ある鎮守府のエンゲル係数   作:ねこまんま提督

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現在(2023.04)進行中のイベントのお話です。
ネタバレや新艦娘(たいした内容ではありませんが)を見たくない方は回避して下さい。


ウニ畜養と早春作戦完了

 この鎮守府は、複雑に入り組んだ海岸線の合間に、ぽっかりと袋型に開いた狭い湾にある。

 

 周囲を小高い山々に守られた湾内は波風が静かで、四方の川から栄養豊富な水が流れ込む。

 そんな湾の特性から、周囲では養殖業が盛んだ。

 

 この鎮守府でも見よう見まねで、ワカメ、コンブ、海苔、ひじき、カキ、ホタテ、アワビ、ホヤの養殖に手を出している。

 

 そんな鎮守府に力を貸してくれたのが、県庁農林水産部の小野塚さん。

 提督より少し年上で、9年前に初めて会った時より頭髪の戦線後退が大分すすんで絶対国防圏に近づきつつある気もするが、頼りになる兄貴だ。

 

 県の水産技術センターからマニュアルや資料を取り寄せたり、養殖具の販売業者や、技術指導してくれる養殖漁業者を紹介してくれた小野塚さんの協力なしに、鎮守府の養殖場は成功しなかったろう。

 

 今回の話題とはそれるが、小野塚さんとその人脈には、食材の仕入れや食品加工、田畑や果樹園に植える種苗の入手、病害虫の予報や駆除方法、養蜂やキノコ栽培、林業など幅広い分野で助けられている。

 

 

 さて、そんな小野塚さんに紹介され、新たに鎮守府が手を出したのが、ウニの畜養(ちくよう)

 畜養とは、自然界から捕獲してきた魚介類に、餌を与えて大きくすること。

 

 当初ウニは漁業権に遠慮して、人間では潜れないような場所にいるものだけを、潜水艦娘たちがこっそりと採っていた。

 その内に漁協の方から、養殖海藻を食害するウニを駆除して欲しいと相談を持ちかけられ、大手を振ってウニを採れるようになった。

 

 そして近年では「磯焼け」と呼ばれる、ウニ(だけじゃなく他にも食害の犯人が複数いることが分かってきた)によって海藻類が全滅状態になってしまう、海の砂漠化が問題となってきた。

 

 いったん磯焼けが起こって海藻の森がなくなると、そこに隠れ住んでいた小魚や海老、カニがいなくなり、海域の多様性は失われてしまう。

 後には飢餓耐性に優れたウニだけが残って、再生しようとする海藻(どころか岩肌まで)を片っ端から食いつくし続けるという負のスパイラルが続く。

 

 そこで、潜水艦娘たちは湾内外の磯焼けした海域のウニを、ハンマーで「割る」という駆除活動もしていた。

 この海域にいるのは温暖化により関東以南で大繁殖して問題になっているガンガゼ(毒あり、非食用)ではなく、キタムラサキウニというれっきとした高級ウニなのに、磯焼けした海域で育ったものは飢餓状態のため身がスカスカで不味く、ただ割り砕いて魚の餌にするしかなかったのだ。

 

 以前、こういった痩せた間引きウニに、廃棄野菜を食べさせて太らせ、身をパンパンにして食べよう、という企画を某男性アイドルグループの番組でやっていた。

 

 この鎮守府でも真似をして、ウニを数百匹育ててみたのだが……。

 身はパンパンになったけれど、番組で使っていたような大量の春キャベツを与え続けられなかったので味が良くはならず、B勝利に終わっていた。

 

 しかし、全国的には間引きウニの畜養に成功し、商業ベースに乗せる団体がいくつか出てきている。

 

 小野塚さんが大分や山口での畜養現場を視察してきて、県内でも漁協や大学と協力して試験的な間引きウニの畜養実験を始めることとなり、その話に鎮守府も一枚嚙ませてくれたのだ。

 

「ろーちゃん、いっぱい集めてきましたって」

「いい子でちねー」

 

 ウニをたくさん詰めたネットを持って海面に浮上してきた呂500の頭を、長鯨が撫でている。

 こうして集めたウニは海中の生簀(いけす)に入れて育てる。

 

 ウニは4~6月にかけ産卵に向けて食欲旺盛になるが、3~4月にはワカメ、6月にはコンブの収穫があるのでこの時期には養殖場に大量の海藻がある。

 その中にはウニの食害にあって穴があいたり、収穫の際に脱落したり傷がついたりしたものも、文字通り捨てる程にいっぱいある。

 

 この地方では春キャベツはあまり育てていないのに、廃棄される春キャベツを利用するという三浦半島で行っていた番組の方法を真似しようとしたのが、前回の失敗のもとだった。

 そう、この地方でこの時期に育てている、そもそも普通にウニの好物を与えるだけでよかったのだ。

 

 そして、ウニを間引きした後の磯焼けの現場には、アマモやアカモクといった海藻、間引きされる養殖コンブを移植し、海藻の森を復活させる計画だ。

 

 数さえコントロールできれば、キタムラサキウニ様は高級食材。

 数年後には磯焼けから回復した海で、身がたっぷり詰まった天然物が採れることを期待している。

 

 さて、前置きを長々と書きましたが、そんな鎮守府の一大プロジェクトだが、スケジュールに若干の遅れが出ていた。

 

 その原因が現在遂行中の、硫黄島逆上陸作戦。

 

 深海擱座揚陸姫-壊がなかなか倒せず、出撃要員の伊201(フレイ)伊203(フーミィ)が作業に戻れないのだ。

 

 最短ルートでボス艦隊に向かおうとすると武蔵が使えず、アイオワ、ビスマルク、リシュリューには他作戦の札がついているため、大和の特殊攻撃が発動できず、夜戦時に敵の随伴艦が残り過ぎる。

 

 大和とサウスダコタでは、削り中に深海擱座揚陸姫を撃沈できたのは2回だけ、そして敵を全滅させてのS勝利は1回もなかった。

 

 最短ルートでの潜水艦後略は諦めて、遠回りして大和と武蔵のコンビ攻撃にかけるか(※攻略時、大和武蔵ルートには潜水艦を入れられないと勘違いしてました)。

 

「乙作戦とはいえ、これは厳しすぎる……いっそ丙に落として、アイオワを出そうか」

 

 珍しくシリアスに、呻くような苦悩の声を発した提督に対して、横から大淀があっけらかんと……。

 

「この海域では、乙作戦でも札制限はありませんよ?」

 

 数秒の沈黙の後、スカートのスリットに手を突っ込む強制猥褻の刑に処された大淀の悲鳴が、執務室に響くのだった。

 

(大本営(うんえい)さん、そういう大事な情報はちゃんと前もって大淀に言わせるか、回覧板(ツィッター)に明記しましょう!)

 

 

 お札を気にせず自由に編成が組めるなら、もうこっちのもの。

 

 第一艦隊に、大和、アイオワ、イントレピッド、ザラ、ポーラ、アトランタ

 第二艦隊に、矢矧、ジョンストン、時雨、雪風、伊201、伊203

 

 乙作戦のメリットを活かして、道中対策もしっかりした艦隊で一発撃破した。

 夕暮も深海重巡水鬼(E5-3)のとこで見つけたし、これにて2023早春作戦完了。

 

「神州丸先任、あきつ丸先任、山汐丸、まるゆ、提督。……乾杯っ! ……かぁーっ、いいなあ!」

 

 その晩の大規模作戦慰労会。

 お通しには、近くの竹林で採ってきた筍と、採れたてワカメを使った若竹煮が出た。

 

 上品な薄味ながら、お互いの魅力を最大限に引き出し、舌に春を感じさせてくれる。

 

「この山菜は神州丸先任殿をお助けし、俺が採ってきたんだ。貴様も食ってみろ、美味いぞ」

 

 熊野丸たち陸軍組が山で採ってきてくれた、うど、ふきのとう、たらの芽の天ぷら。

 まさしく芽吹きの春ならではの味覚。

 

 

「提督、こっちの肉、いけるぜ。あ、三日(みか)! そのネギはまだだ。豆腐食え豆腐」

 

 豆乳鍋を仕切っている鍋奉行の有明を、相方の夕暮が嬉しそうに見つめている。

 

「白露、時雨、第二七駆逐隊全員での初任務として、今週の金曜カレーの福神漬け作り当番を頼むね」

「えっへへ、まっかせてくれちゃって!」

「うん、やってみせるさ」

 

 

「提督ぅ~、ザラ姉様の作った、ホタルイカと春キャベツのガーリック炒め、食べませんかぁ? ワインにとっても合いますよぉ」

「ホタルイカ、七尾湾を思い出すよね。イヨがこれに合わせるなら富山の酒、満寿泉 (ますいずみ)だな、んっふふ~♪」

 

 ノンベーズに捕捉されたので、酔う前にヤボ用を済ませておかないと。

 

「フレッチャー、明日はサウスダコタとワシントンを連れて、木更津の友軍支援に行ってあげてくれるかい?」

「はい、お任せください」

 

 木更津提督から、千葉県銚子の「灯台キャベツ」というブランド春キャベツが山のように届いたので、心の友として援軍を送ってあげる気になったのだ。

 

「おい、提督!」

「どうしてフレッチャーに言うの!?」

「ん、お前、前に出るなよ!」

「うるさいわね、あんたが下がりなさいよ!」

 

 だからなんだよなー。

 

「マサチューセッツ、あの2人止めなくていいの? えっ?そうなの!?」

「そんなことより飲むぞ! ……って、いや! お前は飲まなくていい! タスカルーサ、止めてくれ!」

「レンジャー!」

 

 新しい家族が増え、鎮守府はますます賑やかです。

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