楽しかったクリスマス会も終わり、深海棲艦たちもキラキラして帰っていった。
もっとも、またすぐ冬の大規模作戦と、大晦日の宴会で顔を合わせる予定だが……。
「ル級見た? いつもは顔色悪いのに、すごくテカテカしてた」
「装甲空母姫と戦艦タ級姉妹に三重キラ付いてるから、しばらくカスガダマ島には近づかない方がいいわね」
「酔った集積地棲姫がラバウルがどうとか言っていたが、次の決戦海域は南方か?」
「重巡棲姫の奴、間違ってあたしのショーツ履いてってるじゃない! ネ級、追いかけて!」
「ちょい待ち! 新館のトイレで、提督に襲われた軽巡棲鬼が轟沈しとったでー!」
一晩のうちに町内や艦娘寮を駆け巡り、子供たちに見つからないようプレゼントを送り届け、(こちらはもちろん)鎮守府内(だけ)の大人たちにキラ付け(意味深)して回ったサンタ提督は、今は疲れて爆睡中。
ちなみに、グリーンランド国際サンタクロース協会が定めた、多くの子供たちにプレゼントを届けることができる、公認サンタとしての能力の選考基準は……
ソリから50mを走ってターゲットの家に接近、はしごで煙突に登って家に侵入、家人に気づかれぬように暖炉から這い出て、
きっと本物のサンタさんたちには、どこかの伝説の蛇英雄並みの潜入工作能力か、ここの提督のように時間を操る妖精さん(+「天才明石の元気が出るクスリ」)の加護があるに違いない。
そんな提督が寝ている自室に……。
「提督ー! 朝起きたら、あたいの枕元にプレゼントがー!」
「大東、ダメだよ。提督はまだ寝てるんだから……」
「う~ん……ああ、大東。サンタさんからプレゼントが来たのかい? きっと、いい子にしてたのを、サンタさんも見てくれてたんだよ」
「うん! あたい、いい子さっ!」
そして、サンタさんの最大の資質は、いつも笑顔でいられること。
寝不足のところをジャンピング・ボディプレスで叩き起こされようと、部屋の片隅にヌチョッとした全裸のポーラや、置き忘れられたネッチョリした北端上陸姫が寝ていようと、ニコニコ顔を崩さない提督。
大東と日振の頭をナデナデしながら、そのまま二人を抱き枕にして、もうひと眠りしようかと考えたが……。
(気配もなく)枕元に、正妻の鳳翔さんが立っていた。
その手にある提督の制服の、「起きろ」という無言のプレッシャー。
ジュウコンで疲れてるから……とか言える雰囲気でないのは、背後の『ゴゴゴゴゴゴゴ!』というオーラで分かる。
冬の大規模作戦が間もなく始まるし、買い出しに障子の張り替え、正月用の飾り付け、カラオケ大会、餅つき、蕎麦打ち、Z砲の発射……。
年末には、やるべきことも多い。
観念して、提督はノロノロと布団から出たのだった。
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買い出しの計画表を作り、重巡艦娘たちによる障子の張り替えを手伝った提督。
ほっと一息をつきに、鳳翔さんの居酒屋に顔を出した。
もとは旅館の食事処だった、老舗の
重厚ながらも控えめで豪華すぎない内装。
落ち着いた調度品に、四季折々に目を楽しませる器。
そして何より、優しい笑顔で出迎えてくれる鳳翔さんに、その手により生み出される数々の肴の秀逸さ。
まずは「とりあえずビール」と言いたくなるのをグッとこらえて、お通しを確認してから、宮城の『一ノ蔵』の大吟醸を注文。
華やかな香り高い日本酒に、お通しの生牡蠣の酢の物がよく合う。
半紙に書かれた『おすすめの品』に目を走らせながら、これと思ったあん肝を頼むと……。
「そうだと思ってました」
即座に鳳翔さんが、葉ネギを散らしたプリッとしたあん肝の蒸し焼きを九谷焼の器で出してくれた。
ネットリと舌に絡みつくような、濃厚でクリーミーな深い味わい。
そして次の酒、伊勢は桑名の『上げ馬』をお燗にかけながら、炭火で蛤を焼き始めてくれる。
しし唐に紅鮭のフレークを詰めたものなんかも、焼く用意をしてくれているのも嬉しい。
お隣の那智のように、小鉢の
意地汚いハーレム提督としては、色々な酒と肴をちょびっとずつでも、できるだけ沢山とっかえひっかえ味わいたいのだ。
と……居酒屋の前がガヤガヤとし始めた。
「提督! 大本営の都合で、作戦開始が3時間半延長になった!」
「今日中の作戦発動は不可能ですね」
長門と大淀の報告に、ふと目を合わせる提督と那智。
ならば……。
「宴会場に移って、今日もみんなで飲もうか?」
「よし、今夜ばかりは飲ませてもらおう!」
みなさん、明日から頑張りましょう。