The ghost who doesn't know 知らない化け物 作:とみぃ@みずき
本当は前後編にしようと思ったんですけど...。
青八木さんってアニメだと茶髪ですよね?
【今泉俊輔の混乱】
「さて、逃げ込みはしましたけどこの先どうします?」
館の一室、塩を撒きまくった中に六人はいる。
玄関にも塩をやったので化け物が入ってくる可能性は低いとは思うが、あれに塩が効くとは限らない。
「つうか真っ暗やな。明かりはないんか明かりは」
鳴子がそうブツブツ言いながらポケットを探る。取り出したのは懐中電灯だ。
「なんで懐中電灯なんて持ってるんだ?」
「...肝試しとかに使えるやろかー、と思うて」
そんなこと考えてたのか。
今泉は鳴子から懐中電灯をひったくりスイッチを押す。
白い光が辺りを照らし、不安げな小野田、鳴子に鏑木と平然としている手嶋と青八木を映し出す。
「ていうか、明かりつけてバレないの?」
「ここには窓も無いみたいだし、大丈夫だ...ろ...」
今泉が照らした先。
そこに書いてあったのは、文字だ。
しかも、赤い文字。いわゆる________
「け、血液...?」
鏑木の震え声に青八木が頷く。
「少なくともペンキじゃないな」
「何やこれ、英語か...?」
鳴子が解読しようと目をこらし、今泉も読もうと近づいた。
「No one knows ghost's name.Because it's when I die when knowing.Therefore the ghost is called so....The ghost who doesn't know」
かすれ声。
全員が振り向くと、手嶋が顔を青ざめさせていた。ブルリと、今泉を寒気が襲う。
「手嶋さん...?」
小野田に手嶋は強張った笑顔を向ける。
「あはははは...いや、そんなはずはねぇ...きっと、何かの 「純太」
遮ったのは青八木だった。青八木は目に鋭い光を浮かべて手嶋を見つめる。
「お前の雰囲気が完全に変わった。動揺して雰囲気を変えるのを忘れたな、ニセモノ?...少々違う感じがするのは緊張しているからだと思っていたが」
「ニセモノ...!?」
鏑木が驚愕の声を漏らす。今泉も改めて手嶋を見るが、くるくるとした天然パーマや愛嬌のある顔、手嶋本人に見える。
見える、が。
どこか手嶋とは違うのだ。違和感というべきか。
何かが違う気もするし、手嶋本人な気もする。
分からない。
クッソ、あの人はオレが(こっそり)尊敬してる人だ!それくらい分かれよ今泉俊輔!
今泉の思考が堂々巡りをしている。頭をガシガシをかき、それが某マメツブと似ている仕草だと気づいて手を引っ込める。
「おいおい、何を言ってるんだ?オレは手嶋純太だぜ?」
手嶋はいつものような笑みを浮かべた。
少々キザな動作も、手嶋と変わりない。ふわりと漂う紅茶の香りも。
違うのだとしたら、コイツは思考でも読めるのか!?思考を読んで『手嶋純太』を作り上げたのか!?
「違う。お前は純太じゃない。純太をどこにやった?」
青八木の厳しい追及にも手嶋は動じない。小野田と鏑木に視線をやった手嶋は再び笑う。
「オレが誰だか、分かってるよな?小野田、鏑木」
「手嶋さん...?」
「そう、平凡な手嶋純太だ。おかしいのはお前だけだぜ、青八木。むしろ青八木がニセモノなんじゃないか?」
青八木さんが...?
全員が青八木を振り返る。
青八木は一瞬怯んだようだが、即座に立て直し手嶋の襟首を掴んだ。
「ちょ青八木!?」
鏑木は敬語を忘れてしまっている。いつもならば青八木が突っ込むのだが、青八木は手嶋だけを見ていた。
「なめるんじゃない!チーム二人としてどれだけオレたちがいたと思っている!どうやら真似がお得意のようだが、ボロを出したら霊感の強いオレが見抜けないはずないだろう!まず貴様は塩を受け取った瞬間即座に撒いたな?それは...塩が弱点だからでは無いのか!?」
青八木の叫びにも手嶋はうすく笑うだけだ。今泉を襲う違和感と寒気がますます強くなる。
「おいおい、それは両手を開けたかっただけだ。オレは塩がなくても大丈夫ってね」
違う。
コイツは________手嶋さんじゃない!
今泉が確信すると同時に鳴子が叫んでいた。
「お前手嶋さんやないな!手嶋さんなら、青八木さんにこんな対応するはずない!チーム二人は________」
「そんな、チームじゃないぞ...ニセモノさんよ」
声。
扉がぎしりと開く。
頭から血を流したもう一人の手嶋が、そこにはいた。
【青八木一の相棒】
手嶋はふらつきながらこちらへと歩いて来る。漂うのはダージリンの香り。
そのまま青八木の隣に立った相棒は小声で呟いた。
「ワリィ、青八木。ドジ踏んだわ」
「ああ」
手嶋はフッと笑うと、ニセモノを睨み付けた。
「よくもオレを殴り付けてくれたな。おかげで寂しく一人でティータイムをする所だったぜ?」
ニセモノは俯いていたが、その肩が小刻みに震えて...響いたのは、クク、ククク、という嗤い声。
「クククッ。あなたが一番化けやすいと思ったんですけどねぇ。まさか金髪の彼に見破られてしまうとは...もっと精進しなければいけないな」
しゅっと伸びた手が小野田を掴もうと動くが________鳴子がすんでのところで小野田を押し倒した。鏑木の方は今泉が庇う。
この二人は霊感が弱いのか、いまだ混乱しているようだ。だが、今泉や鳴子が守っている間は大丈夫だろう。
「おっとぉ、赤い君も長身の君も霊感があるようですねぇ?これは困ったな。【名無し】もこんなものを獲物に選ぶとは」
「【名無し】...?」
ニセモノは慇懃に頷いた。手嶋が横で「オレでカッコつけんな!」などと言っていたが当然無視。
「ええ。先ほどあなた方が出会った青い服の彼です。名には呪いがあり、知ったものは死ぬ...彼についての情報は無いと思っていたのですが...まさかアイツら、生き残るだけでなくこんなことまで書き残していくとは。これだから人間は」
先ほどの英文か。青八木がちらりとそちらの壁を見ると、文字はてらてらと光っていた。
「ばれてしまっては仕方ありません。この館の執事として申し上げます________ようこそ、食材さんたち」
うねうねうねとうねったニセモノは、ゲームのスライムのような形になった。そこから青八木になり、今泉になり、鳴子に、小野田に、鏑木になり...襲いかかってきた。
「シッ!」
ゴルフクラブで吹き飛ばそうと試みフルスイング。狙うは人間の弱点、腹部。
青八木の全力の一撃にニセモノは一瞬ぐうっと体を歪めたが、ニヤリと笑みを浮かべた。
「ダメっすよ、青八木さん。こんなんじゃ天才のオレ、倒せないっす」
声音もバッチリ鏑木だ。雰囲気も。
あの動揺した一瞬がなければ、きっと青八木ですら気づけなかったと思う。それほど完璧に近かった。
だが________これは鏑木じゃない!本物は後ろで、バカなりに現状を理解しようとしている!
「パーマ先輩と小野田くんを頼む!」
「鳴子!?」
今泉の驚きの声とともに、飛び出してきたのは鳴子だ。バットでニセモノの頭を殴り付け、「カーッカッカ!」と笑う。
「この浪速のスピードマンにしてホームラン王、鳴子章吉が相手や!」
「お前いつからホームラン王なんだよ」
「勿論最初からですー。ワイ、野球も得意でっせ青八木さぁぁん!」
いつものごとくうるさく騒がしく明るく。鳴子らしい。
というか、少しでも青八木を元気ずけようとしているのだろう、この赤いオールラウンダーは。
「それにスカシからマル秘作戦、教えてもらいましたしねぇ!」
「オレは教えてない!独り言を聞いていただけだろお前が!」
「ワイに向こうて言ってたくせにスカシィ!」
「たまたま視線の先にお前がいただけだ!」
「目までバッチリ見とったくせにぃー!」
「気のせいだ気のせい!」
(こんな時にも喧嘩かよ)
と、ここまで青八木は体調を気合いで押さえ付けていたが。
(クッ...こいつ、妖気半端じゃない。あとオレは...どれだけ戦える...!?)
妖気に耐性の低い青八木の体が、悲鳴をあげ初めているのだった。
【現在の冷静度】
手嶋...82%
青八木...90%
小野田...63%
今泉...79%
鳴子...77%
鏑木...62%
【今泉俊輔の策略】
「ワリィ、青八木。ドジ踏んだわ」
「ああ」
本物の手嶋がフラフラしながら青八木の横に並ぶ。
一年二年を庇う位置で。
「先輩カッコすぎるで」
「まったくだよ。なら、オレたちはコイツらを完璧に守りつつ考えるんだ。アイツを倒す手段を」
鳴子に囁き返すと、小野田がうしろでぼそりと呟いた。
「あのさ、手嶋さんって塩苦手なんだよね?」
「そうだな。手嶋さんが苦手な訳じゃないけど」
「入り口の回りには、塩いっぱい撒いてあるよね。投げつけるのはバレてもさ...」
「...ほう」
「へ?へ?小野田さん、何か思い付いたんすか?」
「イキリ、ちょっと黙れ」
入り口の回りには塩。つまり、そこにニセモノを押し倒すことが出来れば________しばらく無効化はできる。
「おい、小野田」
「ひゃいっ!?やっぱダメだよね、ごめん今泉くん」
「何を言ってるんだ、ナイスアイディアだ!小野田、お前すげぇよ!」
今泉は手の斧を握りしめた。オレが行く、と言おうとした瞬間。
「悪いなスカシ。良いところは持ってくで?...パーマ先輩と小野田くんを頼む!」
「鳴子!?」
鳴子がドン、と手嶋を突飛ばし________慌てて鏑木が受け止めていた________青八木の横に躍り出た。
「オレ、前世で何かしたかなぁ」
頭を殴られ突き飛ばされた事に対してぼやく手嶋を無視して鳴子は某山神を思わせるような決めポーズをとる。
「この浪速のスピードマンにしてホームラン王、鳴子章吉が相手や!」
あの野郎。
良いとこ取りやがって。
末代まで呪ってやろうか。
いつもみたいな言い合いをしながら鳴子の背中を見る。嫌なくらい信頼のしがいがある背中。コイツが前を走るだけで、絶対に抜くと思いたくなる背中。
派手でカッコいいじゃねぇか、鳴子よぉ。
「カッコイイっす、鳴子さん________!」
「でしょ?鳴子くん、カッコいいんだ。どんなときでも先頭を走って、カーッカッカッカって」
「小野田さんも今泉さんも手嶋さんもカッコいいっすよ。先輩たちマジカッコよすぎっすよ」
青八木も。その呟きが一番に言いたかったとこなのだろう。小野田もにこにこと笑った。
「青八木さん、カッコいいよね」
「...うす」
青八木と鳴子は前で激しく戦っている。コイツら呑気すぎだろ。
というか、正直守る必要あるのだろうか。二人で押さえきっているのでこちらまで魔の手が伸びないのだ。
今泉の僅かな油断が、襲いかかられる原因となった。
誰に?
...今泉にだ。
今泉の視界に、自分自身の姿が広がった。
【鳴子章吉の信頼】
「先輩、案外強いっすね」
「いい加減カブの真似やめいボケ!」
鳴子の何十回目かのフルスイング。だんだん塩が撒いてあるエリアに後退させられているものの、そのスピードは遅い。
「オレが________鳴子さんなんかの策略にかかるわけないじゃないっすか」
ニセモノがクルリと一回転し今泉に変わる。あのスカシた笑顔でジャンプし、青八木と鳴子を飛び越えた。
「アホやな!そっちには本物のスカシがおるわ!」
鳴子の振り向き様の一撃。狙い違わず目の前には斧を握った今泉が________
「バカそれはオレだ!」
「!?」
今泉の叫び声。
咄嗟にバットを止めてしまう。
「コイツ...今泉に飛びかかって!どっちだ!?」
手嶋の焦りの声。
これを狙ってたんやなニセモノ!なんちゅう卑怯な奴や!
「無口先輩!無口先輩なら________」
青八木を見た瞬間、鳴子は自分の顔が蒼白になるのを感じた。
立っているのもつらそうな青八木の口から、血が垂れている。そばには血溜まり。吐血したのか...!?
「休め青八木!オレが出ますっ!」
鏑木が青八木を小野田に預けて飛び出す。青八木はゼイゼイと息を吐きながら手嶋を見た。
漆黒の瞳と茶色の瞳が交錯する。
「青八木にも分からないのか...!?」
呆然と呟かれる言葉。青八木はくたりと倒れ目をつぶる。小野田の悲鳴が響く。
今泉二人はお互いに向き合って火花を散らしているし、手嶋も手負い。
ヤバい。
「めちゃくちゃビリビリする状況やんけ!!」
「本当っすよ!」
そんなことを叫ぶと、青八木が僅かに目を開けて呟いた。
「...感じろ...鳴子。お前はちょっと霊感、ある。今泉だ...信頼してる、親友だろ」
「ワイの親友勝手にアホスカシにせんといてください!」
一応二人の今泉を見ては見るが、違いはまったく分からない。
親友では断じて無い!でも、小野田くんとスカシとワイでインハイで手を繋いでゴールする、そう言った仲や!考えろ、考えろや鳴子章吉ィッ!
いや...
「感じる...!」
赤い虹彩が煌めく。一瞬見えた________青い、まるで超高温のような炎に包まれた今泉と、黒いうねうねとした気味の悪いマーブル模様に包まれた今泉が。
「右やぁあああああああ!!!!」
鳴子は右の今泉に向けてバットを降り下ろした。
【手嶋純太の相棒】
鳴子が降り下ろしたバットは今泉の頭をかちわらず________ねっとりと溶けてバットを受け止めた。
「鳴子さん凄い!」
鏑木の称賛に鳴子はフッと勝ち誇った顔をした。
「どーやスカシ!分かったで!」
「たまにはすごいな鳴子!」
今泉と鳴子は一瞬にらみ会うと、拳を触れあわせる。パチリと火花が飛び散ったように思えたのは手嶋の気のせいだろうか。
「まったくお前らは...諦めて食材となるべきなんだよ」
「悪いがオレは喰らう方なんだよ!」
「カーッカッカッカ!スカシ、狼やのうてお前ウサギやろ!」
「それは好きな動物だ!」
仲の良い掛け合い。本人たちに言ったら殺されるだろう。でもやはりコイツらは仲間で、強い信頼感で結ばれている。
「青八木さん、青八木さん...」
小野田が必死で青八木の肩を揺すっているが、先程の鳴子へのアドバイスをしたのを最後に青八木は目をつぶってしまっている。
「何で青八木さん突然倒れたんですか...!?」
「...青八木ってさ、幽霊や化け物が出す『妖気』に弱いんだよ。この前も吐血したし」
青八木はよく無理をする。
それは、青八木を慕っている鏑木に可愛い二年生、そしてオレのためなのだ...。
手嶋は青八木の茶色い髪をそっとすいた。
読んでくださりありがとうございます。
指摘感想etcお待ちしております。
はやく手嶋さんの紅茶クッキー欲しい...!