四葉家の死神   作:The sleeper

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10話 シュウマク(リメイク)

 10話 シュウマク

 

 

 

 

 

 

  先ほどまで和やかな雰囲気だった車内も、いよいよブランシュのアジトが近くなると先程とは全く違う雰囲気が流れる。

  それは緊張などではなく、特殊部隊のそれだった。

  すでに先ほどとは違い、冷たく鋭い雰囲気を漂わせている達也、克人、董夜、エリカ、深雪に触発され、レオと桐原の表情も『高校生』から『戦士』へと変わって行く。

  そしてアジトの門が見えてくると董夜が指示を出し始めた。

 

 

「レオ、この車全体に硬化魔法を。中に入ったら克人さんと桐原先輩は裏口に回ってください。レオとエリカは門で逃げて来た人を撃退、達也と深雪は俺と正面から」

 

「了解!パンツァー!!!」

 

 

  董夜が指示を出し終え、全員が頷くのと同時にレオが硬化魔法をかせた。そして克人の運転する車は門をぶち破り、中に入ると全員が車を降りて董夜の指示通りに展開した。

 

 

「待っていたよ四葉董夜君に司波達也君!僕はブランシュの日本支部リーダーの司一だ!」

 

 

  董夜達が正面から建物の中に入ると、待ち構えていたかのようにメガネの男が数人の部下を連れて立っていた。

 

 

「さぁ!僕の手足のなりたまえ!」

 

「あぁ、そういうカラクリか」

 

「な、なんだと!?」

 

 

  司一が董夜たちに放った魔法を、董夜が纏めて【全反射】で弾いた。

 

 

「こ、殺せぇ!!!!」

 

 

  雑魚メガネは直ぐにに化けの皮が剥がれ、部下に指示を出すと奥の部屋へと逃げて行った。

 

 

「しっ、死ねぇ………ぐ、がぁぁぁっ!!?」

 

 

  何人かの兵士が董夜達に銃を向けたが、すぐに銃を持った手を抑えてうずくまった。見るとどうやら深雪によって腕ごと銃を凍らされたようだ。

 

 

「ここは私に任せて、お兄様と董夜さんは先へ」

 

「あぁ頼んだぞ深雪」

 

「任した」

 

 

  董夜達が奥の部屋のドアの向こう側へ消えて行くのを確認すると深雪は凍てつくような視線を兵士達に向けた。

 

 

「愚か者、お兄様と董夜さんに向けられた害意を私が見逃すはずが御座いません!!」

 

「こ、これはまさか!?に、ニブルヘイ…………!」

 

 

  腕を抑えてもがいていた兵士たちが足元から凍っていき、表情を驚愕に染めた兵士の言葉が終わる前に彼らは生を終えた。

 

 

  ◇ ◇ ◇

 

 

「ふっふっふっ、どうだ魔法師!!純正のアンティナイトだぞ、魔法師といえど魔法が使えなければただの子供だ!!」

 

 

  董夜と達也を兵士たちが取り囲み、その正面でヒステリーのように叫ぶ司一が勝ち誇った笑みを浮かべる。

 

 

「ほら達也、せっかくだから魔法が使えなくなった演技を」

 

「必要ない」

 

「でも、こんな矮小組織がわざわざ希少鉱石をゲットしたのに、役に立たないで終わるとか」

 

「必要ない」

 

「き、さまらぁ!殺せ!」

 

 

  激昂した司一が部下に命令を出すが、達也が【分解】で敵の銃をただの部品に分解した。

 

 

「お、いいタイミングだ」

 

 

  武器を無力化されて慌てている兵士が、董夜の魔法により糸切れ人形のように崩れ起きる。そんな兵士たちをよそに、董夜は自分たちが入ってきた扉とは別の扉に目を向けた。

 

 

「ひ、ひぃ!!!」

 

 

  ついに一人になった司一が情けない声を出して、董夜の目線の先にある扉へと走りよった。しかし、彼がドアの取っ手に手をかけるのと同時に外から扉が切られ、克人と桐原が入ってきた。

 

 

「てめぇか、壬生を誑かしやがったのはぁぁぁ!!!!」

 

 

  走り込んできた桐原が床に倒れ込んでいる司一を視界に入れるとすぐに激しい怒気を放って、彼の左腕を高周波ブレードで切り落とした。

 

 

「手がぁぁぁ、僕の手がァァァァ!!!」

 

 

  腕を切り落とされ、あまりの激痛に泣き叫ぶ司一の左腕からドンドンと血が流れる。すぐに克人が焼いて止血したが、司一は余りの痛みに気絶してしまった。

 

 

「今回の件は十文字家が処理する」

 

「はい、お任せします」

 

 

  克人が董夜に後始末をすることを伝え、これで今回の件は終幕した。

  克人と董夜が話している内容が大して気にならないのか達也は董夜たちに背を向けて、深雪のいる部屋へと向かった。

 

 

 

 

  ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

  その日の夜、血なまぐさい一日を過ごした董夜と雛子の姿は司波家にあり、食卓を共にしていた。

 

 

「董夜さん!!今日は董夜さんの好物をたくさん用意してますよ!」

 

「おぉ、ありがとう。やっぱり深雪のご飯は美味しいな」

 

「そ、そんな!毎日食べたいだなんて!」

 

「いや……………言ってないけど」

 

「深雪も末期だね」

 

 

  董夜の言葉に都合のいい編集を加えて脳で認識した深雪が、頬を染めて身をくねらせる。そんな彼女に董夜は困惑の表情を浮かべ、雛子と達也は苦笑を浮かべた。

 

 

「今だから言えるが、まさか深雪と董夜がこんなに仲良くなるとはな」

 

 

  全員で楽しそうに会話をしながらの夕食はいつもより早く終わり、今は四人で深雪と雛子が淹れた紅茶と、達也と董夜が買ってきたケーキを食べていた。

 

 

「ああー、昔の深雪は俺の事嫌いだったもんな」

 

「え、そうなの深雪ちゃん!?」

 

「うぅ、黒歴史です」

 

 

  達也の言葉に深雪は頭を抱えてうずくまる。そんな深雪をみて雛子は目を輝かせて身を乗り出した。

 

 

「その時の話聞きたいなー」

 

「あれは叔母上達の沖縄旅行に俺が付いて行った時だな」

 

「あぁ、もうかなり昔のことのようだな」

 

「あの、思い返して頂かない方が助かるのですが」

 

「えぇー、いいじゃん!」

 

 

  遠い目をし始めた董夜と達也に、深雪は慌てて話をさえぎろうとするが、それを雛子は抱きついて阻止する。

  そう、今でこそ董夜に好意を寄せている深雪だが、今からは考えられない程董夜を避けていた時期があった。

 

 

「最初は空港だったな」

 

 

  これより語られるのは今より数年前の事。まだ雛子が董夜に拾われるより前の記憶。

  これは深雪と董夜の関係が一新した出来事であり。達也と董夜が【魔神】【死神】と呼ばれるようになった出来事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 入学編. Fin


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