人と妖の夢   作:「NULL」

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交差する思い

朝の光が差し込む薄暗い部屋で、まだ温もりが残る布団の横で ぼーっと窓の外を眺めていた。

何を考えている訳でもなくただ、何も考えず寝起きの冴えない頭でうっすらと部屋に差し込む朝の光を見ていた。

 

ふと意識を戻しゆっくりと立ち上がり、半開きの襖を開けて部屋が永遠に連なっているかのように錯覚するような長い廊下を歩きながら昨夜の夢を思い出そうとしたが、断片的な映像だけしか覚えてはなかったが、しかし その時に抱いた感情はまだハッキリと胸の中に宿っていた。

 

夢だとわかっているのに、その場所に行き "彼女"に会って見たいと思いつつ、しばらく歩いていると 襖の奥から声がするのを聞きその部屋の前で立ち止まり耳を傾けた。

 

 

「飛龍、何故あなたが呼ばれたかわかっていますか?」

その声の主は、少年が胸を掴んだ、あの銀髪でどこか不思議な雰囲気のある女性だった。

 

「いえ....わかりません、まだ何もやらかしてませんがどういった要件でしょうか?」

少年は襖の前で飛龍の言葉に耳を傾けながら

(まだやらかしてないって....これから何かやらかす予定でもあるってのかよ....)

そう思いながら続く言葉に耳を疑った。

 

「飛龍あなたに命令します、あの少年を始末しなさい。」

そう無表情に告げるその瞳の奥は 確かな意思があった。

 

「しっ師匠....!?どうして急にそんな!? 胸を触られたとしても殺すまではしなくとも....」

そう驚いたように飛龍は白銀の女性に言ったが、そんな理由ではないことは銀髪の女性の眼を見ればわかっていた。

 

「はぁ....飛龍、あなたはまだ知らなくていい事です、その時になったら理由を教えましょう。あなたはこれまで通りあの少年の監視と、隙があれば近づき、私の合図があるまで今の状態を続けなさい。」

 

(ふむ、案の定思った通りの返事だな、早いところ立ち去るか....)

 

そう思い長い廊下を歩きだそうとした瞬間、いつからそこに居たのか最初から居たかのように佇む見覚えのある幼女がそこに居たのだった。

 

少年は周りに聞こえないように静かな声でその幼女に話しかけた。

 

「ヨモギちゃんって言ったっけ?ちょっと道に迷ちゃって、よかったらみんなが居る所まで案内して貰えないかな?」

 

ヨモギと呼ばれる少女は、幼さが残る整った顔立ちに薄紫色の長い髪を揺らしながらクリっとした大きな純粋な瞳で少年をしばらく見つめ、ゆっくりと頷きトボトボ歩き出した。

 

その後ろをしばらく無言で歩き続け、案内された部屋の前まで行きゆっくりと襖を開けたが、そこは本や雑誌、新聞などが乱雑に置かれている私的な部屋だった。

その部屋をしばらく見つめ、ここは誰の部屋か聞こうと後ろを振り返ると

「なあヨモギ、この部屋って誰の部屋だ.....?ってあれ?」

そこにはもう彼女の姿はなく、ただこの部屋の前に取り残された少年はゆっくりとその部屋に入り中に散らかっている雑誌や新聞に手を掛けた。

「ん...?なんだろうこの字は....どこか見覚えがあるんだけどなぁ」

そう独り言のように呟いて新聞に書いている字は読まずに、その隣に載っている写真を見つめた、その景色に少年は眼を奪われた。

その景色とは.....

 

「(ガタッ」

そう物音が聞こえたその先を見ると本棚から1冊の本が落ちていた。

その本を拾い上げ中を開くとそれは、少年が人形遣いから借りた1冊の童話だった。

(なんで俺が持っていた本がここに....?)

そう思いその本のページをめくっていると、後からまた聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「どうしてあなたがボクの部屋に居るんですかぁ?」

そう言われ振り返ると、本当に驚いた顔ですこし複雑な感情をやどした瞳で少年を見ている飛龍の姿がそこにあった。

 

 

「あぁ、朝ごはんを食べに行こうと思ってたんだが途中で道に迷っちゃってさ、知らないうちにこんな所まで来てしまっただけだよ。」

そう言って少年はとっさにその童話を懐に隠し、途中でヨモギに会ったことを誤魔化した。

 

「ふぅん?そうだったんですかー?それで何か面白いものでもありましたか〜?」

そう言って飛龍は少年をからかうように喋り出した。

 

「あぁ〜もちろんエッチな本とかはありませんけどね〜あははっ、あっでも少しエッチな写真とかはありますよぉ?」

 

「いやっ別にエッチな本とか期待してねえし!?....え!?でもエッチな写真はあるのか!?....」

 

 

「なんですかぁ?やっぱり興味あるんじゃないですか〜あははっ、今なら特別に見せてあげてもいいですよ?」

 

「い、いや!?別にそんな興味ねえし、でっでもせっかく見せてくれるってんなら見ておいてもいいかも知れんな〜」

 

「やっと素直になりましたね〜いいでしょうそれじゃあお見せしましょう! お風呂で撮った写真ですよぉ!服を着てないのはもちろん!ポーズまで決めてくれてますから!これは見るしかないですね〜今なら差し上げますので、ささっどうぞ受け取ってくださいな!」

 

やけに威勢よく勧めてくるのでその勢いに負けてその写真を受け取った。

 

「やけに、勧めてくるんだな?これでも一応、男だからな?そこまで言って詰まらんものだったら承知しないからな〜まったくどんなもん見せてくれるんだろう.....な......」

 

その写真は一言で表すなら"肉"だった。それもとても手が込んでいる、とても手入れされた、とても形の整った筋肉だった。

 

「.......」

しばらく少年は黙り込みその写真を見つめていた。

 

「おぉ!!そんなに嬉しすぎて言葉もでないですか!いやぁ〜渡した甲斐がありましたねー!喜んでくれてなによりですあははっ!」

 

そう言って悪戯っぽく笑う飛龍の顔に1発拳をぶち込みたいところだが何とか堪え、溢れる想いをたぎらせ写真ごとその拳で握りつぶした。

 

「なにが嬉しすぎて言葉もでないだよ!!その逆だぁぁ!!誰が野郎の裸見て興奮すると思ってんだ!朝からとんでもないもん見せてくれんなぁ!?おい!!」

 

「まぁまぁそう興奮しないでくださいよぉー、いいじゃないですか!筋肉!!それにその写真のモデルは豪さんですからいつでも会えますよ〜あははっ!」

 

「いやいや!?この写真みてこの人にこれからどんな顔して会えばいいんだよ!!むしろ身近に会える方が、かえってやりずらいわ!」

 

そう言って少年は息を切らしながら肩を揺らして呼吸を整えるなか飛龍は平然と話題を変えて少年を居間まで連れていき、やっと少年は朝ごはんを食べることが出来た。

 

朝食を終えたあと、少年は飛龍に行きたいとこがあると話をしかけた。

 

「なぁ飛龍、お前の部屋にあったあの新聞って誰が書いてるか知ってるか?」

そう言って少年は飛龍の方を見た。

 

「えーっとそうですね〜たしか天狗の広報部の方達が新聞を作っているって聞いたことありますけどそれがどうしたんです?」

 

「ん〜いや少し気になってさ、ちょっくら行ってみたいとこがあるんだけどいいか?」

 

「多分いいと思いますけど、どちらに?」

 

「ん、あぁ〜それはな....」

 

 

ちかづくに連れ、色々なことを思い出す妖怪の山のその麓まで来たところ、上を見上げれば崖の側面にひっそりと佇む数々の鴉天狗が往復している建物が見えた。

 

「よし、ここで間違いないようだな....はぁあぁ、それにしても結構歩いたから疲れるもんだな....」

 

「あなたが行きたいって言ったんですからちゃんとしてくださいよ?、ボクは今からここに居る知り合いに話が出来るか聞いてきますからちゃんと待っていてくださいね?」

 

 

「あぁわかった、ここで待ってるよ。」

 

「それじゃあ行ってくるので。」

そう言って飛龍はそびえ立つような崖を軽々と飛び越えてあっという間に数十メートル以上うえにある建物に入っていった。

 

「それにしても、夜来た時とだいぶ雰囲気ちがうなぁ....」

そう思い初めて妖怪の山に来た時を思い出していると、草むらの奥から物音が聞こえた。

ゆっくりと近づいて、物音が聞こえた所を覗くとそこには小さな袋が落ちていた。

不思議に思いその袋を拾い上げ袋を開けると、中には何も入っていなかった。

「ふむ、何か入れるものが欲しかったから丁度いい、使うか。」

そう呟き、ずっと懐に入れてあった人形遣いから借りた童話をその袋に入れて、しばらく待っていると後から聞き慣れない声を掛けられて ふと振り返るとそこには若い女の人が立っていた。

 

「えっと....何か用か?」

不審に思いそう話しかけたが返事はない。

女はただ無言で俯き、林の方に指を指す その方向を見ると昼でも薄暗くなっている深い木々の隙間から光が漏れ、そこだけが別の世界のように光の道を作っていた。

 

ゆっくりとその道を歩いてしばらくすると少年の周りを光が包み込み、肩にかけてあった袋とその中にある童話の本が光出したのを最後に見た後に、そのまま意識だけが光に飲まれたのだった。

 

少年を包み込んだ光と若い女性は、彼が読んでいた童話の1ページ目と全く同じ光景だと言うことに気付くまでには至らなかった。

 

 

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