ある鎮守府のエンゲル係数   作:ねこまんま提督

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現在(2017.05)進行中のイベントのE-3途中までのお話です。
ネタバレや攻略法を見たくない方は回避して下さい。


天龍とビーフジャーキー

 昼には春めいた陽射しが降り注ぐのに、夕方になると急に冷え込んでくる。

 北東方面での大規模作戦の数日目。

 

 この鎮守府では、お土産作りに大忙し。

 

 自家製ハチミツを練り込んだ、しっとりフワフワの焼き菓子。

 裏山で朝に掘ったばかりの(たけのこ)を使った中華ちまき。

 鎮守府のレストア漁船「ぷかぷか丸」で釣ってきたクロソイの干物。

 

 祥鳳と瑞鳳が、竹と手漉きの和紙で作った団扇(うちわ)

 隼鷹と飛鷹が登り窯で焼いた、陶器の湯呑み茶碗や酒器。

 

 なぜそんなものを作っているかといえば、前述のように、数日前から大規模作戦が発令された。

 北海道沖合及び南千島列島に敵艦隊の出没が確認されたのだ。

 

 大湊警備府に急行した各鎮守府の艦隊は即座に出撃した(この鎮守府では様子見のために一晩出撃を遅らせたが……)。

 

 敵艦隊の戦力はそれ程強大ではなかったものの、とにかく敵旗艦の潜水棲姫が硬かった。

 

 伊勢、朝潮、夕張、那珂、ヴェールヌイ(響)、リベッチオ。

 鎮守府でも指折りの対潜エキスパートたちが、最大限の対潜装備を満載し、2日がかり追い掛け回してようやく仕留めることに成功した。

 

 

 お次は、敵勢力の北方での活動の活発化に対抗するため、艦隊を単冠湾(ひとかっぷわん)に集結させろという命令が来た。

 

 駆逐棲姫と駆逐古姫が率いる艦隊を追い払い、単冠湾に物資を揚陸させて、迎撃準備を整えた。

 

 そして泊地襲撃部隊の旗艦である、お馴染みの顔となった重巡棲姫との決戦。

 こいつと、護衛の軽母ヌ級改flagshipもまた硬かった。

 

 出撃メンバーは、木曽、鈴谷、霞、時雨、加賀、葛城。

 何度も夜戦を挑み、時雨の痛撃が重巡棲姫をあと一歩のところまで追い詰めたこともあったが、なかなか撃沈に至らない。

 

 そこで加賀の艦載機を艦戦一色にして制空戦専門とし、葛城に代えて高速戦艦・榛名を投入して打撃力の向上を図った。

 そうしたら一度、索敵力が不足して重巡棲姫に逃げられたのはご愛嬌……。

 

 最後は、支援艦隊に大和と武蔵まで繰り出し、重巡棲姫にトドメをさした。

 

 試行錯誤を繰り返しているうちに、新しい仲間である海防艦娘・国後(くなしり)と邂逅できたので結果オーライではあるが。

 

 

 そして現在、千島列島沖に進出して輸送作戦を行いつつ、発見情報があった新艦娘・神威(かもい)の捜索を行っている。

 

 こうした戦果の陰には、先行して攻略を行っている他の鎮守府の艦娘たちからの情報が欠かせない。

 毎回、この鎮守府では艦娘たちが集まる泊地にお土産を大量に持って行き、先行組から情報を聞き出しているのだ。

 

 

 残り資源も、今のところ問題なさそうだ。

 

 たまに大破撤退の連続でストレスが溜まった提督が「サバをさばいちゃうよ」とか、うざいテンションでダジャレを飛ばすようになってきているが……。

 

「提督、ここどうぞ」

 

 大鳳が耳かき片手に、提督を膝枕に誘う。

 

「お疲れみたいね! そんなんじゃダメよ!」

 

 雷が提督のこった肩をマッサージしてあげる。

 

「提督~、ちょっと『ガ○ガリくん』買ってきてよぉ」

 

 北上が提督を気分転換のおつかいに出す。

 

「囲炉裏の薪が足りないんですけど、薪割りを手伝っていただけませんか?」

 

 妙高も提督のストレスを発散させようと薪割りを手伝わせた。

 

「今日はうどんにしてくれるかしら。はぁ? 何言ってるの? 急いで!」

 

 叢雲も提督に、うどんの手打ちをさせてあげる。

 

 艦娘たちの硬軟合わせた気配りにより、提督のストレス値は許容範囲内に留まっていた。

 

 

 今日も提督は張り切って作務衣(さむえ)を着込み、燻製作りに精を出している。

 

 水、塩、三温糖を基本に、素材に合わせた香草や香辛料、酒を調合したピックル液に長時間漬け込んだ食材たち。

 

 地鶏の骨付きもも肉、豚バラのブロック肉を丁寧に水洗いして塩抜きし、温度計とにらめっこしながら殺菌のためにぬるま湯でボイルし、冷蔵庫で乾燥させる。

 

 新しく仕込んだ鶏肉と豚バラを、物干し台やネットを取り付けてある燻製専用に改造した冷蔵庫に吊るし、すでに乾燥が終わっている鹿のすね肉とホタテを取り込み、燻製器へと。

 

「んだよ、ニヤニヤ気持ち悪いなあ」

 

 どんな燻製チップを使おうか考えていたら自然とにやけてしまい、手伝いの天龍に呆れられた。

 しかし、天龍だって頬がゆるんでいる。

 

「ホタテはナラで燻そうぜ」

「うん、鹿はサクラとヒッコリーに、ウイスキーオークを混ぜてみようか」

 

 燻製器に食材とチップを入れて燻製を始めたら、温度計に気を配りつつウィスキーをチビチビやる。

 つまみは以前に燻製にした牛タンのビーフジャーキーと、薫香をつけたクリームソースを塗ったクラッカー。

 

 発色材や色素など当然使っておらず、完全に乾いて黒々とした自家製ビーフジャーキーは見た目こそ悪いが、味は折り紙つき。

 

 噛めば噛むほど、じんわりと牛タンの旨味と、スパイシーに味付けされたタレの余韻が染み出してくる。

 強いピートの香りも、ウィスキーによく合う。

 

「しかしまあ、提督も飽きねえな」

 

 燻製器から立ち昇る煙を眺めながら、天龍が呆れたように笑う。

 

「イベント攻略の情報交換に、毎回こんな量の土産を持ってく鎮守府なんて、ここくらいだぜ?」

「でも、そのおかげで助かってるしなあ」

 

 提督はグラスを傾けながら、ゆっくり肩を回した。

 

「攻略情報って、結局は人付き合いの延長なんだよ。美味しいご飯とお酒があると、みんな色々教えてくれる」

「……おっさん臭ぇ発想だな」

 

 そんな軽口を叩いているうちに、燻製器の隙間から、食欲を刺激する燻製香が漏れ始めた。

 

 天龍は鼻をひくつかせると、ニヤリと笑った。

 

「で、味見役は当然オレだよな? しょうがねぇなぁ。味見は重要任務だからな」

 

 

 道中の事故率を下げるため、艦隊には航空巡洋艦と先制雷撃ができる阿武隈を入れ、さらに基地航空隊の支援も道中に出す。

 

 考えてみれば単純だが効果的な作戦を、他の鎮守府の艦娘が教えてくれたおかげで、輸送作戦は非常に安定するようになり、占守(しむしゅ)との邂逅にも成功した。

 

 お礼の美味しい燻製をお届けするため、提督は連日、燻製作りにいそしんでいる。

 

 何だか間違った方向の努力を重ねつつ、この鎮守府も大規模作戦に全力で挑んでおります。




ゴールデンウィーク中に前段作戦と掘りまで終わらせたいです。
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