魔法戦士リリカルSEED Strikers   作:ぬらりひょん

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PHASE-24

それにしてもピーキーなデバイスだーーと、充分使いこなしておいて何だが、キラは思った。

ストレージデバイス『F4U』は、正直デバイスとしては不良品も良いところだ。

通常、ストレージデバイスとは魔法を記憶するだけの媒体である。

だが、機能最適化の為の最低限の自己判断機能を備えているものも多く、実際この機能により窮地を脱する場合も少なくはない。

デバイスの選択の際は処理能力を重要視するクロノが持つデュランダルにも、自己判断機能と音声返答システムが搭載されている。

だというのに、キラのF4Uにはその最低限の機能すら搭載されていない。

搭載されているのは、登録した魔法を認識し発生させる機能、発現した魔法を解析する機能、三つの変型機能、それとおまけ程度の音声認識・発信システムのみだ。

故に、それ以外は全て術者であるキラが行わなければならない。

 

「距離算出、ターゲットマルチロック…完了」

 

『Photon Bullet Multishot.』

 

だが、キラにとってそれはデメリットにはならない。

それどころかむしろ、好都合だとばかりに使いこなしてみせた。

実際、魔法の選択から発動までの速度は、なのはやフェイトと比べても全く遜色ないうえ、状況にもよるが上回ってすらいる。

更には、状況に合わせて登録されている魔法の最適化をリアルタイムで行うという神業染みたことまでやってみせていた。

 

「す、凄い」

 

「あれだけの数のガジェットを……」

 

無数の飛行型ガジェットをオールレンジの射撃魔法で正確に撃ち落とすキラの姿に、エリオとキャロは感嘆の声を挙げる。

 

「二人共気を抜いちゃ駄目だ!まだ戦闘中だよ!」

 

「ッ! は、はい!」

 

「す、すみません!」

 

珍しく厳しい口調で二人を叱咤するキラ。

そこでようやく我に返った二人は、再びリニアレール上の大型のガジェットに意識を向ける。

するとそれに気付いたからか、もしくは戦況が不利と判断したのか、ガジェットは残ったアームを器用に使いその場から離脱しようとしていた。

 

「空は僕が押さえる!だから二人はあの新型を!」

 

無数のガジェットに取り囲まれながらも、キラは一抹の迷いもなくそう言った。

 

「はいっ!」

 

それに応え、エリオはストラーダを構える。

先程は邪魔をされたが、キラが来てくれた以上もうそ の心配はない。

 

「一閃必中!!」

 

声と同時に展開されるベルカ式の魔方陣。

ストラーダの槍の穂からは魔力がロケットのように噴射し、一気に敵を貫かんと加速する。

軌道は直線的だが、キャロのブーストが掛けられていることもあり、その威力は絶大だ。

超高速で放たれた突きは、何の苦もなくガジェットの装甲を貫いた。

 

「だあぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

気合いの入った声と共に、装甲を貫いた状態のストラーダで切り上げ、ガジェットを両断するエリオ。

切り裂かれたガジェットは、成す術もなく機能を停止し、爆散する。

同時に、上空での戦闘も決着が着いたようで、全ての飛行型ガジェットが装甲を貫かれて大破していた。

 

『エリオ、そっちは大丈夫?』

 

上空を制圧したキラが、通信越しにエリオに訊ねる。

それを受け、自身の身体を改めて確認する。

幸い、目立った外傷も無い。ストラーダでの加速による身体的疲労も、普段の訓練の甲斐もあり大したことは無かった。

 

『はい、大丈夫です!僕もストラーダも問題ありません!』

 

『そう、良かった。キャロは?』

 

エリオの返答に安堵した様子で頷いたキラは、続けて上空のキャロへと問い掛ける。

 

『私も大丈夫です。エリオ君が守ってくれましたから』

 

それに対し、キャロは笑顔でそう応えた。

見たところ、キャロの方も外傷は無い。

その言葉通り、ガジェットの攻撃からエリオが身を呈してキャロを守ったのだろう。

 

『そっか……うん、良いコンビになってきたね、ライトニングは』

 

そんな幼い二人の成長に、場違いながらも微笑ましく思うキラ。

フェイト程では無いにしろ、この二人とはそこそこ長い付き合いがある上、各々が抱える悩みや苦悩も知っている。

それだけに、二人の成長ーー特にキャロの竜召喚の成功は、キラにとってもとても喜ばしいことだった。

 

『キラくん、聞こえる?』

 

「八神部隊長?」

 

不意に聞こえた通信越しのはやての声に、三人は耳を傾ける。

出動前のはやての様子を思い出したキラは、少し心配になりながらその通信に応答した。

 

「こちらロングアーチ04。ライトニングの二人も一緒で、どちらも無事です」

 

『うん、こっちでも確認しとるよ。とりあえず三人とも無事で良かったわ』

 

キラの応答に冷静な口調で応えるはやて。

そのいつもと何ら変わらない様子に安心したキラは、続けてはやてに指示を仰ぐ。

 

「こちら側のリニアレールの制圧は完了しています。残りはスターズの援護と、なのはさん達の救出ですが……」

 

『うん、せやね……』

 

「すみません、少しよろしいでしょうか!」

 

キラからの報告を受け、改めて指示を与えようとしたはやての声を遮ったのはエリオだった。

真面目な彼が隊長であるはやての言葉を遮って発言したのが意外だったのか、キラは驚いた様子でエリオを見る。

 

『何やエリオ。状況が状況やから、質問なら簡潔にな』

 

キラ同様多少驚きはしたものの、エリオの突然の発言を受け入れるはやて。

すると、エリオは一度キャロと顔を見合わせ互いに頷くと、凛々しい表情でこう続けた。

 

「スターズの援護には僕とキャロの二人で向かいます。なので、キラさんにはフェイトさん達の援護に向かって欲しいんです!」

 

 

 

 

 

 

結界の中で繰り広げられているのは、戦闘というより、最早戦争だった。

無数の弾丸、無数のミサイルが飛び交い、それらを桃色と金色の魔力砲が一掃し、大規模な爆発が立て続けに起こる。

それらがたった三人の魔導士によって繰り広げられているのは戦闘だとは、誰が見ても咄嗟には予想出来ないだろう。

 

「ディバイィンっ!」

 

『Buster.』

 

そうしている間にも、三人の魔導士の内の一人、高町なのはが放った魔力砲が、正確に標的である魔導士を捉えた。

 

「バルディッシュ!」

 

『Thunder Smasher.』

 

続けて放たれた金色の魔力砲も、同じように標的を捉えた。

連続して起こる大規模な魔力爆発。

とてもじゃないが、直撃した魔導士が無事とは思えなかった。

 

「……やった?」

 

なのはに続いて魔力砲を放ったフェイトが、確信を持って呟く。

 

「油断しないでフェイトちゃん。大抵こういう場合は……」

 

フェイトの呟きに対し応えるなのは。

直後、二人のデバイスが、背後から膨大熱量を感知した。

 

「当たってても、効いてないのがオチだからっ!!」

 

そういいながら背後を振り返り、多重殻弾層の魔力弾を連続で撃ち放つなのは。

それは、背後に展開していた複数のガジェットを正確に撃ち抜き、爆散させた。

 

「ごめん、なのは……」

 

「ううん。それより大丈夫、フェイトちゃん」

 

「うん、大丈夫。まだやれるよ」

 

敵の気配に気付けなかったことを謝るフェイト。

本来の彼女であればまず有り得ないことだが、現状では仕方ないと言わざるを得ない。

そのバリアジャケットは既にボロボロで、AMFの影響により魔力も体力もかなり消耗している。

それに加え、味方との連絡もとれず、部下の安否もわからないこの状況下だ。

いかに優秀な魔導士であろうと、その実一人の人間である。

冷静さを欠き、集中力が切れたとしても何らおかしいことではない。

 

「さすがはSランクの魔導士ですね。そう簡単に勝たせてはくれませんか」

 

どこからか聞こえてきた声が、フェイトとなのはに賛辞を送る。

振り向くと、先程魔力砲のコンビネーションで撃ち落とした筈の魔導士、ニコル・アマルフィが、傷ひとつ無い姿でなのは達を見下ろしていた。

 

「くっ、また……」

 

「残像…それもかなりの質量を持った」

 

その姿に、思わず苦々しく表情を歪めるフェイト。

なのはもあまり余裕の無い表情で上空のニコルを睨み付ける。

 

なのはとフェイトの二人をもってしても打倒出来ない魔導士、ニコル・アマルフィ。

彼の強さは、実に魔導士らしくないその戦いかたにあった。

まず、彼は基本的に攻撃魔法を使わない。

正確には、使うことが出来ない。

彼の正体はなのは達のかつての仲間、ユーノ・スクライアと同じ結界魔導士だ。

結界魔導士は魔法を攻撃に転用出来ない代わりに、結界、捕縛、転送、強化、治療、防御等、補助系統の魔法に特化している。

その能力を遺憾無く発揮し、なのはとフェイトをAAAランクの魔力結界に閉じ込め、念話と通信を妨害し、二人を外界から分断した。

更に召喚魔法で複数のガジェットを結界内に転移させ、また同時に転移させた質量兵器で自分自身も戦闘に加わる。

自分の周囲に多重殻層の結界を常時展開することでAMFによる影響を解消し、攻撃には質量兵器を使い魔力の減少を最小限に抑える。

更には非常に密度の高い幻影魔法を操り、防御魔法もなのはの砲撃を防げる程堅い。

何より驚異なのは、それだけの魔力運用を容易にやってのけるコントロール能力と、豊富な魔力量だ。

なのはとフェイトの見立てでは、その魔力総量は少なくともSランク相当であると予測している。

豊富な魔力と強力な質量兵器に加え、無限に召喚されるガジェットの組み合わせは、この状況では猛威を振るっていた。

そんなニコルに対し、なのは達は多勢に無勢で、尚且つ魔力を制限されている。

一度は逆転の手を打った。

なのはの超射程砲撃でガジェットを一掃して道を開き、フェイトが電光石火の一撃で標的を仕止める。

本来の彼女達であれば、十中八九それで戦闘は終わっただろう。

だが、先程も述べた通り彼女達は魔力を制限されている。

なのはの魔力砲は無限に沸いて出るガジェットの群れ全てを破壊し尽くすことが出来ず、ニコルに一撃を加えたフェイトをかえって孤立させてしまったのだ。

結果、集中攻撃を浴びたフェイトはその全てを回避できず深手を負った。

一方のニコルは受けたダメージを直ぐ様治癒魔法で回復し、未だ無傷である。

更にその攻防以降は幻影魔法を使い、更になのはとフェイトを翻弄した。

何とか凌いではいるものの、戦況は圧倒的になのは側が不利で、打開策も見つからない。

このままだと敗北するのは目に見えてわかっていた。

 

「状況はこちらが有利です。大人しく降伏してください」

 

それを見越して、ニコルはそう告げた。

まるで、他に選択肢など残されていないとでも言うように、冷静に、冷徹に、冷酷に告げた。

 

「うん、そうだね。どう足掻いたところで、この戦力差は変わらない」

 

それでも、なのはの瞳が不安に揺らぐことは無かった。

 

「でも、ごめんね。私達、諦めるのが大の苦手なんだ」

 

にっこり、と、見ていて憎たらしいほどの笑みを浮かべてそう応えるなのは。

釣られて、フェイトの表情にも笑顔が浮かぶ。

 

「うん、そうだったね」

 

そう言うとバルディッシュを構え直し、その切っ先をニコルに向けた。

 

「私達は負けない。結界の外で待ってる人達がいるから、負けられない」

 

力強い口調でそう告げるフェイト。

直後、バルディッシュがその姿を変え、切っ先から巨大な魔力刃が発生する。

それを見たなのはもレイジングハートを構え、自身の周囲に魔力スフィアを生成し、臨戦態勢をとる。

 

「…………どうやら、降伏する気は無いみたいですね」

 

二人の様子に、そう言って静かに目を閉じると、召喚魔法を展開して新たにガジェットを呼び出すニコル。

同時に、その手には身の丈以上の砲身を誇るライフルが握られている。

電磁加速ライフル。所謂レールガンだ。

 

「本来はガジェット用に造られたものですが、貴女方を相手にするにはこのくらいでなければ……」

 

そう言って、銃口を二人に向けて構えるニコル。

それに続くように、周囲に展開したガジェットも装備する武装の照準を二人に合わせた。

 

「いくよ、フェイトちゃん」

 

「うん、なのは」

 

圧倒的戦力に対し、なのは達も全力全快で応戦する。

ありったけの魔力を込め、今できる最大の魔法を撃ち放とうとした、その瞬間。

 

『MF解析完了、魔力濃度正常、適応情報更新、 リンカーコア正常、生成プログラムに干渉開始………5…4…3…2…1』

 

聞き覚えのある声が聞こえたきたかと思うと、徐々に外界との境界線が揺らぎ始め、結界全体に亀裂が走る。

 

「ッ!? これは、結界の生成プログラムに割り込みを!?」

 

明らかな異常事態に驚き、これまでにない動揺を見せるニコル。

何とか結界の崩壊を防ごうとするが、手遅れだった。

 

『……ブレイクッ!』

 

直後、結界は完全に崩壊し、破壊された。

 

「外界からの干渉によりAAAランクの結界を破壊した? そんな高度なプログラム、一体誰が……ッ!」

 

悔しげに結界を破壊した当人を睨むニコル。

その正体に、苦々しく悪態を吐く。

 

「なるほど……貴方でしたか。本当に、どこまでいっても僕達の邪魔ばかり……いい加減消えてくれませんか…?」

 

先程までとは違い、感情を露にし、怒りに表情を歪めるニコル。

激情し、憎しみに支配された声で、かつて自分を殺した人物の名を叫ぶ。

 

「聞いているんですかっ……キラ・ヤマトォォォッ!!」

 

その叫びを受け、キラもまた同じように怒りを露にする。

 

「君こそ……僕の仲間を傷付けて只で済むと思ってるの?」

 

その瞳に映るのは、ボロボロになった上司、フェイトの姿。

理性が崩壊し、本能がキラを支配する。

そして、その瞳から光が消えた。

 

「全力で……君を倒す」

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