世界の色は…… 作:シアン
他の作品をほったらかして、オリジナル作品に手を出しました。
反省はしている、でも後悔はしてない!
まあ、息抜き程度に書いてみた駄作です。
よかったら楽しんで行って下さい!
世界の逆転
夢を見ていた。
それは、いつか思い描いていた夢。
誰もが一度は抱く夢。
大人になるにつれ、現実を知るにつれ淡く消えていく夢。
ここではない世界、どこかにあると信じてやまなかった世界。小説でもよく描かれる世界。
それは異世界か、はたまたパラレルワールドか。そういったものに、創作物に憧れて行きたいと願ったいつかの日の夢。
貴方の望みを叶えましょう
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私は現実を、さして気にもしていなかった。
充実しているとは言いがたいかも知れないし、満足していると言っても嘘になるけれど。現実を気に留めることはなかった。つまり、現実を気に留めるほど、不幸ではなかった。それが当たり前で、現実を恨むこともなかった。そう、あの時までは………
目が覚める。何か夢を見ていた気がする。内容は思い出せない。いつもは気にならないはずのそのことが、妙に気になった。
いつも通りの朝。六時に起きて、顔を洗って、朝食を取って。身支度をして家を出る。
何も変わらない。
なのに、言いようのない違和感がある。夢が思い出せないからだろうか。
「ふぁぁ……」
あくびが出る。駅への道のりを歩きながらぼんやりと考える。
また、一日が始まる。
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駅のホーム。何をするわけでもなくボーッとビルに反射する朝日を見つめる。
違和感はまだ消えない。
具体的なものは何も感じられないのに、もやもやとした気持ちが残っている。
考えていても仕方ない。今は、学校に行くことだけを考えよう。
「ふぁぁ……」
今日二回目のあくびをして、何の気なしに電光掲示板を見る。
「えっ………」
そして、思わず声がもれた。
電光掲示板が、突然文字化けし始めたのだ。表示されていた時間も、終点も、何両かも、全てが読めない字に変わっていく。
そして、消えた。電光掲示板から光が失せた。
周囲を見渡す。居たはずの人がいない。さっきまで、雑談をしていた女子生徒も、スマホをいじっていた中年の男性も、皆消えた。
「何……こ、れ…………」
世界が色をなくした。自分だけが違う空間にいる。
建物も何一つ変わり無いはずなのに、人の気配がなく無機質に感じる。
「はっ、はっ、はっ」
呼吸が浅くなる。心臓が痛いほど脈動する。
わからない。これが何なのかわからない。自分が何なのかわからない。
わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない……
そして、世界すらも崩壊しはじめた。まるで、さっきの電光掲示板のように。文字化けするように、世界が端から違うものにすり替わっていく。
色のない世界。その中でなすすべもなく、崩壊に巻き込まれていく。
「あっ………」
足元が消える。落ちていく、何処とも知れない場所へ。
落ちていくとき、見たのは黒に埋め尽くされる世界。そして、それを見た瞬間背中に鈍い痛みを感じて意識を手放した。
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貴方の望みを叶えましょう
望み?そんなものはない。願っても無駄だから、そう知ってしまったから。
いいえ、あるはずです。何かを願わない人など居ないのですから。
ないよ。あぁ、でも一つあった……
こんな下らない世界から居なくなりたい
ならば、それを私は叶えましょう。
何を言ってるの……?
さあ、行きなさい。
あなたは……一体……?
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ゆっくりと、目を開ける。薄らと開けた視界に入ってきたのは、清々しい青。美しい、青だ。
風が優しく肌を撫でる。視線を横に向ければ、美しい草花とその向こうに木々が見えた。
身体を起こして、周囲を確認する。
360度、木々に囲まれた空間。そこに草花が生えて、広場のようになっていた。
再び、風が肌を優しく撫でる。どうしてここに居るのか、ここが何処なのかはわからないが、何となく落ち着けたような気がした。
冷静になったことで、次に何をするべきかは直ぐに浮かんだ。
取りあえず、人を探そう。そう思って、立ち上がった。服装は何も変わりなく、紺のセーラー服だった。マフラーもしっかりと巻かれていた。
しかし、人を探そうと立ち上がったのはいいが、どこかも分からない状態で動くのは危険な気がした。
更に言えば、ここは森の中の広場のような場所だ。ここから移動する。すなわちそれは、森に入ることを意味していた。
正確な時刻はわからないが、太陽が傾いていないので、昼であることはわかった。森の広さもわからないので、夜までに森を出られるかわからない状態だ。しかも、サバイバルなんてしたこともない。
かと言ってここに居ても、夜になれば森から動物が出てくるだろう。どんな動物が居るのか、わかったもんじゃない。獰猛な肉食獣なんて居たら、喰われてお終いだ。
「詰んでる……」
何に言うわけでもなく、呟いた。
その時だった。強い風が吹き抜けて、後ろを振り向いた。
続いて、衝撃。左肩に鋭い痛みが奔った。尻餅をつきながら、反射的に右手で左肩を抑える。ヌルリとした感覚、更に奔る痛み。左肩から離した右手は、真っ赤に染まっていた。
「えっ……あ……」
頭が状況を理解していない。何が起こったのか、わからない。
ゴオォォォォオオオ!!
聞き慣れない音に空を見上げる。
そして、見てしまった。
ドラゴンだ。
羽ばたく翼、長い尻尾、細かい針のようなものが生えた顔。太陽の光を鈍く反射する身体。その全てが、誰もが思い描くであろう『ドラゴン』だった。
そして、本能的に悟る。肩の怪我は奴が犯人だと。
このままでは、殺される。間違いなく、殺される。
「い、や……」
恐怖で立ち上がれず、尻餅をついたまま後ずさる。
ゴオォォォォオオオ!!
二度目の音。恐らく、咆吼なのだろう。それを聞いた途端、恐怖より生き延びるための本能が勝ったのか、転がるように立ち上がって走りだした。
肩の痛みすら忘れて、ただひたすらに走った。
森に入って、それでも走る。後から追いかけてきてるのが、感覚的に分かる。
そして、走ることに夢中になっていて、気付けなかった。地面から飛び出していた木の根に。
「あっ……」
一瞬の浮遊感に続いて、全身に痛みが奔る。今更ながらに、肩の痛みが思い出されて、動けなくなる。
ゴアァァァァァァアアア!!!
勝利の雄叫びなのか、更に吼えるドラゴンが背中に迫って来ているのを感じた。
もう、無理なんだな……
恐怖と、絶望と、痛みが混ざり合って、視界が濁った。
そうして、意識がとぎれた。
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木々の間に作られた、道。そこを武器を持った一行は歩いていた。馬が引っ張る荷台には、金貨や悪魔から剥ぎ取った爪、宝石などが入っていた。
「いやー、今日も大収穫だったな!」
そう言って、ニヒヒと荷台の端に座る、バンダナを頭に巻いた少年が笑う。
「キール、行儀が悪いぞ」
「まぁまぁ。いいじゃんか、ガリル」
キールと呼ばれた少年は、注意を軽く受け流す。
ガリルと呼ばれた大男は、もう慣れたのかそれを気にする風もなく歩く。
「しっかし、どうしたもんかね。あの洞窟、悪魔まで湧いてんじゃないか。奥にでっかい親玉がいてもおかしくないぜ?」
「そうね……一度、しっかり攻略し……」
弓を持った青年が、言った言葉に馬の手綱を持ちながら、先頭を歩く女性が答える。その時。
ゴアァァァァァァアアア!!!
「っ!? 何事!?」
女性が辺りを警戒する。
「違う!あれだ!」
先程、ガリルと呼ばれた大男が空を指さす。そこには……
「なっ!? ドラゴン!?」
先程のキールと呼ばれた少年が、声を上げる。
「おいおい……拙いんじゃないの、これ……」
弓を持った青年の一言の意味はその場の誰もが分かっていた。ここの直ぐ近くに自分たちの住む街があるのだ。
そうしている間に、ドラゴンは森の中に降下していく。
「全員、行くわよ!」
そう言って駆け出す女性。その後を、他の三人が追う。
木の枝を使って、森の中を踏破していく。ドラゴンが降下した位置は幸い、そこまで離れていない。
そして、木々の間のからドラゴンを確認できた時、一行に衝撃が奔る。
ドラゴンの前に少女が居たからだ。
少女はドラゴンと正面に
(拙い!)
何があったのかは知らないが、あのままでは死んでしまう。
しかし、ドラゴンが何を思ったか後ずさりをした。
少女が、その分前に出る。
更に後ずさる、ドラゴン。
更に前に出る、少女。
ゴオォォォォオオオ!!
しかし、ドラゴンがその顎を開き少女を喰い殺そうとする。
(っ間に合わない!)
そして、次の瞬間。
ドラゴンの眼が潰されていた。
少女の右手が肘辺りまで、ドラゴンの眼に埋没していた。
少女はいつの間にか体を横にずらして、完全に口から避けていた。
ギャォォォォォォォォオオオ!!?
少女が眼から勢いよく腕を引き抜いた途端、眼から血を流してドラゴンが吼えながら、後退する。
その分少女が更に更に前に出ると、ドラゴンは翼を広げて空へと飛び立った。
全員、動けなかった。何が起こったのか、頭では理解できていてもそれを把握するのが難しかったのだ。
糸が切れたように、地面に少女が倒れる。その時になって、やっと体が動かせた。
倒れた少女の体を近づいて、起こす。
見慣れない服を着て、左肩と右腕を血で染めた、栗色の長い髪の少女だった。
最後まで呼んで下さった貴方に感謝をば。
ありがとう御座いました!