魔法戦士リリカルSEED Strikers   作:ぬらりひょん

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PHASE-16

新暦○○七五年 四月

ミッドチルダ中央区画湾岸地区

古代遺失物管理部『機動六課』本部隊舎

 

「機動六課課長。そして、この本部隊舎の総部隊長、八神はやてです」

 

自身が到着すると同時に、部隊長らしい堂々とした態度で結成式を始めたはやては、これから自分の部下となる隊員たちの姿を誇らしげに見渡しながら言葉を紡いだ。

 

「平和と法の守護者、時空管理局の部隊として事件に立ち向かい、人々を守っていくことが、私たちの使命であり成すべきことです。実績と実力に溢れた指揮官陣。若く可能性に溢れたフォワード陣……」

 

そう言ったはやての目に映るのは、四人の若き魔導士。

エリオ・モンディアル。

キャロ・ル・ルシエ。

ティアナ・ランスター。

スバル・ナカジマ。

この四人は、機動六課のフォワード部隊であるライトニング分隊、スターズ分隊にそれぞれ所属する新人魔導士達だ。

各々がまだ未熟ながらも高い志と才能を秘めている。

その片鱗をそれぞれの瞳から確かに感じとると、はやては満足げな笑みを浮かべ、改めて言葉を続ける。

 

「それぞれ優れた専門技術の持ち主のメカニックやバックヤードスタッフ。全員が一丸となって、事件に立ち向かっていけると信じています」

 

はやてが長年夢見てきた部隊、機動六課。

それが、今ようやく始まった。

その為に尽力してくれた上司達と、手伝ってくれた仲間、そうして集まった全ての人々に感謝し、はやては晴れやかな笑顔を浮かべる。

 

「 まぁ、長い挨拶は嫌われるんで、以上ここまで。 機動六課課長及び部隊長、八神はやてでした!」

 

最後は何ともらしい閉め方で挨拶を終えると、

壇上を降りるはやて。

こうして、はやての夢の部隊は幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

結成式を終えると、機動六課のスタッフはそれぞれの職務に着いた。

それは、フォワードの新人達も例外ではない。

そんな四人を引き連れて隊舎の廊下内を歩いているのは、指導員役である高町なのはだ。

 

「そう言えば、お互いの自己紹介はもう済んだ?」

 

後ろを歩く四人に対し首だけで振り返ると、にこやかな笑みを浮かべてそう尋ねるなのは。

その瞬間、フォワード四人は姿勢を正し、それに答えた。

 

「え、えっと……」

 

かと思われたが、なのはに視線を向けられた少女、スバル・ナカジマは、少し戸惑った様子でそう口ごもった。

青いショートヘアと明るく元気な表情が、活発そうな雰囲気を醸し出しているその少女は、四年前の空港火災でなのはによって救助されたあの少女だ。

あれから四年経ち、管理局の魔導士となったスバルは、はやてにその才能を見出だされてこの機動六課にスカウトされたのだが、憧れの存在であるなのはを前に少々緊張しているようだった。

すると、そんなスバルを見るに見兼ねたのか、隣を歩く少女がなのはの問いに答えた。

 

「名前と、お互いの経験やスキルの確認はしました」

 

この少女が、スバルと共にスカウトされたティアナ・ランスターだ。

真面目そうな顔立ちに橙色のツインテールが特徴的で、その外見通り性格も真面目で少々堅物である。

訓練校時代からスバルと組んでいる彼女は、能力的にも性格的にも対照的で、ある意味相性の良いコンビとも言えた。

実際、前所属である陸士386部隊では二人共に優秀な実績を残している。

すると、

 

「あと部隊分けと、コールサインもです」

 

そうティアナの後に続いたのは、癖のある赤髪に、幼いながらも整った顔立ちをした少年、エリオ・モンディアルだった。

まだ一○歳ながらも魔導士ランクBを保有する、才気溢れるその少年は、フェイトの推薦で機動六課のフォワード部隊に配属された。

そして、そんなエリオと似た境遇なのが、隣に立つ桃色の髪と幼くも可愛らしい顔立ちをした少女だ。

名前は、キャロ・ル・ルシエ。

彼女もまた、エリオと同じくフェイトの推薦によって機動六課へと入隊した。

二人は共にフェイトに保護されたという共通点があるのだが、エリオは時空管理局の保護施設、キャロは他の管理世界の保護隊にそれぞれ所属していた為、互いに顔を会わせるのはこの機動六課が初めてであった。

故に、同じ分隊に所属するパートナーでありながら、その関係はスバルとティアナに比べるとまだまだぎこちなさが否めない。

 

「そう、じゃあ訓練を始めたいんだけと、良いかな?」

 

そんな初々しい四人を微笑ましげに見ながら、なのははそう声をかける。

すると、

 

「はい!」

 

と、四人同時に踵を合わせて返事をした。

その光景になのはは思わず目を細める。

思い出す光景に映るのは、なのはが初めて長い時間をかけて育てた少年の、四年前の姿である。

 

(確か、キラくんも最初はこんな感じだったなぁ)

 

フォワード四人と一番弟子の姿を重ねたなのはの顔に、思わず感慨深げな笑みが浮かぶ。

と、その時、

 

「あ、あの……ちょっといいですか?」

 

そんななのはに、不意にスバルが声をかけた。

 

「なに?どうしたのスバル」

 

それに対し、優しげな笑みを浮かべてそう返すなのは。

するとスバルは、相変わらず緊張した様子でこう訊ねた。

 

「キラ・ヤマト一等空士は、訓練に参加するんでしょうか?」

 

「……え?」

 

てっきり訓練に関する内容かと思っていたなのは、その質問に意表を突かれた。

直後、隣にいたティアナがスバルの後頭部を叩き、厳しい表情を向ける。

 

「このバカスバルッ!今はそんな場合じゃないでしょう!」

 

「い、痛いよティア~」

 

「うっさい!少しは自重しなさいよ!」

 

「うぅ……ふぁっふぇぇ」

 

厳しい叱責に涙目になって反論するスバルだが、ティアナは聞く耳を持たずにスバルの頬をつねる。

その光景を苦笑しながら眺めつつ、なのははふと思い出す。

 

(そっか。確かスバルは……)

 

四年前の空港火災。

あの事故に巻き込まれたスバルは、なのはに救助される前に一度命の危機に瀕していた。

そんな彼女を助けたのが、奇跡的にその場に居合わせていたキラ・ヤマトだった。

その後の二人がどうなったのかなのは知らないが、キラの様子を見る限りだと再会していないのだろう。

 

「安心して、スバル。すぐ会えるはずだから」

 

そう言って微笑むなのはは、ふとある方向へ視線を向ける。

そこは、丁度隊舎内の部隊長室がある方向だ。

 

「キラくんも、今頑張ってるはずだから」

 

そう言って、今頃部隊長に散々コキ使われているであろう愛弟子の顔を思い浮かべるなのは。

それに思わず浮かびそうになる苦笑を堪えながら、改めてスバルに視線を向ける。

 

「だから、今は訓練頑張ろっ!成長したスバルを見せてあげたら、キラくんもきっと喜ぶはずだから!」

 

「……は、はいっ!」

 

なのはの言葉に力強く返答するスバル。

三度目の再会は、刻一刻と近付いていた。

 

 

 

 

 

 

時間は少し遡り、機動六課が発足する数週間前。

スバルとティアナがBランク昇格試験を受け、機動六課にスカウトされた翌日のことだった。

 

「キラ・ヤマト一等空士?」

 

「そう。それがこの間、私達を助けた男の名前よ」

 

隊舎の寮の自室にて、液晶端末に映し出された情報を見ながらティアナは答えた。

その情報とは、ティアナが個人的に調べたキラに関する情報の一部だった。

 

「キラ・ヤマト。年齢は一九歳。本局の短期予科訓練校の出身で、その後高町一等空尉の推薦で戦技教導隊で半年間教導を受けてる。それからはあのフェイト・T・ハラオウン執務官の補佐として、主にロストロギア関連の事件に携わってるわね」

 

「ロストロギアって、八神二等陸佐が言ってたあの?」

 

「そ。かなり危険な任務も担当していたみたいだけど、それだけの実力はあるみたいね。魔導士ランクは陸戦がA、空戦がB。どちらの試験も一発で合格してるわ」

 

そう言って、更に詳細なデータを開くティアナ。

そこに並べられたデータに、スバルは関心を通り越して若干引き気味に苦笑する。

 

「ティア、よくこれだけ調べ上げたね。ストーカーみたいだよ」

 

「アンタが調べろって言ったからそうしたんでしょうがっ!Bランク試験の準備を片手間にどれだ大変だったと思ってんのよこのバカスバルッ!」

 

「痛い痛いっ!ギブ!ギブアップだってばティア!」

 

抵抗する間もなく間接技をかけられ、悲鳴を上げてタップするスバル。

その声を無視し気が済むまで技をかけ続けた後、ティアナは再びデータに目を通す。

 

「……それに、一応私も気になってたしね」

 

「お姫様抱っこされたから?」

 

「そう、人生初のお姫様抱っこがまさかあんな形で……って違うわよバカッ!」

 

「おぉ~ノリツッコミ。ティア腕上げたね!」

 

「やかましいわっ!」

 

腹の立つ笑顔でサムズアップを決めるスバルの脳天に拳骨を降り下ろす。

そうしてティアナは悶絶するスバルを見下ろし一つ溜め息を吐くと、機を取り直してこう続けた。

 

「そうじゃなくて……調べてみてわかったけど、この人ランクのわりに、潜在魔力値は平均よりちょっと上ぐらいの数値しか無いのよ」

 

「~~ッッ。ど、どういうこと?」

 

「つまり、魔力資質的に見れば、キラ・ヤマトは凡人の域を出ないって訳」

 

そう言って液晶端末から顔を逸らし、鏡に視線を移すティアナ。

そして、スバルにも聞こえないような声で呟いた。

 

「……私と同じでね」

 

その瞳に映るのは、ティアナが胸に抱える高い向上心とは裏腹な、強い劣等感だ。

 

「え?ティア、今何て言った?」

 

案の定聞こえなかったのか、首を傾げてそう訊ねるスバル。

それを聞き流し、誤魔化すようにティアナは続ける。

 

「なんでもないわよ。とにかく私が言いたいのは、この人も六課に出向という形で参加することが、先日正式に決定したってこと。二度も助けてもらったお礼をするなら、またとないチャンスなんじゃないの?」

 

「う、うん、そうだね。この間はいつの間にかいなくなっちゃってたし、きちんとお礼言えなかったから」

 

「っていうか救援要請を受けて無かったってのが驚きよね。本局の執務官補佐って自覚あるのかしら」

 

「もうティア、助けてもらったのにそんな言い方……」

 

ティアナの棘のある言葉をやんわりとたしなめるスバル。

それに「はいはいごめんごめん」と適当に返事をしながら、ティアナは考えていた。

魔力資質は凡人でも、優秀な魔導士になる方法は確かに存在する。

その例がキラ・ヤマトであるならば、是非間近でその力を見てみたい。

そしてその力は、きっと自分の糧になる。

 

(私は、もっと強くなりたい)

 

何より、ティアナはこのキラ・ヤマトという男が気に入らなかった。

自分と同じ凡人であるにも関わらず、高い魔導士ランクを保有し、あまつさえ自分が目指す執務官の補佐として働いている。

 

(ランスターの弾丸は、こんな奴なんかに負けないわ)

 

心に静かな闘争心を燃やすティアナ。

そんなティアナに首を傾げつつ、「楽しみだな~、キラさんに会うの!」と能天気な声で言うスバル。

各々が違う思いを抱えながらも、その目的は共通していた。

スバルは、助けてもらったお礼を伝えるため。

ティアナは、その能力を自分の糧とするため。

二人は、キラ・ヤマトとの再会を、心から望んでいた。

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