艦娘寮の玄関脇には門を向いて、大きめの招き猫が置かれている。
福を招く縁起物といわれるが、ここの招き猫は提督に似た超のんびり顔で、小判も持っていないので、いまいち有難みがない。
だが、左手を上げているだけあって、人を招く効能は抜群。
大晦日の今夜も、大勢の深海からのお客さんがやってきている。
え? 人じゃないんじゃないかって?
それを言い出したら、ここに住んでいるのも艦娘たちですしおすし。
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昼にはソロモン海で壮絶な撃ち合いをした、長門と陸奥、深海棲姫姉妹も、今は協力して宴会場へコタツ運び。
設置されたコタツに並べられていくのは、多くの大皿料理。
紅白なます、ほうれん草のおひたし、海老とブロッコリーのサラダ、じゃこと大根のサラダ、牛すじ肉とピリ辛コンニャク、ごぼうの唐揚げ。
「こらーっ、マンガ読むのは手伝いが終わってからにしなさいっ!」
秋雲たちが有明海域から持ち帰った戦利品を回し読みしてて、陽炎に怒られる子たち。
「あー、もう。忙しいのに」
「し、司令……う、うー……」
「いい覚悟だほら! 壁に手ぇつきなよ!」
早波(夕雲型12番艦)掘りに疲れた提督が運気を高めようと、藤波(11番艦)と浜波(13番艦)に抱きつき、朝霜(16番艦)に蹴りを入れられる。
厨房からは、天ぷらを揚げる香ばしい匂いが漂ってくる。
海老、イカ、メゴチ、人参、蓮根、春菊、舞茸。
冬の旨さをカラリとして衣に閉じ込めて。
そして、輸送部隊は福井から越前ガニを大量に仕入れてきた。
さっと茹でたカニ脚にポン酢をつけてチュルッと……。
蟹味噌の甲羅焼きで熱燗とかも……たまりません。
「菊姫の大吟醸はないか?」
「そんなもん、いくら年末とはいえ大宴会で出すわけないでしょ」
「おおーっ、伝心があるぞー」
「ちょっと一口……」
酒瓶を手にあれこれと品定めする呑兵衛たち。
「那智姉、何してんの!」
「千歳姉、料理運ぶの手伝ってよ!」
「隼鷹っ!」
「イヨちゃん、まだ飲んじゃダメ」
そして、いつも通り姉妹艦たちの怒声が飛び、どんどん騒がしさを増す宴会場。
「レ級が着いたんだけど、あいつマグロ獲ってきちゃった!」
「那珂ちゃん、マグロ解体してもらっていい?」
「あたし、もうステージ衣装着ちゃってるよー」
年末には新しい艦娘たちを迎えるために、新しい布団も買ってきた。
これからも、どんどん鎮守府の家族は賑やかになっていくだろう。
今年も一年、大変お世話になりました。
来年もよろしくお願いいたします。
よいお年を!
早波掘りに時間をとられ、やっつけ気味になり申し訳ないです
20Sしましたが、まだ出ません……