ロチェの丘に到着した私たちは、麓でたむろしてる盗賊達を私が弓で狙撃し、ロゥリィが捕縛し説教して改心させるという作戦に決め二手に分かれた。弓をどうするのかを聞かれたので、私がいた世界の秘術でなんとかすると答えると。「後で必ず見せてねぇ?」と言われてしまったが、この世界にも魔術の様なモノが、(どちらかというと魔力を用いた科学と言った方がいいのかもしれないが)ある様なので、それと似た様なものだと説明すればいいだろう。
そして現在、私は作戦通りロチェの丘の頂上、盗賊達は麓で襲ったキャラバンの周りで被害者達を縛ってほったらかしたまま、各々自由にくつろいでいる。だが、妙にビクビクしたり被害者達の方を見ては辛そうにしたりと生粋の盗賊ではなさそうだな。ふむ、やはり今回が初めての『仕事』といった風か…。どうやら襲われたのは、男性1人女性2人の様だ。恐らく家族なのだろう。幸い殺しや陵辱などは行っていない様なので早く助けださなければ、PTSDなどを患われても困るしな。……位置についた私は、ロゥリィと事前に決めた作戦通り投影した三本の矢を一度に同じく投影した弓に番える。ギリリと限界まで引き絞った弦が悲鳴を上げる。狙うは座り込んでくつろいでいる盗賊達のズボンの裾、体を傷つけないギリギリを当てる。2、3度深く呼吸をして気を落ち着ける。私の弓のスタイルは、当てるのではなく、既に当たっている、だ。ならば当てる必要はない。ただ当たると確信した瞬間に矢を放てばいい。タイミングを計る。
………今!
バヒュゥゥゥゥゥゥという独特の音を残しながら私の放った矢は狙い通り奴らのズボンの裾に突き刺さり、奴らを地面に縫い止めた。だが、それを確認する前に次の矢を番え、速射する。
速射、速射、速射、速射、速射。
計6度ほど続けると、全ての盗賊を地面に縫い止めていた。
そして、奴らがズボンを引きちぎって逃げ出す前にロゥリィが奴らの前に飛び出した。
私もそれにならって飛び出す。万が一があったら困るからだ。
「クスクスクス……おじさま方ぁ、今宵はどうもありがとう。生命をもってのご喜捨を賜りホントにありがとう。主神に代わってお礼申し上げますわねぇ。神はあなた達の振るまいがたいそう気に入られてぇ、おじさま方をお召しになるっておっしゃられてるのぅ」
は?生命をもっての喜捨だと?捕縛して説教をするだけではなかったのか?聞こえた内容と私が知っている作戦との乖離につい足を止めてしまった。
盗賊の1人が叫ぶ。
「な、何でぇ、てめぇは⁉︎」
「わたしぃ?私はロゥリィ・マーキュリー。暗黒の神エムロイの使徒♪。」
「エムロイ神殿の神官服?………じ、12使徒の一人。死神ロゥリィ?」
「そうよぅ、よく知っていたわねぇ。偉いわよぉ。だからまず貴方から主神の元に送ってあげることにしたわぁ。」
このままではまずい。強化の魔術を身体に瞬時にかけ、更に英霊としてのスペックをフル活用して、ハルバートを振り上げ、今まさに振り下ろそうとしているロゥリィの前に滑り込み、干将・莫耶を投影し、
二刀を交差させて受け止める。物凄い衝撃とともに激しく火花が散るが、気にせず問いかける。
「何故だロゥリィ!どうしてこやつらを殺そうとするんだ!作戦と違うだろう!」
「何故ってぇ、エムロイがこいつらを気に入って今すぐ欲しいって言ってるんだものぉ。早く送ってあげるのが、私の勤めなのよぅ。」
「そうか、ならば私の本気を持って君を止めてみせよう。」
「全力はぁ、出してくれないのぉ?」
「ああ、全力は出さない。出したら君を殺してしまうだろうからな。」
「亜神を簡単に止められるとは思わないこと…ね!」
ロゥリィがハルバートの質量を利用して無理矢理私を弾き、距離を取る。
私が干将・莫耶を構えると、ロゥリィもハルバートを振りかぶった。
私たちは同時に踏み込み、そして………
次回に続く。
もっと書いても良かったんですが、長さがバラバラなのも問題だろうと考えて途中で切りました。
あらすじに注意書きとタグの追加をしました。
2/19ちょっと改稿しました。 少しは、マシになった……かな?なってるといいな(願望)
作者の励みになりますので感想ください。