本格的な冬がやってきた。
鎮守府の裏山もすっかり雪化粧をした朝。
提督は「おフトゥンから出れない病」にかかっていた。
「うわあっ、マ、マジか!」
「南方航路は危険がいっぱい…。鎮守府も危険が……いっぱい?」
起こしにきた佐渡と対馬を布団に引きずり込み、豪華ダブル抱き枕にしてさらに惰眠を貪ろうとする提督。
「うふふふふ♪ 面白いことになったわぁ~♪」
季節の変わり目に指揮権を放棄し、提督が引きこもるのはここの鎮守府の恒例。
なので、布団に引きずり込まれるのを警戒して、当たり判定の範囲外で待機していた荒潮。
艦隊のみんなに自由行動を告げるため、食堂へと向かうのだった。
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南方海域珊瑚諸島沖。
「ベーイッ!」
泣き顔のガンビア・ベイに向けて、数多の敵航空機が襲い掛かろうとしていた。
「ガンビーちゃん、噴進砲を撃つかもっ!」
「は、はひぃーっ! ファイアーッ!」
ガンビア・ベイに装備された12cm30連装噴進砲改二が火を噴き、空に爆炎の幕を形成した。
1発につき60個の焼夷弾を炸裂させる、帝国海軍が誇る究極の対空兵器12cm噴進砲の洗礼を浴びた敵機が、次々と爆散していく。
随伴の秋津洲と
通称「5-2開幕空襲レベリング」。
グータラ提督の下では遅々として練度が上がらない護衛空母や水上機母艦も、一日で一線級のレベルまで育ちます(メタな話、3人編成だと陣形選択の時間も省ける)。
他にも、レ級や空母棲姫と戯れるために出撃準備を進める大和と武蔵、未消化の任務を検討する長門と大淀、サボ島沖への出撃を主張する川内など、提督不在をいいことに自由な出撃計画を立てる艦娘たちで、鎮守府は活況を呈するのだった。
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春風、初霜、浦風、浜風、長波、照月、択捉&松輪、多摩と、次々と抱き枕を代えて眠り続けていた提督。
叢雲と霞に叩き起こされたのは、すでに空が薄暗くなってからだった。
ようやく起きた提督を待っていたのは、楽しげで活気ある宴会の準備。
発泡スチロールやダンボール、ビールケースが積み上げられた、見慣れた光景。
宴会場には『祝 平均練度110達成』の垂れ幕がかかっている。
キラキラが剥がれているのに、妙にスッキリした顔の戦艦たち。
寝ている間に何があったのか、毎度のことなので素早く察した提督。
精神衛生上、資源と
今日はもう、とにかく宴会です。
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まず出されたのは、千切りにした白蕪と、炒ったしらすの小鉢。
そして、紅白が美しいユリネのイクラ和え。
コリコリの白蕪と、カリカリのしらす。
ほくほくねっとりのユリネと、プチプチさっぱりのイクラ。
食感の妙が舌を楽しませたところで、もみじおろしを載せた、大粒の生ガキ。
うっすらとしたポン酢に彩られた、磯の香りが口いっぱいに広がる。
そして、ブリ、アジ、カレイの刺身。
脂ののった冬の代表魚ブリに、遠征部隊が高知沖で釣ってきた刺身の王様シマアジ、絶品の呼び名も高い北海道のマツカワカレイ。
どれもが、うっとりするような味。
長芋の磯部揚げ、九条葱と金時人参のかき揚げ、わかさぎの天ぷら。
油が入った料理に酒が進み……。
ドーンと登場する、ブリのカマ焼き、ブリの中落ち。
寒ブリという言葉があるぐらい、この時期のブリは全身が美味い。
舌休めに、大根の一本漬け。
この地方の名産品で、大樽に低温で漬け込んだ大根の、梨のようなシャクッとした食感と甘み。
真打ちは、ブリのしゃぶしゃぶ。
白菜、長ネギ、人参、水菜、椎茸、しめじ、えのき、舞茸。
山の幸と昆布ダシのスープが張られた鍋に、ささっと薄切りのブリをくぐらせ、口へと運べば……。
加熱されてぐっと増したブリの旨味が、口いっぱいに広がる。
「提督、秋津洲もケッコンできる練度になったかも!」
「聞いてください、提督! 私、空母ヲ級改を一撃で沈めたんですよっ!」
「余もネルソンタッチでKW環礁の夜襲部隊に完勝してやったぞ!」
「横須賀提督から電話があったネー。提督は昼寝中で、『敵襲以外は起こすな』と命令されてるって言って切ったデース!」
「あぁ~、ヤバいぃ~、そろそろヤバいぃ……。もう普通の早割は間に合わないよぉ~」
そして何より、みんなで身を寄せ合い、同じ鍋をつつく楽しさと温かさ。
しめにご飯と卵を入れて熱々おじやを食べたら、明日からは冬modeでちゃんと起きられそうです。