必ず作品紹介のタグと前書きをお読みになってから読み進めて下さい。
読まずにご意見を言われても、当方一切関知するつもりはありません。
なんとか文字数を節約したものの、5,000文字をきることならず……!
これからも5,000~10,000文字くらいで投稿することになると思います。
持病持ちなので体調と相談しながらになりますが。
タイトル意訳:がっかりさせんなよ?
【第1話】Don't let me down
~ Side [TAKAGI]
いやはや……彼女もとんでもない逸材を連れてきたものだ。
確かに私は、彼女のその目に……人の持っている、アイドルとしての才能を看破する眼力に目をつけてプロデューサーとしてスカウトした。
正直彼女はおそらく、プロデューサーとしてよりもアイドルとしてスカウトした方が、その才能が安定する人物だとは思う。快活で愛想も良く、少し内気気味だが、それもそういった性格を好む層からは一定の支持を受けるコトだろう。当然ヴィジュアルなどはどこにも不足がない。ただし、それは特化した
それは悲しいかな、つまるところある程度の実力があれば誰でも良いと言うことになってしまうからだ。
だがしかし、ティンと来てしまったのだ。何かを見通すような彼女の瞳に。気付いた時には私は彼女に声を掛けていた。
そして――本日今日。
彼女はそれを証明して見せてくれたのだ。あの時の
それは今日の朝、次に
――まぁ、実はコレは
◆03 トッカータとフーガ ニ短調「驚愕と衝撃と感動」
「社長、あの……すみません。私……」
む? なにやら随分と緊張しているな。さては薬が効きすぎたかな?
まさかココでもうプロデューサーの仕事を辞めたいなどとは言ってこないだろうね。
「何か、大事な話かね?」
「は、はい」
ふむ……しかし、どうやらそういう事ではないようだ。目は……私が見い出したアノ目はしっかりと前を向いている。しかし、だとしたら普段、滅多に私たちに意見を言わない彼女が何を……?
「その……私が次にプロデュースするアイドルなんですが……」
「ほう?」
「紹介したい子がいるんです」
「……っ!」
私は、思わず浮きそうになった腰を抑えることに成功した自分を褒め称えたくなった。
「それは、スカウトしてきた。ということかね?」
「は、はい」
「……っっ!」
私は、思わずガッツポーズを(以下略)
そう、これだ……これを待っていたのだ。
彼女の目が、見極めが、センスが。それを十全に発揮する時を。
ただ彼女の「才能を見極める」という才能を発揮させるだけならば、彼女を養成所へと通わせてそこから選んで貰えば良いだけの話だ。しかし、それだけでは駄目だ。養成所にいる彼女たちの吟味は、彼女たちを入所させる時に既に完了する。そこからさらに優劣のついた吟味が可能かもしれないが、突出した才能を獲られる可能性はほとんど無いだろう。
そう、僕はそれでは足りないと思ったからこそ、彼女には外回りのスカウト業務を中心に行わせていたのだ。
そして今日……ついにその成果が実るのか? と、そう思っていたらだ……ね?
――「~~♪ ~~~♪」――「~~♪」――……!
……なんだコレは。
――その昔、歌姫と呼ばれ、他の追随を許さない歌い手がいた。
〝スター〟と呼ばれ、誰よりも輝き……そしてその向こう側へと到ったアイドルがいた。
そして、そういった者達は伝説となって、いつまでも人々の心に残ることとなった。
しかし、
視界から、歌い手の声以外の全ての色が消える。奇妙な言い回しだが、私の
私は、
驚きだけではない。
感情を動かされる……そう、
~ Side [KOTORI]
この歌のタイトルはなんと言ったでしょう?
歌い出す前、照れたように小さく発した声はおそらくタイトルコールだったのでしょうけど、あいにく私には声が小さすぎて聞き取れませんでした。
歌の内容は、別段特筆することのない……少年少女の願いを淡々と歌う歌。
『空を飛びたい』
子供時代に誰もが夢想すること。
それが凝った詩飾もなくただ淡々と歌詞に込められている……だけど、それが良い。
少し
そして――膝裏まであろうかという長い髪が、歌詞と曲のイメージも相俟って大きな翼を連想させ、幻視させてくれました。
大空を舞い上がり、自由自在に空を飛ぶ自分……今はそれを夢想するだけ。
そのうちに空を飛んでいるのか、海で溺れているのかわからなくなってくる。
ただの希望。ただの妄想。
それらが渾然と混じり合い、ひたすら〝
悲しみも、苦しみも、何も無い。ただただ自由な空へ…………
「すごい……」
もう、それしか言えません。
それ以上言葉にどれだけの装飾を飾ろうとも、私の数少ない
多少数奇な道筋を辿りながら、少しでも音楽に近い場所で生きようと願い……だけどおそらく、これが生まれて初めて〝本物の音楽〟と直に向き合った瞬間でした。
~ Side [AKANE]
――最初、私は反対しました。
だって、ここは
その緊張の度合はどれ程のものか……私には想像だにできません。
あの日簡単に話を纏め、向日向さんのいくつかの個人的な事情を聞いた私は、行動は早いほうが良いだろうと翌日……つまり今日。
そして社長にも向日向さんを紹介し、挨拶に到ったところで……
「ところで、君の歌だが――私にも聴かせては貰えないかね? 今、ここで」
そう、社長が言い放ったのです。
あの日、あの時と同じ、音源も伴奏もアンプもない状況。
しかしあの時と違うのは、目の前に
そう、社長は今でこそこうして若干飄々としたような態度で、小さな事務所の社長などをしていますけど、その昔は〝ワンダーモモ〟などの有名アイドルを数多く育ててきた名プロデューサーでもあったんです。向日向さんがそのことを知っているかどうかはわかりませんが。
当然、そりゃ反対しますよ。せめて心の準備と音源だけでも用意させてくれって。これが私だったら、早々に逃げ出している自信がありますからね。しかし――「どうしても」と社長に言われたら、一介の平社員にはそれ以上反対などできません。
「――わかりました」
しかし向日向さんは、そんな私の葛藤などなんのその。社長へ向かい一歩足を踏み出します。
――届くんですよね? ほんの僅か。私へと振り返ったその口に、そんな
そこからは――多少の不利などなんのその。
私の前予想を完全に覆す、予想だにしない程の向日向さんの独壇場でした。
――音源?
――状況?
――環境?
――緊張?
――……心の準備?
そんなものが何するものかと。全てを
◆04 鎮魂歌「認識のズレによる誤解と疎外」
~ Side [SAKUYA]
「…………あれ?」
歌い終わった僕が
それは一切の静寂だった。
「え~っと……あの」
社長はどこかノスタルジックな表情で、目を細めながら遠くを見つめていた。
「おーい」
事務員の音無さんは、俯き加減に微笑みながら涙をポロポロと零している。
「……小暮さん?」
これから僕の担当プロデューサーになる(筈の)小暮さんも、何故かドヤ顔で。
腕を組み、うんうんと頷きながら滝のような涙を流していた。アンタは
……なんだこのカオスな状況。
◇
結局、
「いやはや、すまないね。まさかコレほどとは思っても見なかったものだから」
後ろ髪を掻き毟りながら、照れたように社長がそう言った。
コレほどって……何の話ですか。
「そうですね。人は自らのキャパシティを超える感動に出会った時、ただ沈黙するしかなくなる
そうですが……映画とかではよくある演出ですよね。感動と驚愕に場が静まり返るなんて」
「まさか自分が体験することになるとは思わなかったがね」
社長と音無さんの2人は、なにやらほのぼのと語り合っている。
うん、なんつーか。放置しないでいただけるとうれしいかなーって。かなーって。
そうは思うも、2人の会話は止まらない。
あのフレーズがどうの、シャウトがどうの、声質がどうの……内容が僕の歌の話で、聞こえる限り悪いようには言われていないのはわかるので、それは良いのだけれど……。
「……向日向さん」
そうやって戸惑っている僕の……いつの間に後ろにいたのか、小暮さんが肩を包むようにポンポンと叩いた。
「小暮さん……」
「わかりますか?」
「わかりますかって……なにがです?」
僕がそう訊くと小暮さんは一瞬目を丸くした後、やっぱりねとでも言いたげな表情でクスクスと微笑ってみせた。
「ふふふ……ああ、ごめんなさい。向日向さんが何か可笑しいってワケじゃないんですよ」
そう言いながらも、小暮さんの笑顔は止まらない。
なんだ、最初に出会った時のドモリ癖や噛み癖はドコ行ったんです? いったん身内認定すると問題なくなるタイプなんですかね。
「あのお2人が向日向さんの歌う歌に感動しているのはわかりますよね?」
「……まぁ、それくらいは」
もう、ココまでされたら認めない訳にはいかないだろう。
だけど、それでも僕は後ろ髪を掻き毟りながら、
「――大丈夫ですよ。私は
ああ……そういえば小暮さんには簡単にだけど説明したんだったっけ。
僕が患っているいくつかの肉体的疾患および精神疾患のうち、最もやっかいなもの番付3本の指に入るのが……〝感情鈍麻〟
これは人の持つ感情のうち、いくつか……または殆ど全部が希薄になる、もしくは希薄じゃなくとも上手く表現できなくなるというもので……僕の場合〝喜怒哀楽〟で纏めると〝楽〟以外の感情が非常に希薄、またはちゃんと表現できていないらしく〝楽〟もかなり適当な感じっぽい。
自分としては殆ど自覚がないので良くわからないのがまた厄介なところだ。
「向日向さんの才能と実力が本物なのは私が保証します。……社長が認めてくれたこの目で」
ああ、そういえば小暮さんも社長にスカウトされたんだっけか。
「なら、後の問題は向日向さんの諸々の個人的事情だけです。……大丈夫。あの2人でしたら、
きっとわかってくれますよ」
そう言って、小暮さんは相変わらず視線の先でほのぼのしている社長と音無さんを見つめた。
そっか……小暮さんにとって、ココはそういう場所なんだな……。
僕にとっての〝
◇
「さて、おまたせして申し訳なかったね」
「いえ……大丈夫です」
「そうかい? ありがとう。それで、向日向咲也くん。キミのことだが……我が765プロは
キミを歓迎しよう。ようこそ我が765プロダクション・アイドル事務所へ」
……あれ? それで良いの? 正規の面接とかはナシ?
いや、無いなら無いで別に僕はかまわないんだけど……ああ、一応ここはまぁ……
「……ありがとうございます」
これが、僕がアイドルとして765プロに所属することが決まった瞬間だった。
わかってはいたことだけど……特になんの感慨もなくて、逆になんか申し訳ない。
「おや? 思っていたよりなんというか……随分と……」
「社長、そのことについてなんですが……」
おそらく、社長が僕の態度に疑問を持ったことについて補足をしに行ったんだろう。
小暮さんが社長の椅子に近づき、なにやら耳打ちを始めた。
そして、それから数分程経って……
「ふむ、なるほど……クラインフェルター症候群に感情鈍麻ね……」
「はい」
「なるほどなぁ……しかし、それなら先程の態度も致し方ないというところかな」
「……すみません」
「あ、いやなになに。別に謝ることではないよ。世の中、そういう
からね」
「はあ……」
「ただ……キミ自身がこのままではいけないと思っているのなら……考えなくてはならないコト
かもね。心に葛藤を抱いたままやっていける場所ではないから」
「そう、ですか」
「ま、老婆心ながらアドバイスというヤツだ。
……うん、そうだね。――正直、キミ程の才能を失うのは勿体無さ過ぎる」
勿体なさ過ぎる……その言葉に利己的な響きは一切含まれていなかった。この人は、本気で僕の事を、僕の将来を想って言ってくれているのか。
その言葉で、僕は……あー、駄目だもう、この感覚は……。
「……」
そんな僕を後ろから優しく見守る小暮さんがいる。視線でわかる。
この視線の感じ方は、施設の寮で寮母さんから受けるものと同じものだ。
話によれば、あまり仕事ができない人(自称)とのことだけど……こんな時僕は、この人にスカウトされて良かったと思うんだ。
「おや……? しかし、ちょっと待てよ?」
「あ、お気づきになりましたか……」
「ああ、いや、気付かいでか……では、やはり向日向くん、キミは……」
「え?」
名を呼ばれたので、何事かと視線を向け小首を傾げる。すると社長は驚愕に目を丸くして軽く頬を染めた。そして
ああ、これはもしかすると……
「ああいや、すまない……キミは、その、男性……なのかね……?」
「……あ、ハイ。そうですけ……
「男の娘! キタ――――――ッ!!?」
…………。
「えーっと……」
これを予想できていたのは、
……その声色は、緑色に包まれていた。
※ やっとシリアルに纏めることができた……っ!
僥倖……! 圧倒的僥倖……っ!
ね? シリアルですよね? シリアルに纏まってますよね?(不安)
※『空を飛びたい』
この第1話の作中で咲也が歌っている歌は〝翼をください〟という楽曲です。
(作詞:山上路夫氏、作曲・編曲:村井邦彦氏)
作中世界には本来存在しない楽曲で、咲也のオリジナル曲という設定。
ハーメルンでは現実に在る歌詞などを使ってはいけないということのようなので
こういう形で表現させていただきました。
ちなみに、同曲英語版〝I WOULD GIVE YOU ANYTHING〟も同じ様に咲也の曲として
存在しています。海外……特に英語圏で大好評らしいです。
決して「はい! タケ○プター!」ではありません(笑)
※〝ワンダーモモ〟
1987年2月にナムコから発表されたアーケードゲーム。
〝ワンダーモモ〟は舞台劇『ワンダーモモ』に出演しているアイドルとして登場。
本作は劇中劇で進行される横スクロールアクションゲームです。
2006年6月に発売された『NAMCO x CAPCOM』というSRPGでもナムコミュージアムに
呼ばれたアイドルとして出演し、ゲーム的にはプレイヤーキャラクターとして
操作することができます。
※「気付かいでか」
気づかないはずがないだろう、という意味です。
わからない方はあまりいないと思いますが、一応念のためにw
※ 緑色に包まれていた。
一体、なに事務員なんだ……。
※ ぶっちゃけ、咲也の歌唱力ってどんくらいなのよ?
ですからチートです。
そういうのが嫌いな方は今のうちに離れるが正解ですよ。
【挿絵表示】