魔法戦士リリカルSEED Strikers   作:ぬらりひょん

28 / 37
PHASE-27

機動六課 司令部オフィス

 

 

 

「……はぁ」

 

任務完了の報告を聞いたはやては、一先ず安堵の息を吐いた。

輸送中のレリックはスターズの二人が回収。

キャロはトラウマを克服し竜召喚を成功させた。

隔離されていたなのはとフェイトの二人もキラのおかげで無事救出。

結果だけを見れば、多少のイレギュラーがあったとは言え初陣にしては中々の成果だろう。

だが、はやての胸中に渦巻く不安は消えてはくれなかった。

キラの過去を知り、その存在に剥き出しの憎悪を向けるニコル。

まだ未成熟とは言え、Sランク相当の潜在魔力を保有する彼は将来的には大きな障害となり得る。

 

「何か…対策を考えなあかんな」

 

ロングアーチスタッフの誰もが事後処理に追われるなか、一人静かに呟くはやて。

その表情は厳しく、何処か思い詰めているようでもあった。

 

(キラくんは執務官補佐としてフェイトちゃんと現場に行ってもらうことも多いし、遊撃士として単独で動いてもらうこともある。単独行動時に狙われたら、いくらキラくんでも危ないかもしれん)

 

あらゆるケースを想定し、対策を考えるはやて。

結果、キラを単独で行動させる機会を極力減らし、常に誰かを側に付けるのが、現段階では最善の策だという結論に達した。

問題なのは、誰を側に付けるかだ。

 

(ある程度自由に動けて捜査能力も高く、キラくんと同等かそれ以上の戦闘力を持つ人材と言えば……あ!)

 

そこまで考えて、心当りを見つけたのかふと顔をあげるはやて。

 

「……せやな。あの娘なら捜査官としても優秀やし面倒見も良い。そうと決まれば早速手続きをーー」

 

意気揚々と端末を起動し出、向要請の手続きを始めるはやて。

とそこへ、部下へと指示を出していたグリフィスから声がかかる。

 

「すみません八神部隊長。計測データのチェックをお願いします。新型のガジェットドローンと未確認の魔導士のデータは別にまとめてあるので……」

 

「えっ!? あ、あぁせやな。ごめんごめん、すぐ確認するわ」

 

「……? 」

 

話しかけたグリフィスが首を傾げるほど慌ててしまうはやて。

それもそうだろう。何せはやては、キラ個人の安全の為に部隊を動かそうとしたのだから。

 

「八神部隊長……お疲れのようでしたら代わりに私が引き受けますが……」

 

「いや、大丈夫や。ごめんな心配かけて」

 

気を遣った様子ではやてを見るグリフィスに、はやては笑顔でそう答える。

同時に、先程までの自分を思い返し、それを恥じるように僅かに顔を赤らめた。

 

(アホか私は! 個人的な感情で動くなんて部隊長として失格や! しっかりせな、八神はやて!)

 

そう自分を叱咤し、端末にグリフィスから貰ったデータを読み込む。

 

(とにかく、あの件は後回しや。今は目の前の仕事に集中せな、頑張ってるみんなに申し訳が立たへん)

 

気持ちを切り替え、八神はやてという個人から機動六課部隊長の顔付きへと変わる。

事後処理だけでも、仕事は山のようにある。

疲労して帰ってくるであろうフォワードメンバーの為にも、出来るだけ早く処理して労ってやりたい。

そう思うと、俄然やる気が沸いてきた。

 

「……よしっ、いっちょ頑張ろかっ」

 

気合いを入れ直すように両手で自分の頬を叩く。

その直後、グリフィスから貰った計測データを確認したはやては、その圧倒的な情報量を前に今夜は徹夜を覚悟するのだった。

 

 

 

 

 

 

機動六課 隊員オフィス

 

 

機動六課という部隊は、基本的に二四時間体制で稼働している。

はやてが指揮する部隊がオフシフトの間は、グリフィスが指揮官を努める交替部隊がその穴を埋めている。

なので、夜遅い時間になってもオフィスから人がいなくなることは、基本的には滅多に無い。

それは、機動六課が初めて出動したこの日も例外ではないのだが、

 

「あの、キラさん? もう自由待機(オフタイム)の時間なんじゃ……」

 

「あぁ、はい。でも、せめて今やってるとこまで終わらせてから引き継ぎたいので……」

 

なぜか、交代部隊に混ざってデスクワークを行うキラの姿があった。

ちなみに、キラの勤務時間は既に過ぎており、これは所謂残業というやつなのだが、作業効率は落ちるどころか時間が経つにつれて益々増していた。

相変わらず、デスクワークに関しては六課でもトップクラスの化け物である。

 

「よしっ、あとは訂正箇所が無いかログを拾い直して終了だ。さて、もうひと頑張りーー」

 

「いやっ!もう良いですから!後は私達がやっておきますのでキラさんはいい加減休んでください!」

 

気合いを入れ直して改めて端末に向かおうとするキラを、痺れを切らせた交代部隊の隊員が止めに入る。

当然のように食い下がるキラだったが、

 

「貴方がちゃんと休んでくれないと、私達交代部隊の存在意義が無くなってしまいます。何より、シャマル先生からも貴方を休ませるよう言われてるんです。お願いですから休んでください」

 

と、泣きそうな顔で頼まれては承諾せざるを得なかった。

だがせめて、自分がまとめたデータだけは、直接部隊長であるはやてに提出したいという旨を伝えると、渋々ながら了承してくれた。

くれぐれもこれ以上は業務に手を出さないよう釘を刺されたが。

 

(でもまぁ、さすがにちょっと疲れたかな。六課稼働時から全然休んでないし)

 

部隊長室へ向かう途中、いつもより少し重い身体を気にしながらそんなことを思う。

最近はデスクワークが続いていた為、今回の任務は久しぶりの実戦となったのだが、そのせいもあって予想以上に疲労が溜まっているようだ。

 

(明日の早朝トレーニングは軽めにするか。なのはさんの教導は久々だし、体力を温存しておかないと)

 

明日からは、キラもフォワードの四人と一緒に教導を受ける予定となっている。

期待もあるが、体力的な不安も大きい。

特にキラに対するなのはの教導は厳しく、ペース配分を間違えると最後まで体力がもたないのだ。

 

「教導官としてのなのはさんは鬼教官だからなぁ」

 

過去に自分がなのはから受けてきた訓練を思いだし、苦笑いしながらポツリとそう漏らす。

 

「誰が鬼教官なのかな?」

 

「いや、ですからなのはさんが」

 

「ふーん。そっか。私って鬼教官なんだ」

 

「うーん……いや、ニコニコ笑いながら無茶なこと言う辺り普通の鬼教官よりも質が悪いですね」

 

「そっかぁ。……ところでキラくん、さっきから誰と話してるの?」

 

「え? やだなぁ、何言ってるんです? そんなのなのはさんに決まってるじゃないですか」

 

「そっか、わかってて言ってたんだね。あはははははっ!」

 

「アハハハハハッ! 」

 

ひとしきり笑い合う二人。

ふと笑いが止むと、そこでキラはようやく声の主の方へと振り返る。

目が合う二人。

それだけで、互いが今何を考えているかがわかった。

 

「キラくん、ごめんなさいは?」

 

「ごめんなさい」

 

フェイトもびっくりの速さで頭を下げるキラ。

この後、めちゃくちゃ怒られたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

「全く。私だって女の子なんだから、そこのところをみんなにはもっとわかってほしいというか。固定砲台だとか白い悪魔だとか、酷いと思わない!?」

 

「あ、はい、僕もそう思います。もう十分わかったのでそろそろ仕事に戻って良いですか?」

 

「またそうやって誤魔化そうとする! ていうかキラくん、なんでまだ上がってないの!? 勤務時間はとっくに過ぎてるよね!? ワーカーホリックなの!?」

 

「それに関してはなのはさんに言われたくないです」

 

あの後、約三十分による説教の後、キラはなのはの愚痴に付き合わされていた。

場所はオフィスから部隊長室へ向かう途中にあるラウンジで、二人とも来客用の席に腰かけている。

ちなみに、先程の失言の罰としてキラはなのはにジュースを奢らされた。

 

「キラくんまで私のことそんな風に見てるんだ!」

 

「いや、あの……それは売り言葉に買い言葉と言うか……」

 

「ふんっ……いーですよー。どーせ私は魔力バカの鬼教官ですからっ」

 

「…………はぁ」

 

一向に機嫌が直る気配の無いなのはに、思わず小さな溜め息が漏れる。

同時にここまで荒れているなのはさんも珍しいな、と思ったキラは、ふと真剣な表情で声をかけてみる。

 

「なのはさん?」

 

「むっ……なに?」

 

キラの呼び掛けに、少し反抗的な目付きでじろりと睨むなのは。

いつもからは想像もつかないその幼い様子に微笑みつつ、キラは尋ねる。

 

「何か、辛いことでもあったんですか?」

 

「!?」

 

キラの問いかけに、はっとした様子で身体を硬直させるなのは。

だがそれも一瞬のことで、恥ずかしげな様子で頬を掻きながら苦笑いを浮かべると、素直にその問いに答えた。

 

「あはは、バレちゃったかぁ」

 

「バレますよ、そりゃ。なのはさん、辛いことがあると僕の前では少し子供っぽくなりますから」

 

「うっ。そ、そうだっけ?」

 

「はい。自覚してなかったんですか?」

 

「してないよぉ。うぅ、なんかちょっと恥ずかしいなぁ」

 

キラの言葉に顔を赤らめて俯くなのは。

それを微笑ましそうに見るキラを恨めしげにひと睨みすると、吹っ切った様子で笑顔を浮かべる。

 

「……でも、そうかもね。ほら、キラくんって一応私より歳上だし」

 

「記憶が無いので本当かどうかはわからないですけどね」

「もう、そういうこと言わないの!」

 

少し怒った様子でキラの脇腹を指で突くなのは。

それに苦笑いで謝った後、キラは続けて口を開いた。

 

「まぁ、そういうわけなので……こんな僕でよければ、少し話してみませんか?」

 

そう言って微笑むキラに、なのはは少し躊躇い気味に表情を逸らす。

だがすぐに顔を上げると、今度は少し恥ずかしそうに微笑みながら答えた。

 

「……じゃあ、頼っちゃおうかな? 」

 

「えぇ、喜んで」

 

甘えるようななのはの声に、快く承諾するキラ。

今夜は、どうやらまだまだ眠れそうになさそうだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。