連日の雨にも切れ目が見えてきて、晴れた日には初夏の陽光がまぶしい。
鎮守府のプライベートビーチも海開き。
プライベートビーチと言うと聞こえはいいが、実際は切り立った岩肌に沿って続く、長さ300メートルほどの玉砂利の浜と、干潮時に姿を現す平らな磯場。
水温はまだ冷たいが、水着姿の駆逐艦娘や海防艦娘たちが、元気に海に走り込んでいく。
海に向かって回廊のように突き出した磯場の先端は巨大なエリンギ茸のように隆起していて、その隆起の上にある数本の松の木と、航行祈願のために建てられた赤い鳥居。
その先には長年の波浪に削られて沖に取り残された岩礁があるが、すでに軽巡洋艦娘の威信をかけて長良と神通がどちらが先に着くかのクロール合戦を繰り広げている。
一方、海の家を建てている戦艦娘たち。
裏山で伐採・乾燥させた木材が大量にあるので、建築資材には困らない。
低速戦艦組が手慣れた手つきで柱と梁を組み上げ、そこに登った高速戦艦組がトタンの屋根材を張っていくと、あっという間にそれらしい形が出来上がった。
設備もけっこう充実。
ボイラー技士免許を持つビスマルクは、石油給湯器式の温水シャワー室を施設。
アイオワが厨房に鉄板とバーベキューコンロを設置し、イタリアとローマもピザ窯を組んだ。
給水装置工事主任技術者(要実務経験3年)を目指しているウォースパイトが水回りを、電気工事士の資格を取ったリシュリューが電気設備を整備した。
「コロラド、丸ノコでそこの板材を6枚、長さ1200に揃えておいてくれ」
「え……ナガト、Marunoko? What?」
「そこにあるCIRCULAR SAWのことよ。え、無理……?」
テーブル用の木材に墨付けしながら無造作に出した長門の注文に、見学していたコロラドが目を白黒させる。
リヤカーでビールサーバーとかき氷機を運んでいたネルソンが、助け舟にと丸ノコを英語訳してあげるが、そういう問題ではない。
「ガンビーじゃあるまいし、こんなことも出来なくちゃBIG7失格よ」
「まあ誰でも最初は素人だしな……よし、日向師匠に一から仕込んでもらおう」
「Why!?」
仕事内容は先輩がOJTでしっかり指導。
各種資格取得支援制度ありの働きやすい鎮守府です。
「提督、水着に着替えるから、覗かないでね!」
「覗かないでよ?」
海の家の更衣室で着替えをしようとする風雲と朝雲に言われ、そんな「押すな押すな」みたいに言われたら絶対に覗くに決まっているので、ビール片手に「うんうん」と生返事するポロシャツにショートパンツ姿の提督。
そういえば、今年は冷夏とか言いつつ暑いじゃないか!という文句を最近よく聞くが、気象庁のいう冷夏とは「6~8月の平均気温」が平年より-0.5℃以下(東日本地域の場合)になることなので、これからどんなに暑くなろうと6月、7月前半の気温がグンと下がっていた今年は文句なく冷夏なのだそうだ。
更衣室を覗いて怒られた(風雲と朝雲ってば大人げなく妙高にチクるんだもん)後、提督はそんなウンチクを語りながら、鉄板で塩焼きそばを作っていた。
目の前の海で採れた新鮮なホタテとイカをバターで焼き、鎮守府の畑で収穫したばかりのニンジン、タマネギ、ピーマンをたっぷりと炒める。
鶏ガラスープをかけて麺を蒸し焼きにし、岩塩と胡椒を振って具材と混ぜ炒めると、ジュウジュウという鉄板の音色に合わせて、食欲をそそる芳香が立ち昇っていく。
ここで刻んだ青ネギを投入し、とどめにゴマ油を回しかける。
塩気とネギの風味が魚介の旨味にベストマッチな、自慢の塩焼きそばの完成。
海から上がってきた艦娘たちを手招きする。
冷えた身体を温める、熱々のできたて焼きそば。
これがたまらない。
お次はサザエを壺焼きにして、トウモロコシも焼いて、よーし提督フランクフルトも焼いちゃうぞー。
高く青い空に真っ白な入道雲、ねりねりと動く深海浮輪さんたち。
大和がラムネを配り、重巡洋艦娘たちはスイカ割りの準備中。
いつもの夏がやって来ました。