20話 ゴジツ
後日談というか今章のオチ
俺が沖縄で倒れたのち、目を覚ましたのは2週間後だった。
起きるとそこは四葉本邸の俺の自室だった。
「あなたが実名で戦略級魔法師として登録されたわ」
俺が起きたと知って全力疾走で俺の部屋まで来た母様は息を整えるとそう切り出した。
「そうですか…………………達也はどうなりましたか?」
あれほど大規模な魔法を使ったのだ、こうなることは予想できていた。
それよりも達也である、四葉としては達也を目立たせたくないだろうにどういう措置を取ったのだろうか。
「達也さんは【大黒竜也】として国防陸軍の第101旅団 独立魔装大隊という部隊に戦略級魔法師として配属されることになったわ」
これには少し驚いた、達也を戦略級魔法師にするだけでもリスキーなのに軍人として軍隊に配属させるとは思わなかったからだ。
それにしても四葉が1人いるだけでも強力な戦略級魔法師を2人も有するなんて。【五輪家】が十師族になっている最も強い理由は【五輪澪】という戦略級魔法師がいるからだ。それ程力が無い家でも戦略級魔法師がいるというだけで十師族となる。
ただでさえ強い魔法師を有して、十師族の中でも序列がトップタイになっている四葉が戦略級魔法師を2人も有するなんて、十師族内のパワーバランスが崩壊しかねない。
「そういえば深雪さんが貴方の心配をしていたわ。1週間前に帰るまで付きっ切りで看病していたのだから」
なんと、それは悪い事をしたな、今度会った時にお礼を言っておこう。
次に会うのは慶春会だろうか。
「それに、姉さんもお礼を言っていたわ。ありがとね姉さんも助けてくれて」
そういえば基地でアンティナイトを持った兵士を撃退したな。まぁ深夜さんが無事ならよかった。
深夜さんはアンティナイトの感受性が強いからな、もろに食らってたら命も危なかったかもしれない。
それにしてもお腹が空いた、2週間寝込んでいる間は点滴を打たれていたから空腹感を覚えることはないが何だか気持ち的に口に何かを入れたい気分だ。
「それならいい時間だし、お昼にしましょうか。使用人達も貴方のことを心配していたから、一度顔を出してあげなさい」
そういうと母様は部屋から出て言った、時計を見るとして午後の12時半だ、なるほど確かにちょうどいい時間だ。
それにしても使用人の皆が心配してくれていたなんて、心配させてしまったことに罪悪感を覚えるけど、慕われているという事実に幸福感も抱いていた。
「おっとと………と」
久しぶりにベッドから立つと足元がふらついてしまった、おぼつかない足取りで服を着替えて俺は部屋を出て行った。
「というのが沖縄での顛末だよ」
「へぇーーそんなことがあったんだね」
「あの時は私のせいで董夜さんが怪我をしてしまって………………うぅ」
なにやら深雪が申し訳なさそうにしているが別に何年も前の事なのだからいいのに。
「それよりも、最近深夜さんはどうなの?」
「あぁ近頃は容体も落ち着いてきているらしい」
深夜さんは達也達が高校に入学をして深雪と達也の二人暮らしを始めてから確かにどこかの別荘で療養中のはずだ。
「そっかあよくなるといいな」
深夜さんが元気になることを願いながら、俺はとっくに食べ終わった夕食の皿を台所に運ぶのだった。