この小説はブログでも載せていて、そっちは黒曜編が終わって今リング争奪戦です。そちらを読んでいただいてもいいですが、これからのものよりも地の文がめっきり減ります。
一言でいえば、これ以上の駄文です!
なるべくならば、こちらで気長に待っていてください……。
それではどうぞ。
第1話 出会い
深い森。そこにある一本の道とは到底言えないような道。それは幅1mもなく、舗装されているわけでもない。石がごつごつとあり、木の根が侵入している。
そして、この道は一体どこを通っているのか、一回急な坂を登ったと思いきや今度はすぐに急な下り坂。ただでさえもつらいというのに、猛獣の唸る声、動く音が道のわきから聞こえてくる。一歩間違えれば数秒後には彼らのお腹の中へと入っていることだろう。
そのあまりの不気味さ、あまりのおぞましさ、あまりの恐ろしさにこの道はこう呼ばれている、“魔女の道”と。そして、この道の終点には、世にも恐ろしい人食い魔女の館がある、と言い伝えられている。
そして、そんな魔女の道を歩く一人の男がいた。その男はがたいが良いが、何やら大きな毛布を持っていて両手がふさがっている。
そんな悪条件の中、男は苦も無く歩いている。自身の背丈以上のクマを蹴り一つで抑える。毒蛇は踏みつぶす。これだけやっても息が切れたりはしない。並大抵とは言えない運動神経だ。
こうして高低の激しい、険しい道を進んでいくと、いきなり道幅が広くなった。そして先にあるのは気味の悪い、大きな漆黒の門。日が陰り始めているせいか、その不気味さはより一層、引き立てられている。
門の先に見えるのは古びた屋敷。枯れたいばらの木。生え放題のツタ。どこかが欠けていて、ひびの入った銅像。“魔女の館”だ。
男は大きな黒い門を足で蹴り開ける。そして、一瞬もためらわず、門の向こうへ足を踏み入れた。その、瞬間――――
男の目の前は光であふれる。視界に広がるのは先ほどまでの廃墟ではない。真っ白の壁。外の光を反射して輝いている窓。天まで届くのではないかと思うほど高い建物。道はきれいに舗装され、左右には青々とした緑。
実はここはCEDEF本部。そして、この男の名を沢田家光と言い、CEDEFのボスである。今までの危険で妖しげな道は侵入者や一般人をここに近寄らせないようにするためのものだ。
勿論、ここ本部にいる者たちもあの山道を通ってこなければここに来ることはできない為、かなり鍛えられた強者たちが集まっている。
そして、外から見えた不気味な館はそんな強者ぞろいの本部の一員が強い幻覚を作ってそう見せているだけのことである。
家光は先ほどとは違う、歩きやすい道を進んで行って建物の玄関で立ち止まった。
暗証番号、指紋認証を行うと自動的に門が開く。ここ、CEDEF本部は最新鋭の技術の宝庫でもあるのだ。
ロビーを歩いている途中、端正な顔立ちの女性が家光に近づいてきた。
「親方様、お帰りなさいませ」
女性はそう言ってお辞儀をする。そんな女性の手にはたくさんの書類の山。忙しいのに自分にわざわざ声をかけに来たのかと思い家光は今まで引き締めていた顔を緩めた。
「お疲れ様、オレガノ。ただいま。留守中、何もなかったか?」
「はい、特に異常は」
半ばお決まりのようになっていたやり取りをした2人。いつもならばここで解散だ。
しかし、オレガノには気になることがあった。つい、視線が家光が両手に持っている毛布に行ってしまう。そして、その毛布から漏れる微かな生き物の気配がより一層謎を深めていく。
「ん?これが気になるのか?」
オレガノの視線に気が付いた家光は毛布を持ち直してオレガノの方に向ける。
「親方様、それは一体なんですか?」
家光はそれを聞くなり待ってましたと言わんばかりに笑って、「これだよ」と言って毛布を広げる。その中にいたのは……
「黒髪の……少年?…………ってこの子ひどいケガをしてるじゃないですか!応急処置はしてあるみたいですけど……」
そう、中にいたのは10歳前後の黒髪の少年。全身傷だらけでぐったりとしている。
ほんの少し慌てるオレガノに家光は落ち着かせるよう、笑って言った。
「そのとうりだ、オレガノ。な~に、心配しなくても命に別状はない。とはいえ、ほっといていいケガじゃないから至急医務室を用意してくれ」
上の者がどっしりと構えておけば部下は無用な心配を抱かない、というがまさにその通りでオレガノはすぐに気持ちを落ち着かせていつも通りのきりっとした表情に変わる。
「分かりました、親方様」
オレガノはすぐさま医務室の方に走っていった。家光はその様子を見て、また仕事を増やしてしまったと罪悪感にかられつつ、ゆっくりと歩いて行く。
今走って行ったところで医務室の準備は出来ていない。早くついてしまえば、逆にオレガノを急かしてしまう。
不意に、毛布の中で少しうめく声が聞こえた。おそらく覚醒し始めているのだろう。家光は毛布をあまり揺らさないようにしながら白い、長い、単調な廊下を歩いて行った。
「しかし、よく寝てますね、この子。ところで親方様、この子どうしたんですか?」
一通りの準備が整い、少年をベッドに寝かせて落ち着いたところでオレガノは少年を見ながら今まで気になっていたことを質問した。
ここ、CEDEFに来た以上それ相応の理由があるはずである。
「ん~、まぁ諸事情でな。実はまだ名前すら知らなかったりする」
“諸事情”と言ってごまかされたが、家光がこう言うときはかなり重要な案件でそう易々と言っていいようなことではないとオレガノは知っている。だから、深くは追及しない。それが良い部下というものだとオレガノは思っているのだ。
「そうでしたか。しかしきれいな黒髪ですね。漆黒、とでもいうべきか…」
そういって彼の黒髪を撫でる。さらさらで全くいたんでいない、癖のない髪。さわっていてとても心地がいい。
ぐしゃぐしゃと撫でたわけではないのだが,繰り返し撫でていた所為か、少年は少し体を動かして目を開けた。
「ん……………、ここは…」
少年の視点はまだ合っていないようで、上下左右に虚ろ虚ろと琥珀色の瞳が動いている。
「よ~、起きたか?ここはCEDEFだ。安心してかまわないぞ」
声が聞こえる方向に少年は顔を向ける。そして、家光に焦点が合った瞬間、少年の目が鋭く光る。家光をきつく睨んだのだ。
「なぜだ」
うめくように、静かに言う少年。なんと言ったのか分からなかった家光は首をかしげる。
少年はそんな家光を見ながら体を起こしながら、家光をより一層、強く睨んだ。
「なぜ助けたんだ!どうしてあのまま放っておいてくれなかったんだ!」
少年の激しい喧噪。一体何があったというのか、オレガノは慌てふためく。しかし、そんなオレガノとは反対に家光はニヤリと笑っている。
「どうしてって…成り行きってやつ?」
冗談めかされて躱された。そう思った少年はいままで以上に強く睨む。今にもつかみにかかりそうな勢いだ。
「ふざけないで!沢田家光、あなたは自分が何をしたのか分かって……」
しかし、言葉は最後まで続かなかった。理由は簡単。オレガノが元々持っていた書類数枚をまるめて彼の頭を軽くたたいたからだ。
そして、彼に何かを言わせるまえにオレガノは少年の目をしっかりと見据える。
「あなた、病人なんだからおとなしくしなさい。親方様に何か言いたいことがあるのならケガが治ったあとにしなさい。ケガに障るわ」
少年は納得はしていなさそうだった。しかし、正論だと思ったのだろう、大人しくはなった。そんな少年を見て“悪い子じゃない”と思ったオレガノはニコリと笑った。
「ところで、あなたの名前はなに?私はオレガノよ」
少年は少し迷っていた。そう易々と、自分の情報を教えていいような人間なのか。オレガノの顔をじっと見る。きっとこの少年の真意を読み取ったのだろう、オレガノはずっと微笑み続ける。そして、ようやく少年は口を開いた。
「僕は、僕の、名前は…………」
どうでしたでしょうか?
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感想等下さるとうれしいです。