ネタバレや攻略法を見たくない方は回避して下さい。
元は漁協の管理棟だった鎮守府の、ボロい
「あれ? 先に誰か入ってる……もしかして、お姉ちゃん? あ、あたしも入るー! よいしょ……」
勘違いで提督のいるお風呂に入ってしまった新人の早波を、ケダモノと化した提督が襲う。
うん、夏の新刊はこれだっ!
「ちょっと! うちの妹で変な妄想しないでよ!」
冬の有明での祭を乗り越えた、我らがオータムクラウド先生。
大破してもキラキラしたドヤ顔のままお風呂に浸かり、夏に向けての新たな構想を練っている。
妹をネタにされそうになった藤波が、怒り顔で冷水を秋雲にブッかけた。
「うおー、冷たっ! かけるなら
「今、うちは深刻な
長門、陸奥、最上、三隈、鈴谷、衣笠、からなる第一艦隊。
大晦日はステージショーが一転、マグロの解体ショーになった那珂を旗艦に、古鷹、加古、大井、照月、夕雲、からなる第二艦隊。
PT小鬼群対策に、重巡や航巡には攻撃の威力や弾着観測射撃を捨ててまで副砲や機銃、熟練見張員の妖精さんを積み、鬼門である
とにかく、敵主力にさえたどり着ければ、大和を含めた支援攻撃と基地航空隊の力を借りて、敵を押しつぶすのは簡単。
そう、対策さえちゃんとすれば、S勝利するのは簡単なんですよ。
問題は、早波ちゃんを見つけ出すまでにかかった回数と、そのたびに消し飛んでいく資源と
元旦の朝、ようやく早波と邂逅した提督は嬉しさと解放感から涙をこぼし、夕雲ママの膝に甘えまくったという。
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そして鎮守府総出の初詣や羽根つき大会、妖精さん出初式、謹賀瑞雲の新年任務を済ませ、1月2日をもって進出した、中部ソロモン海ブーゲンビル島沖。
潜水新棲姫ちゃんの(お年玉をあげたことなど意に介さない)無慈悲な雷撃と、止むことのないリコリス棲姫の空襲が待ち受けていた。
「元旦にお賽銭以外のお金を使うことは、一年を通して浪費することにつながるから慎むべきとも考えられていたから、昔から三が日はお店も休業するのが当たり前だったんだけど……今では年中無休のコンビニなんかが当たり前になっちゃって(ただし、この近所にはない)、便利にはなったけれど正月の風情が失われた気がするね」
艦娘寮のロビーのソファーで、駆逐艦娘や妖精さんたちにまとわりつかれながら、正月ウンチクを披露する、浴衣に半纏姿のだらけた提督。
「それと元旦には、包丁を使っちゃいけないんだよ。これは、『縁を切る』につながるのを嫌ったんだね。お雑煮は例外として、それ以外の煮炊きや水洗いはせずに、おせちを食べて過ごすという風習も、もともとは竈や台所に宿る火や水の神様を敬い……」
そんな長くて面倒くさいウンチク話を聞いて……。
あ、提督の豆腐メンタルが潰れたんだな、と察した初期艦娘の吹雪。
「丙作戦に変更しますか?」
「……うん」
壁にぶつかったら壁に沿って迂回する。
ここの鎮守府は今年も平常運転です。
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丙で行くなら、もう勝ったも同然。
慢心提督は昼間から温泉に浸かり、陽が落ちる前からおせちをつまみに、ゆっくりと酒を飲むことにした。
大晦日からコタツを出しっぱなしで、おせちとお雑煮、寿司が常時セットされている大宴会場。
まずは、ブーゲンビル島への輸送作戦で頑張ってくれた、朝潮、大潮、満潮、荒潮らが入っているコタツに行って労をねぎらい、作戦難度を下げることを詫びる。
続けて、敵主力への直通航路を開くため、制空権奪取に尽力してくれた、赤城、加賀、大鳳、サラトガらがいるコタツへ行き、同じく感謝と謝罪の言葉を。
そして……。
端っこのコタツに陣取り、あきつ丸、ネルソン、伊勢、ザラを呼び出す。
「提督、何か企んでるでしょ? 悪い顔してるよ?」
伊勢にはすぐ見抜かれてしまったが、とりあえずは皆に料理と酒を勧める。
途中、多摩がまとわりついてきたが、あごの下を撫でてあげると気持ちよさそうにコタツの中に入って眠ってしまった。
定番のおせちの他にも、殻付きアワビの蒸し煮、蟹と豆腐の揚げしんじょ、鴨肉の肉団子。
ちょっと豪勢な料理をつまみながら、「君臣是愛 輝威徳自」と書かれた、ありがたく縁起のいい樽酒から酒を注いでグビグビと。
勝手な解釈ながら、提督はこれを「提督と艦娘が互いを愛して尊重する鎮守府には、自ずから威徳が宿る」と解釈している(例え、それが丙提督だろうと)。
まるゆと共に地道に、漁業権のない海域を巡って大量のアワビを集めてきてくれた、あきつ丸。
あきつ丸には、秘技「烈風拳」という、戦闘機しか積んでいないのに敵艦を攻撃できる波紋の技がある。
越前ガニを仕入れるため、福井まで反復航行する輸送艦隊を護ってくれた、ネルソンと伊勢。
複縦陣のまま敵中に突入し、敵を分断しつつ縦横無尽に砲撃を浴びせるネルソンタッチ。
戦艦の砲撃力と、軽空母並みの制空力を併せ持つ伊勢。
日本の正月料理には、豚や牛の肉はタブー。
それを尊重して鴨肉で、さっぱりしながら濃厚な味わいの肉団子を作ってくれた、ザラ。
彼女は一級の重巡洋艦としての戦闘力を持ちながら、水上戦闘機の運用にも長けている。
そしてここに、日本が誇る不沈戦艦の武蔵と、艦隊の盛り上げ役であり世界一の水上機運用能力を誇る利根を加えて、第一艦隊を編成する。
空母がいると航路が迷走するらしい海域に対応するための、提督なりの最適解だ。
「さ、まずは一杯。いっしょにやろう。やりながら、さて、相談だ」
敬愛する池波正太郎先生の、作中の台詞を借りつつ。
明日以降の出撃計画を語り出す提督。
窓の外では、湾港が夕闇に溶けつつあった。
とりあえずE-3は丙で攻略し、日進ちゃんをお迎えしました。
あとは、また掘りか……