ある鎮守府のエンゲル係数   作:ねこまんま提督

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現在(2021.05)進行中のイベントのE-1のお話です。
ネタバレや攻略法を見たくない方は回避して下さい。


第三一戦隊と中華ロールキャベツ定食

姉さんピンチです!(平成生まれにゃ分かるまい……)

 

もう春の大規模作戦が始まっているのだが、鎮守府の空気はダラ~ンと弛緩(しかん)している。

 

艦娘たちはジャージ姿で釜揚げしたしらすを干したり、田植え直前の田んぼの害虫防除に出かけたり、軽トラやスーパーカブの整備をしていたり、朝から温泉で蕩けていたりで、まったく緊張感がない。

 

練習航海に出たはずの藤波、早波、浜波の第三二駆逐隊も、埠頭から見える湾内に錨をおろして、カレイを釣っている。

 

それもこれも、埠頭で正座させられているヘボ提督がすべて悪い。

 

「南方への戦力展開に先立ち、台湾方面より南沙諸島へ第四航空戦隊を展開、さらに比島方面防備を固めるため、第三十一戦隊を同方面に投入します!」

 

大淀が作戦概要を発表し、作戦に参加する艦娘の名を呼ぶ。

いよいよ作戦開始という最高に盛り上がる瞬間……。

 

「あ……」

 

基地航空隊を中部海域から引き揚げておくのを忘れるという、凡ミスを犯していたのだ。

 

当然、銀河部隊が帰還してくるまで作戦開始は延期。

 

ただでさえ、作戦前夜は宴会を開いてそのままぐっすり眠り、横須賀や佐世保などの有力鎮守府がルートを切り拓いてから、ゆっくりと金魚の糞で作戦参加する鈍行鎮守府なのに……。

 

これじゃあ、やる気が出るわけない。

提督の株はストップ安のかからない大暴落を起こしていた。

 

正座でしびれる足をモゾモゾさせる提督の横を、大井がこれみよがしに舌打ちして通り過ぎていく。

 

 

でもね、提督も言い訳させてもらいたい。

前夜の宴会の食べ過ぎで、お腹が重く頭も鈍っていたのですよ。

 

3日前にも端午の節句の大宴会があったばかり。

すき焼き、天ぷら、刺身、かつおのたたき、鯛のかぶと焼き、サクラマスの味噌焼き、ちまき、笹餅……。

間宮も、鯉のぼりの図柄が美しい、特製ばらちらしなんかを出してくれていた。

 

そんな和な宴会の直後だったので、大規模作戦に向けた士気高揚の料理はアメリ艦娘たちに任せたところ……。

アイオワに加え、サウスダコタ、ワシントン、コロラドが、これでもかというほど肉を焼いた。

 

ニンニクバターの香るTボーンステーキに、肉汁のしたたるランプの3ポンド(1.3kg超)ステーキ、まるで斧のような骨付きリブロースのトマホークステーキ、山のようなスペアリブ、丸鶏を豪快に蒸し上げたビア缶チキン、鶏の手羽を素揚げにしたピリ辛いバッファローウィング、ソーセージとポテトフライの盛り合わせ、塔のようにそそり立つスモークベーコンチーズバーガー、超弩級なホットドッグ、サラミとハラペーニョのシカゴピザ、デザートには焼いたマシュマロとチョコレートをクラッカーで挟んだスモアに、マンゴーシロップがかかったアロハな味のシェイブアイス……。

 

そして、絶望的なほどに野菜が足りなかった。

 

「肉だけで大丈夫! だって動物たち(肉)が野菜を食べてるから!!」

「何を言ってるの、ここにフライドポテトがあるじゃない! HAHAHA~♪」

 

うん、あの時は間宮の頭に角が生えてるのが、はっきり見えたような気がする。

 

そもそも、その前の昼食も、足柄の手仕込みカツカレーだったんだよなぁ。

玉ネギを丹念に長時間焙煎し、たっぷりの豚コマとともに原型がなくなるほど煮込んで寝かせた、神保町すずらん通りの洋食の名店を思わせる暗褐色のポークカレーの海に、上質な揚げたてサックサクのロースカツ大陸が浮かぶ。

 

お皿の隅に、申し訳程度だが千切りキャベツがのっていたのが、今となっては嬉しい良心だった。

 

 

朝には間宮が、十勝産のえんどう豆と、米、もち麦を、水と昆布、みりん、塩少々で味付けした素敵なお粥と、青菜のおひたしを出してくれたので、ずいぶんと胃のあたりも軽くなってきた。

 

日が昇り、春と呼ぶにふさわしいポカポカ陽気になっていくにつれ、正座をしていた提督の傾斜も深くなり……。

 

土下座のような「ゴメン寝」の姿勢で、気持ちよく昼寝に落ちていく提督だった。

 

 

お昼を過ぎ、ようやく最初の出撃が終了した。

 

「五十鈴に任せておきなさい。第三一戦隊、対潜戦闘は十八番(おはこ)なんだから!」

「パーフェクトうーちゃんの防空戦闘も刮目して見るぴょん!」

 

対潜装備に身を固めた五十鈴。

5inch単装砲Mk.30改+GFCS Mk.37を2基に、FuMO25レーダーという豪華装備をつけてもらった卯月も鼻息を荒くしている。

 

それに続くのは、潮、皐月、松、そして甲標的と魚雷を満載にした北上様(と、その雄姿を写真に撮りまくっている大井もいる)。

 

日本の敗勢も濃くなった1944年8月。

猛威を振るうアメリカの潜水艦に対抗するため、積極的に潜水艦狩りをおこなう対潜機動部隊として、五十鈴を旗艦に編成された第三一戦隊。

 

その第三一戦隊のかつての仲間であった、神風、旗風、雪風、響、初霜、涼月、竹も、笑顔で五十鈴たちの武勇伝を聞いている。

 

「北上さんも、先制雷撃でル級を大破させたんですよね♪」

「まあ私はやっぱ、基本雷撃よね~」

 

第三一戦隊は最終的には、人間魚雷回天の母艦として改装された北上を主力とする、本土決戦用の海上挺進部隊に改変されて終戦を迎えたのだが……。

 

そんなこといいんです!

 

艦娘と深海棲艦との戦いとは、過去をなぞるものではなく、過去にやりたかったことをやり直すためのものだ。

 

大艦巨砲で敵戦艦を撃ち砕き、アウトレンジで敵機を完封し、我が物顔でうろつく敵潜水艦に爆雷の雨をお見舞いし、酸素魚雷の長い槍で大物を喰らってやってこそ、海に沈んだ多くの無念の具現化である深海棲艦への鎮魂にもなる。

 

そうそう、集積地棲姫が比島に物資を集めてるらしいから、それも派手に燃やしてあげないとね(ゲス顔)。

 

 

遅くなったお昼ご飯は、間宮の作ってくれた中華ロールキャベツ定食。

 

絶品のロールキャベツは、やわらかい春キャベツの葉に、鶏ひき肉とザーサイの具を包み、優しい味の白湯(パイタン)スープでコトコトと煮たもの。

 

副菜は四川の家庭料理家常豆腐(ジャチャンドウフ)

揚げた木綿豆腐に、ピーマン、ニンジン、長ネギ、絹さや、椎茸、タケノコ、キクラゲの入ったピリ辛な醤油餡をかけて煮たもの(ご家庭によりレシピは様々)で、ご飯がすすむ味だ。

 

控え目ながらも丼に盛られたご飯は、ふっくらツヤツヤの炊きたてで、肉とはまた入るとこが別で、日本人にはこれがなくちゃダメなんだと実感させられる。

 

そんなご飯のお供に、ポリポリ食べだすとやみつきになる中華定食の大定番、醤蘿蔔(ジャンローポウ)

短冊に切った大根を干し、ゴマ油、ニンニク、花椒、八角、赤唐辛子、紹興酒、醤油で軽く炒め、その炒めダレに一晩漬けたものだ。

 

そして、血がさらさらになるという新玉ネギを干し海老と蒸して、黒酢の酸味が身体に染みわたる中華ダレをかけた温サラダ。

 

こういう栄養バランスのとれた、心と体に沁みる滋味豊かな食事はやっぱりいい。

そして、それを愛する家族と一緒にとるのは、もっといい。

 

「もう、提督。ご飯粒がついてますよ。本当にしょうがないんだから……」

 

あんなにツンケンしていた大井も、何だかカドがとれて優しくなった。

 

「ふぅ。お腹いっぱいだよ。ありがとう!」

「食べ終わったら、もう一度出るわよ!」

「さぁーって、やっちゃいますか!」

 

艦隊の士気も大きくⅤ字回復してきた。

 

「よおし! 午後も頑張ろう!」

 

この時、提督はまだ気がついていなかった。

 

さっき長時間遠征に出した大潮と満潮が、この後に続く比島での作戦に必要になる、対地装備を積んだまま出港してしまったことに……。




下記は【ネタバレ】ですが

E-1攻略完了しました。



〇第2ゲージ
軽巡1、駆逐4で最短ルート
集積地棲姫の改Ⅱ&分身(2体出現)はこけおどしです
皐月に特二式内火艇と大発動艇(八九式中戦車&陸戦隊)を積めば、一発で燃えます
それより道中と随伴のPT小鬼群を確実に始末するため、機銃と見張員をしっかり準備しましょう
 
〇第3ゲージ
軽巡1、雷巡1、駆逐4で最短ルート……ですが、索敵がきつい
索敵が足りないとボスに行かないのはもちろん、十分でないとUマスにも寄り道します
甲作戦では索敵値の合計が310ぐらい必要なので、電探3ぐらい積みましょう
それから最大の障害になるのがIマスの空襲、対空要員をしっかり用意すべき(涼月の使いどこかも?)
潜水棲姫改IIは(東海隊で随伴潜水艦を落としとけば)対潜先制&シナジー艦3~4で余裕に撃破可能です

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