東方新記伝   作:黒鉄球

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 黒鉄球です。前後編に割れてます。





第三十六話 呼ばれて行ったら……

 

 

 

 

 

 

 女の子という生き物は色々なことに気を使う。髪だったり肌だったり服装だったり。例を上げるとキリがないと思うのは多分俺だけじゃないはず。俺は寝癖なんて気にしないし肌荒れとかもどうにかなると思ってるし部屋に至ってはそこそこ整理されていれば気に留めることもない。料理もそうだ。あまり味にうるさいとは思わないしかなり適当に作ってる。心を込めるというより量さえあればという感じだ。だが女子はどうだろうか。恐らくそんな事はない。細かいところを気にして作っていたりしてるはずだ。つまり何が言いたいのかと言うと……。

 

 皐月「料理の作れる女の子って魅力的だよな。」

 

 霖之助「来て早々何を言ってるんだい皐月君。それに僕は半妖だからご飯は食べなくてもなんとかなるしその感覚は少し分からないかな。」

 

 いつも通りの口調でいつも通りにカウンター席で本を読んでいる霖之助。その手元には小説があった。実は今香林堂に遊びに……と言うのは嘘で本当は拾った道具の査定に来ている。ドラム式のタイムマシ………じゃなくて洗濯機や明治時代に何者かが所持していたであろう逆刃刀……では無く懐刀、更には輪っかで有名な爽子で使用されたビデオデッキ等の説明……まぁ要は俺の知識を使って手伝っているのだ。しかもバイト代を出してくれると言うのだから手伝わない理由がない。霖之助マジ神様。

 

 皐月「なんでぇつまんねぇの。つーかお前は料理とか出来んの?」

 

 霖之助「僕かい?まぁ一通りの料理は作れるよ。ただ皐月くんみたいに美味しく作れるわけじゃないけどね。」

 

 皐月「俺は料理本とか見て適当に作ってただけなんだけど。」

 

 実際本当に適当だ。見て同じものを作っててそれを覚えただけに過ぎないのだ。別に何処かのお食事処の息子でもなけりゃゴッドタンを持ってるわけでもないし引き出しもない。ネット上に載ってるレシピをそのままコピってるだけなのだ。

 

 霖之助「それでも君の料理は美味しいよ。この前の宴会の時もいくつか出してただろ?」

 

 皐月「俺の飯ってそんなに分かりやすい?」

 

 霖之助「君のは料理人も顔負けだと思うよ。」

 

 それはない……と言いたいけど現に霊夢や魔理沙からの評価は高いし咲夜からの得点も高く教えてくれとたまに言われる。そんな美味い?俺の料理。

 

 皐月「そういや俺霊夢と咲夜と妖夢以外の手料理を食べたことが無い。」

 

 霖之助「十分食べてるじゃないか。」

 

 いやそうは言っても霊夢は同居人だからたまに作ってもらってるし咲夜は紅魔館に行った時に料理を振る舞ってくれるし妖夢はこの前の宴会で作ってたのを食ったし……他のみんなはどうなんだろうか。

 

 皐月「気にならない?」

 

 霖之助「あんまり。でも魔理沙のはなんだか食べたことがあるよ。」

 

 皐月「キノコだろ?」

 

 霖之助「キノコだよ。」

 

 あ、今なんか遠い目したよ。キノコ尽くしでウンザリしちゃったんだな察したよ。でもそれだけなら魔理沙の料理の腕はそこそこ良いってことになるな。気になるかも。とか何とかは考えていると店のドアが開く音がした。カランカランと音がなりその奥には………。

 

 咲夜「やっと見つけたわ皐月。」

 

 咲夜がいた。いつも通りの凛としたメイド服姿でそこにいた。おいちょっと待て汗一つかいてないのはどういう事だ。今日はかなり暑い日だぞ……。さすが完璧(瀟洒な?)メイド長、やることが鬼がかってる。そのうち額から紫色の角生やしたり鎖付き棘鉄球とか使うんじゃないかな。つーか「やっと見つけた」ってどういう事?俺に用でもあったのか。

 

 皐月「咲夜いらっしゃい。俺に何の用だ?」

 

 咲夜「ちょっと紅魔館に来て欲しいの。霊夢や魔理沙も居るからお願い出来るかしら。」

 

 皐月「理由になってないけど暇だしいいよ。査定とかは終わってるし。つーわけでいいかな霖之助。」

 

 一応一言断りを入れておく。なんか悪いし。

 

 霖之助「構わないよ。報酬は後日払うから行ってくるといいよ。」

 

 皐月「わりぃな。んじゃ行こうぜ咲夜。」

 

 咲夜「えぇ。それではご機嫌よう。」

 

 かくして俺は理由は分からないが紅魔館へ行くことになった。何だろう凄く嫌な予感がするんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霖之助「人気者だね彼は。さて、僕は僕の仕事をしないとね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はい場所は変わって紅魔館内部、食堂でございまする。何も聞かされてないまま食堂とか頭可笑しいだろ。別に誕生日でもなけりゃ宴会というわけでもない。そもそも理由を隠す意味が分からない。咲夜に説明を求む。

 

 皐月「なぁなんで俺は座らされてんの?」

 

 咲夜「………ごめんなさい。」

 

 皐月「何今の間!?怖いんだけど!ごめんなさいって何!?」

 

 咲夜「実はお嬢様が「皐月に料理を振る舞うわ!」っていきなり言い出して……。それで何故か紅魔館で私以外で料理勝負に……。」

 

 かなり申し訳なさそうな顔してるよ。自分を責めないでもらいたい所だ。レミィの奴相変わらず突拍子も無いこと言い出すよね。それに従うこいつも大概だが。

 

 皐月「そんで魔理沙たちは?」

 

 咲夜「厨房よ。一緒に参加してるわ。」

 

 だからあいつら……。まぁいいや、丁度腹も減ってたし魔理沙の料理の腕も気になってた所だ。まぁ問題なのはレミィとフランとパチェかな?アイツら料理した事あんのかどうか謎なんだよな。

 

 レミィ「待たせたわね!」

 

 勢い良く扉を開けるカリチュマの塊ことレミリア・スカーレット。その後ろからフラン、パチェ、こあ、美鈴、魔理沙、霊夢、アリスと順番に入ってきた。アリスも来てたのかよ……。本当今日はカオスだな。つーかなんで料理対決風?

 

 皐月「呼ばれてきて見ればなんだこれ食戟?何でこんなことになったんだ。」

 

 パチェ「知らないわよ。私は巻き込まれただけだし。」

 

 マジご愁傷様ですパチュリー様。まぁ予想は実はついてる。大方レミィとフランのどっちが上手に作れるか!みたいな雰囲気になってどうせならって事で紅魔館全員参加にして偶然居合わせた霊夢たちが巻き込まれたってとこだろうな。

 

 美鈴「それがお嬢様と妹様のどっちが上手に作れるかって話になりましてどうせならみんなでやろうって事で私達も参加させられてそこに偶然居合わせた霊夢さん達も巻き込まれたって感じです。」

 

 皐月「何その台本読みました感。まぁいいや。それで……俺に優劣をつけろと?」

 

 レミィ「そう言うことよ。遠慮はいらないわ。思う存分私を褒めなさい。」

 

 皐月「そういう事言うからカリチュマって呼ばれるんだよ……。カリスマを保てないのかこのお嬢様は……。」

 

 レミィ「なんですって!」

 

 魔理沙「まぁまぁ落ち着けよレミリア。とっとと始めようぜ。」

 

 はい、そんなこんなで始まりました食戟のなんたら。既に作ってあるみたいだからそれ食って感想言うだけのシンプルなルール。因みに審査員は俺と咲夜らしい。何故かプルプル震えてたけどどうしたんだろう。誰かに会いたくなったのかな。

 

 皐月「あ、そういえば料理したことないのって誰?」

 

 ここで一番重要な質問を繰り出す。これさえ知っておけば食うときの覚悟が決まるからな。気を保てる気がする。

 

 レミィ「ないわ!」

 

 フラン「偶に美鈴とお姉様に作ってるよ!」

 

 パチェ「ないわ。」

 

 こあ「お菓子くらいなら作れますけど……。」

 

 美鈴「中華料理を少々………。」

 

 霊夢「私はたまに作ってるでしょ?ていうかあんたは知ってるでしょうが。」

 

 アリス「私は毎日作ってるわ。」

 

 魔理沙「きのこ料理なら負けないぜ!」

 

 う〜んなんか一人だけ特定の食材しか使ってないような気もするなぁ誰とは言わないけど。どうしようちょっと不安だ。特にスカーレット姉妹とパチェ。レミィとパチェは無いって言ってたしフランに至っては何故か美鈴とレミィが青ざめたしすげぇ不安。

 

 皐月「そいでトップバッターは誰ぞ。」

 

 レミィ「もちろん私よ!」

 

 皐月「いきなり罰ゲームか。」

 

 レミィ「どういう意味よ!」

 

 そのままの意味……なんて言ったら流石に咲夜にぶっ殺されそうだから口には出さない。いやこの時点でレッドゾーンだと思うけど手を出さないって事は少なからずそう思ってるって事だ。まぁでも年長者だし作った事はなくても心得くらいはあるだろ。

 

 レミィ「刮目しなさい!生姜焼きよ!」

 

 ………まさかの和食。てっきりヨーロピアンなものが来るかと思ったぜ。中華喫茶では無いので勘違いしない事。

 

 皐月「意外と普通なのな。んじゃいただきます。」

 

 咲夜「頂きますお嬢様。」

 

 俺は箸で重ね折りをして一口で食べ、咲夜は手堅くナイフとフォークで食べた。

 

 皐月「…………」

 

 レミィ「ど、どうかしら。」

 

 咲夜「美味しゅうございますお嬢様。」

 

 レミィ「よ、よかっ……じゃなくて当然よ。私が作ったんだもの。」

 

 不安そうな顔から一転してカリチュマを取り戻したらしい。いや、美味しいんだけど普通なんだよなぁ。まぁでも……。

 

 皐月「初めてにしちゃいい方なんじゃないかな。」

 

 生姜もいい感じに効いてるし味もそんなに濃くない。体にはまぁ悪くはないな。なんにせよ第一関門突破だな。

 

 皐月「そんで次は誰だ。」

 

 パチェ「私よ。」

 

 ボスキャラ二人目来るの早いです。何いきなりアマツマガツチとアルバトリオン狩猟させに来てんだよ殺す気か。取り敢えず博麗神社の神様……誰か知らないけど祈っとくか。

 

 咲夜「パチュリー様は一体何をお作りになられたのですか?」

 

 パチェ「シチューよ。」

 

 皐月「………料理は「初めてよ。」

 

 ふっ、終わった。初めてなのになんで手の込んだ料理を作るんだ。絶対ヤバいやつやん俺死ぬんとちゃう?

 

 パチェ「何よその顔は。安心しなさい。ちゃんと本の通りに作ったから不味くはないはずよ。」

 

 皐月「そういうのって隠すもんじゃないの?」

 

 パチェ「隠してたってしょうがないでしょ。初めて料理したんだから。」

 

 それの証拠に指には絆創膏がいくつも貼ってあった。まさかとは思ったけど切ったのか。巻き込まれただけなのに何でそこまでするかな。女の子はよく分からんな。

 

 咲夜「それではいただきます。」

 

 皐月「いただきます……。」

 

 見た目は………まぁ普通のシチューだ。人参、ブロッコリー、鶏肉、ジャガイモが入っている至ってシンプルな一品だ。唯一違うのは全て一から作っているということ。外の世界にあるルーとか使ってないってとこだ。絶対時間かかっただろ。それより味だ。果たして………。

 

 咲夜「お、美味しいですわ……。」

 

 皐月「ほ、ほんまや……。パチェ本当に料理初めて?それにしては完成度高いんだけど。」

 

 いや本当に完成度たけぇなおい。具材一つ一つの味がしっかりしてるしチーズが入ってるのかとろみが増してる。一体どんな本読んだんだこいつ。

 

 パチェ「だから言ったでしょ。本の通りに作ったって。」

 

 皐月「いやこれほんとにうめぇよ。俺ちょっとパチェの事ナメてたわ。」

 

 とまぁ褒めちぎったところで次行こう。顔赤くしてるけど気にせず次行こう。

 

 こあ「次は私ですね。といってもそんな大したもの作ってませんけど。」

 

 こあの手には黒い茶碗が。これは………。」

 

 皐月「味噌汁か。……!?」

 

 咲夜「ど、どうしましたか?開けた途端……。」

 

 だって中に……アサリが!!アサリが入ってたんだぞ!俺貝食えないんだよ!つーか幻想郷に海はないはずだぞなんで……って紫さんだよな。あの人輸入しやがったな。思わぬ伏兵だが……食わない訳にはいかない………。後で吐くかもしれんが………ここで食わねば男じゃない!

 

 皐月「いや何でもないいただきます。」

 

 咲夜「なぜ棒読み……。でもこれ美味しいですよ。魚介の出汁が効いてて。」

 

 俺にとっては地獄の入り口だね。そのままdeath and reverseするね。俺は一気に飲み干した。身?そんなものは高速で咲夜の器に放り込んだわ。

 

 皐月「そうだな。磯の香りとかしてていいよねほんと美味かったわ次行こうね。」

 

 こあ「なるほど皐月さんは貝が苦手なんですね。」

 

 皐月「何故バレた!?」

 

 霊夢「いや普通バレるわよ。そんな顔してたら……。」

 

 どうやら表情に出てたらしい。これは申し訳ない事をした。だが………。

 

 皐月「出汁だけなら大丈夫なんだよ。それに味噌もあったし……吐かないから!」

 

 こあ「が、我慢しなくてもいいですよ?」

 

 皐月「ダイジョウブオレハカナイ。」

 

 咲夜「早く次出しましょうか。皐月が吐く前に。」

 

 吐かねぇっつってんだろ信じやgおろロロロロロロとはならないから!あ、やべぇなんか来た……。追い打ちをかけるようになんか来た。

 

 魔理沙「次は私が行かせてもらうぜ!キノコのスープだ!」

 

 目の前には灰色の……多分マッシュルームスープだろうが……なんかオーラが見える。黒いオーラが。俺の第六感が告げてる。食うな、と。でもそんなことしたら某美食屋に連続釘パンチされちゃうから感謝を込めて食べないと………。

 

 咲夜「……魔理沙一体何入れたの?」

 

 聞きやがったこいつ!知らない方が良いに決まってんだろ!プロテインとか入ってたらどうすんだ!絶対食う気無くすだろ!

 

 魔理沙「?きのこを数種類と胡椒と……あとなに入れたっけ?色々入れたぜ。」

 

 この野郎きのこ入ってりゃ良いってもんじゃねぇぞ。こいつやばいわ。マジポイズンクッキングだわ。ジャイアンシチューだわ。でも食わないと……釘パンチがくる…!

 

 皐月「い、いただきます………。」

 

 咲夜「いただきます……。」

 

 魔理沙のスープを口に運んだ瞬間意識が途絶えた。ほんと何入れたのこの子………。酸味と辛味、苦味が同時に来た上なんか得体の知れない食感が………ぐはっ。

 

 霊夢「さ、皐月!?大丈夫!?」

 

 美鈴「うわぁ!咲夜さんも!だ、大丈夫ですか咲夜さん!?」

 

 魔理沙「?そんな美味しかったのか?」

 

 霊夢「逆よばか!皐月起きなさい!皐月!」

 

 

 

 

 

 

 

 




 



次回 : 第三十七話 呼ばれて行ったら地獄でした



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