ある鎮守府のエンゲル係数   作:ねこまんま提督

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現在(2018.02)進行中のイベントのE-4攻略中のお話です。
ネタバレや攻略法を見たくない方は回避して下さい。


鈴谷と熊野とふぐ料理

現在、鎮守府の作戦計画は順調に遂行している。

 

瑞鶴たち小沢艦隊が第一遊撃部隊のレイテ突入を援護するため、空母棲姫の率いる敵機動部隊主力をレイテ方面から北方へ誘引した。

あの戦争で行われた、悲劇的な囮作戦の繰り返しなどではない。

 

「我が機動部隊はその熟練艦載機部隊と共に健在です。これは翼なき空母の囮部隊にあらず! 機動部隊「小沢艦隊」、全力出撃!」

 

自身も小沢艦隊に参加し、目の前で次々と仲間を喪った大淀の作戦説明にも熱が入り、感極まった提督の涙腺を崩壊させて作戦開始が遅れたりしたが……。

 

決戦用に新たに仕立てた陣羽織に身を包んだ、雄々しい瑞鶴。

改二への改装で実力を大きく開花させた瑞鳳。

水上機母艦から空母に改装された千歳と千代田、航空戦艦の伊勢と日向。

そして、史実ではすでにマリアナで喪われていた翔鶴も、装甲空母として健在。

 

黒い新型艦載機を搭載した空母棲姫との戦いには多少手こずったが、これに痛烈な打撃を加えて撃沈し、復活までの時間を稼ぐことに成功した。

 

「レイテ方面の敵戦力は護衛空母群と侵攻支援の旧式戦艦群のみです!」

 

今こそが好機。

スリガオ海峡方面から進撃する扶桑、山城らの「西村艦隊」に援護され、大和、武蔵、長門を擁する主力部隊「栗田艦隊」がサマール沖を抜けてレイテ湾に突入する。

 

「西村艦隊より入電! 我、敵戦艦群を完全撃破。スリガオ海峡を突破せり!」

 

今こそ機は熟した。

 

全艦、レイテ突入! 連合艦隊、暁の水平線に勝利を刻め!

 

 

執務室の床に倒れ込んだ提督が、虚ろな目をしている。

 

「提督、何で天城姉ぇの真似してコテンてしてるの?」

「返事がない、ただの屍のようだっぴょん」

 

秋の戦い、スリガオ海峡で海峡夜棲姫(闇城)と5隻もの戦艦ル級を打ち破った。

そして先ほど、西村艦隊が残存していた戦艦ル級たちを再び撃破した。

 

それなのに……。

 

レイテ湾に突入しようとした栗田艦隊の前に、またしても戦艦ル級が6隻立ち塞がってきて、容赦ない砲撃で大破艦を続出させてくれやがったのだ。

 

「あのル級たち、復活速度が異常だよ」

 

深海領域とそこに棲む深海棲艦は、過去の怨念や憎悪、恐怖、悔恨といった負の感情から生み出される。

 

レイテ湾の目前に6隻の戦艦が出没するのは、西村艦隊を葬った米戦艦ミシシッピ、ウェストバージニア、カリフォルニア、テネシー、メリーランド、ペンシルベニアのメタファーだ。

そして、戦艦群旗艦のミシシッピを除く5隻は、ハワイ真珠湾攻撃で損傷を受けながら、修理と改装を受けて復活してきた戦艦たち。

 

「やっぱり……レイテ突入は無理なのかしら?」

「ふふふ……栗田艦隊も私達と同じ苦労を味わえばいいのよ……うふふふっ」

「ごめんなさい。あの時……私達が慢心せず、第二次攻撃隊を発進させて確実にトドメを刺していれば……」

 

トラウマモードに入って思いっきり負のオーラを発し、敵の復活を助けちゃってる子たちもいるし。

 

「仕方ない、あそこの戦艦たちには基地航空隊の陸攻を送り込むとして……」

 

その前のサマール沖で空襲とともに足止めを仕掛けてくる、飴玉護衛空母III群も厄介だ。

 

スプレイグ少将旗下の第77任務部隊第4群第3集団、コードネーム「タフィ3」(タフィとは、バターと牛乳を使った砂糖菓子)。

史実で、貧弱な護衛空母群にもかかわらず、肉薄する栗田艦隊相手に逃走しつつも猛反撃を加えて出血を与え、栗田ターンの一因を作った部隊だ。

 

史実での栗田艦隊の損害は、鈴谷、筑摩、鳥海が沈没、熊野が大破、筑摩の救助ために海域に残った野分も後に撃沈されている……。

想像しただけで、提督の豆腐メンタルが潰れそうになる大惨事だ。

 

「鈴谷と熊野を呼んで。それから鳳翔さんに……」

 

目を瞑り何事かを考えていた後、ムックリと起き上がって大淀に指示を出す提督だった。

 

 

夕刻、提督は鳳翔さんの居酒屋の奥座敷で、鈴谷、熊野と卓を囲んでいた。

 

「ごめんね」

 

珍しく制服のままの提督が席に着くなり、鈴谷と熊野に頭を下げる。

 

「ま、しょうがないじゃん?」

「いいんですのよ。(みそぎ)は、もうさせていただきましたわ」

 

控えめに雪割草の柄が施された漆塗りの黒卓には、すでに最初の料理が出されている。

鈴谷と熊野は提督の謝罪を軽く受け流し、それに箸をつける。

 

黒瑠璃の小皿の上で輝く、フグ皮の煮こごり。

コラーゲンでプルプルに固まった煮こごりの中にシャリッとした独特のふぐ皮、ゆずの香りがほんのりと薫る。

 

鈴谷と熊野、航空母艦として運用できるようになった史実栗田艦隊組の2人を、制空要員として今回の作戦に投入したのだが……。

 

「うちの村田さんたち、道中で全滅してたしね」

「私も大破して、退避で磯風さんにご迷惑をかけてしまいましたわ」

 

艦載機の運用数が少なく、耐久力も大きくない2人では、この海域の戦いでは戦力たり得なかったのだ。

史実で栗田艦隊に参加した艦娘には、攻撃面で強化の加護が働くという噂もあるが、攻撃機隊を全滅させられて置物と化した空母には、そんなものは何の役にも立たない。

 

「制空は加賀に任せて、第一艦隊の旗艦には筑摩を置くよ。筑摩なら強風改を9機積めるし、司令部施設を筑摩に載せれば、戦艦4人が徹甲弾と偵察機の弾着観測射撃装備ができるだろ?」

 

続けて運ばれてきた、伊万里焼の大皿に重ねられたてっさ、ふぐの薄造りを贅沢に箸ですくいながら、提督が次の作戦計画を披露する。

 

「ほれでいいとおもふ」

「はむ、はんぺきでふわ」

 

鈴谷と熊野も、返事も上の空にてっさをごっそりとすくい上げ、ふぐの上品な旨味を定番のもみじおろしとポン酢で堪能していき……。

あっという間に、大皿が空になる。

 

鳳翔さんがそそくさと置いていった、ふぐ唐揚げの皿の寿命も瞬く間に尽きる。

身がきめ細かく、ふぐの旨味が凝縮されている唐揚げの美味さ。

 

「あら、提督……お酒をどうぞ」

「ありがとう。鈴谷と熊野も……おっとっと」

 

ここらでようやく、ほとんど量が減っていない日本酒に気付いて、互いにお酌をしあう。

ぬる燗につけられた徳利(とっくり)の中身、新潟は久保田の千寿だということだが……せっかくの銘酒も、ふぐ料理の時には随伴艦の役割しか与えられないので可哀想だ。

 

徳利が空いたところで、ふぐの白子焼きとともに、熱々のひれ酒が出てくる。

 

ひれ酒の中の酒……もちろん、徳利と同じ久保田が使われている……なんて贅沢はないはずだ。

なにしろ、ひれからダシを出すためにガンガンに熱され、アルコールはほとんど吹き飛んでいるのだから。

 

超濃厚かつクリーミー、口の中に幸福が満ちる、絶品の白子焼き。

冬の白子は反則に美味い、美味すぎる。

 

この後は少し落ち着いて話をしながら、ふぐちりをつつく。

 

ふぐちりの主役はふぐの切り身ではなく、ふぐのアラから出たダシを吸った野菜たち。

そして、最後に投入され、全ての旨味をその身に吸い込んだ米こそ……至高。

 

雑炊なくして、ふぐちり食うべからず。

 

「雑炊の出来に影響するから、アクは丁寧に掬ってね」

「分かってますわ。鈴谷、そろそろお野菜を」

 

艦隊編成から外すという気が重い通達をしても、こんなに朗らかに後腐れなく済んでしまう、冬のふぐが持つ美食パワー。

 

レイテ湾突入に成功したら、今度は艦隊みんなで、ふぐコースだ。

ただし、提督のポケットマネーではなく、福利厚生費でお願いします、大淀さん。




ようやく新艦娘を全員掘りました!

が……E-7を乙に変更してクリアできるかの判断が難しい(バケツ270、油7万)
新しい友軍艦隊の編成に期待です

1月作戦で無事に500位以内に入り、46cm三連装砲改をもらえたんで、51cm連装砲はいらない……のかな?
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