漆黒の牙の辿る道は…   作:Pie

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 先週投稿できなくて本当に申し訳ございませんでした。一言でいえば、PCの不具合です。
 アドバイスをくださった方、本当にありがとうございました!


第4話 転校

 窓から差し込む一筋の光。スズメ達の話声。壁越しに鳴り響く目覚まし時計。香ばしい、食欲をそそるバターの匂い。ふわっと香る優美で濃厚な香り。

 ヨシュアは朝から優雅に、周りの喧騒など全く気にせずコーヒーを飲んでいた。そして、目の前にあるのはコンガリ焼けて輝いている食パンに黄金色のスクランブルエッグ、そして綺麗に焼き目のついたベーコン。ヨシュアは久々のゆっくりとした、静かな朝食をじっくりと満喫していた。

 これらから分かるように、家事全般そつなくこなすヨシュアは特に、モーニングタイムに力を入れる。コーヒーは豆から挽くというこだわりようだ。曰く、一日の計は朝にあり、だからだそうだ。

 

 そして、今日は学校初日。昨日早くに寝たとはいえ、次の日の準備を怠るヨシュアではない。すでに必要なものはカバンの中に入っている。そして、今は朝の6時。まだまだ時間に余裕はある。

 30分かけて朝食を食べたヨシュアは室内着から制服に着替え、自分の得物――双剣を隠し持つ。そして玄関に置いてあったカバンを手に持ち、キィィィィ、という音を鳴らしながら扉を開けた。

 目の前に広がるのはまだ眠っている町並み。人通りは全くと言っていいほどない。元気なのはスズメとごみを漁るカラスだけ。しかし、家々では生活の音が少しだけ聞こえてくる。町が覚醒するのも時間の問題だろう。

 ヨシュアは周りの迷惑にならないよう静かに扉を閉めて鍵をかけ、階段を下りずに2階から柵を乗り越え飛び降りる。着地音は、しなかった。そして、道路にもヨシュアの姿は見受けられない。

 飛び降りた瞬間にこの町に溶け込んでいったのだ。信号など関係なく、そして道路などと言う物も関係ない。屋根、塀、電柱、電線、木等々、お構いなしに走っている。今のヨシュアは空気同然。見つけられるものなど、一人もいはしなかった。

 

 

 

 

 

 ざわざわとした空気。踊り、舞っている空気。ここはそんな言葉が似合うだろう。何も、今日が特別というわけではない。毎日のことだ。なにせ、ここは教室なのだから。

 教室内にいるのはもちろん生徒達。彼らは友達と一緒に登校してくるなり、おしゃべりに花を咲かせる。あるものは大好きな有名人の話で盛り上がる。あるものはドラマの話で盛り上がる。またあるものは宿題をどれだけやっているかで競争する。

 そして、極まれに、遅刻をしなかったという当たり前すぎて笑えないようなことで喜んでいる人もいる。そしてそれがまさに、この少年――

 

「はぁ~、今日は遅刻せずにすんだ~」

 

 沢田 綱吉だった。毎日寝坊は当たり前の彼にとって、遅刻をするしないはかなり身近な問題なのだ。そして、死活問題にも直結したりもするのだが、この話は置いておこう。

 自分の机にうなだれるようにしてカバンを置いたツナに一緒に登校してきた獄寺はニッコニコの笑顔で薄っぺらいカバンを置き、同意する。

 

「そっすね、十代目」

 

 同意、と言ってもこの不良少年にとって大事なのはツナの気持ちやら機嫌であり、遅刻云々はどうでもいいことだ。おそらくツナがいなければ学校など余裕でサボること間違いなしである。

 

「よぉ、二人とも」

 

 2人がカバンを置いて落ち着いたところで、声をかけてきたのは汗だくの、いかにも朝練終わりと言った感じの山本だった。そして、そんな彼に対する2人の反応は正反対だった。

 

「おはよう!山本」「ちっ」

 

 片や嬉しそうに挨拶を、片や“邪魔すんな”という副音声付の勢いで舌打ちをする。どっちがどっちのセリフ、だなんていう必要はないだろう。

 

「そう言えば山本、いつもこの時間に終わってたっけ?」

 

 遅刻しがちであまりよく覚えてはいないが、ここまで早くはなかったような気がすると、そこまでキャパが大きくない脳に残っていた僅かな記憶からそう思う。

 

「あぁ、今日転校生が来るんだってよ。そっちの対応しなくちゃいけねーみてーだから早めに切り上げたんだ」

 

「野球部の顧問って確かうちのクラスの担任だったよね?」

 

「そうだぜ。だから多分、うちのクラスに来るんじゃねーかって噂してたんだぜ。」

 

「うちのクラスに転校生か……」

 

 転校生、この言葉にそこまでいい印象はない。なにせ、転校してきた知りもしない人間にいきなりガンつけられ、襲われ、死ぬ思いをしたかと思えば急に、それこそ手のひらを返したように土下座して謝られるは忠犬よろしくつき従ってくるのだ。いい感情など、抱けという方が無理がある。

 そして、どこをどう間違えたのか、少し萎れているツナを見た獄寺は力強く言い放つ。

 

「心配は要りませんよ!十代目!!そいつが十代目に失礼を働いたら右腕であるこの獄寺 隼人がシメますんで!!」

 

 元凶はあなたです、だなんて口が裂けても言えないツナは苦笑するにとどめてしまう。どれだけ丁寧な態度を(ツナに対してのみ)取っているとはいえ、いまだに怖いものは怖いのだ。口答えは絶対に出来ない。

 

「朝から相変わらず賑やかなのな!」

 

 空気を全く読まず、相変わらずの天然発言をかましてくれる山本。どこら辺が賑やかなんだ、とツナ思い首をかしげる。

 ……いつもの日常のである。

 

 

 場所は変わって職員室。そこでは噂の転校生、ヨシュアが大柄な、ジャージを着た椅子にドカッと座っている先生と話していた。

 

「えらいなぁ。その年で知りもしない国の学校まで親なしで来るだなんてなぁ。いやー、うちの生徒も見習ってほしいものだねぇ」

 

「恐縮です。それに、親の転勤が多かったので知らない土地には慣れているだけですよ。何より、言葉も分かりますから」

 

 笑顔の仮面をかぶってそつなく答えるヨシュア。設定はお分かりの通り、親の転勤で転校したきた中学生、だ。

 そして今は親が仕事で来れなかったため一人で来た、という事にして担任と話している真っ最中なのだ。正直、この会話にうんざりしているヨシュアである。

 

「クラスは……1-A、でいいんですよね」

 

 担任と思われる男の机に置かれている“1-A 尾関 一樹”と書かれている札を見ながら問う。本題をさっさと進めろ、と言外に言っているのだが、男は鈍いのか、気が付かない。

 

「あぁー、そうだぞ。うちのクラスの子らはえぇ子たちだから、安心してかまわないからなぁ」

 

 心配なんか微塵もしていない、と思ったが顔には出さず、今度は机の上のそう多くはない書類の方を見て、申し訳なさそうな演出をする。

 

「あ……まだ仕事が残っていたんですよね。わざわざ僕の為に時間を取って下さってありがとうございます。お邪魔にならないよう、そこのベンチで本を読んでいます。失礼しました」

 

「なーに、気にしなくていいぞぉ。それじゃあ、チャイムが鳴ったらまた来てくれ」

 

 分かりました、そう言ってお辞儀をするなりすぐさま身をひるがえしてベンチの方に向かう。すでにヨシュアに張り付いていた仮面は引きはがされてしまっている。しかし、そんなヨシュアの顔を見た者はだれもいなかった。

 

 とんだ茶番だったな、ヨシュアはそう思ってベンチに座り本を開く。しかし、読んでいるわけではない。なぜならこの本はもう読み終わっていて、内容は一字一句、間違いなく、正確に覚えているからだ。

 本を読むふりをしているのは好印象を得る為、ただそれだけだ。それ以上の意味はない。

 そして今、ヨシュアは何をしているかと言えば、場所の選択だった。

 

 場所の選択というのも、実はヨシュアは今日、朝早く出かけた後に町中を高速移動する事によって並盛町全体の地理的感覚を養い、すべての建物や家、道の状況に信号の位置を把握していた。そして、それと同時進行で行っていたのが修行場所の確保である。

 家、あるいは学校からさほど遠くはなく、かつ人通りが少なく、そして広い場所。この条件だとかなり修行場所は限られてくる。今の思惟で6ヵ所から3ヶ所までは切り捨て法で絞り込めた。しかし、この先が問題だ。なぜなら、この3ヶ所というのがどこも同じような条件下だからだ。

 

 最終的にはそろそろチャイムが鳴るという時に、今は保留、という結論を下す。最終選択は沢田 綱吉の住所を聞き出してからだ。

 生憎と、家光のくれた資料には書いてはいなかった。“必要なら自分で調べろ”というメモはあったが。幸いなことに沢田 綱吉とは同じクラスだ(昨日さりげなく聞き出した)。おかげで、そう手間取ることはないだろう。

 チャイムが鳴ったことをいいことに思考の海から出て笑顔を張り付け、担任の元へ向かった。「あぁ、来たかぁ。それじゃあ、行こうか~」と言われた後、担任の背中を追って自分のクラスに向かうのだった。




 ちょっとした裏話。そしてある意味ではボツ話。以前投稿した改稿前バージョンは含まれていたんですけどね。もともと入れる予定だったところを丸々貼り付けますね。
ヨシュアが本を読むふりをしているシーンです。


 余談だが本のタイトルは『正しい日本語の使い方』であり、これは昔一通り家光に日本語を習ったは良いが本当にあっているのかが不安になり買ったものである(自腹)。
 案の定、一部……いや、かなり現在日本で使われているものとは違っていた。今もなお家光に教えてもらった日本語を使っているバジルを思うと……哀れに思えてくる。


 こんな感じです。これからあとがきはボツ話や余談話がある限りはそれを載せていく、ということになります。ネタがないときは……またその時考えます。それではまた。
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