世界の色は……   作:シアン

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皆様、こんにちは。シアンです。
他の作品をほったらかして、オリジナル作品に手を出しました。

反省はしている、でも後悔はしてない!

まあ、息抜き程度に書いてみた駄作です。
よかったら楽しんで行って下さい!


第一章:違う世界
世界の逆転


 夢を見ていた。

 

 それは、いつか思い描いていた夢。

 

 誰もが一度は抱く夢。

 

 大人になるにつれ、現実を知るにつれ淡く消えていく夢。

 

 ここではない世界、どこかにあると信じてやまなかった世界。小説でもよく描かれる世界。

 それは異世界か、はたまたパラレルワールドか。そういったものに、創作物に憧れて行きたいと願ったいつかの日の夢。

 

     貴方の望みを叶えましょう

 

 

**********************

 

 

 私は現実を、さして気にもしていなかった。

 充実しているとは言いがたいかも知れないし、満足していると言っても嘘になるけれど。現実を気に留めることはなかった。つまり、現実を気に留めるほど、不幸ではなかった。それが当たり前で、現実を恨むこともなかった。そう、あの時までは………

 

 目が覚める。何か夢を見ていた気がする。内容は思い出せない。いつもは気にならないはずのそのことが、妙に気になった。

 いつも通りの朝。六時に起きて、顔を洗って、朝食を取って。身支度をして家を出る。

 何も変わらない。

 なのに、言いようのない違和感がある。夢が思い出せないからだろうか。

 

「ふぁぁ……」

 

 あくびが出る。駅への道のりを歩きながらぼんやりと考える。

 また、一日が始まる。

 

 

**********************

 

 

 駅のホーム。何をするわけでもなくボーッとビルに反射する朝日を見つめる。

 違和感はまだ消えない。

 具体的なものは何も感じられないのに、もやもやとした気持ちが残っている。

 考えていても仕方ない。今は、学校に行くことだけを考えよう。

 

「ふぁぁ……」

 

 今日二回目のあくびをして、何の気なしに電光掲示板を見る。

 

「えっ………」

 

 そして、思わず声がもれた。

 電光掲示板が、突然文字化けし始めたのだ。表示されていた時間も、終点も、何両かも、全てが読めない字に変わっていく。

 そして、消えた。電光掲示板から光が失せた。

 周囲を見渡す。居たはずの人がいない。さっきまで、雑談をしていた女子生徒も、スマホをいじっていた中年の男性も、皆消えた。

 

「何……こ、れ…………」

 

 世界が色をなくした。自分だけが違う空間にいる。

 建物も何一つ変わり無いはずなのに、人の気配がなく無機質に感じる。

 

「はっ、はっ、はっ」

 

 呼吸が浅くなる。心臓が痛いほど脈動する。

 わからない。これが何なのかわからない。自分が何なのかわからない。

 わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない……

 そして、世界すらも崩壊しはじめた。まるで、さっきの電光掲示板のように。文字化けするように、世界が端から違うものにすり替わっていく。

 色のない世界。その中でなすすべもなく、崩壊に巻き込まれていく。

 

「あっ………」

 

 足元が消える。落ちていく、何処とも知れない場所へ。

 落ちていくとき、見たのは黒に埋め尽くされる世界。そして、それを見た瞬間背中に鈍い痛みを感じて意識を手放した。

 

 

**********************

 

 

貴方の望みを叶えましょう

 

望み?そんなものはない。願っても無駄だから、そう知ってしまったから。

 

いいえ、あるはずです。何かを願わない人など居ないのですから。

 

ないよ。あぁ、でも一つあった……

 

     こんな下らない世界から居なくなりたい

 

ならば、それを私は叶えましょう。

 

何を言ってるの……?

 

さあ、行きなさい。

 

あなたは……一体……?

 

 

**********************

 

 

 ゆっくりと、目を開ける。薄らと開けた視界に入ってきたのは、清々しい青。美しい、青だ。

 風が優しく肌を撫でる。視線を横に向ければ、美しい草花とその向こうに木々が見えた。

 身体を起こして、周囲を確認する。

 360度、木々に囲まれた空間。そこに草花が生えて、広場のようになっていた。

 再び、風が肌を優しく撫でる。どうしてここに居るのか、ここが何処なのかはわからないが、何となく落ち着けたような気がした。

 冷静になったことで、次に何をするべきかは直ぐに浮かんだ。

 取りあえず、人を探そう。そう思って、立ち上がった。服装は何も変わりなく、紺のセーラー服だった。マフラーもしっかりと巻かれていた。

 しかし、人を探そうと立ち上がったのはいいが、どこかも分からない状態で動くのは危険な気がした。

 更に言えば、ここは森の中の広場のような場所だ。ここから移動する。すなわちそれは、森に入ることを意味していた。

 正確な時刻はわからないが、太陽が傾いていないので、昼であることはわかった。森の広さもわからないので、夜までに森を出られるかわからない状態だ。しかも、サバイバルなんてしたこともない。

 かと言ってここに居ても、夜になれば森から動物が出てくるだろう。どんな動物が居るのか、わかったもんじゃない。獰猛な肉食獣なんて居たら、喰われてお終いだ。

 

「詰んでる……」

 

 何に言うわけでもなく、呟いた。

 その時だった。強い風が吹き抜けて、後ろを振り向いた。

 続いて、衝撃。左肩に鋭い痛みが奔った。尻餅をつきながら、反射的に右手で左肩を抑える。ヌルリとした感覚、更に奔る痛み。左肩から離した右手は、真っ赤に染まっていた。

 

「えっ……あ……」

 

 頭が状況を理解していない。何が起こったのか、わからない。

 

     ゴオォォォォオオオ!!

 

 聞き慣れない音に空を見上げる。

 そして、見てしまった。

 ドラゴンだ。

 羽ばたく翼、長い尻尾、細かい針のようなものが生えた顔。太陽の光を鈍く反射する身体。その全てが、誰もが思い描くであろう『ドラゴン』だった。

 そして、本能的に悟る。肩の怪我は奴が犯人だと。

 このままでは、殺される。間違いなく、殺される。

 

「い、や……」

 

 恐怖で立ち上がれず、尻餅をついたまま後ずさる。

 

     ゴオォォォォオオオ!!

 

 二度目の音。恐らく、咆吼なのだろう。それを聞いた途端、恐怖より生き延びるための本能が勝ったのか、転がるように立ち上がって走りだした。

 肩の痛みすら忘れて、ただひたすらに走った。

 森に入って、それでも走る。後から追いかけてきてるのが、感覚的に分かる。

 そして、走ることに夢中になっていて、気付けなかった。地面から飛び出していた木の根に。

 

「あっ……」

 

 一瞬の浮遊感に続いて、全身に痛みが奔る。今更ながらに、肩の痛みが思い出されて、動けなくなる。

 

     ゴアァァァァァァアアア!!!

 

 勝利の雄叫びなのか、更に吼えるドラゴンが背中に迫って来ているのを感じた。

 もう、無理なんだな……

 恐怖と、絶望と、痛みが混ざり合って、視界が濁った。

 そうして、意識がとぎれた。

 

 

──────────────────────

 

 

 木々の間に作られた、道。そこを武器を持った一行は歩いていた。馬が引っ張る荷台には、金貨や悪魔から剥ぎ取った爪、宝石などが入っていた。

 

「いやー、今日も大収穫だったな!」

 

 そう言って、ニヒヒと荷台の端に座る、バンダナを頭に巻いた少年が笑う。

 

「キール、行儀が悪いぞ」

 

「まぁまぁ。いいじゃんか、ガリル」

 

 キールと呼ばれた少年は、注意を軽く受け流す。

 ガリルと呼ばれた大男は、もう慣れたのかそれを気にする風もなく歩く。

 

「しっかし、どうしたもんかね。あの洞窟、悪魔まで湧いてんじゃないか。奥にでっかい親玉がいてもおかしくないぜ?」

 

「そうね……一度、しっかり攻略し……」

 

 弓を持った青年が、言った言葉に馬の手綱を持ちながら、先頭を歩く女性が答える。その時。

 

     ゴアァァァァァァアアア!!!

 

「っ!? 何事!?」

 

 女性が辺りを警戒する。

 

「違う!あれだ!」

 

 先程、ガリルと呼ばれた大男が空を指さす。そこには……

 

「なっ!? ドラゴン!?」

 

 先程のキールと呼ばれた少年が、声を上げる。

 

「おいおい……拙いんじゃないの、これ……」

 

 弓を持った青年の一言の意味はその場の誰もが分かっていた。ここの直ぐ近くに自分たちの住む街があるのだ。

 そうしている間に、ドラゴンは森の中に降下していく。

 

「全員、行くわよ!」

 

 そう言って駆け出す女性。その後を、他の三人が追う。

 木の枝を使って、森の中を踏破していく。ドラゴンが降下した位置は幸い、そこまで離れていない。

 そして、木々の間のからドラゴンを確認できた時、一行に衝撃が奔る。

 ドラゴンの前に少女が居たからだ。

 少女はドラゴンと正面に向き合って立っている(・・・・・・・・・・)

 

(拙い!)

 

 何があったのかは知らないが、あのままでは死んでしまう。

 しかし、ドラゴンが何を思ったか後ずさりをした。

 少女が、その分前に出る。

 更に後ずさる、ドラゴン。

 更に前に出る、少女。

 

     ゴオォォォォオオオ!!

 

 しかし、ドラゴンがその顎を開き少女を喰い殺そうとする。

 

(っ間に合わない!)

 

 そして、次の瞬間。

 

 ドラゴンの眼が潰されていた。

 

 少女の右手が肘辺りまで、ドラゴンの眼に埋没していた。

 少女はいつの間にか体を横にずらして、完全に口から避けていた。

 

     ギャォォォォォォォォオオオ!!? 

 

 少女が眼から勢いよく腕を引き抜いた途端、眼から血を流してドラゴンが吼えながら、後退する。

 その分少女が更に更に前に出ると、ドラゴンは翼を広げて空へと飛び立った。

 全員、動けなかった。何が起こったのか、頭では理解できていてもそれを把握するのが難しかったのだ。

 糸が切れたように、地面に少女が倒れる。その時になって、やっと体が動かせた。

 倒れた少女の体を近づいて、起こす。

 見慣れない服を着て、左肩と右腕を血で染めた、栗色の長い髪の少女だった。

 

 




最後まで呼んで下さった貴方に感謝をば。
ありがとう御座いました!
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