ある鎮守府のエンゲル係数   作:ねこまんま提督

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鎮守府の秋刀魚漁2018

静寂に包まれた黎明に突如……。

普段は『総員起こし』を行わない辺境の鎮守府に、起床ラッパが大音量で鳴り響いた。

 

「祭りの朝だぴょーん!」

「40秒で支度しなっ!」

 

スピーカーから轟く、うーちゃんと朝霜の声。

それと同時に、部屋から飛び出して工廠や倉庫へと走る艦娘たち。

 

「何だと? この騒ぎは何だ!? おい、Ark、何事だ?」

 

困惑する新人のネルソンが、同室のアーク・ロイヤルに問いただすが、アークはニヤリと笑うばかり。

ウォースパイトやジャーヴィスも、何か隠しているのか、ニヤニヤしながら「埠頭へ行こう」と背中を押すだけ。

 

埠頭に出ると、五十鈴の動かすフォークリフトに載せられ、ネルソンの艤装が運ばれてくるが……。

 

昨日まで装備していた20連装7inch UP Rocket Launchersが、96式150cm探照灯に勝手に換装されているし、S9 Ospreyの乗員妖精さんたちが、熟練見張り員さんと交代している。

 

「灯りよし! 水中探信儀……よし! 大淀、装備は万全です!」

「その装備は一体!?」

 

自分の艤装の改変だけでなく、日本艦娘たちのおかしな装備に困惑するのは、ネルソンだけではなかった。

 

「秋刀魚漁用装備、あれは、良し。これも、良し。よ~し、満載! ここは私が頑張るところ。今年もやるわー!」

「Are you a……何張り切ってるの? え? ニッポンの伝統……それはSearchlightでは? え……」

 

イントレピッドも、大漁旗を掲げながら、三式水中探信儀と探照灯2基、ドラム缶を積んでいる夕張を見て目を丸くする。

 

「来たか……またこの季節が……しゃーない。大井っち、私も魚雷降ろして頑張っちゃいましょうかねぇ」

 

そうです、今年も来ました、サンマ祭りです!

 

 

まずは小手調べに、鎮守府正面海域の近海警備に、対潜哨戒。

 

「しれぇ~! しれぇー! しれぇー!! たんしょーとー満載したー!! あとは何ぃ? 爆雷でいいのー? ねーえ!?」

「うん、私も頑張る! 武器はHedgehog(対潜迫撃砲)でいい?」

「日振型にお任せください。大ちゃん、行くよぉ。え、その爆雷は何……何する気!?」

 

漁場が荒れるから、爆雷を使ったドッカン漁は禁止です。

それから、九三式などの水中聴音機では、潜水艦のスクリューじゃあるまいし秋刀魚は補足できないので置いてくこと。

あと、時津風は声が大きすぎ!

 

「うーん……」

 

提督は小さい艦娘たちの世話を焼きつつ何度も艦隊を出撃させ、師匠や扶桑姉妹の瑞雲を投入して空からも捜索してみたが……。

 

今年は、近海の秋刀魚の群れが少ないようだ。

 

 

となれば、定番の漁場は北方海域、アルフォンシーノ方面。

 

「今秋の秋刀魚も上々ね!」

「大切な漁場、ここは譲れません!」

 

制空と打撃の主軸となる正規空母1にガチ装備。

 

「あの…あまり触られると、艦載機が発進できないです……全機発艦してからで、いい?」

「んっ、提督? 格納庫まさぐるの止めてくれない? んっ。っていうか、邪魔っ」

 

軽空母1はギリギリの戦闘力を維持しつつ、Swordfishやカ号観測機など、秋刀魚を探すのに有効そうな艦載機を多く積めるよう、搭載バランスを調整。

そのために熱心に格納庫をまさぐる提督。

 

「Sanma Operationでしょ? 任せておいて。この優秀なソナー(ASDIC)があれば……えっ、それだけじゃダメ? 難しいわね……ダーリン、教えて!」

 

航路を固定するために、駆逐艦娘は2人必要。

1人は秋刀魚3点セットを積むとして、もう1人は渦潮対策も兼ねて対空3点セット。

 

「ああ、北方の漁場なら俺が護るぜ。第五艦隊の斬り込み隊長を信じろ。行くぜ!」

「さあ、愛宕! 私達の漁場を守るわよ! 四戦隊出撃! 秋刀魚漁支援作戦を、実施します!」

「秋刀魚漁も那珂ちゃん、もちろんセンター☆ 漁場のアイドル那珂ちゃん、お仕事頑張りまーす!」

 

残る自由枠2には、各種巡洋艦から自由に2人。

 

装甲空母や改二駆逐艦、雷巡が多少有利だが、せっかく敵が強くないので、ここは交代で全員出撃。

大漁旗を持つ姿が可愛い多摩や、語尾の「クマ」を取り除くと妹よりイケメンな球磨など、見どころ聴きどころ満載だ。

 

 

スピーカーから流れる、祭囃子。

艤装や補給物資、水揚げされた秋刀魚を載せて走る、軽トラ、フォークリフト、ハンドフォーク、リヤカーの喧騒。

 

焼きトウモロコシ、焼きそば、ホットドッグ、りんご飴。

工廠の脇には、小腹を満たすための屋台。

 

いくら祭りとはいえ、出撃させると鎮守府の資源にダメージが入ってしまう、大和、武蔵、アイオワが伊良湖の協力で運営しているのだが、その屋台から漂う食欲を刺激する香りが、さらに腹を空かせていく。

 

そして、『秋刀魚漁対策本部』と書かれたテントの裏。

並べられた多くの七輪から、もうもうと高く空へと立ち昇る、秋刀魚を焼く煙。

 

テントに入った提督に……。

 

「ほら、焼けたわよ」

 

ジャージの上にエプロンをつけた満潮が、ぶっきらぼうに秋刀魚の塩焼きが載せられた皿を突き出してくる。

 

「うん、ありがとう」

 

いただいた秋刀魚の皿を、自分で炊飯釜からよそった炊き立ての新米ご飯とともに、ベニヤ板製の折り畳みテーブルに置いてビールケースを重ねた椅子へと腰掛ける。

 

皮目がバリッと焼けながら、身崩れも黒焦げもない、絶妙な焼き加減の秋刀魚。

炭火で焼いた秋刀魚はハラワタに遠赤外線の熱が通って美味しく焼けるが、脂が炭に落ちると火が立って焦げやすい。

この綺麗な焼き上がりは、こまめに焼き加減を見ながら、丁寧に焼き上げた証拠だ。

 

大根おろしに、すだち、はじかみ生姜。

シンプルだが、消化を助ける理にかなった付け合わせ。

 

そして、はじかみ生姜は、生姜を筆の形に削って整形し、湯通しして塩をふり、粗熱をとってから甘酢に漬けるという、実際に手作りしてみれば手間のかかるもの。

 

まさに、おもてなしの心が詰まった一皿。

 

箸でその身を崩して、醤油をかけた大根おろしをのせ、炊き立てのツヤツヤの新米のご飯とともに口に運べば……。

 

毎度のことながら、日本人に生まれてよかったと感じる、しみじみとした美味さが口いっぱいに広がる。

後から来るハラワタの苦みも、郷愁とともに舌と心に染み渡っていく。

 

そして、モジモジとこちらの様子をうかがっている満潮は……。

 

頭の三角巾と、第八駆逐隊と書いた緑の腕章が、文化祭の出し物で働く女子生徒のようで可愛らしい。

 

「何よっ、言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ!」

 

提督の視線を感じ、頬を赤らめる満潮。

 

「ありがとう。秋刀魚は美味しかったし、満潮も可愛いよ」

「……ッ、バカじゃないの!?」

 

言いたいことをハッキリ言ったら、顔を真っ赤にして逃げて行った。

 

 

さらに秋刀魚を食べ続ける提督の所へ……。

 

「提督! 中部海域、KW環礁に大規模な秋刀魚の群れを発見したかも!」

 

二式大艇ちゃんを出して長距離偵察をしていた秋津洲が報告に来る。

 

空母棲姫の縄張りであるKW環礁は危険な難関海域だが……。

 

「岩本さん、伊勢を呼んできてくれる? 野中さんは、基地航空隊の出撃準備をお願い」

 

空母並みの制空力を誇る伊勢改二と、今日まで築き上げてきた基地航空隊の力、そして……。

 

「違う! 腕の角度はこうじゃ!」

「む……こ、こうか?」

 

利根にバ〇イーグルのポーズを教え込まれているネルソン。

うん、新必殺技トネルソンタッチがあるから、空母棲姫も怖くない。

 

装備搭載量に余裕がある、大淀とタシュケントに秋刀魚漁3点セットを持たせて、伊勢と利根に瑞雲12型、秋月に対空3点セット。

問題はネルソンから熟練見張員さんを降ろして、水上機を載せるべきか……。

 

提督はKW環礁攻略の作戦を練りつつ、秋刀魚と新米をかっ込むのだった。




【プレイ記録】
昨晩から半日で30尾集まりました。今年はかなり出やすい印象ですね。
周回結果を載せておきますので、参考になれば。

1-1B     5尾/11S
1-1ボス   2尾/11S
1-5ボス   2尾/11S

3-3G     5尾/10S(+1A)
3-3ボス   5尾/8S

6-5F     2尾/7S(+2A)
6-5I     4尾/8S(+1A)
6-5J     3尾/4S+1A(+3A) ※夜戦マス、A勝利でも出るようです
6-5ボス   2尾/2S(+1A)

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