している天草の提督からかかってきた一本の自慢電話だった。
「な~んか新しい海防艦の子、2人も見つけちゃった♪」
「ファッ!?」
「この可愛さを見せられないのが残念だなぁ。もう、撫で回しまくりだよぉ」
即座に電話を叩き切り、出撃計画を練った提督。
今日は早朝から猛烈な出撃を繰り返していた。
これぐらい柔軟かつ豪快に掌を回転させられなければ、提督業は務まらないのだ。
(あくまでも、ここの鎮守府提督の個人的感想です)
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やる気になった提督は、艦娘たちに支給する美味しい食事にも妥協がない。
鳳翔さんと伊勢、飛龍に頼んで、三重県のとある名店の味を再現した
「ひりょうず」とは、関東でいう「がんもどき」のことで、ポルトガルの油で揚げた菓子の「フィリョース」が語源だという。
ちなみに、関東名の「がんもどき」の由来は、鳥の
水気を切った崩し豆腐に白身魚のすり身や卵白のつなぎを加えて練り、にんじん、ごぼう、たけのこ、枝豆、ひじき、わかめ、きくらげ、といった具材をちりばめて、とある飛び道具を埋め込んでから子供の握り拳ぐらいはある大きなボール状に成形して、油くどさを感じさせない米油で揚げていく。
大きさのインパクトもさるものながら、最大の魅力はその食感。
サクフワのがんもを食べたはずなのに、歯が次々と掘りあてる具材のコリコリ。
そして中央部に埋まっている、丸ごとのうずらの玉子のワクワク。
味は素朴ながら、健康食材たちの合同パーティーに恥じない滋味深くて心と体に染みわたるもの。
この味に慣れているここの鎮守府の艦娘たちは、出撃や遠征、畑や建築の仕事場から帰ってきたら自然体で受け取り、何気ないおやつとして食べて特に感嘆の言葉など発しないが……。
ほとんどの子が、黙って2個目以上に手を伸ばす。
「あの……とっても美味しいです、」
「Delicious!」
「うぁっ! うずら玉子まで入ってんのかよ」
「あの、提督……もう一つ……よろしいですか?」
「エンリョスルナ」
松輪、アークロイヤル、天霧、狭霧たち……。
執務室に出したコタツに入りながら、初めて食べるこの鎮守府の飛竜頭に感嘆の声を上げる、秋の新人たち。
彼女たちの笑顔を見て、猫のような目をさらに細めて嬉しそうに微笑みながら、提督は作戦地図上に新たな一点を書き加えた。
敵の前衛軽空母群の旗艦である軽空母ヌ級のflagshipをついに発見した。
複数の戦艦棲姫に守られているらしいが、臆さず打ち倒すのみ。
「阿武隈の入渠が終わったら、また出撃しよう。コマンダン・テストは対空装備の初春に交代。那智の零式水偵は夜偵に、初霜の電探は六連装魚雷に積み替えて夜戦で決着をつけよう」
まだ見ぬ新たな艦娘たちを家族に加えるため、飛竜頭の油にまみれた手で地図をベタベタ触りながら作戦計画を立てるのだった。
飛竜頭があると聞いて、ちゃっかり食べに帰ってきている防空棲姫から目をそらしつつ……。