魔法戦士リリカルSEED Strikers   作:ぬらりひょん

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PHASE-11

二年前 新暦○○七四年 三月 時空管理局 1039航空隊

 

雷鳴のような破砕音に、その戦闘を見守る全ての人間が息を呑んだ。

巻き起こった衝撃波が周囲の障害物を吹き飛ばす。

それに紛れ、一つの影が空中に躍り出た。

影の正体は、その手に持った片手杖型のストレージデバイスを構え、宙に浮かぶもう一つの影に襲い掛かる。

 

「フォトンスラッシュ!!」

 

その言葉をトリガーに、ストレージデバイスが魔法を発動する。

ミッド式の基礎的な斬撃魔法『フォトンスラッシュ』。

圧縮した魔力を刃にして斬りかかるという至ってシンプルな攻撃魔法だが、それ故に扱いやすく、射撃魔法と比べると魔力消費も少ない。

更に、自らの身体をブーストで強化している為、低ランクの魔導士ならバリアごと切り裂かれてもおかしくはないだろう。

 

「甘いよ!」

 

だが、相手は低ランクどころか、S+ランクのエース級 の魔導士だった。

高町なのは。

彼女は、エースオブエースの名に相応しい実力を遺憾無く発揮し、その攻撃をシールド系防御魔法のプロテクションで軽々と防いでみせた。

 

「攻撃が直線的過ぎるよ。でも、魔力の圧縮率は合格点かな」

 

魔力が激しくぶつかり合う中、なのはは笑みを浮かべて相手の攻撃をそう評価する。

対する相手、キラ・ヤマトは、その挑発とも取れる言葉に対し余裕のある笑みで答えた。

 

「まだ、終わりじゃないですよ」

 

直後、フォトンスラッシュの魔力刃がなのはのプロテクションを「噛んだ」。

 

(ッ!バリアを「噛む」性質を付与してーー)

 

気付いた時には遅かった。

キラは魔力刃をデバイスから切り離し、距離を取る。

 

「セイバーブラスト」

 

その言葉に反応し、爆発する魔力刃。

大きな魔力を圧縮して作られた分、その威力は絶大だ。

プロテクションごと魔力爆発に巻き込まれたなのはは、爆煙に紛れて見えなくなる。

 

「フォトンバレットーー」

 

攻撃の手を休めず、追撃に移るキラ。

周囲に複数のフォトンバレットを展開し、それを集束させる。

 

「ーースパイラルシフトッッ!!」

 

集束した魔力弾が、螺旋状の魔力砲となり撃ち放たれ る。

キラが得意とする集束系の砲撃魔法『フォトンバレッ ト・スパイラルシフト』。

あの空港跡地での一件で生み出された、キラのオリジナル魔法だ。

一年の訓練を経て、その威力は格段に上がっている。

直後、攻撃の命中を示すように、一際大きな爆発が起こった。

 

「……やった、のか?」

 

その爆発を見て、キラは期待に胸を踊らせる。

手応えはあった。何より、今の自分の全力全開をぶつけた。

これで駄目なら、もう自分に勝ち目はない。

そう心の中で自答する。

だが、キラは知らなかった。

 

「うん、今の攻撃は良かったよ」

 

その台詞が、圧倒的な敗北フラグであることを。

 

「じゃあ今度は、こっちの番だね!」

 

瞬間、キラの四肢が桃色のリングバインドによって拘束される。

その強度はキラのそれとは比べ物にならない域に達しており、解除は絶望的に思えた。

 

「ディバイィィィンッーー」

 

煙が晴れて見えてきたその姿に、キラは自分の敗北を 悟った。

その膨大な魔力の奔流は、見ていていっそ清々しくも あった。

何て事はない、この結果はいつものことだ。

問題なのは、

 

「なのはさん、僕、もう魔力残ってないんですけど」

 

「ーーバスタァァァァァァァァッッ!!」

 

これが、キラ・ヤマトが受けた最後のディバインバス ターとなる。

その回数、実に三二回。

後にも先にも、これだけの数のディバインバスターを受けたのはキラ・ヤマトただ一人だろう。

ーーなんて自慢にならないことを思いながら、キラは遠く意識を手放した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「ーーラ!……キラッ!?大丈夫!?」

 

「ハッ!」

 

自分を呼ぶ声に、ふと意識を取り戻すキラ。

見ると、フェイトが心配した様子で顔を覗きこんでい た。

 

「す、すみません。あまりの恐怖に意識が過去へトリップしてました」

 

「……一体どんな教導を受けたらそこまで酷いトラウマ になるの?」

 

「知らない方がいいですよ。しばらくピンク色が怖くなりましたから」

 

遠い目をしながらそう答えるキラに、フェイト自身も過去になのはから受けた集束砲撃魔法を思い出す。

確かに、あれに呑み込まれた時は死んだと思った。

 

「キラ、頑張ったんだね」

 

「はい。お陰で今では生半可な砲撃魔法にはちっとも怯まなくなりました」

 

「それはそれで……ちょっと心配かな。あ、着いたよ」

 

無駄に自信気なキラに苦笑するフェイト。

そうこうしている内に、車は目的地へと着いたようだ。 そこは、ミッドチルダの中央区画にある日本料理店だった。

全室個室で値段もそれなりだが、料理はそれ以上のものを提供してくれると評判の店だ。

 

「じゃ、行こっか」

 

「……は、はい」

 

緊張から、車を降りる動作さえぎこちないキラ。

そんなキラを見兼ねて、フェイトは優しく声をかける。

 

「大丈夫。私もある程度フォローするし、それに言ったでしょ?私も同じことをしたはずだ、って。それはきっとなのはも同じだよ」

 

「は、はい。いや、問題はそこじゃなくて……」

 

「え?どういうこと?」

 

「………いえ、何でもないです」

 

キラがこれ程までなのはに怯えているのは、大規模火災の救助活動に独断で参加した件をなのはに知られたからだと思っていたフェイトだったが、キラの様子を見るとそれだけでは無さそうだった。

 

(でも、どんな理由であれキラは私の部下なんだ。私は 上司として、部下を守る責任がある)

 

そう心の中で誓い、気合いの入った表情で入店するフェイト。

その後に続き、虚ろな表情のキラも入店する。

その後、着物姿の店員に案内され、事前に予約していた部屋へと向かう。

 

「こちらの部屋になります。料理はすぐにお出しいたしますので」

 

「はい。ありがとうございます」

 

こうして和室の部屋の前に着いた二人は、店員が見えなくなると貼り付けていた笑顔を外し、緊張した面持ちで息を呑んだ。

なぜだろうか。誰もいないはずの部屋から、ふすま越しに圧倒的なオーラのようなものを感じる。

 

「これ、確実に中にいますよね」

 

「う、うん」

 

「フェイトさん、開けてください」

 

「え!?私が開けるの!?」

 

「当たり前じゃないですか、僕に死ねって言うんですか?」

 

「ふすまを開けただけで人は死なないよ!」

 

虚ろな瞳で惚けた返答をするキラに一通り突っ込んだ後、フェイトは恐る恐るふすまに手を掛ける。

ふすまの先にいるのは最も親しい友人の筈なのに、最強の魔王に挑戦する勇者のような気分だった。

 

「それじゃあ、開けるよ」

 

「………お願いします」

 

そうして、意を決してふすまを開けるフェイト。

 

 

そしてその先に、魔王がいた。

 

「フェイトちゃん、キラくん、待ってたよ。久し振りだね」

 

高町なのは。

フェイトの無二の親友であり、そしてキラの魔法の師でもある。

戦時のエースが戦争のない時に就く仕事、と言われる戦技教導隊に所属するエース級の魔導士。

着いた異名は『エースオブエース』。

 

「う、うん。久しぶり、なのは」

 

「………お、お久し振りです」

 

笑顔を浮かべるなのはに、戦々恐々となるフェイトとキラ。

そう、なのはは確かに笑顔だ。表面上は。

だが、その目は圧倒的に笑っていなかった。

 

「ごめんねフェイトちゃん。今日急に予定が空いちゃって、それでシャーリーから今夜フェイトちゃん達が一緒に食事するって聞いたからメールしたんだけど、迷惑だったかな?」

 

「う、ううんそんなことない!むしろ嬉しいよ!ね、キラ!」

 

「は、はい!もちろんです!」

 

終始笑顔のなのはに圧せられるフェイトとキラ。

キラに至っては、顔から血の気が失せている。

 

「そっか、良かった。………ところで、キラくん」

 

すると、そんななのはの瞳がキラの瞳を捉えた。

 

「は、はい!」

 

なのはに名前を呼ばれ、自然と背筋が延びるキラ。

キラにはわかる。今のなのはは、本気で怒っている。

本気で、キラの為に怒っている。

 

「少し、お話しよっか」

 

となれば、キラに拒否権などあるわけもなく、

 

「お手柔らかに…お願いします」

 

その言葉に、大人しく従う他無かった。

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