目に眩しい朝の光が空に浮かぶ細い雲の隙間から見るもの全てを歓迎するかのように優しい光が地上を照らし、小鳥のさえずりがとても心地の良い音楽を奏でている。
少女の朝は早かった、里で誰よりも早く起き 毎日のように 里を見渡すことの出来る小高い丘を目指し今日も朝から走りだす。
そこで少女は独り静かな丘の上で朝日を眺めるのが毎日の日課であった。
とても見晴らしのいい その丘は里を 一望でき、この里を独り占めしているような気分にもなれる。
しかし、その日はいつもと違う日常が待っていた。
そこに居たのは気持ちよさそうに寝提灯をかきながら 眠る見慣れない格好をした少年だった。 余りにも気持ちよさそうに眠ているために起こすにも起こしづらい、と言うよりも少女にとっては邪魔だった、いつもならこの丘で1人 朝日を眺め 里を満足するまで独り占めする気分を味わった後に里に戻り仕事の手伝いをするのだが このままでは何かが満たされないと思い 少年を起こすことにした。
「ねぇちょっとあんた、こんなとこで何してんの? 聞こえてるの? ねぇってば!」
そこにいたのは目の下には深いクマがあり 血が染みた見慣れない服に整った顔立ちだが 寝ている顔はまだ幼さが残り、黒々とした髪が 朝の光を反射させている。
少し大きめな声で話しかけたが、少年の返事はなく その代わりに誰かの名前のような事を呟く寝言が聞こえてきた。
「...っ......ぃ.....」
(はぁ、誰の名前かしら? それにしても かなり大きな声で話しかけたのに全く反応がないわね、よし こうなったら)
そう思い 口元が薄く歪ませ無意識に笑っていることには気付かずに 気持ちよさそうに眠っている少年の上にまたがり少年の顔に自分の顔を近づけて 大きく息を吸い込み 思いきり叫んだ。
「おきなさぁぁぁぁい!!!」
突然の出来事に少年は無意識に飛び起きようとしたが、いつの間に またがっていた少女に手を押さえつけられ身動きが取れない状態で 何が起こっているか理解できない状況の中、自分の置かれている現状にまだはっきりとしない意識で、最初に思った疑問を口にした。
「えぇーと....お前 誰だ?」
「お前 誰だ? じゃないわよ! 何回 話しかけたと思ってるのよ!」
「そんなこと言ったって、まだぜんぜん寝足りないんだよ....頼むから静かにしてくれ。」
「ほぉぅ? この私を前にしてそんな態度でいいわけ?」
そう呟いた少女は自信満々に朝日に反射して黒く輝く瞳を輝かせ、あまり目立たない胸を自信満々に張り 少年の顔に強引に自分の顔を近づけ耳元で薄暗い笑みを浮かべながそっと呟いた。
「これであんたは今から私の言うことを何でも聞いてもらうわ、あはは」
「それじゃあまずあなたは、ここで寝ている時に妖怪に襲われかけていたのを 私が助けたのよ? 」
そう言って少年の目を覗き込み指を鳴らしたが、少年は退屈そうに半目で少女を見ていた。
「ふぅーん、そーですかぁ〜 俺が寝てる間にそんな事があったんだなー(棒)」
「なっ、なんで私の能力が通用してないの!?」
額に冷や汗を浮かべながら先程までの薄暗い笑はどこに行ったのか、
引き攣った笑みで少年の方を見た。
彼女がそう言ったのを見逃さずに少年は鋭く目を輝かせ不敵な笑みで少女の方を見た。
「なるほど、お前の能力は洗脳に似た類いだな?」
本来なら少年の耳元で彼女が何かを呟いた瞬間から少年の意識はすべて彼女の思い通りに出来るはずだが、少年は何かをされる前に瞬時に彼女の表情の変化に気付き最初に目が合った時から揺るがなく自信に満ちた少女の瞳の意志は裏を返せば、何をされてもどうにでも対処できる と、そう目で語っていた彼女を目が合ったその瞬間から警戒をしていた。
「洗脳なんかと一緒にしないでくれる! 私の能力は意識を操る程度の能力よ!」
「へぇ?そうかぁ まぁ知っていたけどな。」
そう言い少年は不気味な笑を浮かべながら少女の瞳を覗き込んだ。
「なっ なによ!? あんたも何かの能力を使う気ね!? そうはさせないんだから!」
少女はすかさず、少年の上にまたがり押し倒し少年を身動きが取れないように四肢を押さえ馬乗りの状態で少年を上から見下ろす姿勢で闇を映し出したかのような少年の瞳を覗き込んだ。
「そう言ったってお前の能力は見たところ、特定の条件や状況じゃないと発動しないんだろ? 俺にはそんな事しなくたっていつでも発動出来る。」
「それに俺の能力でお前を、どうこうしようとは思ってないから安心しろ、そのつもりならもうとっくにやってるだろ?」
すべてはブラフで、能力など少年には無く、あるのかさへ疑わしいが彼女が自分の能力が効かないことで、こちらも能力者だと疑っているのを利用してこちらにも隠し玉があると言うことをチラつかせ相手を牽制すると同時に相手の能力の情報を聞き出したことによって主導権は少年の方に傾いていた。
「確かにそうね、今はあんたの言うことを信じてあげるわ。」
「そうか、それなら早く俺の上から退いて貰えるか? お前やっぱり重いんだよ、あとさお前もっと大人っぽいパンツ無かったのか?そんな子供っぽいパンツ見せられても何も感じねえぞ?」
「ん? なんだよ怒ってるのか? 俺はただ思ったことを言っただけじゃねえか?それに うぁぉ!?」
と少年が言いかけたのと同時に少女は顔を真っ赤に染めて大声で叫んだ。
「こ、こ、こ、のぉ!あんた! よくも私のパンツ見たわね! 絶対に後悔させてやるんだからぁ!」
と、お決まりのセリフを彼女が言ったのと同時に少年は不敵な笑みを浮かべて少女が少年の耳元で呟くよりも先に少年の方から少女の耳元に先程 少女が言ったのと同じ言葉を呟いた。
「..っ..... ぃ.....」
と少年が呟いたのと同時に彼の意識は暗転した。
「うふふ! やっぱりコイツは私の能力の発動条件を完全に知ってなかった見たいね! まさか自分から私の能力にかかってくれるなんて本当バカなのね あはは!」
そう言って少年の上から離れ、木の下で意識がない少年を彼女の能力を使って、操り動かそうとした瞬間、少年の目が開き その目には複雑な模様が浮かび上がっていた。
「なっ!? まさか一つの体に2つの意識があるなんて!?絶対にありえない!」
彼女がそう言ったのと同時に少年は彼女の存在に気付き少女の瞳を見た。
先程までの少年とは違い、見た目は同じだがその複雑な模様を浮かべた瞳と目が合った瞬間に身体の隅々や心の中まで全てを見透かされるような錯覚を覚え、視線だけで相手を圧倒するまでの、どこか別の次元を見ているようなそんな瞳に言葉を失った。
「ここは何処で今はいつだ?」
そう言った瞬間、少女が自分に話しかけられているのに気付くまでに時間がかかるほど圧倒的な存在感を放っていた。
「こ、こ、ここは里の近くの丘で、今がいつなんて私には関係ないから知らないわよ!?」
「そうか 」
複雑な模様を浮かべていた瞳は 一瞬光を帯びて少年の瞳が薄紫色に変わったのと同時に腕を素早く振りそのまま空間を引き裂きその中に消えていった。
禍々しいまでの存在感を放つ少年を少し離れた場所で少年と同じような歪に引き裂かれた空間から上半身だけを出し全てを見透かすような瞳で妖艶なまでに美しい女性が口元を薄く歪ませながら呟いた。
「彼がまた戻ってきたみたいね? あなたの親友でしょう?」
そう言って妖艶なまでに美しい女性の背後に最初から居たかのように佇み挑発的にヘラヘラ笑う道化師と名乗る男にそう呟いた。