というわけで1年と9ヵ月ぶりの更新です。皆様きっと忘れ去っていたことでしょう。
待っていた方はいないような気がするのですが、投稿です。
それではどうぞ。
秘境と呼ばれる山の深い深い森の奥。静かではあるが、耳をすませば様々な音を聞くことが出来る。例えば鳥の羽ばたく音。あるいは餌を捜し歩く小動物の足音。ほかにも様々な動物の生活している音が、それはある意味騒々しいほど聞こえてくることだろう。
そんな世界を一瞬でぶち壊す、聞きたくなくても耳に勝手に入ってくるうるさい、いうなれば雑音とでもいうべき衝撃音が響きわたった。驚いた鳥たちは今まで自分たちがしていたことをほっぽり出して空へと逃げてゆく。
そして、そんな衝撃音の少し後にはたまたこの秘境に似つかわしくない音が響くのだった。
「いつつ……。い…………生き……てる?」
「大丈夫スか、十代目!!」
あんな高い処から怪我という怪我もなく無事に生きていることに若干の疑問を持っているツナに、安否を問う獄寺。ヨシュアとリボーンは言わずもがな、山本とディーノも無事のようで、体を起こして周りの様子を確認出来るほどの余裕はあるようである。
「木の枝に枯れ葉か……。天然のクッションに助けられたみたいだね」
「の、ようだな。エンツィオも天日干しされて縮んだみてーだし、もう大丈夫だろ!」
ヨシュアの分析に頷くようにして言葉を重ね、若干満足げにエンツィオを懐にしまったディーノ。その様子に冷たい視線を送る二人――言わずもがな、ヨシュアと獄寺のことである――に気づいたディーノは非常に気まずそうな顔をした後、頭を下げた。
「すまん、手が滑った」
しかし、この程度で許せる程の聖人君主であればそもそも怒ることなどしないと言うもの。
「てめ――――!! 手が滑ったで済むか、コラ!!」
言葉にこそ出さないものの、ヨシュアの視線もより冷たく、鋭利なものに変わっている。もちろん、ツナたちにはばれぬよう外面上は穏やかな笑みをたたえているのだが。
故に、ツナたちが怒りを抑えなければいけないと感じるのは獄寺のみ。もとより怒っているヨシュアや、介入する気0、というよりこの事態の大本の原因を作ったリボーンが仲介などするはずもなく必然的にツナと山本で獄寺を抑えることになった。
「ご……獄寺君、落ち着いて!!」
「みんな無事だったんだし、いーじゃねーかよ。な?」
「じゅ……十代目が、そう、おっしゃるなら……」
しぶしぶ、といった具合に、それでいてディーノに対して覚えてろよと言わんばかりに睨みつけてから引きさがる獄寺。やっと落ち着ける、といったときにリボーンの口から思わぬ爆弾発言が飛び出してきた。
「まだ無事と決まったわけじゃねーぞ。こっから家に帰れるかわかんねーからな」
「そ……そういわれてみれば…………、ここどこ――――――!!?」
青ざめるツナに今更か、とヨシュアは内心あきれながら、実際のところいざとなれば方向感覚のくるっていない自分の頭を頼りに帰ることが出来るため焦る必要性は全くないのだが、周りに合わせるために一応、外面では焦った風を醸し出す。
そんなヨシュアの近くで獄寺は携帯を取り出し確認してみるが、いかんせんここは秘境、山の奥。
「だめだ、圏外っス」
「そ、そんな~~」
打つ手なし、と落胆した2人に対し、汚名返上、名誉挽回と言わんばかりにディーノはポケットをあさりながら自信満々に胸を張った。
「落ち着けって、オレのケータイは砂漠の真ん中からでもかけられる衛星電話だ」
その言葉に一転して希望と尊敬のまなざしを(一部除き)ディーノに向け、またヨシュアも少しは評価を見直そうとしたが、ディーノが取り出した瞬間、悪い方向に評価し直したのだった。というのも……
「あれ? のびてる……」
携帯の折りたたむ部分が折れてはいけない方向に折れたのか、完全に折れてコードがのび、また切れてしまっていたからだった。
さらに、悪い報せは続くもの、とでもいうべきなのだろうか。
「食糧を入れたナップも失くしちまったぞ」
「ここで野宿したら夜の冷え込みもハンパねーだろーな」
「いくら寒いとはいえまだ熊も冬眠時期じゃない。むしろ冬眠前の食糧探しでいろんなところをうろうろしていそうだし……」
リボーン、山本、ヨシュアと立て続けに言うたびにドンドン顔色が無くなっていくツナ。最終的に頭を抱え、俯いていると、そんな状態とは正反対の、楽しそうな声が聞こえてきた。
「ほんとに熊が出たににゃ、まさにサバイバル」
「楽しそーだな!! もとはと言えばお前のせ―なんだぞ!!」
旧石器時代や縄文時代に着ていそうな服、そして右手には斧、左手には骨付き肉を持って笑顔で言い放つリボーンに、打って変わって本気で起こりつかみかかるツナ。しかし、いくらリボーンとは言え、傍から見れば赤ん坊。
「まーまー。何とかなるさ。楽しまなきゃ損だぜ」
楽天思考の山本が止めにかかったのだった。
「まぁ、とにかく歩いてみようよ。なにも始まらないからね」
「それもそーだな」
さりげなくヨシュアは帰り道の方に誘導し歩きはじめた。
「なぁヨシュア、これは食べれるやつか?」
「あぁ、それは毒があるから……その隣のは食べれるよ」
「お、これだな」
森などで野宿などをよくしていたヨシュアは植物学に強い、というわけではないのだが食べていいもの、悪いものに関しての知識は豊富であったため、食べられるキノコや木の実などを教え、採りながら歩を進めていく。その間夜泊まれそうな場所を探すのも忘れない。
こうして随分と長い時間歩き、日も傾いてきてあたりが緑から橙へと変わるころ、夜の空腹を満たすくらいの食糧が集まって一息つこうかというときに洞窟を発見した。
「洞窟内は気温の変化が乏しいから寒さをしのげられるかもね」
「あぁ。だが、迂闊に近づくなよ。獰猛な生き物の巣ってこともあり得る」
まともなことを言う、とヨシュアは感心しながらも中の気配を探っていく。すると人の気配を五つ確認した。しかも、一人を除けば最近であったばかりの知人の気配。一体何でまた……と少し思案していると、どうやら獄寺が洞窟内の様子を見てくることになったらしい。
「何かあったら大声を上げるんだぞ」
「誰が上げるか、アホ」
そういいながらライターをつけて洞窟の中へと入っていった。
どうせ知り合いと一緒に出てくる、少し食糧が足りなくなるかもな、と獄寺ではなく食糧の心配をしていると予想外にも叫び声が聞こえてきた。それも、さっき入っていった獄寺の。
咄嗟に戦闘態勢に入りつつもう一度気配を探る。すると見知っている四つの気配は元の位置から動いておらず、自分の知らない気配が、おそらくは気絶していると思われる獄寺を運びながらこちらへ向かってきていた。
こちらと戦うつもりならば足手まといになる獄寺は置いていくはず。人質にするにしてもあの四人の中から選んだ方が賢明である。特にうち三人は子供なのだから扱いやすいくらいだろう。いったいなぜ……。
疑問に思いながらも警戒を緩めず、暗がりから出てきた人を見た瞬間、ヨシュアは納得したと同時に警戒を解いた。
「ビアンキ!! 何でここにいんの!?」
ビアンキ――またの名を毒サソリ。リボーンの愛人にして獄寺の腹違いの姉。そして現在、沢田家に居候中。渾名のとおり、彼女の武器は――
「毒キノコを採取してるうちに道に迷っちゃったのよ」
――毒。噂によれば作った料理は全て毒になり、おかげで獄寺はトラウマ持ちになり今や姉の姿を見ただけで失神するようになったとか。正直本当かどうか不明ではあったが、今の獄寺を見る限り本当だろうとヨシュアは確信する。
それと同時に、ほかの四人はなんでまた遭難したのか気になってしまう。わざわざ自分の武器採取に一般人同然の人達など連れてくるわけがないのだから。
と考えているうちに洞窟の中から鳴き声とともに四人が出てきた。
「うわ――――ん!! 怖かったんだもんね――!!!!」
「~~~~~~!」
「ツナさ――――――ん!!」
「あ、ツナ兄!!」
しっかり者のイーピンにすがり泣きじゃくりながら出てきたランボに続き、走ってツナに駆け寄り抱き付き泣くハル。最後に出てきたフゥ太は知り合いに出会えたことに喜んでいるのか、笑顔だった。
話を聞くに、どうやらハルの見つけた山奥のケーキ屋さんに行く最中に主にランボのせいで遭難してしまったらしい。
その話を聞いた瞬間、一気に興味をなくしたヨシュアはとりあえず今夜のためにも薪を集めようかと周りを見渡す。幸いとでもいうべきか、ここは深い森の中。取り放題であった。しかし、一人でやるにはつらい仕事だ。
「ねぇ山本、薪を拾わない?」
「お! いいな、それ」
近くにいた山本を誘って拾い始める。
山で野宿したことはあれど敵にばれてはいけないため、薪を集めたことも燃やしたこともないヨシュアは少し新鮮な気持ちで拾っていた。普段の自分なら絶対に忌避するこの行動はしかし、今回に限っては自分たちの存在を知らせるSOSの狼煙となって自分たちを救うものになる。
立場が違えばこんなに違うものかと思っていると、自分たちが薪を拾っているのに気付いたらしいツナ達が声をかけてきた。
「あ、オレも手伝うよ!!」
「十代目のお手を煩わせるわけにはいきません! それに火ならこの火炎瓶を使えばよく燃えます!!」
「いいものを持ってるね、獄寺」
珍しく、ヨシュアは思ったことを口に出し感心して、これで火をつける手間がだいぶ省けると思って獄寺が火炎瓶を点けるのを見ていると、思わぬ伏兵が現れた。ほかでもない、彼の姉である。
「見直したわ、隼人」
と言ってわざわざ獄寺の顔の側面を両手でつかんで自分の顔の方に向けるビアンキ。瞬間、火炎瓶を後ろの方へ投げ飛ばしながら倒れてゆく獄寺。そして、燃え出す木々。
外面では焦りながらも内心では冷静に考える。とりあえず洞窟にでも入っておけば助かるであろうこと。何よりこの火だったら最高の狼煙だ。おそらく山火事だと言って大騒ぎになってすぐにでも人が来るはずだ。ならばとりあえず洞窟へ誘導しなければ、と思った瞬間だった。
「ランボさんも火をつけるの手伝うもんね!!」
そう言って四方八方、お構いなしに手榴弾を投げるランボ。崩れゆく洞窟入口。その様子を見たヨシュアは考えることを放棄した。いざとなればツナだけ助けて逃げればいい、それだけの実力を自分は持っていると自負しているし、ほかの人間の安否はこの際どうでもいいことだ。しかし、やはり一番の理由はここにリボーンがいるから。彼がこの事態に対して何のアクションも起こさないわけがない。だから自分は黙って彼のやり方を見させてもらおうと思ったのだ。
そうこうしているうちに火は完全に自分たちを取り囲み逃げ場を失くしていく。もうだめかもしれないとここにいるほとんどの人が思ったとき、一発の銃声が聞こえた。
「リ・ボーン!! 死ぬ気で消火ぁ――!!!」
ヨシュアは驚く顔を作りながらも、内心ではどうやってこれだけの火を消火しようというのか、と興味深げに観察する。
ツナはレオンを呼び寄せダウジングにし、それを使って水脈を見つけ出した。
ここまで来れば後は簡単だろう、水脈を掘り当ててそれを消火に使えばいいのだから、もう予測がつくと言うもの。
さすがだな、と感心しつつも自分たちがなぜそもそもこんな場所で遭難まがいの状態に陥っているのか思い出してほしかった。そう、原因は水ではなかったか、と。確かにたとえ消火できたとして確実に奴にも水がかかってしまうのではないか、と。
そして、ヨシュアの予想は残念なことに的中することになる。
「いくら任務とは言え、もうこれはこりごりだな」
エンツィオの足音に紛れることをいいことにこっそりつぶやくヨシュア。
ただでさえも体力のないヨシュアは救助される頃には疲れ果てており、後日家光に送った報告書がかつてないほど嫌味だらけになったのは言うまでもない事だろう。
書いていないせいでスランプ気味だったのが伝わってしまったでしょうか……?
次回更新は未定です。
大学は自宅から高速乗って3時間かかるところなので下宿生活。TOEICの勉強もしなきゃいけないらしいですしね。
次話はオリジナルの予定。久々家光さんの登場です。
ではでは、また忘れたころにお会いしましょう!