魔法戦士リリカルSEED Strikers   作:ぬらりひょん

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PHASE-25

担い手の激情を表すように火を噴く超電磁ライフル。

音速を超える速さで撃ち出されたその銃弾は、展開していた味方のガジェットを巻き込みながら標的へと向かっていく。

 

だが、当たらない。

ガジェットを壁にして弾道を隠し、音速を超える速さで正確に撃ち出された銃弾は、虚しく空気を切り裂いただけでその役目を終えた。

 

「くっ、出鱈目なっ!」

 

思わず悪態を吐くニコル。

これで貴重な超電磁ライフルの銃弾を七発も無駄にしたことになる。

射撃の腕に絶対の自信があったわけではないが、こうも簡単に避けられると苛立ちは募るばかりだ。

だが、いくら当たらないからと言って冷静さを欠くわけにはいかない。

 

『Photon Zamber.』

 

「ッ!!」

 

射撃後の僅かな硬直を狙い、光の刃がニコルに迫る。

超高速で繰り出されたその斬撃を、紙一重のタイミングでシールドを張り防ぐ。

否、正しくは『防がされた』。

 

「ッ!シールドを噛んでーーッ!!」

 

気付いた時には遅かった。

敵のデバイスから展開された光の刃は、シールドを『噛む』性質を持っている。

その事実にニコルが気付くよりも早く、相手は次の手に移っていた。

シールドを噛んだまま魔力刃がパージされ、直後に爆発したのだ。

その衝撃に耐えきれず後方へと吹き飛ばされるニコル。

咄嗟にホールディングネットを展開して衝撃を緩和するも、その時には既に魔力弾による次の攻撃が迫ってきている。

 

「くっ!」

 

防御が間に合わない。

そう判断したニコルは、咄嗟に魔法を発動させる。

短距離瞬間移動(ショートジャンプ)。

通常の瞬間移動魔法のタイムラグを術式の調整によって限り無くゼロにした、ニコルの奥の手の魔法だ。

それにより何とか魔力弾を回避したニコルは、追撃が無いのを確認すると息を整える。

術式を調整したとはいえ、短距離瞬間移動はまだ実験段階の完成度しかない魔法だ。

身体への負担も大きく、とても実践で使えるものではない。

だが、それを使わざるを得ない程、状況は切迫していた。

 

「くそっ!くそくそくそっ!何なんですか貴方は!どうしてっ、いつもいつも僕達の邪魔ばかり……っ!」

 

自分をここまで追い込む宿敵ーーキラに対して、ニコルは激情を吐露する。

だが、キラは無言でデバイスを突き付け、恐ろしい程に冷静且つ獰猛な瞳でニコルを睨み返すだけだ。

 

「短距離瞬間移動? けどっーー」

 

その瞳が告げていた。

逃がしはしない、と。

 

「フォトン・シューター展開」

 

直後、キラの周囲に展開される魔法誘導弾フォトン・シューター。

キラが唯一使える誘導射撃魔法で、数ある誘導魔法弾の中でもシンプルで扱いやすい。

速度や威力ではなのはが使うディバイン・シューターに劣るが、使い方次第では十分渡り合うことが出来るともう一人の師であるクロノからお墨付きを貰った魔法だ。

 

「術式固定。全弾待機」

 

キラの指示に従うように、周囲に漂っていた計六つの魔力弾達がその動きを止める。

平行して発動したのは、つい先日使いこなせるようになった高速移動魔法ソニックムーブ。

 

「ッッ!!」

 

決死の思いでとった間合いを一瞬で詰められ戦慄するニコル。

初撃ーー右上からの袈裟斬り。

これは自動で発動する魔法障壁で対応出来る。

だが、防ぐと同時に誘導弾が襲い掛かる。

数は三。左右と背後から一つずつ。

全方位フィールド魔法を展開していては間に合わない。

ならば、ニコルがとれる行動は一つだ。

 

『Short jump.』

 

ニコルの意思を読み取ったカンタービレが、短距離瞬間移動(ショートジャンプ)を発動させる。

だが、

 

「ぐっーーぁがっ!?」

 

未完成な魔法の連続使用には代償が伴う。

身体の中がぐちゃぐちゃに掻き乱されるような感覚に、思わず顔をしかめるニコル。

その行為は、ニコルからすると一瞬だ。

だがキラから見れば、それは十分すぎる程の好機だった。

 

「術式解除。距離算出!」

 

『Photon shooter. Spiral shift. 』

 

撃ち放たれたのは螺旋の光線。

残り三つの誘導弾を収束させた魔力砲。

 

「ぐっ!」

 

防御は間に合わない。

ならば、せめて最小限のダメージに抑えようと強引に身体を捻り回避を試みる。

だが、誘導制御の効果があるフォトンシューターにとって、その行動は無意味に等しい。

 

「ぐっああぁぁぁぁぁっ!?」

 

魔力砲の直撃を受けるニコル。

魔法障壁を常時展開しているので戦闘不能には至らなかったが、そのダメージはとても無視できるものではない。

そもそも、ニコル・アマルフィは決して戦闘向きの魔導士ではない。

攻撃魔法を一切使えず、膨大な魔力を扱う技術も万全とは言えない今のニコルは、本来であればキラどころかスバルやティアナにさえも苦戦することだろう。

そんな彼がオーバーSランクのなのはとフェイトに対し優勢を保てたのは、無数に召喚されるガジェットという圧倒的な数の力と質量兵器、なによりなのは達の能力限定があったからだ。

それが破られた今、ニコルには万に一つの勝ち目すらなかった。

 

(この感覚……覚えがある)

 

ニコルの脳裏を過ったのは、元の世界の記憶。

彼がMSのパイロットとして戦場にいた頃の記憶だ。

 

(勝利を目前にして、それを一瞬にして引っくり返される程の圧倒的な力)

 

そう、あの時もそうだった。

敵の戦艦に取り付いたニコルは、勝利を目前にして一機のMSに敗北した。

味方の援護がなければ撃墜されていたと確信をもって言える。

そのMSに乗っていたパイロットこそが、今目の前で同じように自分を追い詰めているキラ・ヤマトなのだ。

 

「ハハ……アハハハッ」

 

止めを刺そうと肉薄するキラ。

迫る刃に対し、ニコルの口からは渇いた笑い声が上がる。

 

『Photon slash.』

 

その瞬間、キラのデバイスから出力された魔力刃が、ニコルの身体を易々と貫いた。

だが、直後に違和感を感じ、キラの表情が固まる。

この手応えは、人の身体を貫いた感覚ではない。

もっと無機質で、冷たいモノを貫いた時の手応えだ。

 

「これはーー」

 

「そうだよ、キラ・ヤマト」

 

事態を察したキラにニコルは笑いかける。

同時に、キラのデバイスと腕を掴み、二人の周囲に簡易な結界を張る。

 

「僕は半分人間で半分機械。君に撃たれたとき、身体の半分を失ったんだ」

 

その言葉通り、魔力刃が突き刺さった腹部からは、金属製の人工筋肉が露出し、激しい火花を散らせていた。

 

「だから、こういうやり方だって出来る」

 

「ッ!」

 

その言葉でニコルの考えを察したキラ。

だが、既に遅かった。

 

直後、結界内部て高濃度に圧縮された魔力の爆発が起こり、二人の姿はその中に消えて見えなくなった。

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