今回は特に独自設定と深海との馴れ合いが多めです。
まるで夏のような陽気の中、提督たちは汗をかきかき、田植えの準備に勤しんでいた。
すでに田起こしを終えて肥料を入れた田んぼに水を張り、土を砕いて均等にならしていく、
今年は新たに、山裾の傾斜地に棚田を8枚開いたので、ロータリーの入れない棚田では、大和と戦艦棲姫が、
この陽気に、溜め池から引いた水も幾分ぬるんでいる。
小さい艦娘たちやほっぽちゃん、潜水新棲姫が、喜んで裸足で田んぼを駆け回っていた。
妙高と那智は、重巡棲姫にレンタルしてきたロータリーの操作方法を教えている
もちろん、みんな体操着や、エンジに白線が入ったジャージ姿だ(一部瑞雲modeの子たちもいるが)。
瑞鶴が空母棲姫と空母水鬼にカエルの卵を見せて驚かせていたり。
那珂ちゃんとのお尻相撲に負けて泥んこになった軽巡棲鬼に、軽巡棲姫がホースで水をかけてあげていたり。
武蔵と南方棲戦鬼が畑からアスパラガスを収穫してきて、それを鳳翔さんの指示で港湾棲姫と港湾水姫が、大釜で塩茹でにしていたりと、平和な光景が広がっている。
赤城と加賀は、昼食のおにぎりの準備中。
ふっくらと炊きあげた新潟県産こしひこりに、たっぷりの日の光を浴びて完熟した紀州南高梅の梅干しを包み、備長炭の炭火でパリッと焼き上げた海苔で巻く。
いい食材で丁寧に作った握り飯は……美味しい!
まさに、日本人に生まれて良かったという、魂に染み渡る味だ。
日向と最上、三隈は瑞雲力を駆使して、近隣の山から山菜を採ってきた。
うど、ふき、わらび、たらの芽、こごみ、大地の息吹を感じる春の恵み。
それを一生懸命、鈴谷と熊野、ネ級が天ぷらにしている。
長良型姉妹が早朝に裏山の竹林で掘ってきた筍は、鎮守府で養殖したワカメとともに、自家製味噌で味噌汁にする。
瑞鳳が離島棲姫とリコリス棲姫に玉子焼きの作り方を伝授していて、甘い匂いも漂ってくる。
平和で微笑ましいが……。
レイテでの戦いが終わってから、どうも敵味方ともに気が抜けて、緊張感に欠けまくっている気がする(平常運転と言う説もあるが)。
そこで提督、考えました。
久しぶりに鎮守府に遊びに来ていた中枢棲姫様と、長門、陸奥、大淀、明石に相談して、深海勢とのミニイベントを立案したのだった。
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「今日はみんなに、ちょっと殺し合いをして貰います」
みんながおにぎりを頬張っている時に突然、提督が拡声器を使って宣言した。
バト○・ロワイヤルなんて昔のサブカル作品、知らない艦娘と深海棲艦たちがポカーンとする中、漣と集積地棲姫が即座に「どうしてみんな、簡単に殺し合うんだよー!」と藤原○也のマネをしたので、意味が分からないでいる周囲にさらに動揺が広がる。
「提督、ハウス!」
陸奥の一喝で、面倒くさい提督は一発退場処分。
代わって長門が、深海勢力との戦闘訓練を行うことになったと説明する。
そして大淀が、訓練の内容を発表した。
「深海棲艦通商破壊部隊によって、我が後方補給兵站が急襲され、大切な兵站物資が強奪された! 特に主計科の補給倉庫が軒並み強襲されたことは、艦娘そして艦隊戦力の死活問題……直ちに特務捜索艦隊を編成! 強奪された補給物資回収にあたれ! 各海域の強奪された【食材】を回収せよ!」
ハッとした表情で立ち上がる赤城を、加賀が「赤城さん、訓練の設定ですから落ち着いて」となだめる。
しかし、次に拡声器を握った明石から……。
「えーと、工廠で新規に開発した、内部の【食材】の劣化を防ぐ特殊な補給木箱の中に、マジで鎮守府の糧食を詰めて深海側に渡しちゃいます! 回収できないと食糧事情が本当に悪くなるので、みなさん心して戦闘訓練に挑んで下さいねー!」
思わず真顔で立ち上がった加賀が、「這回の役 資源全滅すとも恨みなし」と、日露戦争を前にした秋山好古のような決意で宣言する。
「それから、回収した食材で作った料理を工廠に差し入れてくれたら、ちょっと嬉しい新装備のプレゼントがあるかもしれませんよー」
「ねえねえ、サブ島は? サブ島には行くの?」
「まずは順当に、ほっぽの所から攻めるか」
「摩耶、クルナッ♪」
かくして、過去最大規模(当鎮守府比)の春の大戦が始まるのであった。
余談ですが……。
翌朝、提督の自室で深海鶴棲姫が寝ていたのを、提督を起こしにきた瑞鶴が発見し、ちょっとした騒動になったとさ。