忙しすぎて書く時間がなかったです!
そして、ついに40話到達だーーー!!!
多分お気に入り登録してくれた方や読んでくれた方がここまでいなかったら40話になる前に挫折してたと思います。
お気に入り数2000人の重みを噛み締めながら頑張るので応援よろしくお願いします!!
そして小説はついに【論文コンペ本番】に突入しました。
次回には【横浜事変】に入れます!!
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41話 アラシノハジマリ
全国高校生魔法学論文コンペティション開催日当日。
達也は朝早くに、今回会場に行くことができない董夜と雛子に電話で激励を受けた。その後、達也の身に何かトラブルが起こることはなく、予定通りの時間で会場に着いたのだった。
横浜に来ても尚、険悪な雰囲気になっていたエリカと花音を仲裁したこと以外は会場でも特に何も起きていない。
そして開幕時間が迫り、どの学校の控え室も賑やかになっている中。1人の女性が司波兄妹しかいない第一高校の控え室を訪れていた。
「久しぶりね深雪さん、半年ぶりかしら」
「ええ。二月にお目にかかって以来です」
司波家を司波小百合が訪れた時とは比べ物にならないほど柔和な雰囲気で談笑する三人に、部屋全体の空気が柔らかくなる。
「さて、前置きはこれくらいにして…………。良いニュースと悪いニュース、どっちから聞きたい?」
そんな響子の冗談に達也は笑みを浮かべた。ーーーといっても苦笑いの類だが。
「では、良いニュースから」
「ここは『悪いニュースから』って言うのが定番じゃない?」
「では、悪いニュースから」
そんな、達也に響子は呆れ顔を向けるが全くの無反応にため息をついた。
「まぁいいわ。例のムーバルスーツが完成したって、真田大尉からの伝言。夜にはこちらに持ってくるって」
「流石ですね、しかし明日東京に戻ってからでも…………」
「明日こっちでデモがあるの。まぁ大尉も貴方に自慢したかったんでしょう。基幹部品はそっちに完全依存の形になっちゃったから、せめて完成品は、って頑張ってたもの。昨日なんて『これでメンツが保てる』とか情けないこと言ってたし」
面白い話をするように微笑みながら話す響子に、達也も深雪も頰を緩めた。
「情けなくなんてないですよ。実際問題、こちらでは実戦に堪えるものを作れなかったんですから」
「その言葉を大尉に言ってあげてね。安心すると思うわ」
ウインクをして見せた響子に、達也はまたしても苦笑いを返した。
「じゃあ今度は………悪いニュース。例の件、どうもこのままじゃ終わらないみたい」
「何か問題が、」
あるのですか?、そう言いかけた達也は今日の董夜から受けた激励を思い出した。
『達也なら何も問題はないだろうけど…………………気を引き締めていけよ』
気を引き締めろ、その言葉に達也は朝から『今日は何かが起こるのではないか』という想定をしていた。そしてその想定が響子の言葉をもって確信に変わりつつある。
「何も起きないのが一番だけど…………もしもの時は、お願いします」
その響子の言葉に達也と深雪は顔を見合わせて頷きあう。そしてそれを見ていた響子は眉目を曇らせたが、二人を制止することは……………………………できない。
そしてそれと同時刻、呂剛虎が逃亡した。
横須賀に向かっている最中だった彼の護送車が襲撃を受け、生存者はなかったらしい。
それに伴い、風間を長とする独立魔装大隊は予定を繰り上げ、横浜への到着予定時刻を午後の三時として出動を開始した。
そして遠く離れた山間の屋敷。
その中の一室、豪華な家具が揃られた部屋で1人の男と女がテーブルを挟んで向かい合って座り、お茶を飲んでいた。
そして男はたった今、女から聞いた『呂剛虎逃走』の知らせを聞いて舌打ちをする。
「結局こうなったな」
「そうだねぇ〜。国防軍も呑気だよね〜」
舌打ちをした青年。四葉董夜はテーブルに置いてあった紅茶を一口啜った。その紅茶が置いてあったテーブルには紅茶の入った2つのカップ以外何も置かれていない。
そう、彼が四葉本邸に戻ってきた理由、『四葉真夜の仕事の手伝い』。
その仕事の書類など一枚も置いていないのだ。
「それに仕事と称して俺を呼んで、『待機』と命じた母さん」
「出撃させる気満々だね」
そう、呂剛虎の逃走により。今日大亜連合が何かしらを仕掛けてくる可能性が極大した。それで、もし、董夜が最初から論文コンペの会場である横浜におり、その場で何かが起こった場合。それは董夜が【第一高校の生徒】として勝手に敵を撃退したことになるが、何かが起こった後に董夜が『軍に援助』という名目出た場合、それは【十師族 四葉家】として出たことになり、軍に対する貸しが出来るのだ。
その後も横浜の情報を集め続ける雛子と、ただ紅茶を飲む董夜。
沈黙は長く続いた。
時刻は午後三時。第一高校代表チームのプレゼンテーションは予定通りに始まった。
今回注目を集めているのは『
会場には第一高校の職員・生徒以外に、魔法大学関係者や民間研究機関の研究者も大勢集まっている。
そしてスポットライトが光り、会場の音響設備から鈴音の抑揚の効いたアルトが流れ始めた。
重力制御型熱核融合炉が技術的に不可能であるとされてきたのは、重量制御魔法の対象である質量が核融合反応中に少しずつ減少していくことが理由である。
重力制御魔法は質量を対象とする魔法なのに、その質量が変わってしまう為、すぐに『対象不存在』のエラーで魔法が停止してしまう。故に核融合爆発は可能でも継続的核融合は不可能とされてきた。
それを、クーロン力制御魔法の併用によって重力制御魔法の必要強度を下げ、継続的核融合反応へのこだわりを捨て断続的核融合反応を新技術『ループ・キャスト』により実現した鈴音のアイデアの素晴らしさに、聴衆は惜しみない賞賛を送った。
論文コンペの発表時間は30分、そして次の発表校との交代時間は10分。
第一高校の発表が大成功に終わり、現在時刻は西暦ニ〇九五年十月三十日 午後三時三〇分。
後世において人類史の転換点と評される『
警察省 千葉
「董夜さん」
「はぁ…………やっとですか」
「どうやら状況は…………分かってるみたいね」
「ええ、もちろん」
董夜と雛子が待機していた部屋を訪れたのは十師族四葉家の当主 四葉真夜である。
そして真夜は雛子が持っている携帯型の情報端末に横浜の地図が映っているのを見て、董夜たちが既に情報を得ていることを知る。
「現在横浜で起きている非常事態に董夜さんを四葉家所属の戦略級魔法師として、雛子さんをその私兵として派遣することがたった今、統合幕僚会議で承認されました」
その真夜の言葉に董夜も雛子も驚いた様子はなく、むしろ予想通りといった顔をして頷いた。
「提案したのは………………」
「えぇ、もちろん私です」
それだけ聞くと董夜は立ち上がり、雛子もそれに続いて立ち上がった。そして二人はそのまま部屋を出て、屋敷の玄関とは逆の方向へ向かった。
それを見送った真夜は表情を変化させることなく執務室に向かう。その時の真夜の顔は既に『母親』ではなく『十師族当主』としての顔をしていた。
「この事件は歴史の大きな転換点となるはずだ」
「
四葉家本邸、その一角にある一般家庭のリビングより少し広いベランダ。そこで董夜は横浜の方向を向いて立ち、雛子はその後ろで跪いている。
今の二人はいつもの『兄妹みたい』などという暖かい関係ではない。
完璧なまでの『主人』と『私兵』である。
この二人の関係は董夜が昔、とある組織から雛子を拾った際の契約条件。『仕事の際の完璧なる上下関係』によるものだ。
しかし、それに対して雛子はなんの不満も持っていない。むしろ当然とさえ感じていた。
これで董夜が戦場でも雛子を『妹』のように扱おうものなら。雛子は董夜に幻滅し、董夜を殺すか、その元を離れるかしているだろう。
そんな雛子の目はとうに『
「よし、行こうか」
そう董夜が言った瞬間、ベランダに存在していたはずの二人の姿は一瞬にして消えた。
横浜が血に染まるまで残り数分。
【
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【パグローム】は【虐殺】のロシア語です。
なぜロシア語にしたのかというと、【虐殺】は英語で【マッサカー】だからで、そうすると何かインパクトがないからです!
シリアスめにしたいのに、肝心の主人公が董夜(マッサカー)だったら何か雰囲気崩れそうと思って変えました!
というか【マスター】とか【アサシン】とか、なんだかFateみたいになってきましたね笑笑